続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ネバーエンディングストーリー

 先週末は、新型コロナウイルス感染対策をしっかりしながら、ユニバーサルスタジオ・ジャパンへ遊びに行っていました。今年でオープン20周年とのことですが、訪れたのは今回が初めて。終始キョロキョロしながら、妻はハリーポッターエリア、私はスーパーマリオエリアを中心に、楽しい二日間を過ごしました。

 そんなさなかに飛び込んできた、衝撃の0-8と長谷川監督の辞任。横浜FM戦については、当然リアルタイムで見ていませんし、追っかけで見るつもりもないのでここで触れることはしませんが、長谷川監督の辞任について、今思うことを書き留めておきたいと思います。



 4年前、長谷川監督が就任後、このブログで最初に長谷川体制に向けて書いたエントリを、改めて自分で読み返してみました。

 

re-donald.hatenablog.com

 

 16、17年は大げさではなく先が見えない日々を過ごしていただけあって、「私が今季FC東京に求めたいもの、それはズバリ「勝利」です」なんて表現もしていましたが、今思うのは、このエントリ内で書いたこの部分について。

 記事内で、オリンピックを4度制した女子レスリング・伊調馨選手が「負けないとわからないことがある。この負けはチャンス。成長のキッカケにします。ドーンと落ちて、また上がっていくほうが突き抜けられる」という言葉を敗戦の度に口にしたことが紹介されています。

 もちろん、この言葉は真意をついています。けれど、その前提には「勝っていくなかで」がなければいけません。負け続けている選手が、いつまでたっても上昇しないチームがこの言葉を吐いたところで、そこに説得力は生まれないでしょう。

 いみじくもこの冬、サッカー界で似たような2つの優勝がありました。それが、高円宮杯U-18チャンピオンシップで初優勝を果たしたFC東京U-18と、全国高校サッカー選手権大会で悲願の初優勝をつかんだ前橋育英高校。

 前者は、16年冬に「勝てばチャンピオンシップ進出」というゲームで青森山田高校に敗れ、悔し涙を流しました。しかし17年冬、同じく最終戦で対峙した青森山田高校を下し、歩を進めたチャンピオンシップでヴィッセル神戸U-18を延長戦の末に破って、タイトルを手にしました。後者は、長く指揮を執ってきた山田耕介監督のもとでなかなかタイトルに手が届かず、17年の決勝では青森山田高校に0-5という衝撃的な敗戦を喫しましたが、その悔しさをバネに18年冬、ついに頂点までたどり着きました。

 両チームとも、近年はある程度の勝ちを積み重ね、サッカーファンの中で価値のあるチームとして認識されながら、16-17年の冬に痛恨の敗北を味わいました。それでも、その敗北を無駄にすることなく再び勝利を積み重ね、敗北によって得た経験値をもとに一回り成長した結果、優勝の二文字を手にしました。これもまた「勝ちの中にある負け」だったからこそ、その負けが次のステップになったと理解しています。

 この視点で振り返れば、18、19年は、しぶとく勝利をもぎ取りながら、「勝ちの中にある負け」をしっかりと血肉にして個も組織も成長を遂げられていたのかなと。中でも印象に残っているのは、19年 J1第24節 対札幌戦。

 1つ前、第23節 広島戦ではあと一歩及ばず0-1の敗戦。そして、この第24節から、Jリーグ史上初のアウェイ8連戦がスタート。この時点で首位に立っていましたが、もしこの試合で内容、結果が伴わなければガタガタっと崩れかねない、そんなシチュエーションのなか、結果は1-1の引き分けに終わりましたが、お互いがバチバチぶつかり、ガチガチにやりあい、非常にドキドキしたゲームを見せてくれたと記憶しています。

 さらに、試合後に公開されたyoutube FC東京オフィシャルチャンネルのコンテンツ。

 

www.youtube.com

 

 この「INSIDE F.C.TOKYO」シリーズ。全てを見ているわけではないので間違っているかもしれませんが、試合後のロッカールーム内の映像を流していたのは、恐らくこの試合だけ。そして、流れてきたのは、選手に向けて熱く言葉をぶつける長谷川監督の姿。当時この映像を初めて見たとき、嘘じゃなく泣きそうになってしまいましたし、今年こそは本当にやってくれるんじゃないかと高揚したことを覚えています。

 結果的に、オーラスで大きな、悔しい敗戦を喫してしまったわけですが、その負けすらも必ず次へ活かされる、活かしてくれると、あの時日産スタジアムのスタンドで心に刻んで帰宅の途に就いたことを思い出します。

 20年はコロナウイルスの影響によって勝ち負け以前の難局がチームに訪れ、リーグ戦、ACL、カップ戦、いずれもいつ、どこで、どうやって行われるのか全く先が見えない中で、外からは窺い知れない苦しさ、厳しさ、もどかしさがあったことは想像に難くありません。それでも、苛烈な連戦を何とか乗りきって、厳しい敗戦も乗り越えて、ルヴァンカップ制覇という結果を残すシーズンとしました。

 

 そして、今年。苦難の20年シーズンで心身に刻まれた「疲労」が、チーム運営に大きな悪影響を及ぼしたことは確か。予期せぬ事態が次々と降りかかってきたことも確か。けれど、そんな状況から逃げることなく、やれることをある意味淡々とやり続けたことも確か。長谷川監督にだけフォーカスを当てれば、及第点は十分につけられるシーズンだと言えるでしょう。

 ただ、FC東京というクラブ全体で見れば、話は別。少し前のエントリでも書いたとおり、今季長谷川監督は数名のスタッフを――おそらく本人の意向とは別の形で――失いました。20年に橋本、室屋と働き盛りの主力を海外へと手放した補填も十分とは言えず、シーズン途中の補強もマイナスをなんとか埋めるにとどまり、プラスをもたらすまでには至らず。こうした中でもチャンスを掴み、成長を遂げた選手はいましたが、シーズン通じてチーム力アップに貢献できたかと言われれば、YESと言いきれず。つまるところ、18~20年までの流れとは異なり、今年はシーズンの一切合切を一つの「線」として繋げることができなかった。今日の取り組みを、今日の想いを、今日の勝ちを、今日の負けを、正しく明日に活かせなかった。まだ終わっていませんが、そう総括せざるを得ないシーズンでした。

 ここまでを踏まえたうえで、じゃあこの流れを変えるためにできることは何か?私は、監督・スタッフ陣を替えるか、選手を大幅に替えるか、の二択しか思いつきません。そして、幸せな別れの道をこしらえ、この4年間を前向きな思い出としつつ、海外から監督を招聘し、全くゼロからの選手選考を始めることで否が応でも選手たちの競争心を焚きつける。そうしたドラスティックさを含めた前者の決断を、フロントが早々に行うべきだったのでは?と考えています。この点も含め、今季の尻すぼみの責を負うべきは長谷川監督・・・だけではないと思いますけどね。



 今季は、大方の予想通り森下GKコーチを暫定監督として乗り切ることが発表されました。一方、来季については、いくつか名前が出始めていますが未定のまま。どのような決断が下されるか、ファンは行く末を見守るしかありませんが、私は来季、1試合でも多く、ある種勝ち負けに関わらず「あぁ、今日はスタジアムに来てよかった」「あぁ、今日はグッドゲームだった」と感じたいし、浮き沈み含めてストーリーとして見守れる、語れる、振り返られるシーズンになってほしいと願うばかりです。



 結びに。長谷川監督、4年間本当にありがとうございました。次の場でのご活躍を、心から祈念いたします。