続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

NO MORE 空虚

 突然舞い込んできた、広島・城福監督の退任&沢田コーチの監督就任。つい最近出ていた社長のインタビュー記事を読むと、「残留はできました。さて、来季はどうします?」という話し合いの中で、クラブ側から退任に関して申し出たとのこと。さすがに時期的なものも含めてビックリしましたが、仮に来季も沢田監督で・・・という判断もあるならば、沢田監督としても今から自身の哲学をチームに落とし込める、かつ、来季の選手構成に自身の意見もギリギリ反映できる時期であり、これは悪い話ではありません。まあ、インタビュー記事を信じれば、来季の監督はまだ確約されていないようですが・・・。

 さて、この視点で見れば、現在の長谷川監督がどういう立場にあるのか?A代表・森保監督の後任として名前を使われたり、ミクシィの経営権取得のニュースに絡めて「来季は退任が見込まれ・・・」と書かれたり、私もブログでああだこうだ書いたり、外野はやかましいことになっています。

 当然、真相は明らかになっていません。個人的には東京が今置かれた順位・立ち位置を考えれば、続投にせよ退任にせよ、早々に去就を明らかにするメリットの方が、市内でメリットを上回るのでは?と思っていますが、皆さんはどうお考えでしょうか?

 

 そんな中迎えた、J1第33節 鹿島戦。結果は1-2で敗戦。ただ、どんな状況でも、結果に左右されることなく、やれることをやる、そんな長谷川監督の矜持を感じられる内容だった、と私は感じました。

 一つさかのぼって、ルヴァンカップ準決勝。まずはブロックをしっかり作り、そこからプレスなり、リトリートなり、守備を仕掛けてくる名古屋に対し、東京はボールをより多くの時間で持つ展開となりました。そしてこの鹿島戦、終わってみればボール支配率は東京59.2%-40.8%鹿島。東京の今季平均ボール支配率が45.9%ということを考えれば、このパーセンテージは相当「ボール持ってたな」という印象を与えます。

 もちろん、鹿島側がとにかく勝つことだけを目指して、さてどうしたらいいか?と考えた結果、東京にある程度ボールを持たれても構わないという判断になったことも、この支配率に繋がった側面の一つではありますが、東京が自発的にボールを持とうとしたことも、間違いではないでしょう。それは、「フットボールラボ」に掲載されているマッチレポートからも伺い知れます。

www.football-lab.jp

 

 上記リンク内に、前半・後半それぞれのエリア別プレー割合が色の濃淡で示された図がありますが、特に前半を見ていただければ一目瞭然。東京は、まず自陣でボールをしっかり保持し、そこからどうチャンスを作るか?シュートまで持ち込むか?という明確な意図のもとプレーしていました。

 このことを補完するため前半を見直し、「東京が自陣で5秒以上前向きにボールを保持する局面」を手集計。するとおよそ10回、そんなボール保持局面がありました。そのうち、最終ラインが「疑似3バック化」したケースをピックアップすると、

14分・・・青木がCBの間に入り、両サイドバック高め

15分・・・児玉がCBの間に入り、両サイドバック高め

16分・・・青木がCBの間に入り、両サイドバック高め

18分・・・青木がCBの間に入り、両サイドバック高め

20分・・・安部がCB横に下りて、両サイドバック高め

38分・・・CB+長友の疑似3バックで、中村拓高め

42分・・・CB+長友の疑似3バックで、中村拓高め

 実に7回、疑似3バック化してのボール保持局面がありました。これまでも、センターハーフ(特に青木)がCBに加担してボールを持とうとする場面はちらほらありましたが、この日はことさらこの意識が高かった印象。そして、前半の終わりに見せたCB2枚+SBでの疑似3バックは、私の記憶が確かならば、今季ほぼ見せなかった形。最初は流れの中でたまたまそうなったか?と思いましたが、その数分後にまた同じ形を見せたことで、これは完全に意図しての形だったと言えるでしょう。で、この局面での選手のポジションをあえて図に示せば、こんな感じでしょう。

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 狙い(生み出したいメリット)は、恐らく「アダイウトンの単騎力を活かす」「中村拓の攻撃力を引き出す」「被カウンター時の後方枚数確保」の3点。結果的に、「アダイウトンをどうにかして止める」という鹿島の守り方に1つ目の狙いはうまくつぶされ、DAZNで解説していた岩政大樹さんも指摘したとおり、被カウンター時のポジショニングはまだ改善の余地あり!と実戦で教わることとなりましたが、中村拓を前向きの矢印でプレーさせた意図は見事ゴールに直結。新たな可能性もまた、しっかりとピッチに刻めていたと思います。

 

 残り5試合。この戦い方をベースにするかは分かりません。ただ、私は鹿島戦を見て「今いる選手で何ができるか?」ではなく、「スカッドがフルスペックになった暁には、こういう試合をしたい!」と長谷川監督はブレずに考えているんだな、と感じました。

 疑似3バックで見ると、「CB+SB1枚」の形を作るとしても、サイドバックの選択肢が今は右が中村拓、左が長友の一択しかないものの、怪我人が戻ってくれば、例えば右・中村帆or鈴木準、左・長友orカシーフで左肩上がり、あるいは、左・小川、右・中村拓で右肩上がりと、楽しみな組み合わせをチョイスすることができます。また、センターハーフが下りてくる形にしても、青木・安部のスキルアップにはおおいに期待しつつ、品田、現在レンタル中の鈴木喜丈、もしくは来季加入予定の松木玖生がビタッとハマる可能性だってあるでしょう。

 いずれにせよ、長谷川監督が現状をただ憂うのではなく、何とかしてチームを上昇させるために日々試行錯誤しながら積み重ねを行ってきたことを、この日の味スタで見ることができました。そして、そうならば、クラブのフロント陣にお願いしたいのは、こうした長谷川監督のプロフェッショナリズムを空虚なものにしない選択を、なるべく早々に示してほしい。選手たちにお願いしたいのは、こうした長谷川監督のマネジメントを空虚なものにしない姿勢をピッチで示してほしい。そんなことも感じました。

 

 鹿島戦が始まる前、11/3のJ1第34節 清水戦は、現地観戦をパスする予定でした。しかし、敗戦を告げるホイッスルが鳴った直後、その場で清水戦のチケットを購入。久々に50%まで収容できる味スタがどんな雰囲気になるのかも含め、私自身も空虚になることなく、残り試合から透けて見える何かを見ていけたら、そう思う今日この頃です。