ルヴァンカップ、終戦となりました。まずは、名古屋グランパスの皆さまに祝意を。なんでも、ナビスコカップ時代を含め、これまでベスト4が8回もありながら、これが初の決勝進出だそうで。この決勝カードなら…マッシモにタイトル獲ってほしいので、名古屋を応援するかな。
そのルヴァンカップ準決勝。FC東京は「グッドルーザー」だったと思います。手負いの中、2試合トータル170分までは決勝進出をこの手にし、2ndレグ単独で見ても、久々に「出し切った」試合を見せてくれましたから。それでも、この試合で今季の無冠が確定。その後、長谷川監督の動向に触れる推測記事が、いくつかのメディアに掲載されました。
そんな2ndレグの試合前、私はこんなツイートをしました。
リーグ優勝はもちろんしたいけど、私はそれが「長谷川監督ともに」とは、思いきれなくなってる人間。だから、今季のルヴァンカップは、なんとしても取ってほしいのです。
— どなるど (@B_F_F_H) 2021年10月10日
就任から4年。ここまでの浮き沈みを仔細に振り返ることはしませんが、リーグ戦の戦績、内容を大きく括れば、なだらかな右肩下がりであることは否めません。もちろん、19年、21年シーズンはいずれもオリンピック・パラリンピック開催の影響により、夏~秋に長期アウェイ連戦を乗り越えなければならなかった、20年シーズンは新型コロナウイルス感染拡大防止を目的として国・東京都が定めた活動制限の影響を強く受けた、また、今季は想定以上の怪我人に苦しめられた、といったエクスキューズはあります。
しかし、以前に指揮した清水、G大阪いずれにおいても就任4年目でピークアウトの兆候を見せ、就任5年目もその流れを反転させられずに退任となっています。特にG大阪時代の3年目から4年目、4年目から5年目のこらえ切れなさは悪い意味で印象に強く残っていて、今の状態は、まさにG大阪の4年目に近い雰囲気。結果、続投の末に二度あることは三度ある…となってしまう可能性を大きく感じていて。ならば、長谷川監督に最大の感謝を告げつつ、ここを一区切りとして、来季新体制でスタートする方が好転するんじゃないか?という思いの方が強い。そんなわけで、件のツイートをしたところです。
一方で、「何が何でも、今季で長谷川監督とお別れしろ!」とまでは思ってはいません。今季を「それでも、こらえている」と見れば、来期も契約を結び、怪我人が戻ってきた陣容のもと、今一度長谷川監督に反転攻勢の期待をかけることも、間違った選択肢ではないでしょう。しかし、長谷川監督を継続させるのであれば、周りが本気で長谷川監督を支える行動を示さなければいけないと思います。私がパッと思いつくのが、次の4点でしょうか。
1:複数年契約
もし、来季も長谷川監督に任せるのであれば、私は複数年(2年)契約が望ましいと考える派。理由はシンプルで、18年を経ての19年を再現するための時間を、そのままそっくりもう一度与えるべきだと思うから。この後でも触れますが、長谷川体制を続けるのであれば、大幅な人の入れ替えは必須。そして、この時点ですでに若返りの萌芽はあり。ならば、ちょっとのことではクラブはたじろがないよ!という信頼を示してもいいのではないでしょうか。
2:「腹心」の登用
G大阪時代、3冠を達成した2014年シーズンのコーチ陣を見ると、今も東京で手を組む大島琢さんは「テクニカルコーチ」という立場にあり、長谷川監督、大島テクニカルコーチに加え、片野坂知宏ヘッドコーチ(現・大分トリニータ監督)の3頭体制でシーズンに臨んでいました。その後も、人の入れ替わりはありながら、G大阪を退任する2017年シーズンまで、この3頭体制は続きます。
では、東京ではどうだったか?就任以降、「コーチ」として契約している顔ぶれは、以下のとおり。
19年:長澤徹(U-23監督兼任)、安間貴義、大島琢、佐藤由希彦
20年:長澤徹(U-23監督兼任)、安間貴義、大島琢、佐藤由希彦
21年:大島琢、佐藤由希彦
U-23が終了となり、S級ライセンスを持つ長澤さん、安間さんがそれぞれ別のクラブから監督として声がかかったタイミングと重なりはしましたが、今季はコーチ陣が半減。また、すでにこの点に関して触れられている記事やツイートがあったと記憶していますが、新型コロナウイルスの影響によるクラブ収支悪化のしわ寄せが、スタッフ側の人件費に及んで…という側面もあるでしょう。
単にコーチの頭数を増やせ、とは全く思いません。しかし、選手の心をつかむことに長けた長澤さん、「安間塾」とも称された練習を含め、若手に対して的確に指導していた安間さんを一気に失った補填がないままシーズンを送るなか、大島、佐藤両コーチにかかる負担は大幅に増えていたことも、想像に難くありません。すべての準備を含めたチーム力アップのため、試合以外の部分-トレーニングメニューの構成、若手育成、メンタルケアなど-をさらに的確に分担するため、なにより、長谷川監督の理想をチームにしっかりと落とし込むため、もう1人、「腹心」の配置はあっていいのではないでしょうか。
3:時代に取り残されないために
今季はシーズンを通して、選手のコンディションが十分に上がってこない印象もあります。(練習)試合中の怪我は避けがたいアンラッキーではありますが、今で言えば、ウヴィニ、渡辺、東あたりはコンディション不良組の例になるでしょうか。
この視点で見ると、現在FC東京では「フィジカルコーチ」「フィジオセラピスト」「マッサー」「アスレティックトレーナー」という名称で、コンディションアップや怪我の防止などに努めるスタッフを抱えていますが、過去3年と今季で異なるのが「コンディショニングコーチ」の不在。
18~20年までは、上松大輔さんがコンディショニングコーチ(18、19年はコンディショニングアドバイザー)として在籍していましたが、20年を持って退任。今季は、スタッフ陣からこのポストが消えています。
サッカーに限らず、スポーツ科学の進歩はそのスピードが著しく、コンディショニングについても、考え方や手法はほんの5年前と全く別のものになっていると見聞きします。トップオブトップのクラブでは、選手一人ひとりのコンディションを日々、精緻に分析し、全体練習以外のメニューや強度をそれぞれで、それこそ、一人ひとり変えることで、コンディションの差にばらつきが出ないようにしている、という記事もどこかで読みました。
こうしたコンディショニングの部分に上松さんがどれだけ関与していたかは全く分かりませんが、「一人ひとり、より細かく」がコンディショニングケアの基本になっている昨今、単純に人手が一人減ったままが好ましいとは思えません。これも、クラブ収支悪化の影響が人件費に及んで…なのかは想像の域を出ませんが、長谷川監督が求める激しさ、走力を担保する人選に手を惜しんだまま、という状態は、避けなければいけないと思います。
4:戦力の見極め
G大阪時代、チームの右肩下がりを防げなかった一面に、「代わり映えしないスカッド」があった印象を、今も強く持っています。もちろん、当時のG大阪の主力は、軒並み代表クラス。各々が持てる力を発揮できてれば…という捉え方もありますが、クラブ全体でのチームマネジメント、長谷川監督のアプローチに陰りが見え、各々が持てる力を出せなくなっていたのでは?と、当時外野から眺めていたところ。
Jリーグに限らず、盛者必衰が激しい今のサッカー界において、5年以上指揮を任されることは、まれになってきました。で、長期政権と言えば、海外サッカーになりますがマンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソンがパッと思いつきますが、ファーガソンが20年余にも渡って1つのクラブを率いてこられた理由の一つに、「ドラスティックな放出(&補強)」があると思っていまして。ネームバリューは問いません。誰であろうと、その時々においてチームの意にそぐわない、チームの戦術にフィットしない、チームのために戦えない・走れないとファーガソンが判断した選手は、問答無用にチームを後にしていました。
これには2つの狙いがあると考えます。1つが「監督の威厳の確保」、もう1つが「チームのベースライン維持」。前者は、誰がボスであるかを常にはっきりとさせつつ、マンチェスター・ユナイテッドというチームが、各選手のエゴのためではなくファンのためにあることを、こうした選手放出を通して常にメッセージとして送り続けることで、監督・選手・ファンを常に忠誠心で結びつける狙いがあったのかなと。
そして、後者。私はそこまで戦術論に明るくはありませんが、それでもファーガソン時代のマンチェスター・ユナイテッドは、良くも悪くも「変わらない戦術」のもとで歩みを進めていた印象があります。晩年は、それこそ「古臭い」などといった批判にさらされた記憶も。それでも、マンチェスター・ユナイテッドが世界のトップオブトップとして戦い続けてこられたのは、常に選手を、しかも、主力級を躊躇なく入れ替えることによってマンネリを避けてチーム内に競争を生じさせる。かつ、勤続疲労による個のジリ貧を防ぐといったことが高いレベルで行えていたからではないでしょうか。
長谷川監督も、タイプで言えばどっかり腰を据え、人心掌握に長け、ワン・タクティクスで戦うファーガソン型。そんな長谷川監督を来期も続投させる。もしクラブがこの決断を下すのであれば、同時に、選手構成の大きな変化は絶対に必要です。人件費の圧縮も考えながら、先の名古屋戦@味スタで見せたプレーをフルシーズンピッチで表現するために、誰が必要で、誰が必要ではないのか?ドラスティックな、プロフェッショナルな判断が求められるでしょう。
そんな来季の人選について、思うところはありますが、今日はもう長くなりすぎたので、また次の機会に。
先日、ミクシィが東京フットボールクラブの取締役会で新たに株式を取得することが承認され、必要な手続きを踏まえたうえで、筆頭株主となり、経営権を取得することがほぼ確定した、との報道がありました。
来季は、心機一転のシーズンになりそうです。そんなシーズンを、新たな体制で迎える「リスタート」とするのか、長谷川体制の持ち駒を動かした「リビルド」とするのか。今はただ、クラブの判断を待つばかりです。