続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

2023年 J1第9節「意図は見えた」

 リーグ戦で4試合勝ちなし。この流れを食い止めるために、好調広島に対してどのような意識をもって試合に臨んだのか。

 

 

 結論から書けば、開始5分で手にしたセットプレーでの得点が試合の趨勢を決めたような印象。ただ、それで終わってしまっても仕方ないので、続けます(笑)。

 

 ベン カリファがボールの方向を限定し、満田・森島の2シャドー&東・越道の両ウイングバックが反応する。そこから漏れたボールには野津田、川村の2センターが対応し、佐々木・荒木・塩谷の3バックはきっちり人を捕まえておいて、個の強さで対応する。東京の攻撃に対する広島の守備は、おおむね想定通りでした。そして、90分トータルで見れば、広島の守備は東京の攻撃を一定以上阻害したと言えるでしょう。

 ただ、東京も意図を持って試合に臨み、それが実った部分もあったと感じていて、1つは「トップ下の出し入れ」、もう1つは「ウイング選手の立ち位置」だったかなと。

 そもそもから。リーグ戦では前節から中盤が2センター+トップ下の4-2-3-1をベースの立ち位置として試合に入っています。前節のC大阪戦を見ていて、中盤逆三角形の4-3-3から改善したなぁと思ったのが「サイドバックにボールが入った時の周りのサポート」でした。単純な話、中盤逆三角形の4-3-3だと、サイドバックにボールが入った際、縦にはウイング、斜めにはインサイドハーフがいるけど、アンカーが適切な距離の横位置まで来てくれるかはアンカーの意識と動きの質次第という側面があります。

 改めてここで、サイドバックの視点(視野)を想像すると、タッチラインを背負いながら、自分の斜め後ろ(CB)からボールが来る。と同時に、自分に向かって相手がボールを取りに来る。この時に、タッチラインを背にしてボールを持った時の正面、つまり、攻める方向から見てボールホルダーの横に味方がいない、あるいは遠いと、そこで瞬間迷いが生じて、ボールが止まってしまうケースが増えてしまうと思うんですが、残念ながら東は、このサイドバックへのサポートについては及第点以下だったと言わざるを得ませんでした。

 一方で中盤が2センター+トップ下の4-2-3-1だと、縦にはウイング、横にはセンターハーフがスッと立てる。そこにプラスで、トップ下がどう考えるか?という立ち位置になります。相手のマークあるなしはあるとして、構造的にサイドバックがボールを受けた段階ですでに横と縦(と後ろにCB)のパスコースはある。そのうえで、トップ下はサイドバックをサポートするもよし、他に任せて次の動きを考えるもよし。そこに個やチームの意図を感じることはできるはず。

 というところで、話を広島戦に戻して。この日、私が見た印象ですが、トップ下安部の判断は、特に前半適切なものの連続だったと感じています。割合で言えば、ディエゴの近くにいてサポートするor裏に抜ける方が多かったと思いますが、ビルドアップへのサポートも非常にスムーズでした。

 また、そんな安部の動きを引き出したのは両ウイングの立ち位置だったのかなと。左の渡邊は、むしろあなたがトップ下なの?というほど中に意識を向けていて、ある種フリーダムなポジショニングを見せました。ルヴァンカップのG大阪戦のように、そのフリーダムさがプラスに出ないこともありますが、この日は相手にとって厄介だったかなと。また、右の仲川は中村をサポートして外側にベースを置きながら、その足元のテクニックでボールの前進の貢献できていました。

 

 と、いかにも東京がやりたいことを上手くできていたように書いていますが、個のいい流れは前半30分まで。広島のスキッベ監督が試合後に

素晴らしいFKとカウンターからのゴールで2点リードされた。ただ、そこからは負けたことを説明するのが難しいぐらい良いサッカーをした。今日の自分たちのパフォーマンスは非常に満足しているし、それが90+4分まで続けてできたと思っている。

 と語りましたが、この試合を観た10人中9人はこのコメントに賛同するでしょうね、という展開がこの後待っていました。

 ここには2つの事象があったのかなと。1つ目はボール奪取の位置。ダゾーン中継ではハーフタイム、試合終了後それぞれにボール奪取位置(自陣のゴールラインから測って何mの位置でボールを奪っているかの平均位置)の比較画面が出ますが、

前半終了時

 東京:29.5m  広島:45.7m

 

試合終了時

 東京:27.9m  広島:40.9m

 という数字。前半から決してボール奪取位置が高くなかったわけですが、後半はさらに低い位置に。こうなると、何か自陣に押し込まれて苦しんで、ボールとってもカウンター決まらなくて…という風に見えがちで、まあ、実際そんな展開でした。ただ、これはベンチに最初からDF登録3枚、残りも東、アダイウトン、ペロッチという顔ぶれ込みで、「先制できた、あるいは前半リード出来たら最初からこういう後半にするよ」という考えは、アルベルの頭の中には合ったと想像します。希望を言えば、後半20分くらいまでは何とか攻撃の意図が前に出てよ、と思いますが、結果的にそうなった部分も含め、私は許容できる判断だったと見ました。

 もう1つは広島目線。今季の広島は「前半からハイプレッシング・アグレッシブなサッカーで相手を消耗させる⇒後半の勝負所でエゼキエウ、ソティリウ、ドウグラス ヴィエイラら特徴のある攻撃陣を投入して勝ち切る」という試合が多い印象ですが、この日は先発のベン カリファを45分で諦め、後半頭からドウグラス ヴィエイラを投入します。出場記録を見ると、先発の1トップを45分で下げたのはこの試合が初。これは完全に結果論目線の意見ですが、東京はこの交代を見てさらに、構える気持ちを持ったんではないでしょうか。

 いずれにせよ、90分すべてではないですが、大事なところでチームの意図・ゲームプランを感じることができた試合ではありました(見立てが合っているかは分かりませんが)。意図・ゲームプランが常に実行できる、あるいはハマるだなんて甘っちょろいことは思っていませんが、それが全くない試合を見せられる方がシラケてしまう派なので、今後もこっちが勝手に想像してしまうぐらいの試合を見せてほしいと願うばかりです。

 

 最後に、久々に1試合単位で振り返られたので、簡易採点&一言を。採点は点数ではなく「◎>○>△>×」で表しています。

GK ヤクブ スウォヴィク ○

 被シュートは多かったが、それほど危ないシーンなし。

 

DF 中村 帆高 ○

 開始早々のイエローは全くいただけないが、それを補って余りある1ゴール1アシスト。ハードワークの火は消さずにこの後も。

 

DF 森重 真人 ○

 前節C大阪戦で完全にお目覚め。このパフォーマンスなら、不要論が不要。


DF 木本 恭生 ○
 中盤を飛ばすトップ下orトップへのグラウンダー縦パスは見どころあり。本編ではネタにしなかったが、4-2-3-1にしてから生まれたプラスの1つ。


DF 徳元 悠平 ○

 渡邊やアダイウトンが自身の役割に集中できるのは、徳元のおかげ。カシーフが復帰のプログラムに乗ったが、今の彼を起用しない手はない。松木不在時は、センターハーフでも・・・


MF 安部 柊斗 ○

 トップ下というよりは、フォアボランチのようなイメージも湧くプレースタイル。どんどん相手陣で存在感出してほしい。

 

MF 小泉 慶 ○

 私にとって小泉は、もはや「保守点検業者」。最高の委託先です。

 

MF 松木 玖生 ○

 前半、審判に食って掛かる森重をいさめた場面がやけに印象的。このリーダーシップは大したもの。U-20ワールドカップでも頑張ってほしいが、そのうち訪れる不在期間が痛いは痛い。

 

FW 渡邊 凌磨 ○

 良くも悪くも、与えられたフリーダム。この試合は大いにプラスに出た。

 

FW ディエゴ オリヴェイラ ○

 できる限り、ハイボールで競るのではなく、相手を背負って受けようとする工夫は見ていて面白かった。

 

FW 仲川 輝人 ○

 何度か「いや、今どうやって!?」というトラップを披露。周りとの距離感も良くなってきたし、いよいよ本領発揮の時がきた。

 

DF バングーナガンデ 佳史扶 △

 復帰戦はもろもろのリスクを踏まえてのサイドハーフ起用。さすがにこの試合は試運転感が強かったが、徐々に戻してくれれば。

 

DF 長友 佑都 ○

 自分が投入された理由・役割を体現できるのは、地味に立派。コーチ業も立派(笑)

 

FW アダイウトン ○

 全体が引いて守る中、頼むぞ、アダイウトン!感をより感じられた試合。実況に「それ追いつくんかい!」と言わせるのは、なかなかなない。

 

DF エンリケ トレヴィザン ○

 クローザー役を完遂。この日は、この一言で十分。

 

MF 東 慶悟 ○

 現状、トップ下で安部のような働きができないのであれば、クローザー役を全うするべきでしょう。 

 

監督 アルベル ○

 ようやく「言い訳できない」陣容が戻ってきたなか、自身の意図をピッチに落とし込み続けられるか。5月は勝負だと思う。