Voice of OKINAWA
FC東京の沖縄キャンプ。国頭村でのクールが終了しました。
アルベル監督の下、新たなスタイル構築に向けて日々トレーニングに励む映像は(もちろんほんの一部ですが)公式SNSで見ることができ、広報の方の愛されキャラもあってか、和やかな姿ものぞくことができていますが、合わせて、オフィシャルサイト内から閲覧できる「F.C.TOKYO FANZONE」にて、選手のインタビュー記事などを読むことができます。
始動日から毎日誰かのインタビュー記事が掲載されていて、相当興味深く読んでいるところですが、各選手のコメントはトレーニングを経るごとに変化していると感じます。
始動日直後は、まあ当然といえば当然ですが、アルベル監督のやり方について、選手からは異口同音に「ボールを大事にする」「ポジションを意識する」「切り替えを早くする」という大雑把なイメージしか語られませんでした。しかし、日々アルベル監督の考え方を吸収する中で、各々から一歩踏み込んだ、より具体的なイメージも聞かれるようになりました。
その変化も踏まえながら、今想像しうる「アルベルイズム」を妄想してみよう、というのが本日の狙い。こういう考え方もあるんだなぁ、くらいでお付き合いいただけたらこれ幸いです。
国頭では主に攻撃面にフォーカスしたトレーニングが多かったとのこと。その中で、まずはセンターバック陣のコメントから。
<森重 真人>
Q、今の段階でセンターバックとして監督から求められていることはありますか。
A、センターバックとしてということではないですが、チームとしてテンポ良くボールを回す、スペースを見つけて広い方へ、広い方へ…人が動くというよりは、しっかり人から人へボールを届けるということを意識したトレーニングが多いので、そういったところも楽しんでやっています。
Q、ポポヴィッチさんや城福さんのときのサッカーとアルベル監督がめざすサッカーの違いを教えてください。
A、ポポさんや城福さんがやってきたことに似ている部分はあります。アルベル監督はどちらかというと、そこまで動きすぎなくていい、ポジションをしっかりとって、そのポジションをとった選手から選手へしっかりボールを運ぶことができれば、よりいい攻撃ができる、よりいいサッカーができるというスタンスです。人が動いてボールポゼッション、というよりは、いるべき場所に人が立って、そこにボールを届ける、その連続でゴールをめざすというところは新しい発見だと思っています。
(1/21 WEB囲み取材記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/57)より)
<木本 恭生>
Q、アルベル監督はボールの受け方や体の向きなど細かく指摘をされていると思います。
A、体の向きであったり、常に周りを把握してからプレーするというのは昔から意識付けされていたので、そこまで難しさは感じていませんが、改めてそうした基礎の部分の大切さは感じています。
Q、最終ラインから組み立てるためにはセンターバックからのパス出しが求められます。この点で気をつけていることを教えてください。
A、センターバックはボールをもつ時間が長くなると思うので、自分たちが早くボールを回した方がいいのか、それとも自分がボールをもって前に運びながら時間を作った方がいいのか、その見極めが大事だと感じています。
(1/24 WEB囲み取材記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/63)から引用)
ポジショナルプレーにおいて、まず何よりも優先されるのは一人ひとりの立ち位置。それがしっかりと取れたうえで、ビルドアップにおいては出し手が相手の守備状況を見ながら、受け手となるべく胸を突き合わせた状態でパスを交換し、「ゆっくりと」前進していく――今のところ、自陣での攻撃のプレーに関してこんなイメージを持っていますが、森重や木本のコメントからは、おおむねイメージのズレがない印象を受けました。
ではその1列前、センターハーフはどう見ているか?
<安部 柊斗>
Q、ポジションについては周りの選手に合わせてバランスをとっていたのでしょうか。
A、そうですね。レアンドロは決定的なパスを出せるので、レアンドロがいい状態で前を向けるようなポジションを自分がとって、レアンドロのサポートもできるし、レアンドロがフリーで前を向けることを意識しながらやりました。相手のボランチが、自分とレアンドロを1人でマークできてしまうというシーンもあったので、そこはもっとコミュニケーションをとって、監督にも聞いて合わせていければいいと思います。
Q、後ろからボールをつないでいくなかで、ハーフスペースで受ける選手も多く、ポジショナルプレーの片鱗が出てきているように感じます。
A、下がってボールを触りたい気持ちはありますが、それをすると意味がなくなるので、我慢して、任せて前に行った方がよいという話はしていました。
(1/22練習試合後インタビュー記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/58)から引用)
立ち位置、という目線に立った時に耳目を引くのが後半部分。よくあるビルドアップ時の動きとして、「両センターバックが幅を取った間にセンターハーフが下りてきて3バック化する」パターンがありますが、安部のコメントはその逆を行くもの。ここから想像できるのは、中盤が正三角形のパターンの動き方。
レアンドロのキャラクターを最大限生かすならば、中盤はセンターハーフ2枚+レアンドロが基本形となるでしょう。アルベル監督は新潟でも、トップ下に高木 善朗を置く形をベースにしていたようですし。そうした際に、センターハーフに関してはビルドアップに加担する人とそうでない人を明確に分け、現時点で安部はビルドアップに加担しない側の役割を与えられているのではないか?シンプルに想像すれば、こんなところでしょうか。
一方で、ビルドアップにおける自陣での数的優位をシンプルに作りづらいのが中盤を正三角形にした時のネックだとも思っていて、さて、ここをどう解消するのか?その答えは、サイドバック陣のコメントから見い出せそうです。
<鈴木 準弥>
Q、試合に臨む上で考えていた課題などはありましたか。
A、アルベル監督には、サイドバックが中に入っていくこともどんどんチャレンジしていってほしいと言われているので、それはやっていきたいと思っていました。自分の前にいる選手や、自分の横にいるボランチの選手の特徴や関係性を踏まえながら、自分の良さを出していこうと思ってプレーしました。
(1/23練習試合後インタビュー記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/61)から引用)
<中村 帆高>
Q、周りの選手の立ち位置に合わせてポジションをとったり、中村選手は理解が早いと思いますがどう感じていますか。
A、最初の実戦形式のときは、周りの選手との関係で自分が外に張るしかなかったので、求められていることとは違ったと思います。そこからミーティングでも修正してきたので、試行錯誤してきました。今日も決して機能していたわけではないので、ここで出たイレギュラーをチームで話し合っていけば改善の余地はあると思います。課題は出る分だけ成長できると思います。
Q、これまでインサイドでプレーする機会は多くなかったと思いますが、それも成長の余地ということですね。
A、自分がもうひとつふたつ上にいくには必要になってくる能力だと思いますし、これを知らないままだったら、身体能力任せや気合い頼りのプレイヤーになってしまっていたと思います。今の自分の能力にアルベル監督から求められる能力をかけ合わせられれば、個人として上にいける可能性は出てくると思うので、すぐには難しいと思いますが、徐々に自分の能力にかけ合わせていきたいです。
(1/26練習試合後インタビュー記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/66)より)
<岡庭 愁人>
Q、アルベル監督のサッカーはサイドバックにもタスクが多く、頭を使うことが多くなります。
A、やってはいけないプレーや判断があるので、それを除きながら局面を打開したり、プレッシャーを回避したり、よりゴール前に入っていくことが求められているので、そこを意識して取り組めています。
(1/27インタビュー記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/70)より)
<小川 諒也>
Q、昨シーズンは中に入るということを自分の判断でやっていたと思うのですが、今シーズンは相手の立ち位置によってどうプレーするのか、具体的な指示はされていますか。
A、そこまですべて型にはめてというわけではなく、自分たちが考えるアイデアを尊重してくれています。言われていることといえば、自分の前がアダイウトン選手だったとしたら、自分とアダイウトン選手が縦でかぶらないように、自分が開いているならアダイウトン選手が中に入るとか、その逆とか、かぶらないようにとだけは言われています。
Q、同じレーンでかぶらないようにとは言われているわけですね。
A、そうですね。選手の距離感とレーンがかぶらないということはすごく言われています。
Q、今年は状況によって中に入ってプレーする機会が増えてくると思いますが、その時に昨シーズンの経験が応用できるのではないでしょうか?
A、中に入るプレーというのは、そこまで自分にとって窮屈なイメージはないので、流れの中でプレーできると思いますし、昨シーズンに右サイドでやったというのを生かせると思います。
Q、レーンや立ち位置の話がありましたが、このサッカーではサイドバックが司令塔であったり、多くの役割を求められると思いますが、そこはどう感じますか。
A、サイドバックのポジショニングはすごく求められます。受けてからオープンに持つ持ち方についても言われます。サイドバックから攻撃がはじまる形が多いと思うので、そこは自分が舵を取らないとチームが上手くいかないなと感じます。
(1/28 WEB囲み取材記事(https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/72)より)
小川の取材記事はぜひ全文お読みください!と推せるほど面白かったんですが、総じてサイドバック陣には「機を見て中に入る」「レーンを意識する」、この2つが強く求められていると窺えます。
サイドバックが中にポジションを取り、センターハーフのように振る舞うタスクは「偽サイドバック」と称して市民権を得つつあり、Jリーグでもポステコグルー監督が横浜Fマリノスで多用したことが目につきましたが、アルベル監督もそうした動きをサイドバックに求める模様。そうすると、件のビルドアップ時の数的優位の確保については、例えば…
という立ち位置を取りながらトライアングルとレーンを意識することでスムーズに行うことができる、と言えるでしょう。もちろん、サイドバックがともに中に絞ってセンターハーフ化し、センターハーフは片方がセンターバックの間に降りる、もう片方が敵陣の攻撃に加担する、という動き方もあるでしょう。いずれにせよ、出し手から見て常にパスコースが(最低でも)横、縦、斜めの3方向、しかも、相手のプレスラインの前後両方にあるような立ち位置を全員が連動して取れるか?が、恐らく勘所。その実現のために、今選手から聞かれるような動き・意識がどんどん高まっていってほしいと感じるところです。
妄想ついでにもう一妄想。次は敵陣でのお話し。
小川のコメントの中に「言われていることといえば、自分の前がアダイウトン選手だったとしたら、自分とアダイウトン選手が縦でかぶらないように、自分が開いているならアダイウトン選手が中に入るとか、その逆とか、かぶらないようにとだけは言われています」というものがありました。
偽サイドバックを初めてチームメカニズムに落とし込んだ(と言われている)ジョゼップ・グァルディオラ率いるバイエルン・ミュンヘンも、先に名前を出したポステコグルー率いる横浜Fマリノスも、ウイングプレーヤーには「タッチライン沿いに張らせてスペースを与え、積極的にアイソレーション(1対1)を仕掛ける」タスクを与えていました。そして、バイエルンにはアリエン・ロッベン、フランク・リベリ、ドウグラス・コスタ、キングスレイ・コマンが、横浜FMには仲川 輝人、遠藤 渓太、マテウスがいて、そのタスクを高いレベルで遂行していました。まあ、「大外のレーンには意図して1人しか置かない」ことを原則にするとして、ウイング然の振る舞いをそのままウイングプレーヤーがするのか、サイドバックが思い切って高い位置を取ってするのかは、対戦相手の特徴や試合の流れ、その局面によってどちらでもいいと思いますが、ここまでの各選手のコメントを見ると、大外のレーンに意図して置かれることが多いのは、ウイングプレーヤーになるか?という印象を受けます。
そこから翻って東京。今季の陣容でウイング的な振る舞いができそうなのはアダイウトン、ディエゴ、渡邊、紺野あたり。東、内田、三田あたりは…ちょっとイメージがズレる気がしますね。で、カットインしてのシュートまでイメージするなら、左はアダイウトンと渡邊、右はディエゴと紺野でその座を競わせることになるでしょうか。いずれにせよ、これまでのFC東京が見せてきたサイドアタックとはかなり趣が異なることはほぼ確定。最初は見慣れないかもしれませんが、ハマった時の爽快感は、恐らくなかなかのもの。そうしたシーンを1つでも多く見られることを期待してやみません。
今日はいわゆる4-2-3-1を前提としていろいろ書いてきました。ただ、文を進めていくうちにどんどん「待てよ、これ4-3-3の方がハマるんじゃないか?」とか、「内田はサイドハーフ!って前に書いたけど、このタスクならサイドバックでもイケるんじゃないか?」とか、「長友、ウイングで勝負させてみたいな」とか、別の妄想も湧いているところ。特に「長友ウイング説」はそうとうアリだと思っていたりしますが、それはまた別の機会に。チームにはその姿で、クラブにはその声で、どんどん素人ファンの妄想を掻き立ててもらいたい!と結んで、本日はおしまい。