続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

パーソナリティ

 蔚山現代戦については、まあ「悲喜交々」ということで。家に帰って録画を見直したら、2点ともそりゃポポヴィッチ監督が怒ってもしゃーないなと思いますが、トータルで見れば十分伍して戦えていたわけで、悲観的になる必要はどこにもないでしょう。
 そんな試合内容よりも、BS朝日での試合後インタビューが面白すぎたのでちょっと紹介したいなと。全文書き起こしてみます。

Q:今日の試合はいかがでしたか?
A:相手にプレゼントしてはいけないモノをしてしまったという印象です。ある選手に関しては、今日の試合についてしっかりと反省しなければいけない。もう1回振り返ってみて、改善点を振り返ってみなければいけない。森重については、こういったプレーを続けるのならば、どこに行ってもプレーできない。

Q:チーム全体の課題については?
A:改善点というよりも、今日はいい試合を見せられたと思う。質を上げて次につなげていくことが大事。あとは経験。経験を積んで成熟していくこと、それがうちのチームには足りないところ。今日の相手のサッカーを見ていても、蹴られてそれがチャンス、点につながった。うちはしっかりとつないで、自分たちのサッカーをしようとしていた。そこは評価できる。

Q:今日はホームで大きな声援があったが?
A:今日だけではなく、たくさん大勢の方に熱い声援を送っていただけている点は最高。試合に関しても両チーム合わせて4点入ったという、お客さん、サポーターにとっては面白い試合になったかもしれないが、私たちは反省しなければいけない部分もあるし、修正していきたいと思う。

 これだけ見たら、まあ普通のインタビューですが、実は2つ目の質問を受けた直後、急にテンションが上がったんです(かなり怒気を含んでいた)(映像見られる方は是非)。これはおそらく、試合直後に課題や反省といったマイナスの事を聞こうとしたインタビュアーに対して怒ったんだと思っていますが、実は私もこの手の質問は大嫌いでして。100歩譲って負けた時にこの質問をするのならまだしも、勝ったり引き分けたりした時にこういった質問をして、一体あなたは監督(選手)から何を引き出したいのか?何を言わせたいのか?というのが、いつまで経っても理解できないんですよね。実際、ポポヴィッチ監督も質問とは全く異なるポジティブな点を口にしました。チームとしては悪くなかった。あなたはどこを見ていたんだ?そんな怒りに見えました。この答えの中での「経験」「成熟」というのは、チームにではなくインタビュアーに向けて放った皮肉なんじゃないか?とさえ思いますし。ただ、勘違いしてほしくないのは、試合直後のインタビューでこの手の質問をすることが嫌いなのであって、その後の公式会見においてこの手の質問をすることは、もちろん必要だと思います。私たちも収穫と課題の両方を知りたいですし。ただ、その際も抽象的に「この試合の課題は?」「この試合の反省は?」とだけ聞くのは、正直記者の怠慢。自分の目で90分試合を見たわけですから、その人なりのサッカー観による感想・印象はあるはずで、それを基に「私はこう見えたけど、それについてはどう思うか?」という聞き方をしないとダメなのかなと思います。
 日本語は「言外にこそ真意がある」と言われることもある独特な言語。日本人同士であればその言外を上手く汲み取り、抽象的な聞き方をしてもある程度の答えが帰ってきますけど、外国人監督にそれは通用しないわけです。まあ、塚田通訳が汲み取って訳してくれることもあるでしょうけど、そこに期待するのは論外ですし。で、1月28日の新体制発表会の際に、TOKYO MXの応援番組「F.C.TOKYO魂」に出演しているジョナサン・シガー(東京ファン以外が読むことを想定して丁寧に紹介w)が、「監督がファンやマスコミに望むことは?」という質問をしました。そのときは確か「皆さんももっとサッカーを勉強してほしい」という類の回答をしたという記憶があります。ポポヴィッチ監督が広島・ペトロヴィッチ監督(現・浦和監督)のコーチとして日本に来たのは2006年。その後大分、町田、そして東京と指揮を取る中で、おそらくまだまだ日本のサッカーが世界に追いついていないシーンを見てきたはず。その中に、マスコミ・ライターの見識の低さというもの含まれているはず。決して私が高尚な意見や優れた見識を持っているわけではないし、別に誰かを名指しで卑下したいわけではありませんが、遡れば中田英寿さんが取材をすごく嫌がったのも、程度の低い(と中田さんが思った)質問や歪曲された(と中田さんが思った)記事の記載などが原因なわけで。その当時と比べれば、日本のサッカーマスコミも成長しているとは思いますが、まだまだ成熟するには道遠しという印象を、この場面から感じざるを得ませんでした。


 しかし、ポポヴィッチ監督は「怒り」という感情、「叱る」という行為の使い方がものすごく上手いなと。よく「アメとムチ」なんて言葉を用いて、褒めと怒りのバランスを問うことがありますけど、怒る・叱るってすごくタイミングが難しいというのは、日常生活の中で皆さんも十分お分かりだと思います。そのタイミングを間違えるとなかなかにめんどくさくなる、そういった経験をされた方も数多いはず。じゃあ、なんで怒られた、叱られた側はそれに腹を立てるのか?それは様々なケースがあると思いますが、その中の1つに「言う側の一貫性の無さ」というものがあるのかなと。ある時はこのことで褒められたのに、別の時には同じことをして怒られた。ある時はそんな見方で物事を言ってなかったのに、別の時に急に基準を作られて叱られた。これをされると、受けた側は「理不尽やなー」とか「え?え??」という風に受け取り、その怒りや叱りが全く効果なしとなってしまうケースがあると思います。翻ってポポヴィッチ監督の言動を見ると、その基準に全くブレがないんですよね。「私がこう言っているのに、そうしなかったから怒った」「私がこういう目的をもって組んだメニューをこなさかったから叱った」、至極単純な話ですが、一貫性を保っていて、かつそれが結果としてプラスの方向に働いているケースが多いとなれば、選手もその怒りや叱りに納得するほかないでしょう。ハーフタイムの「ゲキ」が効くのも、そのせいなのかなと。
 一貫性のブレなさは、ここまでの公式戦5試合の試合後記者会見、その冒頭部分(自身の意見を述べるターム)からも読み取れます。以下、J’s GOALより引用。

FUJI XEROX SUPER CUP
 こういう結果なので心から楽しむ事はできなかったが、キャンプが終わり初めての公式戦という事を考えれば、必ずしも悪くなかったと思う。試合を通じて私たちが主導権を握りプレーできたと言う事はできる。フィニッシュの精度を欠き、結果につなげる事はできなかったが、見ていた皆さんにも何を目指しているのかは示せたと思っている。サッカーには勝ち負けがあるので、今日は最後のところで運が足りなかったという事。柏は前半1本目のシュートでゴールに結びつけて、3本目のシュートで2点目を奪った。それが経験の差だと思った。今日の結果は、素直に柏におめでとうと伝えたい。
 今日の試合の中であげられる課題としては、自分たちのミスからピンチを招いてしまった事。そこは修正していかなくてはならないと感じているが、シーズンは長いので、これからひとつづつ着実に積み上げていきたいと感じている。今日の試合前に、『今日はいいサッカーを見せて日本中にプロパガンダする』と伝えたが、ご覧頂いて分かる通り、皆さんが満足いく試合を見せる事が出来たとは思っている。ただ、もちろん今日の結果に満足する事はないし、まだまだここから続いて行くわけなので、しっかりと課題を修正して次につなげていきたい。

ACL 第1節
 ありがとうございました。今日はすごくいい試合になりました。皆さんも楽しんでいただけたのではないかと思います。選手たちが非常によくやってくれたことを誇りに思っています。そして、日本人の皆さんも今日の結果に誇りを持てるのではないでしょうか。今日は非常にスマートでインテリジェントな試合展開になりました。監督としても選手たちが良いプレーをしてくれたので、良かったと思います。残念なのはすごくいいスタジアムだったので、もう少しお客さん(1万2037人)が入ると良かったということでしょうか。

J1 第1節
 素晴らしい試合だった。特に30分まではああいう展開でしたので、そこから勝利に結びつけた、本当に素晴らしい試合だった。最初の30分、我々はまだ目が覚めていなかった。相手のほうが素晴らしいサッカーをしていた。自分たちのミスから決定的なチャンスを作られたのを、権田がしっかり防いでくれた。どうやって防いだのかは、権田にしか分からない(笑)。前半の残り15分からはボールを動かせるようになって、自分たちのサッカーができるようになってきた。そして後半は、どちらもハイテンポで、攻撃的でオープンな良い試合になった。選手には『長時間の移動もあったが、それは頭の中から捨てろ』と言った。『試合に対して最高の準備をしよう』と言い続けて、それが実際に後半に入って運動量でも相手を上回り、我々が進化していることを証明してくれた。あれだけチャンスを作られながら、幸運にも助けられたところもあるが、後半は素晴らしいサッカーをして、観客も満足してくれ、楽しんでくれたと思う。
 これからも、試合を通じてゲームを支配する魅力的なサッカーをやっていく。その継続のためにこの試合を生かして、次につなげたい。先週は雪も降って、移動もあって、トレーニングは十分に積めなかったが、また明日から修正点を改善していきたい。まだシーズンはここで始まったばかりで、疲れたなんて言っていられない。良い準備をしたい。

J1 第2節
 コンバンハ。今日の結果に関しては、これ以上ない結果でした。ただ、自分が理解できないのは、なぜ、後半のプレーを最初から出来なかったのかということ。前半は相手に対する敬意を示しすぎていた。それが私には理解できなかった。自分たちのやるべきこと、自分たちの力を遠慮して出せなかった。自分たちの力を出せれば、後半のようなプレーをできることは私には分かっていた。それが前半からできないといけなかった。試合を振り返ってみると、ファン、サポーターの皆さんには満足していただける試合だったのではないでしょうか。点を取り合うオープンな試合となったと思います。
 前半に関しては、相手のほうが私たちよりもボール支配率でも、動き出しでも上回っていたと思います。ただ、後半、私たちの目が覚めてからは自分たちのサッカーを貫くことができた。最終的には相手よりも多く得点を奪って勝てた。スペクタクルな試合だったと思います。私が目指しているのは、毎回、毎試合、お客さんに愉しんでいただける魅力的なサッカーをすることなんです。今日は、それをお見せすることが出来たと思っていますし、観にきたお客さんには満足していただけたと思います。私は、本当は短く終わらせたいんだけど、通訳が付け加えて話すものだから、ついつい長くなっちゃうよ(一同笑い)。では質問どうぞ。

ACL 第2節
 コンニチハ。まず心を落ち着かせなければいけないと思っています。今日は結果、内容に怒っているわけじゃない。ある選手、何人かの選手は、試合が終わる前から終わったと思っていた選手がいた。このまま10試合ぐらい当然のように勝てると思っていた選手がいたことに怒っています。相手も、素晴らしいチームでした。前半は守備を固めて、インターセプトしてカウンターという戦術を取ってきました。後半は、自分たちのリズムで出来たと思っていますが、単純なロングボールから放り込まれて2失点してしまった。その時間帯で3点目はいつ入るんだというぐらいボールを握ってボールを動かして自分たちのサッカーができていた時間帯でした。それなのに、あまりにも簡単な形で失点してしまったことは残念です。ただ、アジアのトップレベルのチームに、試合をコントロールできたという点では満足しています。ただ、私たちには、90分間で勝ちきるという経験が我々には足りなかったと思います。他の内容、結果に関しては、私はポジティブに捉えていますけどね。

 いずれもそれぞれ違う言い回しですが、「魅力的なサッカーで、お客さんを楽しませる」「自分たちが試合を支配(コントロール)する」「相手よりも動く」「経験の足りなさ」「いくつかの課題」を一貫して述べています。練習でも今は同じことを口酸っぱくいい、同じ練習を飽きるほど繰り返すことで自分のポリシーをチームに植え付けようとしていますが、選手からは半分冗談、半分本気で「怖いっすよ」というコメントが出るほど怒る場面では躊躇がないようで、しかし「ブラボー、欲しいっす」と褒めに対しての反応も素直かつ敏感に聞こえてきます。こうやって似たような課題と手応えが(しかしそれぞれの言葉で)出てくるのは1つ同じ方向を向けている証拠。わずか2か月ほどでここまでチームの一体感を出すのは容易いことではないと思いますが、喜怒哀楽全てを駆使してここまで持ってきたことは、素直に評価したいと思います。