続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

求ム、先制点。望ム、周到ナ準備。

 1つ前のエントリでは「先制点」にまつわる簡単なデータを用いて、ちょこちょこ書かせていただきました。その中で、東京は「先制したら無類の強さを発揮するけど、そもそも先制できていない」という結果が見て取れました。そんな結果よろしく、9/5ナビスコも含めた直近5試合連続で先制点を奪われています。
 なぜ、先制されることのほうが多いのか?そのことを端的に、ズバッと説明することは不可能だと思っています。その時々の試合展開、双方が置かれた状況はそれこそ千差万別で、ゴールも意図的なものがあれば偶発的なものもあり、断定して挙げられるような要因を探すことは難しいですから。ただ、「遠因」となるようなことはあるんじゃないか?そうでなければ、ここまで先制点取られ続けないだろ〜と思い、いろいろ思いを巡らせてみました。その結果、「独りよがりになっていて、準備が足りないのではないか?」という結論に至りました。


 始動日間もない1/30にシーズンプレビュー的なエントリを書いたのですが、その中でこんなことも書きました。

 まずスタッフでパッと目に入ったのが分析担当とフィジオセラピストの文字。分析担当の近藤大輔さんは、06年から昨年まで普及部コーチとして主にスクールでの指導をされていたようですが、コーチ陣のページにも書いてあるとおり、大学院時代にJFAの指導者養成に携わった経験があり、32歳にしてすでにJFA公認B級ライセンス、JFA公認キッズリーダーインストラクターを取得しているとのこと。また、韓国語通訳として加入した安竜鎮さんも昨季は湘南にて通訳兼分析を担っており、今季東京でも恐らく分析に加わってくるのではないかと思います。今季はACLに出場することとなり、3〜5月の3ヶ月間で20試合近くをこなさなければいけないスケジュールとなりました。つまりは、試合と試合の合間の大半をダウントレーニングやフィジカル調整に充てざるを得ない状況となり、相手チームのスカウティングについてはこれまで以上に緻密に行い、その結果をいかにピンポイントかつ手短にチームに落としこめるかが1つの勝負となってくるはず。また、ポポヴィッチ監督は相手に合わせるのを嫌うタイプだと聞きますが、だからと言って相手を知らずに立ち向かうのは、現代のサッカー界においては無謀の一言。さらに、昨年度は事前のスカウティングが全く役に立たないほどの奇策をかまされることが1度や2度ではなかったと聞きますが、J1やACLでそこを心配する必要はないはず。この3点から、分析部門を強化するためのこの2名の招聘については、個人的には大歓迎の一言です。

 昨季までも誰かしらは担っていたであろう分析担当をきっちり肩書きつきで1人入閣させ、チャンの通訳である安コーチも昨季は湘南で分析を担当していたということもあって、今季は「スカウティング」の部分で何か目に見える、大きな変化があると期待して当時は書きました。しかし、いざ蓋を開けてみれば、「ポポヴィッチ監督は相手に合わせるのを嫌うタイプ」という前評判どおり、相手がどうではなく自分たちがどうしたいのか?どうすべきなのか?どうだったのか?という目線ばかりが先行している印象を受けます。もちろん、「自分たちが…」という目線を全否定するわけではありませんし、むしろバランス的には「能動的≧受動的」であるべきだと思っています。それでも、先制され続けているここ5試合を見る限りは「自分たちが…」という目線に寄りすぎて相手のことを見ていない、独りよがりなサッカーになってないかい?と思うんです。
 例えば9/5清水戦。清水が「4−2−1−3がベースのポジショニングとなり、3トップのウイングは中外自由に出入りしてプレーして、SBも積極的に上がってきて、比較的アーリー気味でもクロスを入れてくる」というスタイルであることは、その前の数試合を見れば明らか。それに対し、東京は怪我人等の問題もありましたが、「広島、横浜FM戦で結果が出た」という自分目線の理由で3−4−2−1を継続しました。しかし、「横に間隔がある3トップに対して決して相性がいいとは言えない3バック」の噛み合わせの悪さをあっさり突かれて、立ち上がりから劣勢を強いられ、セットプレーからではありましたが先制点を許しました。その後、前半のうちに4バックに戻し、前半のうちに追いついたことは良かったと思いますが、「ならば、相手を見て最初から4バックにするという選択肢は1%もなかったのか?」という疑問は抱かざるを得ませんでした。続くリーグでの清水戦は割とオープンな(裏を返せばちょっとミスが目立った)試合展開となり、どちらに先制点が入ってもおかしくない展開だったので、これは特に問題なし。さすがにすぐのリターンマッチで同じことはしないよね、と。
 ひとつ飛ばして磐田戦。磐田は基本的なことをしっかりとできる、しっかりとやるソリッドな(かつ、好感の持てる)チームで、攻撃も「CBからの持ち出し」「ちょっと中へ絞り気味のSHかポストプレーの上手い前田に当てる」「そこで前を向ければ仕掛けるし、後ろや横向きながら相手が食いついて中に収縮すれば、すかさずSBが空いたサイドのスペースに駆け上がってきて選択肢を増やす」という端的な特徴をスッと挙げられます。特に山田と駒野の右サイドは、昨季の「レアンドロ・ドミンゲス−酒井」という柏の強力コンビに匹敵する破壊力を持ち(現在Jで最高の縦コンビだと思っています)、ここをどう止めるのかは1つのハイライトになりえるポイントでしたが、まあハッキリ言って、非常に残念ながら「ノープラン」だったかと。一応、山田のファジーなポジション取りや中への絞りについては椋原がついていくことは約束としてあったように思いますが、その次−山田が空けた外のスペースに入り込む駒野や前田の対応−については「その場しのぎ」がほとんどで、ルーカスが下がって見るのか、左ボランチ(主にアーリア)が開いて見るのか、CBが外へ出て見るのか全くハッキリせず。そのため、フリーになれた駒野に何度もやすやすと高精度のクロスを入れられてしまいましたし、椋原が引きずり出されたことで最終ラインが1枚減り、前田や松浦に応対しながら椋原のいないニアにスライドすることで逆にファーが空く(先制点はまさにこの形)というシーンも散見されました。その大元を辿れば、CBの持ち出しに対してエジミウソンのチェックが緩く、トップ下の梶山の役割も全く不明瞭だったことで簡単にやられてしまい、そこから全てずれてしまったわけで、もろもろ含めて「相手の攻撃に対する守備の準備」がまったくなされていなかったと言われても、反論できないパフォーマンスだったと思っています。ポポヴィッチ監督は試合後に「前半はいつもと比べると動きが鈍く固かった。なぜかは分からないのですが、後手に回ることが多かった。相手がとても良く我々より上回ったと言うよりは、私たちの動きが固かった前半だった。」と語りましたが、川崎戦の前半が良かったのは、川崎の守備陣がこちらの攻撃に対して全く対応できていなかっただけであって(後半修正を加えられたら、途端にノッキングを起こしたし)、ソリッドな磐田と対戦した後のコメントが「あの時良かったのに、今日はダメだったなんで…」という程度の低いもので足りるのか?と問われれば…推して知るべし。
 そして、極め付けが鹿島戦。磐田戦からのスタメン変更が複数個所ありました。しかし、渡邊の1トップはもう上手くいかないと思っている私にとっては悲報でしかなく、チャンの左SB起用も全くもって不可解。徳永をCBと見ればいわゆる「4CB」の並びとなり、例えばこの4枚が専守防衛を心がけ、目下絶好調の大迫、オン・ザ・ボール時の迫力に溢れるレナトドゥトラをしっかりと潰し、3列目以降からの上がりはMFラインがDFラインと協力してブロックを築いて、まずはしっかりと守備から入るという意図が明確に見て取れるならば大いに納得できるところでした。しかし、実際にはこれまでと全く変わらない守備思考のまま、ただ人を入れ替えただけ。案の定、本職はCBであるチャンのポジショニングはかなり不正確で、立ち上がりからCBとのギャップを突かれまくり。抜かれた後の戻るスピードも不足し、誰かがカバーに出ては、出たことで空いたスペースを使われたり、誰もカバーにいけなくてフリーでのプレーを許したり。そんなバタバタした展開の中で、スローインで集中が切れたところを突かれてあえなく失点。その後も立ち直るきっかけを全く見せないまま時間だけが過ぎ、終わってみれば1−5。虚しさだけが残る試合となってしまいました。ポポヴィッチ監督は試合後に「試合を振り返ってみると相手のやること全てがうまくいった。逆にウチはやりたいことがうまくいかなかった試合だったと思います。細かい局面でボールがこちらに転がっていれば、また先に得点を奪えていたら状況は変わっていたかもしれませんが、今日はそのようにならなかった。」と語りましたが、細かい局面でボールが自分たちに転がってくるように、先に得点を奪えるように準備できていたのはどちら?と問われれば…推して知るべし。


私は、こちらのエントリで、

 良くも悪くも上位と下位の力差がないJリーグにおいては、この多面性こそが生き抜いていく、勝ち抜いていくために必要な条件なのかもしれません。(中略)そのことを鑑みれば、今東京が、ポポヴィッチ監督がやろうとしていることは「歴史への挑戦」であり、「プロパガンダ」なんでしょう。その一方で、矛しか持たず、その矛を研ぎ澄ませることだけに注力するという多面性を否定するようなやり方が果たしてこのリーグで通用するのか、そして、チェルシーが見せたようなブロックディフェンスがパスサッカーに対する守り方として標準化しつつあり、そのチームが攻撃面でも水準以上のものを持っていたとき、「単純化」している今の東京がそれを上回る術を持っているのか、あるいは将来持ちうるのか、疑問を持たざるを得ないところもあるわけです。そして、サッカーにおいて私は多面性を好む側の人間です。

 と書きました。そのほぼ1ヵ月後のこちらのエントリでは、

 (上のエントリ内で)「やろうとすることに対して理解はするけど…」というニュアンスを締めのセンテンスとして書きました。目指す先にあるサッカーの魅力と、そこへ歩を進めるチームのブレなさに共感は持ちつつも、ポポヴィッチ監督の頭の中にも多少の「現実的選択」は備わっていて、それが上手くチームにまぶされることを期待する面もあって、全肯定はしませんでした。ただ、そのエントリを書いて以降の5/12新潟戦、5/20鳥栖戦、5/26浦和戦、そして5/30広州恒大戦の4試合を見た今は、この「プロパガンダ」に乗せられて、この「スタイル」に魅せられて、選手たちの「やっていて楽しい」という言葉とともに成長する姿にほだされて、もう変な迷いは消え失せました。このスタイルがさらに極まり、選手たちのスキルに更なる向上が見られるのなら、新潟戦のように支配して、あるいは鳥栖戦のように貫き通して、はたまた浦和戦のように相手と真っ向ぶつかって勝っていける試合は絶対に増えるし、広州の地で味わった悔しさを喜びに変えることだって絶対にできる、そう信じさせてくれるだけの説得力が十分にあったと感じましたし、そう感じたのであれば、チームの歩みに対して迷いを持って寄り添うことは失礼なことなのかなと思いますし。

 とも書きました。方や「多面性を好む」と書き、方や「今のスタイルを突き詰める道を信じる」と書きました。一見相反するように見えるこの2つの論ですが、私は矛盾すると思っていません。それは、言うなれば私の理想は「カメレオン」で、通常の姿(=1つのスタイルを突き詰めること)で日々を過ごしながら、不測の事態が生じた時には状況に応じて色を変えられる(=多面性を見せる)、そんなチームになってほしいと願っているから。そんな「カメレオン」になるために、世間が普段の姿を認知してくれるまで努力を続ける一方で、独りよがりにならず相手も常に見据えながら、いろんな色に変わることができる「準備」をどれだけできるのか?試合から試合までの間に、過去を踏まえ、現在を正確に捉えながら未来を予測してきたのか?それが試合の中で1つでも、2つでも見えるチームであってほしいなと、この5試合を見て強く感じました。


P.S 明日の清水戦、個人的には「2点あげてもいいから、2点もぎ取る」準備をしていてほしいなぁと。東京が2点取れば、アウェーゴールの関係で清水が勝ち上がるために最低4点が必要になるわけです。で、普通に考えて4点はそう簡単に取れる点数じゃないですから(1−5で負けた後にこんなこと言っても説得力がないですけど)、「無失点で抑える!」とか「鹿島戦の反省を生かして守備をしっかり!」も大事ですけど、変に理屈をこねないで、今こそ今までやってきたことをフルに発揮して、ゴールだけ見て試合をしてくれれば嬉しいかなと思っとります。それもまた、状況を考えた「準備」だと思いますけどね。