続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

調子悪いときもあるさ、だって人間だもの

 待ちに待ったJ1再開初戦。が、結果的には4/21仙台戦に匹敵するワンサイドゲームを「してやられて」の敗戦。ポポヴィッチ監督が試合後に「本当に悲しい試合だった。一つ良かった点を挙げるならば、全てが良くなかったこと。」と語るまでもなく、いいところを見つけるのが本当に難しい試合でした。攻めては選手間の距離が遠く、アングルを付けてあげたり動きなおしたりという受け手の動作の少なさから出し手の選択肢が1つ、2つというシーンばかり。かつ、出し手も雨に濡れたピッチを全く考慮してないかの如き浮いた球質のパスばかりを出し、受け手が難しいトラップを強いられてずれたところを拾われるシーン続出。守っても、失い方が悪いばかりに常に後手を踏む守備となり、最終ラインはバラバラでオフサイドを取れず。しかも球際の攻防や動き出し1歩目の早さ、鋭さでも完敗を喫したことで、完全にラインの裏へフリーで抜け出されて仕事をされる、そんな場面ばかりでした。確かに、マリノスの前半は明らかなオーバーペースで、後半のある時間帯ではパッタリと動きが止まって東京が逆襲の気配を見せる、なんてこともありましたが、この日はそこで追いつけるほどの迫力はなく、いい時間帯も徐々にフェードアウト。終いには選手交代で前線の再活性を図ったマリノスにまたペースを握られて、いなされて試合終了。前半終了時には「意地見せろ!」、試合終了後には「シュート打て!」の声とともに、多くのブーイングがこだまする残念な形となってしまいました。
 では、具体的にどうしたら良かったのか?選手の配置なのか、戦術なのか、ゲームプランなのか?勝てなかった試合のあと、普段であればそういったところに思考を及ぼすことがほとんどなのですが、この日に限って言えば、そういった相手と対等な立場に立って振り返ることすらできない、具体的にはゲーム当日までの中断期間の過ごし方や、そもそものコンディションというところにおいて、同じ土俵にすら立てていなかった試合だった。そう言わざるを得ないと結論付けました。


 東京はこの中断期間において、31日から5日間のオフを取り、その後小平でフィジカルトレーニングを行い、6/9の流通経済大学との練習試合を経てこの試合に臨む、そういったスケジュールを組みました。一見すると、5日間のオフで心身の疲労回復を図り、再集合して数日は眠った身体を起こすフィジカルトレーニングを行い、その後マリノス戦に向けて練習試合を入れて仕上げていく、そんなよくあるスケジューリングにも思えます。しかし、課されたフィジカルトレーニングは「年始のキャンプよりキツイ」(谷澤)「小平合宿」(権田)とそのキツさを選手たちが口々にし、2部練習も複数日組まれ、その内容もいわゆる「素走り」や「インターバルトレーニング」と呼ばれるものに特化したものだと聞いています。その目的は明確で、これから迎える酷暑に対応できる心肺機能と筋力を作り、夏場にコンディションを落とさないため。ACL出場組にしかない中断期間の使い方としてこれが特段間違っているとは思いませんし、実際合っていたのか、間違っていたのかどうかについては、夏にどんなパフォーマンスを見せてくれるかを待つしかないので、ここでは何とも言えません。
 ただ、ことマリノス戦だけにフォーカスして言えば、このやり方は間違っていました。5日間のオフである程度疲労は取れたでしょう。しかし、何もしないということは、それだけフィジカルは落ちますし、コンディションは低下します。そして、(極端に言えば)弛緩した身体を起こすためのハードなフィジカルトレーニングは、さらにコンディションを低下させる一因ともなります。休んだ際の「疲労ゼロ」とは一転して「疲労100」に振れ、「身体が重い」状態になるわけですから。で、問題なのはそのフィジカルメニュー終了後、マリノス戦前日までのコンディショニング。具体的にトレーニングを見ることができたわけではないですし、見たところでその筋の専門家ではないので良し悪しを判断できることはできませんが、あの試合における動きの重さを見る限り、この試合に向けたコンディショニングは失敗だったと言う他ありません。ポポヴィッチ監督も試合後に「今日の試合に関しては選手の消耗も激しかった」と、コンディション調整不足を暗に認める発言をしていますしね。
 また、一概に「試合の間隔が開く=コンディション的に有利」とは言いきれない事象も、サッカー界では見られることがあります。現在、ポーランドウクライナの共同開催でEURO2012が行われていますが、1大会前のEURO2008でこんなことがありました。グループリーグを終えて出揃ったベスト8のカードが、ポルトガル−ドイツ、クロアチア−トルコ、オランダ−ロシア、スペイン−イタリアの4試合。それぞれ左側のチームが1位抜けで、そのいずれのチームも「グループリーグ第3節で主力と目される選手の大半を休ませ(グループリーグ突破が決まっていたため)、主力は休養十分でこの試合に臨んだ」という共通点がありました。しかし、蓋を開ければ1位通過で勝利したのはスペインのみ。そして、敗れた3チームは揃って立ち上がりに集中を欠き、運動量も試合間隔が狭くて主力のコンディションが厳しいはずの2位チームに完全に見劣ったという共通項を抱えて大会から去ることとなったのです。間隔が開くことで懸念される点で代表的なものは「試合勘」で、それがこのケースでも少なからず影響していたとは思いますが、間隔が詰まっていたとしても、疲労の蓄積はあったとしても、ある一定の強度でのトレーニングと試合を繰り返すことが短いスパン(1ヶ月単位)においてはコンディションを落とすことにはつながらないとも言えるのではないかと思います。そう考えれば、中断期間中にナビスコカップが2試合あり、トレーニングのリズムを崩す必要がなかったマリノスが、間隔が開いて特殊な調整を行った(しかもそれが成功したとは言えない)東京を凌駕することは決して珍しいことではないですし、「休んでいたのに何で!」という批判や不満への回答にもなるのかなと考えています。


 しかし、もう少し長い期間を視野に考えてみると、この「コンディションの底」とも言える状態は、中断期間があろうとなかろうと、遅かれ早かれこの時期にやってきたんじゃないか?私はそう思っています。
 サッカーのシーズンが10ヶ月だとすると、よく「少なくとも1回、大半は2回コンディションの底が訪れる」と言われます。また、明確な根拠は知識不足で示せませんが、アスリート個人のピーキングはおよそ3〜4ヶ月スパンで好調⇔不調を波型のように往来するとも言われています。で、リーグ開幕戦を基準にしたとして、そこにピークを持ってくるのか、あるいはそこから1、2ヵ月後、はたまたその先のシーズンが一番厳しくなるころにピークを持ってくるのか、それはそのチームが置かれた立場によって大きく考え方が替わってきます。その考え方において、欧州でよく言われるのは「中位〜下位が予想されるスモールクラブは開幕戦にピークを持ってくる。逆に、リーグ優勝を目指しながらUEFAのコンペティションに参加するような上位チームは、開幕にはピークを持ってこない」という点。例えば、上位チームの中でも特にCLを戦うチームにとって、CLで勝ち進むことはステータスと同様に「実入り」の部分でメリットが大きく、そこを勝ち上がることに注力します。となると、グループリーグ期間となる10〜11月、そして、決勝トーナメントが始まる2月下旬から3月にコンディションのピークを持ってくることが大事となります。つまりは、おのずとリーグが開幕する8月下旬は80%ぐらいのコンディションにしておかないと、辻褄が合わなくなるわけです。一方の中位から下位チームは、そんな上位チームが緩やかにスタートする序盤、そして、上位チームが一度コンディションを落とす、UEFAコンペティションの決勝トーナメントが始まる前の12月〜1月にピークを合わせることで、チームとしての実力の差を埋めることが可能となります。シーズン序盤や年末年始にアップセットが起こりやすいのは、こういった「コンディションの差」が一つの側面としてあるのは間違いないでしょう。
 話を東京に戻して、では今シーズンの東京は、開幕戦にコンディションのピークを合わせたのか否か?その答えとして、私は「開幕に合わせた」と思っています。それは、3/19名古屋戦の振り返りエントリ内でこう触れたとおり。

東京は監督が代わり、ピッチ上で披露するサッカーの内容もそれなりの変化がありました。普通に考えれば、拙速に結果を求めることは逆に足を掬われかねません。その一方でここ数年「J1昇格直後の躍進」が続いていること、そしてACLがあることなどから、外からは結果を求められる声が多いのも事実です。監督や選手から結果だけを求めるようなコメントが聞かれていないことは幸いですが、それでもポポヴィッチ監督はかなり練習で追い込み、仕上げを早くしたと聞いています。

 実際、シーズン序盤は相手の方が先に足が止まることが多く、たとえ先制されても、たとえ前半が劣勢でも、「ここから巻き返してくれる!」という信頼感、安心感がありました。しかし、5試合、10試合、15試合と試合を重ねるごとに疲労の色、コンディションの低下が見て取れる選手が増え、Jではしぶとく戦えていたものの、ACLにおいてはタフな相手に苦しみ、広州戦では(具体名を挙げると)徳永、高橋、長谷川、石川あたりは相当キツそうに見え、攻守ともに押し込まれる場面が多く見られました。そういった、相対的に見てコンディションの低下がチーム全体に及んでいる中で、近視眼的に見ればコンディションダウンの一因となる厳しいフィジカルトレーニングを行えば、そりゃ身体も動かないよなぁ…と思いますし、たとえそういうメニューを組まなかったとしても、キャンプから4ヶ月経った今、コンディションが低下することは避けようがなかったのかなと思います。
 そのマリノス戦、今日のエルゴラッソでの採点は軒並み4.5〜5.0でした。まあ、誰が見てもそうだろうと言うしかありませんが、ただ、動きの量や質を見れば、個人的にはルーカス、加賀、河野には5.5をつけてあげてもいいのかな?とも。その中で注目すべきはルーカス。加賀や河野は怪我などで戦線離脱した期間があり、言ってしまえば個人単位ですでに「コンディションのピーク→底→ピーク」という1サイクルを済ませた選手なので、動ける理由は説明ができます。しかし、ルーカスはシーズンスタートから主力としてフル回転している選手。周りと歩を同じくして、コンディション低下の傾向が見られても責められないところですが、前半から長い距離を走って守備のサポートに入る動きや、細かく動いて受けようという動きからはそれが感じられませんでした。これは何でや?と考えてみて、はたと気がついたのが、ルーカスはガンバ時代にACL組のスケジュールを体感・経験していたという点。日程の厳しさ、移動の厳しさ、アジアの当たりの厳しさを全て肌で知り、シーズン中の長い中断ももちろん知っているわけです。コンディショニングは、日々のトレーニング時もそうですが、それ以外の時間をどう過ごすのかによっても大きく変化が生まれるものであり、それは経験を重ねることで覚えていく部分も絶対にあるわけで。そう考えれば、ACLを戦った意義や経験値というのは、単に普段交わることができない「外側」だけでなく、日々自分がどうするべきかという「内側」に問う部分もたくさんあって、本当に代え難い時間だったなと振り返りたくなるところでもあります。また、チームとしても今回のやり方がどうだったのか、今後の推移も見ながら、シーズン終了後にしっかりと検証をして経験値にする必要があるでしょう。欲を言えばコンピューターや専門ソフトを駆使して、個別管理をより細やかにやって欲しいと思っていますし、協会がなにやらACL早期総崩れの原因をヒアリングでうんたらかんたらと言っていますが、日程調整や試合間隔の問題、移動の大変さだけではなく、そういったコンディショニング面での問題を挙げて、協会側の技術協力であったりスキルアップを求めることをしてもいいのかな?とも思っています。
 さて、ここまで蛇足を経ながら「今がコンディションの底」だと書いてきました。となれば、今後の焦点は「底がどれだけ続き、次のピークはいつで、それがシーズン終了まで持つのか?」という点。開幕がピーク説が合っているとすれば(そうしないとここまで書いてきた意味がないけどw)、一次キャンプでフィジカルトレーニングを行ったのが開幕戦の約1ヶ月前。で、そこから開幕まで練習試合を6,7試合行ってコンディションを上げていったことを踏まえれば、6月中に底を脱し、7月下旬〜8月上旬には再度トップコンディションを迎えることができるのではないか?というのが素人の推論。それが叶うのか、そしてトップコンディションを如何に長くキープできるかは、今年から入閣した竹中フィジオセラピストの腕の見せ所。7/25からはナビスコカップ準々決勝が始まり、9/9からは天皇杯も始まりますが、来週の3連戦が終わればそこから3週間は週1試合のペースが続き、コンディショントレーニングを週中に取り込むことも出来ます。そこで上手くいけば、再びミッドウィークに試合が挟まっても簡単には落ちないでしょうし、上手くいかなければ晩夏に再びへたれてしまうこともあるわけで。「コンディションが良いから勝った」「コンディションが良くないから負けていい」と一元的に考えることは絶対にしませんが、プロである以上、プロだからこそ、勝敗にこの一面が関わっていることを頭の片隅に留めて置いていただければ、アマチュア妄想ブロガーがこれを書いた甲斐があるってもんです(笑


P.S じゃあ、底の時にどうやってゼロをイチに、イチをサンにできるのか?あるいはサンをイチにしない、イチをゼロにしないようにできるのか?そこについても考えが及ぶところもありますが、それはまたいつか。眠いw