続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

うねうねし続ける、わが妄想

 ナビスコカップを挟んだ連戦が終わり、世間はただいま代表モード。そんな今だからこそ、こっそり東京のことを考えてみようと思い立ち。テーマはズバリ、「マッシモ式4−4−2の『仮説』」
 先日、大変に、大変に長ったらしい文章を書きまして、野澤英之をフィーチャーしつつ、「武藤なき後」について少し妄想を働かせました。このエントリにおける「武藤なき後」の結論としては、

1:4−4−2をメインシステムとする。
2:中盤にこのまま野澤を起用し続ける。少なくとも、センターハーフは「レジスタ」と「インテルディトーレ」の併用とする。
3:最終ライン(特に森重)の意識付けを「縦」から「横」に変化させる。

 の3点を挙げました。一方で、

マッシモが今後4−4−2を用いていくとして、何か攻撃的なアイデア(意識)をチームに植えつけられるものがあるか?と考えた時、私は「相手陣、特にサイドで何ができるか?という部分だと思っていて、そこで鍵になるのは間違いなく東、三田の2人(羽生が戻れば3人)。正直に、まだ私の眼力ではマッシモが4−4−2のサイドハーフに求める役割や、マッシモ自身のこだわりを読み解けていないので、この部分について話を膨らませることはできないのですが、インサイドハーフとして完全にフィットしたとは言い難い東、三田の2人が、再びサイドハーフ(インクルソーレ)として起用されて一気にハネてはくれまいか?という淡い期待は抱いていまして。少なくとも羽生の怪我が癒えるまでは、武藤がいようといまいと、サイドハーフにはこの2人を併用していくはずなので(湘南戦は例外)、ここはまた、自分なりに読み解けたならば何か書くことがあるかもしれません。

 とも書きました。そんなエントリをアップした直後に迎えた6月7日、松本戦。まあ綺麗に野澤がスタメンから外れ(いつもこうだよ!)、サイドハーフは三田と東…ではなく、驚きの橋本拳人抜擢。しかも、先制ゴールはその橋本が奪うおまけつき。「ミステルの頭の中を読み解くのは容易じゃないな」と一人苦笑いしつつ、一方で「マッシモの4−4−2、こういうやり方なんじゃないかなぁ?」と想像できる部分もありました。今日はそれを「仮説」と称して書いていきたいと思います。今日は、コンパクトにまとめたい!


 「私のやりたい戦術・コンセプトに沿った11人を選び、戦術を遂行させる」「選手の個性を見極め、それをどう配置して戦術を最大化するか」――監督がスタメンを選ぶとき、よくこんな類の「戦術ありき」「選手ありき」の二者択一が挙げられますが(良いか悪いかはさておき)、これまでのマッシモは間違いなく前者でした。中盤3センターの4−3−1−2(稀に4−3−3)を頑なにスタートシステムとして定め、そこに今使える中からベストと思われる選手をチョイスし、自身の意向をピッチに反映させようとしてきました。もしかしたら、4−4−2においてもそうかもしれません。ただ、私自身はこの数試合、殊更松本戦を見る限り、少し後者の匂いも漂わせてきたな、と感じています。
 そう感じる大きな要因の一つが「怪我人過多」。オフィシャルに発表されたものからそうではないものも含め(現に橋本も、発表の無い怪我から明けたばかりだった)、なかなか選手のやりくりに苦労している状況なのは間違いがないところ。しかも、4−3−1−2の肝とも言える3センターハーフを任せられる選手に相次いでアクシデントが起こっていることで、「戦術ありき」で押し通すのが厳しい状態であることは、外野からも容易に想像ができます。そうなると、「選手ありき」でどこまでやりくりできるか?と方向転換しても――それが一時的であったとしても――不思議ではないですし、むしろそれが当然とも言えます。では、「選手ありき」で考えた時、まずはどこのポジションに注目するか?皆さんなりに思いつくポジション、最重視すべきポジションがあろうかと思いますが、私は「サイドバック」でした。
 武藤がチームを去り、縦一発のカウンターの威力が減少すると仮定して、ではどのように相手ゴールに迫っていくかを考えた時、上でも引用したとおりサイドアタックの更なる強化が1つの解決策だと思いますが、これまでも、おそらくはこれからも、サイドアタックの中心を担うのはサイドハーフ…ではなくサイドバックだと私は見ていまして。なぜならば、東京には徳永悠平太田宏介、日本を代表する左右のサイドバックがいるから。東京ファンは当たり前に、他チームのファンの方でも多くの方が、この2人のタイプの違いを説明できると思いますが、攻撃(特にオーバーラップの仕方)に絞ってみても、徳永は「低い位置からの長距離単騎型」、太田は「高い位置からの短・中距離コンビネーション型」と明確にタイプが異なっています。そんな二人のタイプを考慮してか、例えば5/30柏戦での、野澤投入後の4−4−2の並びを見てみると、



 となっていて、右は三田がベースポジションを外に取りながらも中へ絞って仕事をして、その結果スペースが空いてタイミングが良ければ徳永がグイーンと単騎上がってくる。左はポポ時代から気心知れた東と太田が、3人目も絡めつつコンビネーションで崩してクロスまで、という従来通りのイメージだったかと思います。しかし、松本戦では右に三田、左に橋本が使われ、両サイドハーフの攻撃時のポジショニングを見てみると、三田は中を意識しつつもラサッドとプレーエリアが重ならないよう、外へそのままとどまるシーンが見られ、橋本は外で起点になることがありながらも、中へ絞っていて受けようとするシーンが目立ちました。その結果としてサイドバックの動きが、スペースを得た左の太田は単騎で仕掛ける場面がこれまでより多く見られ、対する右サイドは徳永、三田に梶山やラサッドも加わりながら細かいパス交換で崩す、という従来と逆の性質を帯びることとなりました。立ち上がりからいきなりこんな形がちらほら見られたことで個人的には少し驚きましたし、これがどこまで狙いとして計算されたものなのかを測りきれないまま、試合を見続けていました。
 そんな中で生まれた27分の先制点。オーバーラップを仕掛けた太田へ丸山から絶妙なフィードが通り、太田は絶妙なトラップで田中を振り切ったところでクロス。これに橋本がドンピシャのタイミングで飛び込み、左足先でゴールに流し込むという形でしたが、その丸山がボールを出す瞬間のポジショニングを図に起こすと、



 という感じ。この前のシーンで、ラサッドが下りていき、武藤も下がって受けようとしたとき、橋本はスッと最前線のポジションを取ろうと動いていました。そんな流れの中だったとはいえ、橋本のポジションがだいぶ「イレギュラー」であることはお分かりいただけるかと思います。しかし、相手のシステムが3−4−2−1=サイドに1枚しかいない中で橋本が絞る意識を持ち、相手のポジション・意識を中に収縮させることで太田がスンナリ入ってこられるようなスペースを意図的に作り、太田にはそこを単騎で仕掛けさせる。そして、クロスの際に2トップのみならず、中へ絞っていた橋本――U−18時代にはトップ下やFWとしてもプレーしていて、ゴール前での強さもある――を3人目のターゲットにすることで、クロスをヒットさせる可能性を高めたと推測すれば、このシーンは3−4−2−1と4−4−2とのアンマッチが生み出した4−4−2側のメリットと、個性を的確に捉えた「選手ありき」の起用がうまく合致し、これまでとは別の性質をマッシモがチームに帯びさせたことで生まれたゴールだった、と仮説を立てることができるのではないか?と考えた次第です。


 また、この仮説が正しいとするならば、他のポジションの配置においてもいくつかの工夫を図れるのでは?と想像できます。先日のエントリにおいて、「4−4−2にした時、こんな並びはどう?」という図を貼りました。それがこちら。



 しかし、これまでの仮説を踏まえた上で再考すると、以下の並びが面白いのでは?と思うようになりました。それがこちら。



 名付けるならば、「ダブル・プリマプンタ型」。つまんね〜、ひねりがねぇ〜という声は華麗にスルーしまして、よりサイドアタックに明確な意図を施し、左のみならず右からもクロスが供給されるようにしたい。だけど、外だけじゃなく中を崩す「素振り」だけでも見せておきたい。と考えた時、まずは2トップをプリマプンタ、セコンダプンタに分業するのではなく、ダブル・プリマプンタとすることで、クロスのヒット率を高めたい。そして、サイドハーフは左にはインクルソーレを置き、中へ絞りつつゴール前に迫る動きをしてもらい、右にはクルソーレ…ではなくセコンダプンタ…というよりはトレクァルティスタ=4−3−1−2でトップ下を任されるタイプの選手を置くことで、右サイドのグループでの崩しのアイデアを高めつつ、単騎での中へのカットインからパスやシュートという狙いもまぶしたい。これにより、攻撃の幅はさらに広がってはくれまいか?という感じです。
 また、隠れたポイントがセンターハーフの並び。今まで、なんとなく漠然と2人並べていたと感じることが多かったんですが、レジスタインテルディトーレとを明確に分け、どちらをどちらに置くか?まで考えた時、今回の仮説においては、右がレジスタ、左がインテルディトーレであるのが望ましいと考えます。その理由は、

1:太田が単騎でオーバーラップする回数が増え、自陣を留守にする機会が増えると想定した場合、そのカバーに入れるインテルディトーレを左に置くことで、カバーエリアの確保とエリアまでの距離短縮を図ることができる。
2:右サイドをコンビネーションで崩すために、パス能力に秀でたレジスタを右に置き、スムーズなパス交換を図ることができる。
3:太田の上がりを活かす際、「左(森重)から左」だけはなく、「右(レジスタ)から左」の対角パスも採り入れることで、横幅を使った攻めを構築できる。

 の3点。特に3は、これまでの仮説が全くのハズレだったとしても、ここだけはすぐに採り入れてほしいと願っていまして、左右のサイドバックの色がここまで違うからこそ、ここまでのこだわりがあってもいいんじゃない?と思っているポイントです。


 と、ここまでいろいろ書いてきました。最後にもう一度、ここまで書いてない点も含めて、端的にマッシモ式4−4−2の「仮説」をまとめますと、

1:鍵はサイドアタック。右(徳永)はコンビで、左(太田)は単騎で。
2:右SHはトレクァルティスタが幅広く、左SHはインクルソーレが中に絞ってエリア内にも。
3:2トップはともにプリマプンタでクロスに合わせ、センターハーフは右にレジスタ、左にインテルディトーレを。
4:守備は2ラインともフラットに構えながら、プレスとリトリートを使い分ける。

 の4点となります。まあ自分で言うのもなんですが、松本戦だったからこその橋本起用だった気がしていますし、この仮説はまたしても妄想の域を脱しないとは思っていますが(苦笑)、それでもセカンドステージへ向けて、何か手を施してくる可能性は高いはず。それをまた、次の試合で探ることが出来たら、それはそれで面白いのかな?と思います。