続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

RE-BIRTH

 先週の日曜日、西が丘サッカー場で行われたU-18プレミアリーグ 三菱養和SCユース対FC東京U-18を見に行ってきました。今年から始まった通年リーグであるU-18プレミアリーグ。それまで関東プリンスリーグを3連覇し、フォーマットが変わった今シーズンも上位争いが期待されながらも序盤から思うように勝ち点が伸びず、気が付けば2試合を残して順位はなんと最下位。とにかくあと2試合を連勝するしかない、しかも連勝しても他力本願という厳しいシチュエーションに追い込まれてしまいました。そのがけっぷちの中で、選手達はどのような試合を見せてくれるのか、月並みですが期待と不安が交錯する、落ち着かない心境でキックオフの笛を聴きました。


 まずはスタメンから。東京は

−−−−−−18岩田−−−−−−
25二瓶−− 15野沢 −−13福森
−−−8山口−−−10橋本−−−
34鴨池−4石原−5小林−27青木
−−−−−− 1谷 −−−−−−

 の11人。3週間前の鹿島ユース戦からは右SBが3吉田から27青木へ、ボランチに10橋本が入り、15野沢がトップ下に上がって20アモスが外れる、という変更。一方の三菱養和

−−−8北出−−−−9油井−−−
28秋田−−−−−−−−−20島田
−−−19天満−−−14清水−−−
3佐々木−4安藤−5冨田−16横山
−−−−−−18永井−−−−−−

 の11人。名古屋入団が内定した7田鍋は怪我の影響からかベンチスタートでした。


 試合は三菱養和のキックオフボールにフルアタック&スライディングを敢行した岩田の気迫で幕が開きます。そして、オープニングシュートこそ三菱養和の28秋田に譲りましたが、ペースをガッチリ掴んだのは東京でした。この日は今シーズン私が見た試合では初めて、スタートから10橋本がボランチ、15野沢がトップ下という布陣を倉又監督は選択しました。恐らく狙いは10橋本のフィジカル力でバイタルエリアでの攻防、セカンドボールの拾い合いで優位に立ち、15野沢、18岩田を前線に置くことで、相手守備陣に的を絞らせずに高い位置で貴店を作りたいというものだったのかなと。その狙いよろしく、主にハイボールは岩田が、グラウンダーのボールは野沢が受ける形をとり、お互いがお互いのサポートに入りながら上手くボールを収めてくれたことで、他の選手が躊躇なく前を向いてプレー選択ができる状況が生まれました。特に目立ったのがボランチで、ほぼ毎回の攻撃に10橋本、8山口いずれかがスルスルッと上がっていって参加することで相手を押し下げることができましたし、東京の攻撃に厚みを加えることができました。
 しかし、ここでアクシデント発生。25二瓶が16横山のアフター気味のタックルで左足を負傷。治療を施し一度はピッチに戻ろうとしましたが感触が思わしくなく、自ら×印を出して9冷岡との交代を余儀なくされます。時間もちょうど15分過ぎ、ここで東京の押せ押せペースに一息入って試合が膠着状態になったとしてもおかしくありませんでしたが、この日の東京はそんなのお構いなし。その後5分間で10橋本、18岩田がそれぞれ三菱養和ゴールを脅かしました。が、東京の攻撃は決定機とまでは言いきれず。そして、最初の決定機を掴んだのは三菱養和でした。22分、ピッチほぼ中央での10橋本の中途半端な横パスを20島田がカットし、そのまま右サイドをドリブルで駆け上がってミドルシュート、ゴールまでまだ25mほどありましたが、迷いなく振り抜いた右足から放たれたボールは一直線にゴールマウスへと飛びます。が、まともにクロスバーに跳ね返されてしまい、そのこぼれ球を拾った9油井のシュートも1谷の正面をつき、千載一遇のチャンスを逃します。今年のチームはこういうところでズルズルと相手にペースを渡してしまう印象が正直言ってありました。なので、ちょっと嫌な予感はしたんです。ただ、この日の東京はこれまでとは全く違う表情を見せてくれました。直後の23分、18永井のキックを10橋本と9油井が競り合い、そのこぼれ球にいち早く反応した18岩田があまりにも見事なファーストコントロールでマイボールに。何でもできる体勢となった18岩田に応対した5冨田は一か八かの読みでシュートブロックを選択しますが、これを見た18岩田は冷静に左斜め前でフリーになっていた15野沢へ優しく気持ちのこもったスルーパスを送ります。これを受けた15野沢は18永井との1対1を冷静に制して、ゴール右隅へボールを流し込み東京が先制します!
 終わってみればなんですが、この1点目にはこの日の東京の良さが全て凝縮していました。得点に至る流れのスタートとなったのは18永井のキックと書きましたが、実はこの1つ前の18永井のパントキックも中盤での競り合いからこぼれ球になったんです。そのこぼれ球は三菱養和陣内のオープンスペースへと転がり、16横山が楽に追いかけて難なくマイボールに…させなかったのが13福森のチェイシングでした。16横山に前を向かせる間を与えないほどギュッとボールに寄っていき、18永井へのバックパスを誘発します。そして、このバックパスに対しても15野沢がしっかりとチェックに行き、18永井に十分な体勢でキックをさせずにボールがハーフウェーラインを越えなかったことで、競り合いのこぼれ球が即東京のチャンスに繋がったわけです。このプレーに代表されるように、この日の東京のプレッシングはほぼ完璧。18岩田、15野沢のファーストチェックがボールホルダーに対してかなりの圧力になっていて、それ以外の選手の連動性も素晴らしいために三菱養和のビルドアップはほとんど形になりませんでしたから。こうなると三菱養和としてはリスク回避の意味も込めてロングボールの選択が増えてくるわけですけど、これに対しては4石原、5小林の両CBがしっかりと対応、ほとんどのエアバトルで勝利を収めていました。ついぞ三菱養和は手詰まり気味となり、東京はさらに守備の圧力が強まり、難なくサイドで数的優位を作って奪いきる、あるいは縦パスに対して相手の前に出てボールをカットするといった積極的な守備が数多く見られるようになりました。そして、前向きでボールを奪うことにより守→攻の切り替えが瞬時に行われるため、東京の選手は前を向いてプレーができ、一方の三菱養和の選手は背走を余儀なくされ、時間を追うごとに34鴨池、27青木の両SBも効率よく攻撃に絡むというところまで手を伸ばすことができていたと思います。この試合前までの総失点は20。これは首位・札幌の18に次ぐ少ない失点数で、これだけ見れば東京の守備はこれまでも悪くなかった、と思われるかもしれません。しかし、個人的には「中盤から後ろの選手が個人の力量により何とか踏ん張る守備」というイメージが強く、奪う位置も低ければ、奪った後のイメージがチームとして共有できていなかった、そのことが攻撃の停滞を招く一因となり、結果として得点数も下から2番目という数字に繋がっていたのかなと思っています。それを思えば、この日の東京はようやく「らしさ」を取り戻したのかなと。それは嬉しかったですね。
 この流れで追加点を奪えれば最高だなぁ…と思っていた33分、この試合一番といっていい決定機が訪れます。左サイドから34鴨池がアーリークロスを入れ、競り合いのこぼれ球を18岩田が拾うとスッと寄ってきた10橋本にパス。10橋本は抜群のフィジカルとテクニックでDFを置き去りにしてシュート。これは18永井のファインセーブに遭いますが、このこぼれ球がゴール真ん前でフリーになっていた9冷岡の足下にこぼれてきて、9冷岡が無人ゴールに流し込んだ…かと思いきや、5冨田が足を伸ばしに伸ばしてシュートブロック。しかし、このこぼれ球がまたしてもゴール真ん前でフリーになっていた15野沢のところにこぼれ、浮き球を冷静に胸トラップで収めてシュート。ゴールまでの距離はわずか2m。さすがにこれは決まっただろうと思ったら、右足から放たれたボールはありえないほどの角度がついてなんと枠の上に。頭を抱える東京の選手達。それ以上にどでかいリアクションを取った東京ファン(笑) まあ、決まらなかったのはさすがにちとガックリきましたが、このシーンも18永井のゴールキックを8山口がしっかりと跳ね返し、そのセカンドボールを拾った16横山に対して15野沢が即座にチェックに行ったことで生まれたチャンス。これができている限りは問題ないでしょ、という強気なことも考えながら、その後も東京ペースで試合は進んで前半が終了しました。


 後半。ここでの敗戦は自分達の残留の芽をつぶしてしまうこととなる三菱養和は頭から19天満→10川崎、28秋田→7田鍋の2枚替えを施します。ちなみに、ワタクシ7田鍋が頭から投入されていたことに全く気付かず、6,7分経ったころにようやく周りの方に「ん?7って田鍋でしたっけ?」とのんきに聞いておりましたとさ(苦笑) それはさて置き、後半もオープニングシュートは47分に三菱養和。CKのボールを1谷が目測を誤ったのか、結構前に出て行ったのに急にストップしてボールを見送ります。すると7田鍋が触って流れたボールはファーサイドでフリーになっていた5冨田の足下へピッタリ渡り、トラップから間髪入れずシュート。しかしこれはポストを叩き、跳ね返りが1谷の体に当たってゴールラインを割ってノーゴール。さすがにこれには肝を冷やしました。
 ただ、やはりこの日の東京はこれまでと一味も二味も違います。直後の49分、中盤で受けたファウルにより得たFKを得ると、13福森が相手の陣形の整わないタイミングでボールを前線に送ります。これが上手い具合に相手DFの間を抜けてスペースへ流れ、そこにジャストタイミングで走りこんだ4石原が胸トラップから冷静にボレーシュートを決めて追加点を手にします!どうやら練習していた形らしいんですが、それをしっかりと試合で出せて、ゴールに結びつける勝負強さも今シーズンやや欠けていた点。決めたのも、結果が出なかった試合で誰よりも悔しさを露にしていた4石原。もう嬉しさ爆発のゴールでした。その後も止まらない東京はセットプレイで次々とゴールを襲ったかと思えば、前からのプレッシングも衰えることなく続けて、54分にはプレスでボールを奪った流れで15野沢があわやのシーンを作ります。一方の三菱養和は7田鍋が存在感を出せないまま、いたずらに時だけが過ぎていくといっても過言ではないくらい苦しい時間帯が続きます。
 と、ここまではあまりにも理想的な試合展開となったわけですが、少し旗色が変わったのが60分以降。ここまでかなりのハイテンポでプレーしていた影響からか、プレーが切れると足を伸ばす選手がちらほら見え始め、プレッシングもやや連動性が失われて、それまでは奪いきれていたシーンでも取りきれない、突破されるシーンがいくつか出始めました。ここで失点でもしようものなら一気に試合の流れが変わってもおかしくないところでしたが、それでもガクッと運動量が落ちることはなく、気持ちも十分で足を自ら止めることはなかったですし、三菱養和の攻撃にもう一スイッチ入らなかったこともあって得点は許しません。逆に相手の高いラインの裏を効率よく破ってチャンスを作り続けることで攻撃のリズムを継続させることができていて、漠然と「もう1点ぐらいいけるんじゃないかなぁ」と思っていたほど。それが現実となったのが81分。2点目とほぼ同じ位置で得たFK。蹴るのは同じく13福森。2点目と受ける側の動きは変わりましたが、決めたのはまたしても4石原!今度はヘディングで押し込む形で、試合を決める3点目を取りきりました。このまま試合は終了。東京が今季ベストとも言える試合内容で、待望の今季3勝目を挙げました。


 鹿島ユース戦で勝利を逃したことでJユースカップから早々に離脱し、この試合まで3週間の時間が生まれました。この間どのような練習を重ね、倉又監督からどんな言葉があり、選手同士でどんなコミュニケーションを取っていたのか、それは想像の域を超えません。しかし、このインターバルがプラスに働いたことは疑いようがありません。青木、鴨池の1年生SBコンビは非常にエネルギッシュで、攻守両面でチームに勢いをもたらしていましたし、25二瓶は15分だけでしたが2つほどいい仕掛けがありました。13福森はいつもどおりの献身性に加え、この日はセットプレーのキッカーとして存在感抜群。見事な2アシストでしたね。15野沢はトップ下こそ適性ポジションなんじゃないの?と言いたくなるほどのハイパフォーマンスで、この日放ったシュートはもちろん両チーム最多の7本。その積極性は目を見張るほどでした。18岩田も怪我が癒えてからの数試合は新しい一面がガッツリ顔を覗かせていて、一気に「懐の深さ」みたいなものが身についたなと。
 ただ、私はやっぱり3年生のプレーに心打たれましたね。1谷は1つ危ない判断こそありましたが、常に声を出し続け、味方を鼓舞し続け、見事シャットアウトゲームに貢献。4石原は攻めては殊勲の2ゴール、守っては高さと前への強さで相手FWを封殺と出色のパフォーマンス。自身2点目を奪った後の2度の咆哮は画になっていたし、試合終了後の良い意味で気が抜けるシャーも嫌いじゃない(笑) 5小林は4石原ほど目に付くプレーは少なかったですが、4石原のチャレンジを常に的確にカバーし続け、DFラインのバランスを崩さずに90分をやりきってくれました。10橋本は後輩となるフナトアミーゴSCの子たちの前で地力をこれでもかと見せつけたかなと。同年代の中でのフィジカルの強さは一見の価値ありです。9冷岡は25二瓶のアクシデントを受けての緊急出場でしたが、サイドでのプレーも全く苦にせずチャンスに多く絡むことができていました。
 そして、一番印象に残っているのが8山口。ヴェルディとのダービー後にちょっと厳しいことを書かせてもらったんですが、この日はもう文句なし。10橋本と上手く分業できていた点はあったんでしょうけど、ボランチのポジションでプレーするにとどまらず、サイドに出てボールホルダーのパス相手になったかと思えば、18岩田や15野沢がボールを収めたところでタイミングよく出て行くことで攻撃の厚みとなったり、サイドからのクロスの流れではしっかりとバイタルエリアまでポジションを上げてセカンドボールを高い位置で拾う意欲を見せたりしていました。守備でも積極的にハイボールの競り合いに関与し、CBが跳ね返したセカンドボールを拾い続け、サイドのカバーも非常に献身的だったかなと。この日、その腕に巻くキャプテンマークが非常に輝いて見えたし、誇らしく見えたのは、決して気のせいではないと断言します。
 残るは1試合。相手は初代イーストチャンピオンを目指す札幌。お互いにとって、これほど「勝つことの意味」がはっきりしている試合はそうないはずで、そのモチベーションを持つチーム同士がぶつかるわけですから、もう何が起こるのか想像もつかないのが正直なところ。それでも、この試合を見て感じたのが、「何とか間に合った」の一言。クラ戦@群馬では一敗地に塗れ、札幌ホームのリーグ戦ではそのとき以上に力の差があったと聞きますが、この日選手達が見せてくれたパフォーマンスを持ってすれば、その差は十分に埋められると私は信じています。その選手たちの頑張りを、12/10 13時から深川グランドで是非とも見届けてほしい、1人でも多くの人に青赤を見にまとう選手達の背中を押してほしい、そう思います。


 勝ちたいんじゃない。勝ってほしいでもない。東京が勝つんだ。絶対に!