続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグ 第13節 FC東京U-18 0−1 東京ヴェルディユース

 FC東京東京ヴェルディというカードが「東京ダービー」として世に認知されるようになったのは、ヴェルディが本拠地を移転した2001年。しかし、その移転に至るまでの経緯や、俗に言う「ヨミウリ」へのアレルギーなど相俟って、トップチームの「東京ダービー」には純粋なローカルライバルとしてだけではなく、幾許かの嫌悪や皮肉が入り混じるものとなっています。しかし、ご存知のとおり練習の拠点がよみうりランド内にあり、登記上の住所は読売クラブ時代からずっと東京都(稲城市)であったため、育成年代においてはトップチームより以前から「東京ダービー」が存在し、小学生時代から顔を合わせる選手たちが時には味方であった時代を経ながらU-18へと進み、こちらは純粋なライバル意識の下で争われるローカルダービーとして、これまで(そして、これからも)鎬を削ってきたと聞きます。だからこそ、毎試合「あいつらだけには、負けられない」という気持ちがビシビシ伝わってきますし、見ているこちらもただ単純に「負けたくない」という気持ちにさせられるマッチアップとして認識されていると思っています。今回も、有志の方々の準備の下、試合前に選手一人ひとりに対してのゲーフラを掲げてその思いを伝えた、なんてことがありました。
 で、試合に入る前に、そんなライバル意識をむき出しにした場面を1つ余談で。14分、自陣左サイドの深いところに侵入してきた8杉本(違うかも)を、サイドハーフの位置から懸命に戻った7岩木がアフター気味に倒してしまいイエローカード。後ろから削られたのに腹を立てたのか、起き上がるや否や岩木を睨みつける杉本。そして、睨み返す岩木。これだけで「おー、バチバチやってんな」と言えますが、このあと、私の聞き間違いでなければ、熱くなる杉本をいさめつつ、東京側を挑発するかのように14中島が「下手くそに合わせなくてもいいよ!」と言い放ちました。中島がどういう意図を持ってこの発言をしたのかは知る由もありませんが、「俺らの方が上なんだから」という強烈なプライドをビンビン感じる言葉であったことは間違いないわけで。この後も、どちらかと言えばヴェルディの選手たちの方が牙をむき出しにした言動が多く(特に杉本はガッツリきてましたねー)、FC東京の選手たちはそれを上手い具合に右から左に受け流すのですが、先ほども書いたとおり、そこには決して嫌悪や皮肉といった類の感情はなく、単純に勝ちたいという思いがそうさせただけ。そのやり取りを見ていて、改めてこの戦いの意味を少しは分かった気がします。
 余談ついでにもう1つ。FC東京U-18が主戦場とする深川グランドの芝は年中緩めと言うか、踏ん張ると掘り上がってしまいやすい状態で、よく見ると両サイドがセンターより落ちている楕円状になっていて、プレーする側からすれば決してやりやすいとは言い難いピッチ。見る方も、スタンド席はあるもののピッチの角側にあって大変見づらく、プレミアリーグ時にはバック側を開放はしますが、こちらもピッチより低い位置からの立ち見(座ることも可)となり、時折「アレ、今どうなったの?」と追いきれないこともあります。しかし、先のやり取りは、四方を住宅が囲み、(本当は声援を含めた)応援が禁止されている、そして、ピッチサイドすぐそばで試合を見ることができるが故に試合中の「音」を感じることができる深川グランドだからこそ聞こえてきたもの。そして、選手とほぼ同じ目線でプレーを追いかけられることで、「何で今そこ見えてたん!?」とか「よくそこに出せたなー」といった驚きを感じられます。なので、もし一言で深川グランドの魅力を紹介しろと言われれば、私は「見づらいけど『見応え』のある場所」と答えます。東京ファンなら、一度ぜひ。というところで、ようやく試合について。長いわ!


 スタメンから。FC東京

――――13福森―――11湯浅――――
−7岩木―――――――――25二瓶―
――――15野沢―――8山口――――
6村松――4石原――5小林――27青木
―――――――16馬場―――――――

 の11人。1谷が前節・清水戦で退場となったため出場停止。18岩田は負傷(ボールボーイやってました)で、10橋本はU-18日本代表で遠征中のため不在でした。32岸も負傷中ですが、B戦には出ていたとか。対するヴェルディ

――――9高橋―――24高木――――
−8杉本―――――――――10端山−
――――7楠美―――14中島――――
19安在――3吉野――2長田――6田中
―――――――1中村―――――――

 の11人。2−4で敗れた9/18浦和ユース戦からは11南(負傷とのこと)、27畠中が抜け、吉野、高橋がスタメンに入りました。


 試合は早々にポゼッション主体のヴェルディ、カウンター主体のFC東京という構図になり、いわゆる「噛み合った試合」になります。そんな中、ヴェルディで特徴的だったのが田中、杉本、高橋のポジショニング。おそらくですけど、ヴェルディ側とすればFC東京の左サイド(特に村松のところ)が攻めどころと判断したんでしょう。6田中はウイングバックかと思わんばかりに高く、ワイドに張った位置までポジションを上げることがしばしばで、FC東京側もそれを上手く捕まえきれていませんでした。また、8杉本は試合開始時こそ左サイドハーフからスタートしたものの、結局右サイドハーフかよ!というぐらいに頻繁に右サイドにポジションを変え、そこで勝負する場面も多く見られました。そして高橋は、村松と石原の間やDFラインとボランチの間といった「グレーエリア」にフラフラっと入っていく動きが非常に印象的で、何度も「うわー、今入れられたら怖いぞ」と思いながら見ていました。が、そんな彼らにタイミングよくパスが入っていきません。高橋は何度も手を上げ、声を出してボールを呼ぶもそれが空振りに終わることが多く、高橋も前半ボールタッチ何回あったっけ?というぐらいボールが入る回数が少なく、杉本にはそれなりにボールが渡っていて、そこからのドリブルは脅威になっていましたが、崩しの流れの中では効果的なボールが渡らず、攻撃にリズムが出きらない前半となりました。
 その要因は、ヴェルディ側、FC東京側双方に合ったのかなと。ヴェルディ側は、楠瀬監督が「ボールタッチを少なく!」「感覚でパスを出すな!」など、ポゼッションのリズムを上げようとする指示が何度も飛んでいましたが、この日は選手たちが笛吹けど踊らず。楠瀬監督が総指示をせざるを得ないほどタッチ数が多く、安全な出しどころを常に探すだけのプレーが多かったように思います。引き出す側の動きは決して悪くなかったと思うので、CBやボランチの出す側がスペースや味方のポジショニングを捉えきれていなかったということでしょう。そして、そうさせた大きな原因はFC東京の守備の堅さ。守備時には2トップが縦関係になり、頂点の湯浅は積極的にボールホルダーへプレスに行き、その動きと連動して福森がパスコースを予見して切るポジショニングを取ります。その後ろはしっかりとした4−4のブロックディフェンスを敷き、大きなスペースを与えないことでドリブルやワンツーといった嫌な攻撃を未然に防御。唯一、上でも少し書いたとおり村松の守備時のポジショニングがやや不安定で、そこから崩されかけた場面もありましたが、決して破綻したということはなく、ほぼ狙い通りの試合運びができていたと思います。
 となると、FC東京としてはいかに点を奪うか、という目線に切り替わりますが、先ほども書いたとおり攻撃の狙いはカウンター。復調傾向にある岩木、心境著しい二瓶の両サイドアタッカーはスピードに乗ったドリブルでボールを運んだり、フリーランでボールを引き出したりしながら相手ゴールに迫っていき、村松、青木の両サイドバックも上手くオーバーラップして両サイドアタッカーと絡めていました。また、2トップも湯浅はDFラインとの駆け引きから上手く裏を取る、あるいは相手を背負った状態でスペースにパスを要求し、そのパスが出てボールが自分のところを越えようとするところで上手く反転してDFを置き去りにする、なんていう乙なプレーが見られ、福森は上手くこぼれ球、セカンドボールに反応して地味ながら怖い存在としてヴェルディ守備陣を慌てさせる場面はいくつもありました。しかし、試合後に倉又監督が「奪った時のファーストパスが丁寧さを欠いた。ヴェルディのプレスが早かったこともあり、通らずに奪われることが多かった」と語ったとおり、カウンターへ行く前にサイドボールを失ってしまう場面がいくつかあり、カウンターが嵌った場面でも最後の最後でCB、GKの頑張りの前にはね返されるシーンが目立ちました。まとめれば、前半はお互いが守備の場面で頑張り合ったスコアレス、という感じでしょうか。


 後半も大枠の流れは変わらずも、主導権を握ったのはFC東京。特に湯浅の動きが前半にも増して冴え渡り、立ち上がり早々に積極的なプレスから相手のイージーなミスを誘いチャンスの芽を生んだかと思えば、55分にはスローインに鋭く反応して惜しい場面を演出。そして、58分には前半にも見せていた「反転してDFを置き去りにするターン」で完全に抜け出し、エリア内に入ってきた岩木へスルーパス。これを岩木がインサイドで丁寧にシュート!…も、あぁ無情のクロスバー。しかし、FC東京は完全に押せ押せ状態になります。それに対抗すべくヴェルディは2枚替え。個人的にはずっと怖いと思ってきた高橋に代えて5館野を、(怪我明けだったらしい)端山に代えて12前野を入れてテコ入れを図ります。で、前野は今一つ効果的だったとは言い難いところですが、館野の投入はドンピシャリ。SBで起用されることが多いとのことですがこの日はボランチに入り、シンプルにボールを叩くことでポゼッションに流動性を生ませたと同時に、ボランチでスタートした中島が本来のフォワードの位置に移ったことで攻撃にリズムが生まれ始めます。主導権を完全には渡したくない東京は、69分に二瓶→26川上の交代を行い、福森を二瓶が抜けた右サイドハーフに落とし、川上を2トップの1角というべきか、トップ下というべきか、とにかく真ん中前目にポジションさせて活性化を図ります。
 しかし、先制したのはヴェルディでした。75分、この日一番と言っていいくらいうまく嵌ったプレスからボールを奪い、館野がフリーでボールを持ちます。そこから少しボールを運びますが、FC東京の選手は守備の陣形を作りきれず誰も捕まえられず。そして、まだ結構距離はありましたが、館野は一厘の迷いもなく左足を振り抜くと、このシュートがものの見事にゴール左隅に突き刺さりました。私が立って見ていたところからはこのシュートの軌道がそれほどはっきり見えたわけではありませんが、シュートを打つ瞬間、打った瞬間に感じた思いは「まずい!」の一言。それぐらい、素晴らしいものでした。誉めるしかないのが、ホント悔しいですけどね。ちなみに、5/4のダービー第1戦の際も、唯一のゴールは館野のミドルシュート(しかも、時間帯も74分とほぼ同じ)でしたが、ヴェルディ側からすれば歓喜の、FC東京側からすれば悪夢の再現となりました。しかし、今のFC東京はここでへこたれません。直後の76分、右サイド深いところで得たFKから川上が中へ送ると、これを石原が上手く頭で捉えてシュートを放ちます。こちらも撃った瞬間の軌道は「入った!」と思って思わず前に身を乗り出しましたが、なんとまさかのポスト直撃。そのこぼれも中ではなく外へ流れていき、絶好のチャンスが手からこぼれていきました。
 その後はヴェルディが27畠中を入れて守備を締めにかかれば、FC東京は19斎藤、24天野を立て続けに投入し同点、逆転を狙いにいきます。82分には杉本のミドルシュートがポスト直撃で肝を冷やしたのを挟んで、試合のクライマックスはアディショナルタイムに訪れました。91分、小林が右サイドにポジションを代えていた岩木にパス。青木が懸命のオーバーラップでヘルプに入り、DFもそちらに気がいったその瞬間、岩木は青木をオトリにして中へボールを切り返し、左足でシュート。館野のそれとは違い、私の見ていたところからも岩木がシュートを放ったそのコースが同点への道筋に見えたので、先ほどの石原のヘディング以上に「キタ!!!」と心の中で叫びましたが、中村が横っ飛び一番のスーパーセーブでこれを外にかき出します。その後もう一度CKのチャンスを得ますが、これもゴールには結びつかず、このままタイムアップ。ダービーマッチの凱歌は、再びヴェルディに上がることとなりました。


 先にヴェルディから。楠瀬監督は試合後「ボールは持てていたけど、支配できていない。自信を持って動かせていなかった」と語ったそうですが、確かにそのようなゲームになってしまったと思います。ヴェルディらしいドリブル突破も杉本を除けばあまり怖さを感じませんでしたし、FC東京の守備に嵌る時間帯が多かったのは、誰が見てもそう思ったはず。それでも勝ったのはヴェルディ。いい意味で均衡したゲームを見せてくれた前半を終えて、「得てして、こういうゲーム展開で得点が入るなら飛び道具だけど…」とはチラッと思いましたが、前半から杉本をはじめ、チームとしてミドルシュートの意識を高く持ち続け、それを実践し続けたことが実った(シュートの9割がミドルだった、ってくらいの印象)、とまとめるのがスムーズかな?と今は思っています。しかし、層が厚いですねぇ。
 FC東京。前節・清水ユース戦は見ていないので分かりませんが、前々節・浦和ユース戦と比べればだいぶやるべきことが整理されていて、11人の意思統一がしっかりと図られた上でゲームを進めることができていて、守備の狙いはほぼ完璧、攻撃もしっかりと意図は見て取れて、ある程度やりたいことをできていたと思います。しかし、一番しなければいけなかった「勝ち点を奪うこと」だけが叶いませんでした。正直、その原因をどこに求めるかはかなり難しいところです。決定力不足、とは言いたくありません。実際そうでしょ?と言われれば、まあ返す言葉もないのですが、それで終わらせてしまっては何も進歩がないので。それで、無い頭を絞って試合後からいろいろ考えを巡らせましたが、一番(期待を込めて)厳しく言うとしたら、それはボランチの野沢、山口の2人のところかなと。現状、この2人の役割分担としては「攻める野沢、守る山口」と言って差し支えないと思います。トップに照らせば「高橋=山口、梶山=野沢」という感じ。しかし、浦和戦とヴェルディ戦の2試合を見る限りは、何か小さくまとまってしまっているように思えて仕方がありません。
 野沢については、8/23青森山田戦のようにCBの間まで下りていっていいので、もっとはっきりとボールを呼び込んで、俺がゲームをコントロールするんだ!ぐらいの気持ちでプレーしてしまっていいと思うんですよね。もちろん、この試合については狙いがカウンターにあって、ボールを持ったら素早く前を見ることがファーストチョイスだったため、CBがボールを持った際にはもらいに行くのではなく、もう少し高い位置でボールを引き出して前線との橋渡し役になったり、前線へのロングボールに対してセカンドを狙ったりというタスクが任されていたのかもしれません。しかし、いくら狙いがそうであったとしてもそればかりになっては相手も読みやすく、この試合でも攻撃が単調になった時間はありましたし、高めの位置でボールを持っても、逆に言えば相手に近いところでもらっているために狙われて失うというシーンもありました。そうなってしまっては本末転倒なわけで、そういった時に自ら戦況を判断して「ここはCBに加担してボールを大事にしよう」とか、「もっと前線に顔を出してサポートしよう」といった極端な動きがあってもよかったのかなと。U-17W杯グループリーグ初戦のジャマイカ戦、後半の野沢はまさに「キング」でした。中盤が間延びしてスペースがあったことは助けになりましたが、しかし常にボールをもらえるポジション取りをし、もらってからの選択肢もほぼノーミスで、攻撃の中心として輝いていました。立場(シチュエーション)がそうさせる、内に秘めた力を引き出すことは確かにあります。でも、あの時の試合がそうであったとしても、意識を高く持てばあれだけできる選手なんですよね。ヴェルディの選手からは何度か「(最終ラインにプレスを)詰めきれば蹴るしかないから」といった類の言葉が聞かれました。その度に「ヒデ!お前だよ、やるのは!」と心の中で思っていましたが、この試合では結局ゲームの中に埋没してしまった感が否めませんでした。それが残念なんですよ。
 そして山口。決して目立つ仕事をするタイプではなく、良くも悪くも黙々と自分の仕事をこなしている印象がある彼を見ていて思い出すのが、09年に同じく8番を背負って、主将として戦っていた年森勝哉。彼もしっかりと見ていればプレービジョンが広く、おぉと唸らされるプレーをしてくれていましたが、しかし、チームの中で相対的に見れば黙々と、という言葉がしっくりくる選手で、ともすればその良さを見落としてしまうぐらい目立たないまま終える試合もありました。ただ、年森は最後の最後、年末のJユースカップでは文字通りチームの中心として、腕章が似合う男にしっかりと成長しました。決して、今の山口に腕章が…という話をしているわけではありませんよ。ただ、それを巻いているからには、やはり他の選手とは違う「求められるもの」があるわけですよ。それが何かというのは、それぞれのサッカー観によって変わってくると思いますが、私は「目に見える鼓舞」が大きなものだと思っています。苦しいときに声を出して、手を叩いて、感情をむき出しにして、チームに影響を与えられる選手こそが、腕章を巻くべきだと思っています。で、残念ながらこの日の山口はそれができていたとは思いません。自分のことで精一杯、そこ止まりだったように思います。この夏、チームはかつて経験したことがないんじゃないか?というほどどん底に叩き落されました。その中でも特に、3年生は一敗地に塗れました。しかし、ここにきて小林、石原、岩木、湯浅には復調、再上昇の兆しを見ることができています。となれば、あとは山口だけなんですよ。彼がもう一皮剥けて、残留に向けてのラストピースとして戻ってきてくれないとダメなんですよ。お前ならやれるから。信じてるから。
 倉又監督は、試合後「目標は残留に切り替えた」と語ったそうです。おそらく、見ている私たち全員が同じ気持ちだと思います。ここからは、これまで以上に勝つことへの貪欲さが求められますし、そのために何をするのか、という選択の正誤を求められます。だからと言って小さくならず、縮こまらず、自分たちを出し切る戦いを期待したいと思います。