続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

見えてきたものと、見えてこないものと

 Jリーグもほぼ1/3にあたる12試合を終えました。まだ1敗しかしていないG大阪が首位に立っていますが、2位柏が4敗、3位浦和も3敗、前年王者の鹿島はすでに5敗と上位陣が星を落とし続け、1位から8位神戸までまだ勝ち点差が5という大混戦になっています。

 東京は6勝2分4敗、勝ち点20で現在7位。出来れば昨日の試合で勝利して勝ち点22にしておきたかったところではありますが、なんとか上位に食らいついているとは言えるでしょう。

 とはいえなんだかスッキリしない、ハッキリしない、なんなら「勝ち越してるの、何で?」と思われている方もいるでしょう。私も勝ち越せている感は全くなく、心の底から「いやー、今日は素晴らしかったわー」と思えたのは…鹿島戦か川崎戦ぐらいでした。

 当ブログで、篠田トーキョーについては再三「戦術的に深掘りする要素が少ない」と書いてきました。もちろん、今もその考えは変わっていません(昨日の試合も、3バックへのシフトチェンジがややスベりましたし)。また、前回のエントリの締めで

篠田トーキョーの上限値は、もしかしたらこの4月の急減速で見えてしまったかもしれません。しかし、高萩の復帰こそ必要にはなりますが、その上限値――鹿島戦や川崎戦で見せたような戦い方――を高いところで維持することさえできれば…私はそこに望みがまだあると信じています。

  と書きましたが、その際友人から「属人的なやり方で高値安定はありえない」とツッコまれました。半分言い訳ですが、私も盲目的に高値安定を期待していたわけではありません。仕事でもそうですが、ある会社・組織がマンパワーのみで成り立っていて、そこに指揮系統がない、あるいは効率化、平準化ができていないところは長続きしないケースが多いことは、私も社会人をそこそこの年数経験して知っているつもりですから。それでも…との思いでこのセンテンスをまとめに書きましたが、まあやはりちょっと夢物語すぎたかと、今では少し反省しております。

 そんな書き出しで今日何書きますの?というと、「深掘りする要素が少ない」と書いておきながらの戦術面について。柏戦、神戸戦と見直した中で、ちょっとだけ見えたものというか「お、これはいいんじゃない?」と思った部分と、やはりまだ見えてこない部分と両方ありました。その見方が合っている・合っていないは読んでくださった皆様に委ねますが、現状認識と妄想入り混ぜて、少々書いていこうと思います。

 

 柏戦、中川とクリスティアーノから始まる切れ目ないプレッシングに、東京のビルドアップは全く体をなしていませんでした。柏戦に限らず第2節大宮戦や第5節鳥栖戦など、それなりの強度のプレッシングを外す術は残念ながら持ち合わせておらず、いくつかのメディア上でもビルドアップ時の拙さは指摘されています。

 しかし神戸戦、少なくとも前半のやり方は、神戸が4-1-4-1でやや待ち構える守備をしてきてくれたことに助けられた部分こそありましたが、ポジティブに映りました。その大きな要因は「フリーマン・大久保」と「中に絞るサイドハーフ」の2点だったと見ています。

 事前に「神戸は高橋をアンカーにおいてくるだろう」というスカウティングがあったのか、大久保はこれまでとは違い、意図してアンカーの両脇のスペースを立ち上がりから突きます。また、神戸が前半途中に4-4-2に変更してからも、4-4のライン間でフラフラしてボールを受けようとする動きをやめることはありませんでした。結果として、先制点は大久保が下りてきて森重からボールを受け、スッと前を向いて前田に縦パスを入れたところから。大久保の動きは奏功していたわけです。

 大久保が前線にこだわらず、いろんなところに顔を出す動きを見せたのはこれが初めてではありません。また、川崎時代のエピソードを持ち出し「大久保が下がってこないといけない東京の攻撃はー」とか「大久保を前に留まらせる人がいないとー」といった指摘もいくつか目にしてきました。

 私も当初は「下がりすぎじゃない?」と見ていましたし、これらの指摘の前提には「大久保=ゴールゲッター」があるのではないかと推測します。その前提に立つと、もちろん「下がる=ゴールから離れる」わけですから、どうしても違和感に繋がってしまうでしょう。

 しかし-もちろん大久保自身ゴールを重ねたいでしょうけど-東京が優勝を目指すに当たって、大久保が15~20点取らないといけないのだろうか?と考えると、私は決してそう思いません。また、今のスカッドにおいて誰が一番「止める・蹴る」巧いの?と考えると、答えは大久保か高萩になることは納得していただけるはず。

 そうなると、現状中盤でボールを納め、そこから展開するにあたって、高萩と大久保が近い位置でプレーすることがプラスになれど、マイナスになることはありません。ならば、大久保を最前線に押し込めておくことが得策だとは、私は思わないんですよね。

 一方で、大久保がただ自分の意思でフラフラすることがチームに流動性をもたらすわけではなく。大久保が下りる動きを見せる周りで、他の選手がどうポジションを取れば自分たちのボール回しがスムーズになり、相手が守備しづらいかを考えた時、神戸戦の前半で何度か見られたサイドハーフが中に絞るポジショニングは、いいアイデアだったなと。

 この試合「永井と室屋の連携がいつになく良いな」と感じました。なんでだろう?と考えながら見直してみると、これまでは永井はタッチライン沿いに張って走りたい、けど室屋もタッチライン沿いをオーバーラップしたい、結果使いたいエリアがもろ被りしていたのに対し、この日は永井がいわゆる「ハーフスペース」にポジションを取る場面が何度か見られました。得点シーンは大久保にボールが入る前に外から中へポジションを移し、最終的に相手センターバックサイドバックの間を抜けていく流れ。これは今季見られなかった形だったと思います。

 

 また、自陣でのビルドアップに目を移すと、柏戦では大田、徳永がやや無為にポジションをあげてしまい、高萩、梶山も最終ラインに落ちるのではなく1列前でうけようとするあまり、森重、丸山がまともにプレスの餌食となりました。神戸戦も基本的には後ろ2枚だったかと思いますが、しかし柏戦よりは確実に、センターハーフ1枚が最終ラインに落ちる動きが見られました。

 この動きはもはやベーシックの域に入り、狙いには「後方の数的優位を確保すること」や「サイドバックを高い位置に送って攻撃によりスムーズに絡ませること」がありますが、今の東京にこの形をやるメリットがあるとすれば、太田をより攻撃的に振る舞わせることでしょう。

 フィッカデンティ監督時代は「戦術・太田(&武藤)」と揶揄されるほど、攻撃においてはどう太田を活かすかが、ある程度オートマティズム化されていました。ただ、今季復帰してからここまで、クロスで存在感を見せられたのか川崎戦ぐらい。多くの試合では「上がっていくけどスペースがない」とか「自陣で奪ってから長いボールに頼り、上がっていけない」場面が散見されます。

 しかし、後ろに1枚落ち、サイドハーフが中に絞ってセンターでの数的優位を保った上でボールを回すことができれば、太田が上がっていく時間とスペースが生まれます。一方で、右サイドバックは太田ほど高い位置は取らず、ビルドアップにも絡みながら、機を見てスプリントでオーバーラップするイメージを持たせられれば、バランスがいいでしょうか。

 これらを踏まえたポジションを、端的に図に落とし込むとこんなイメージ。

f:id:re-donald:20170521120338j:plain 図1

 後ろに重たい印象が残るのはもう仕方なく、行ったり来たりで体力を消耗するぐらいなら、「パスのためのパス」「ポジションを整えるためのパス」をどこまでチームで許容しつつ、誰が受け手としていいポジションを取れるか、そして、そこにボールが入った次にすぐスピードアップできるかを考えていければ、神戸戦の前半のようなスムーズさは出るんじゃないかと考えています。

 また、ここまでは中島を左、河野を右で、いわゆる「逆足のポジション」で起用するケースが多く見られますが、上の考えに立てば、中島はアタッカーとして右、河野はビルドアップに絡む役割として左で起用する方が理に適っているかなと。

 

 神戸戦の前半で見せた立ち位置、攻撃の組み立て方がもし意図したものだとして、かつ対神戸として用意した限定的なものでなければ、幾ばくか攻撃の質の向上が期待できるのではないか?と思っています。方や、これまで攻撃よりは評価を得ていた守備面については、正直まだどうしたいのか、ピンと来ない部分があります。

 神戸戦後、前田は「守備のスイッチを入れることは出来た」とコメントしました。確かに、以下の図のような場面では、前田がスイッチ役になれていました。

f:id:re-donald:20170521133352j:plain 図2

 ただ、毎回これだけ整って守備をすることはもちろん不可能で。第1ラインを破られ、自陣に侵入を許す場面は出てきます。そうした際に、じゃあどこまでラインを下げ、どこで取りに行くのか?がまだ見えてこない点の1つ。逆説的に言えば、ここまで林がセービングで目立っているのは、自陣での守備においてシュートまで持ち込まれているわけですから。そんな自陣での守備、ここまで良く見られる対応は、以下の図のケース。

f:id:re-donald:20170521134616j:plain 図3

 相手のセンターハーフがボールを持った際、まずは当然センターハーフがチェックに入る。そうすると、どうしてもバイタルエリアが空きやすく、そこに相手のフォワードやトップ下、シャドーの選手が下りてきて受ける動きを取られがちですが、それに対しては近いところにいるセンターバックどちらかが食いつき、少なくとも前を向かせないようにする。そうして飛び出してあいたスペースはセンターハーフが下りて埋める。そして、サイドは1対1あるいは2対2と対面の相手を意識しながら、可能であればセンターハーフがヘルプに入る。私は、これが原則のように見えます。

 一見すると、数的不利になるような局面はなく、カバーリングやスライドさえしっかりできていれば、そんなに破綻するようには映りません。ただ、柏戦までの数字では被シュート数が13.8本で(少ないほうから数えて)14位とシュートは打たれてしまっており、前述したとおり、失点数の少なさは林のおかげ。

 では、なぜ自陣での守備でうまく相手の攻撃を食い止められていないのか?それは皆さんも薄々お気づきのとおり、「個人の守備の弱さ」になるでしょう。浦和戦、丸山はもっと興梠の走るコースを消し、外に追い出せなかったか?柏戦の2失点目、太田はもっと強く伊東に当たって、シュートを防げなかったか?何より神戸戦、森重のウエスクレイに対するプレーは正気の沙汰だったのか?他にも、細かいところをあげればキリがありません。

 

 コンディションの問題が大きく、全員がもっとキレてくることで解決が図られるなら、そのときを静かに待つしかありません。しかし、個人戦術の部分なのだとすれば、解決するためには戦術を施さなければなりません。そう考えた時、思いつくアイデアは2つ。

f:id:re-donald:20170521142132j:plain 図4

 1つ目は「リトリートからの人海戦術」。しかし、CB3枚を起用するのではなく、攻撃時のことも考えてセンターハーフに1枚守備型を起用し、守備時のみ最終ラインに下りる形(下りる位置は真ん中でも両脇でも)。また、サイドハーフは中へ絞って3センターハーフのような立ち位置を取り、とにかく真ん中で数的不利を作らない意識を持つ。このときのミソは、5-4-1にするのではなく5-3-2とすることで、自陣でボールを奪ったあとのロングカウンターも睨んでおくことでしょうか。

 けれど、個人的には序盤に書いた攻撃の形をより守備とも連動させられたら…と。また、これからますます暑く、湿度が高い時期に入るなか、あまり全選手が上下動するような、あるいは守備時にずっと細かく動かないといけないような形は避けたいところ。そう考えると、以下のような守備がスムーズだと考えます。

f:id:re-donald:20170521143436j:plain 図5

 図1の攻撃隊形から守備に切り替わった5~7秒間、前の選手はとにかく自分の近い選手を捕まえにいき、相手を前進させない。あわよくばボール奪取まで狙い、もし敵陣でボールを取り返せればショートカウンターもあり。その間、ボールと逆サイドのサイドバックは状況を見ながら帰陣し、後ろの3枚とあわせて4バックを形成し、プレスの第1波をかいくぐられた際のリスク管理をする。まあ、プレスをかいくぐられたということは後ろが1対1に晒されるわけで、前述した「個人の弱さを隠す」こととは矛盾しますが、前からの行くのであればそこは「必要悪」として受け入れるほかありません。

 

 現在のフットボールは、「攻撃(ボール保持時)」「守備(非ボール保持時)」「ネガティブトランジション(攻撃→守備への切り替え)」「ポジティブトランジション(守備→攻撃への切り替え)」の4局面に集約されると言われます。また、攻撃は「ポゼッション」と「カウンター」、守備は「プレッシング」と「リトリート」に切り分けられます。

 全ての局面で、全てのことを臨機応変にやれるチームは、世界に数えるほどしかありません。そうではないチームは、何を諦め、その分何をアイデンティティとして打ち出していくか?それを監督がコーチと相談しながら決断し、選手に伝え、選手は監督の意図を理解してやれることを精一杯やる。これ以外に、勝ちへの近道がどこにあるのでしょうか?

 就任してからはまもなく1年、今季に入ってからは約2ヶ月。篠田監督は何を諦め、その分何をチームに求めているのか?それが見えてきた部分もありますし、いまだ持って見えない部分もあるなか、この先どう推移していくのか。神戸戦で見えたかすかなポジティブさを私は信じていきたいと思いますが…ダメならダメって書きます(苦笑)