続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

「集大成」vs「決意表明」-天皇杯準々決勝プレビュー的なもの

 鹿島アントラーズが「下克上」を果たして幕を閉じた、今季のJ1。その鹿島に初の戴冠を阻まれたのが、川崎フロンターレ。久々にチャンピオンシップ準決勝のハイライト映像をJリーグ公式サイトで見てみましたが、そこに恣意的なものが仮にあったとしても、圧倒的にはゴールへ迫っていたのは川崎でした。

 風間監督はチャンピオンシップで敗れたあとの記者会見で、このようなことを語っています。

── クラブ史上最多の勝点72を獲得してシーズンを終えましたけど、最後に勝ち切るために何が足りなかったのかというところと、素晴らしい雰囲気を作ってくれたフロンターレサポーターの皆さんにひと言、お願いします。 

 

(前略)それからもう1つは、このチームの期待が初めから大きすぎるので、本当は、いつも言っていますけど、初優勝はこっそりするものだと思っているのですけど、最初から周りからすごくヒートアップするので、そこはチーム全員で、色んな選手たちも含めて、強いクラブになるために全員でやっていってほしいなという僕のお願いはあります。(後略)

  なんとも深謀遠慮なコメントで、「風間監督、頭良いんだなぁ」と私なんかは思わされましたが、一方で風間監督の退任がすでに発表された中、リーグタイトルを逃してしまったことも踏まえ、ともすれば風間監督が望まないほどチームの内外に「風間監督とタイトルを!」という思いが充満していることは、想像に難くありません。天皇杯の戦いが、タイトルへの再挑戦が風間体制5年間の「集大成」となることは、火を見るよりも明らかでしょう。

 

 対するFC東京。苦しいシーズンでした。その心はこのブログでも再三書いてきたつもりなので、改めて振り返ることはしませんが、シーズン半ばでの指揮官交代をフロントに決断させたのは、川崎との多摩川クラシコにおける敗戦だったと記憶しています。また、先のJ SPORTS「Foot!」では、こんなありがたくないセレクトも、頂戴してしまいました。

 しかし、篠田監督就任後はリーグ戦8勝2分2敗。ルヴァンカップ含め、浦和にこそ歯が立ちませんでしたが、鹿島や広島には狙い通りの試合運びで勝利を収めるなど、ポジティブな空気をチームにもたらした…というよりは、思い出させた手腕は、素直に評価されていいでしょう。

 そんな篠田監督のサッカーについて、当ブログで以下のエントリを書かせてもらいました。

 全部お読みいただく必要はありませんが(読んでいただけたらなお嬉しい)、要旨を書き出すと、以下のようなものとなります。

 そもそも、篠田体制下の東京を私はどう見ているか。答えは冒頭に書いたとおり、「戦術的に深掘りする要素が少ないな」という印象。もちろんJ1残留を最大のミッションとし、コンディション面における前任の負の遺産や怪我人、J3とのやり繰りを踏まえれば、篠田監督がこの短期間で戦術的な要素を押し出せる状況ではなかった、と見るのが筋でしょう。しかし、そういった副次的な側面を排除して、試合内容にだけフォーカスしてみると、良く言えばシンプル、悪く言えば前時代的なサッカーだな、と私は感じていました。

 (中略)

 フロントが主導して「東京味」を作り出し、そこに「○○風」の彩りを添えられる監督を連れてくる考え方も、当然あるでしょう。今、1つのサイクルが終わったとされる東京にとっては、このやり方で数年かけて頂点を目指すことが一番くどくないやり方とも言えるでしょう。

 しかし、篠田監督の続投がもし明日の試合後、あるいは最終節の大宮戦後に発表されるようなであれば、(天皇杯の勝ち進み具合にもよりますが)今季から来季への空白期間が異常に長い状況下で、篠田監督が「東京味」のメインの味付けを決められるシチュエーションとも言えないでしょうか?

 今思えば、「前時代的」という表現はさすがに度が過ぎたと反省しておりますし、むしろ「近時代的なのでは?」と思い始めている…というお話は後述しますが、いずれにせよ、リーグ戦で結果を残しながら、少しずつ自分の考えをチームに落とし込んできた篠田監督が、そんな篠田監督の教えを受けている選手たちが、前回の試合(天皇杯4回戦、Honda FC戦)から1ヵ月半以上経った明日改めてどのような「決意表明」を見せてくれるのか、今は楽しみが大いに勝っている状況です。

 

 

 さて、試合の注目ポイント。全うな方の目線で見出しを書くとすれば、「川崎のポゼッション vs 東京のプレッシング」になるのかなと。川崎がボールを大事にし、技術を大事にし、最後まで攻めることを大事にするであろうことはここで改めて書くまでもなく、対する東京も、篠田監督がフィジカルを戻し、インテンシティを高め、まずは果敢にプレッシングするところから始めるスタイルを推し進め、シーズンラスト3試合はその成果が十分に見られたと思います。

 が、私の注目ポイントはちょっと違いまして。見出しを書くとすれば、「前時代的なのか?近時代的なのか?」先にリンクを張ったエントリの数日後、こんなエントリを書きました。

 先の「Go Forword」で書いた私が思う篠田トーキョーのスタイルをもう少し詳細に掘り下げた上で、来季への妄想を膨らませているエントリになりますが、今改めて自分で読み直してみると、ほんのりあるチームの姿とかぶるなぁ、と感じました。それが…RBライプツィヒ

 海外サッカー好きの方ならもう耳に馴染んだチームかと思いますが、大手飲料メーカー「レッドブル」がバックにつき、言ってしまえばレッドブルマーケティング戦略の一巻ともなっているRBライプツィヒ。この「RB」が、「RasenBallsport=芝生の球技」の頭文字を取っていながら「RedBull」を彷彿させることは明らかで、保守的なファンからは大いに嫌われている、なんてエピソードもよく聞きますが、こと試合内容に限って言えば、多くのメディア、評論家が好意的に受け止め、「ライプツィヒが見せているサッカーこそが、モダンなサッカーだ」と評する人もいるほど。

 では、ライプツィヒのサッカーって何?というお話ですが、ドイツでは「パワーフットボール」と呼ばれ始めている特異なスタイル。守備時は果敢なプレッシング、極端なワンサイド守備により相手を窒息させるかのような圧力をかけ、ボールを奪ったあとはとにかく手数をかけずにゴールへ迫る。ここまでは、いわゆる「ゲーゲンプレッシング」と呼ばれる、ドイツ以外でも広がりを見せ始めているアグレッシブなスタイルとも言えますが、特徴的なのが自陣から攻撃が始まる場面。

 先日、ヘルタ・ベルリンと戦った試合を見ていました。この日のヘルタは、スカウティングの結果「自陣に引いて相手にボールを持たせ、人をかけてボールを奪ってカウンター」という戦術を採用。まあ、これはカウンターを得意とするチーム相手の常套手段ともいえるもので、これを受けたライプツィヒの立ち上がりはややぎこちなさが見られました。

 しかし、15分と経たないうちに試合は完全にライプツィヒペースに。その要因となったのが、「引かれているのに広げない」ことの意思統一。通常、引いて守ってくる相手に対しては、縦と横の出し入れや、ワンサイドに寄せての大きなサイドチェンジがよく見られる対応策ですが、ライプツィヒはとにかく縦を、中を狙い続け、少しでも縦への、中へのパスコースが見つかったと思ったら、迷うことなくグラウンダーの強いパスを入れ続けていました。

 これが、特定の誰かに偏っているのであれば、それは選手の個に寄っているだけですが、誰がボールを持ってもそうしていたので、これはもうチームのスタイルなんだな、というのはすぐに分かり。結果も、前半のうちに自陣にこもるヘルタ守備陣を完全に破って先制し、後半にも追加点を奪ったライプツィヒが2-0と快勝。この時点で、バイエルン・ミュンヘンと同じ勝ち点をキープすることとなりました。

 

 翻って東京。上記にリンクを張ったいずれのエントリでも書いたのですが(たぶん)、篠田トーキョーの特長は「前線からのプレッシング」と「中を崩そうとする意思、選手構成」。特に後者は城福監督時代とは雲泥の差で、長くなりますが、以前のエントリで書いたその心の部分を再掲します。

そんなビルドアップのシーン。中心は両センターバック+両センターハーフ。時には4枚が近いポジションを取りながら、時にはセンターバックが開き、センターハーフの片方が間に降りながらボールをコントロールするところからスタートしますが、ポイントは、この2パターンにおける「次のボールの行先」が違う点。

 すべてのシーンでそうだ、というわけではないことを御了承いただいた上で話を進めますが、4枚が近いポジションを取る場合、当然相手も中(縦)を警戒して全体的に中へ収縮してくることが多くなります。そのタイミングを見計らってサイドバックはグッとハーフウェーライン付近までポジションを押し上げ、中からボールを受ける役に回ります。特に顕著なのが左サイドで、室屋が機を見て上がったところに丸山からのビシッとしたグラウンダーのパスが通る、というシーンをこのところ頻繁に見かけますよね。方や右サイドは、橋本が本職ではない影響なのか森重と合わないのか、ややぎこちなさが残ったまま。つぶさに見ていると、森重が橋本にもっとこうしてほしいと要求するシーンが散見されますし。とはいえ、意図としては右も左も「収縮させて外へ」で一致しています。

 一方、センターバックが開き、センターハーフ1枚が間に降りてくる場合ですが、センターハーフの片方はセンターバックの間に降りてビルドアップに関わる、もう片方は逆にビルドアップにさほど関わらず、ハーフウェーラインを越えて2列目の3人と近い距離を取る。そして、サイドバックは自陣に残ってパスのクッション役(例:中でのパス交換がちょっと詰まった際に、目線を広げるための横パスを受ける)を担い、結果として後ろ5枚で回しながら、前の4人いずれかに縦パスを通すことが主眼となります。

 また、この時サイドハーフはインサイドエリア(ピッチを縦に5分割した際の、センターエリアの両隣)に絞ることが多いのですが、絞ったサイドハーフへのパスコースを作る(相手ブロックの門を広げる)意味で、サイドバックが開いたセンターバックに押し出されながらもさほど高い位置を取らないのは理に適っているなぁ、と個人的には感じています。伝わるか分かりませんが、下図のイメージ。

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そうして、上手く2列目+押しあがったセンターハーフのいずれかにボールが入った後は、1トップも含めた5人で近い距離を保ちながらパス交換を行い、最終的にはドリブルからのシュート、ポストプレーからの展開、あるいは一発のスルーパスなどでゴールに迫っていきます。サイドハーフが中島&河野ではなく、中島&水沼だった仙台戦、大宮戦でも意図・狙いは変わらなかった(個人的には水沼にアウトサイドエリアで勝負させるのかな?と思っていたが、そうでもなかった)ので、おそらくこの部分は練習から徹底されているのだと推測します。

 ただ、当然相手も中を崩されまいと対応してきて、主にバイタルエリアは混雑します。その分、外が空いて時にはオイシイスペースを与えてくれる場面もあるわけですが、サイドアタックには明確な意図を感じられません。先ほどの「後ろ4枚で回している間に押し上げたサイドバックへパス」するパターンでも、「中でボールを回している中で空いた外へサイドバックが駆け上がってきてパス」するパターンでも、クロスを全く上げないわけではありませんが、一般的に「この流れならクロスだろ」というシーンで素直に上げていたシーンは数えるほど。

むしろ、2列目の選手が近づいてきてボールを受け、あるいはセンターハーフに戻して、そこからもう一丁中で勝負する選択の方が多く見られ、ちょっとだけポポヴィッチ時代を思い出したりもするわけですが、あくまでクロスは次善の策という印象。クロスの球質もハイクロスは極めて少なく、グラウンダーやプルバックがメインとなっているなぁと感じています。

 図のとおり、ペナルティエリアの幅より外にいるのはサイドバックだけ、という時間帯が長く、かつサイドバックはあくまでもパスのクッション役であり、サイドからのクロスは次善の策とまで言っていいほど、外から中という攻撃は数えるほど。と評せる試合が、終盤は続いていた印象があります。

 ライプツィヒの、ラルフ・ラングニックのイズムほど極端ではありませんが、中島、河野、東は中にとどまって細かく動きながらボールを引き出す。そして、森重、丸山、梶山とそこへパスをつけられる技術のある選手はいる。かつ、田邉があれやこれやと間を繋ぎ、縦に、中にアタックを仕掛ける。そして、そのアタックを果敢なプレッシングと組み合わせ、心身ともに90分アグレッシブでい続ける。

 そんなスタイルを、前時代的だと表現した私は正しかったのか?むしろ、時代の潮流を掴んだ近時代的なやり方なんじゃないか?そのことを自分自身に問い、自分なりに答えを見つけ、それを篠田トーキョーの改めての「決意表明」だと受け取る。それが、明日の多摩川クラシコ in クリスマスイブの私的ポイントとなります。

 

 

 もちろん、勝敗が一番です。なんたって、またACLに挑戦したいですから。また、こんなくそめんどくさい見方をしている私は、ちょっと年末疲れてるんだと思います。が、年内最後の生観戦ですから、いろんなことを味の素スタジアムで感じて、味の素スタジアムから持って帰ってこられたら…それが東京からのクリスマスプレゼントなのかなと。

Are you still hungry?

 今季のFC東京U-18は、夏のクラブユース選手権、冬のJユースカップをともに制し、「二冠」を達成しました。ただ、チームが年初に打ち立てた目標は、さらに大きい「三冠」達成。そのためには個人が、チーム全体が「1試合にこだわる姿勢」と「1試合(だけ)にとらわれない目線」、この2つのメンタリティを、己の中でせめぎ合わせながらも常に等しく保ち、1年間を過ごさなければなりません。それがいかに難しいものであるかは、論を待たないところでしょう。

今年…に限った話ではありませんが、私は基本出不精なので、全ての試合を目にしてきたわけではありません。よって、ここまで個人が、チームがどのように歩みを進めてきたのかについて、なにか偉そうに書くことはできません。それでも、私なりに断片的に見てきた「点」を無理やり「線」に繋げてしまっていいのであれば、贔屓目抜きで「右肩上がりで進んできた」と胸を張って言えます。

 しかし、クラブユース選手権、Jユースカップ二冠の裏で、プレミアリーグEASTでは9月11日、大宮ユース戦以降の6試合で2勝4分と、突き抜けきらない状況が続いています。Jユースカップは3回戦(名古屋U18戦)、準決勝(京都サンガU-18)、決勝(広島ユース)の3試合を現地、もしくはテレビで見ることができ、それぞれかなり苦労しながらも勝ち切っていた姿が目に焼き付いていただけに、はてどうしたものか?と思う日々を過ごしていました。

そんな中、日曜日に行われた鹿島ユース戦。友人の車に同乗させてもらい見にいくことができました。前日大宮ユースが新潟ユースに勝利したことで、今節優勝が決まる可能性はなくなっていましたが、それでも結果如何では「王手」をかけることができる一戦。結果も去ることながら、終わった後に何か感じるもの、感じられることがあれば…と思いながら会場であるカシマサッカースタジアムへ到着しました。

 

 

到着してほどなく、両チームのウォーミングアップが始まりました。ユースの試合をご覧になっている方なら御存知かと思いますが、鹿島ユースはかなり独特というか、クラブユースとしては異質な「部活」感を強く感じさせるアップを行うことで有名。対して、東京U-18は良くも悪くも自由で、ゆらゆらした雰囲気からいつもアップはスタート。この日も双方イメージ通りのアップスタートとなり、「鹿島、相変わらずだなぁ」と思いながら流れをしばらくぼんやり見ていると、東京U-18はほどなくして、ロングボールを蹴り合うアップを始めました。

プロでもユースでも当然にロングボールを蹴り合うアップは行い、そのシーンを見たことがある方も多いと思いますが、多くは2名がタッチライン沿いに広がり、ピッチの横幅を使って蹴り合います。しかし、この日の東京U-18は、それぞれがゴールラインとハーフウェーラインとに広がり、ピッチの縦幅を使って蹴り合っていました。CBの選手がヘディングで跳ね返すアップをする際に縦幅を使うことはありますが、ロングボールのアップを、ピッチの縦幅を使って…はほぼ見たことがなかったので、何か意味があるのかしら?と思いながら見ていました(全員がやっていたかは、すでに失念したが(苦笑))。

 その謎が解けないままアップは終了し、いよいよキックオフされましたが、開始から鹿島ユースがはっきりとした戦術を見せます。攻撃では「自陣からロングボール→前線で収まればよし、収まらなくてもセカンドボールに集中→二次攻撃からクロスやシュート」の形をやり続け、守備では「4-4-2で並び、3ライン間が30mに収まらんほどコンパクトに保つ。2トップは東京U-18の最終ラインにプレスをかけるのではなく、センターハーフへのパスコースを遮断しながら、外へパスを出させるように仕向け、ボールが外へ出たところで人数をかけて取りきる、もしくは蹴らせる」形を忠実に遂行してきました。往々にして、鹿島ユースとの試合はこうした堅い展開になりがちで、ものの5分も経たないうちに「今日も苦労するなぁ…」と思った一方、「おうおう、受けて立ってやろうじゃないか」と選手でもないのに燃える部分もありました。

 が、その熱は早々にいささか冷めてしまします。その原因は「目測の甘さ」と「精度のなさ」。鹿島ユースが次々と放ってくるロングボールに対し、東京U-18の選手たちはことごとく…と書いてしまっていいほど落下点の手前でジャンプしてしまい、身体が伸び切って前に跳ね返しきれない、あるいはかぶってしまって後ろにボールが流れるシーンが頻発。ロングボールを跳ね返しきれず、セカンドボールが東京U-18陣内に残ってしまうことが鹿島ユースにとっておあつらえ向きな展開となることは開始直後に分かりましたが、目測の甘さはまさにその展開を呼び込んでしまう要因となっていました。

 それでも、地上戦において水際で食い止め、1波多野の好セーブもあって失点は許さず、徐々にボールを持てるようになります。先ほど書いたとおり、鹿島ユースのボールを外に追い出す守備にハマってうまくいかない部分は多々ありましたが、それでもハイラインの裏に対するケアが十分だったとは言えず、11半谷を中心に裏をとろうとするフリーランが少しずつ見られるようになります。

しかし、その動きに対するロングボールが軒並み精度を欠き、裏を取れた場面は30分までで1度あったかどうか。また、鹿島がボールサイドに人をかけてくる分、逆サイドが空くことはたびたびありましたが、そこを狙ったサイドチェンジも不発に終わり、30分を過ぎようとするあたりでは、まったく長いボールが出なくなってしまいました。こうして前半は、鹿島が優勢のまま終了。ハーフタイムに

 

 

 とつぶやき、後半どう打開してくれるか?あるいはこのままいってしまうのか?期待と不安が同居していましたが、実はここでもう1つ思っていたことがありまして。それが、試合前にその謎を解けなかったロングボールを蹴り合うあのアップ。

 芝の感触を確かめるためにやっていたアップであることは間違いなく、しかし、前半は全くロングボールの精度を欠いてしまった(ショートパスも不十分だった)ことに「何のためのアップだったんだよ!」と思う部分がありましたが、それ以上にピッチの横幅ではなく縦幅で蹴り合っていたのは、カシマサッカースタジアムの風景に慣れるためだったのかな?と、ふと思い始めました。

 行ったことがある方ならご存知でしょうけど、カシマサッカースタジアムは球技(サッカー)専用スタジアムで観客席とピッチの距離が近く、座席は四方とも2層構造(2階建て)で屋根付き。また、座席シートの色も1色ではなく、赤・白・青の3色で、厄介なのがいわゆる「ゴール裏(1階部分)」が、ホーム側は白と赤、アウェイ側は白と青の2層に分かれている点。さらに、この日は快晴の青空ではなく、時折薄曇りもかかるお天道様だったことで、メイン席から見ていても、一瞬ボールを見失いかけることがありました(私だけ?)。

 もちろん、ピッチレベルの光景を見たことはないので断定することはできませんが、鹿島ユースはここがホームなわけですから、選手たちにとっては全てが見慣れた光景。かたや、年一、年二でしか訪れない東京U-18の選手たちにとっては、ある種「異様な光景」だったはず。「いやいや、Jリーグを開催できるレベルのスタジアムでの試合経験は幾度もあったでしょ?」と問う方もいるでしょうけど、今季でいうと西が丘、味スタ西敷島公園(群馬)、日立柏サッカー場ベストアメニティスタジアム鳥栖)、ヤマハスタジアムなど、比較的収容人数が少ない小さなサイズであったり、四方に屋根がなかったりと目測を誤らせる要因は少ないスタジアムばかり。

よって、私はあえて「ゴール裏の風景」に目を慣れさせるために、縦幅を使ってロングボールを蹴り合っていたのかな?とこの段階では推測しました。まあ、どういう意図であったかはスタッフに聞かなければ分かりませんが、もしこの推測が当たっていたとするならば、芝生に負けてロングボールの精度を欠いた点と同様、「何にもアップが役に立ってないじゃないか!そういうところを大事にするのがアップだろ!」と小言の一つも言いたくなる前半ではありました。

 

 

後半。一転して入り方に成功したのは東京U-18。オフィシャルサイトのマッチレポートに、佐藤監督が「相手の圧力に徐々に慣れ自分たちのゲームになってきている。怖がらずにトライし続けよう。45分走りきろう。」とハーフタイムに指示を送っていたことが書かれていましたが、鹿島ユースのあえて出てこずに、引き込んで守ろうとしていたやり方に慣れてきたのか、そもそも相手の圧力に慣れてきたのか、最終ラインの選手がボールを長く持つのではなく、その1つ前、あるいはもう2つ前に早めにボールを入れ、相手陣内でゲームを進めようとする意志を強く感じさせる入り方を見せます。さらに、ショートパスや個人技がじわじわと相手にダメージを与え始めてもいて、深い位置にも入っていけるようになりました。

この時間目立っていたのは、10松岡と14内田。10松岡は、フットサルU-19日本代表のトレーニングメンバーに選出されるという新しい刺激も受けてか、狭い局面でも全く動じず。タッチライン沿いで相手3人に囲まれるも、ボールを自分の頭越しに浮かして3人まとめて外すという南米感あふれるプレーも披露し、ゴールにこそ繋がりませんでしたが、切れ味の良さは目につきました。相手8番とのコツコツしたやり合いも、なかなか見どころあり(お互い主審に見られていたら警告ものでしたが(苦笑))。

14内田も同じように狭いところでも、相手に囲まれたところでも…というドリブルでしたが、一緒に見ていた友人が「ギリギリまでボールを自分にモノにしていられるのがスゴイ」といったニュアンスの言葉で14内田のドリブルを評価していました。確かに、ボールを晒しすぎず、でも足下につきすぎない絶妙なタッチと(自分の足とボールとの)距離感は相手からすれば奪いづらく、自身からすれば相手が足を出してくれるまで待てるわけで。そこで足を出して来たらその隙間を、出してこなければそのままボールを運んでいけるドリブルは、見ていて唸るばかりでした。

こうして、高い位置にボールの基準点を置けるようになったことで、サイドバックの上がりがスムーズになったり、センターハーフがするするっと上がってこられるようになったり、あるいはサイドで攻めている際、中の人数を確保できたり、といった好循環が、60分を過ぎるあたりには出来上がっていたように思います。その流れを得たまま70分に先制点を奪えたことは、私はただの先制点以上に東京U-18を勇気づけ、鹿島ユースを落胆させたように見ていました。

 と同時に、「何でこれが前半から見せられなかったか?」という思いも湧いていました。11/27の横浜F・マリノスユース戦は文字情報しかありませんが、この試合を含めた直近3試合(Jユース準決勝京都U-18戦、決勝広島ユース戦、11/27マリノスユース戦)はいずれも試合の入りが緩く、日曜の鹿島ユース戦を含めて4試合連続、前半(の前半)は及第点をつけがたい内容だったと思います。

もちろん、いつも前半からフルスロットルで、自分たちにとって有利な展開で試合を進められるとは思っていませんが、4試合連続で入り方が緩いのも、普通ではあまり考えられません。また、佐藤監督は夏以降たびたび、「今年のチームは、ベンチに私じゃなくドロンパの人形が座っていても…」と例えてチームの自主性や問題解決力を評価していて、私もこの点については全く否定しませんが、いつも帳尻が合う結果になるわけではありません。Jユースの準決勝、決勝はともに延長勝ちで、90分なら引き分けに終わっていたわけですし。

 話戻って、鹿島戦。先制点後、鹿島は待ち構える守備を捨て、前からプレッシャーをかけてきました。普通はここで慌てそうなものですが、むしろ出てきてくれて(鹿島側から見て)中盤より後ろにスペースができてラッキーと言わんばかりに、東京U-18の前線の選手たちはそのスペースを有効活用できていました。それでも鹿島ユースは諦めることなくボールを食らいつき、身体をぶつけて何とか攻撃を食い止め、奪い返したボールは前線へと放り込み続けます。

 迎えた、無念のエンディング。失点シーンに関してはロングスローからの展開で、そのうちJFAからハイライト映像が提供されると思うのでそちらをご覧いただきたいのですが、このスローインも、1つ前のプレー(確かセットプレー)で1波多野が長いボールに対して若干目測と判断を誤ったところからゴールを脅かされ、何とかクリアした結果、鹿島ユースが得たもの。42平川は試合後に「試合終了間際の失点は甘かったというか、不運だったと思います」とコメントしていましたが、私はこの流れを不運で片付けてしまうのを、良しとはしたくありません。甘かった、という言葉もありましたし、平川からすれば何の気なしに出た言葉かもしれませんが、最後の1プレーだけではなく、試合全体を1つの流れとして捉えた時に、この結末が必然だったとまでは言いませんが、自らが招いたものであったことは否定しがたいと感じています。

 

 

 そんな試合から一晩、二晩経って、このエントリをつらつら書いている中で、かつてイビツァ・オシム元日本代表監督が発したこんな言葉を思い出しました。

シーズン終了間際で選手が疲れていたり、サッカーに対して満腹していたりする選手が何人かいる。簡単ではない状況で準備しなければならない。肉体的、精神的な疲労を克服できるか。選手一人一人が試されている。

朝起きてご飯食べて、学校行って勉強して、友達とだべって昼ご飯食べて、また勉強して小平行って練習して、帰って風呂入って寝て。それを平日繰り返して週末に試合をして、たまの休みに遊びに行って。恐らくそんな日常を今年も1年繰り返しながら、気がつけばもう師走に突入したました。

改めて戦績を振り返ってみると、7/2 プレミアEAST第7節、マリノスユース戦以降、公式戦では22戦負けを経験せずにここまで歩みを進めてきていました。リーグ戦も一発勝負も、ホームもアウェイもセントラルも入り混じる中、疲れている選手がいてもおかしくないですし、「満腹感」を覚えてしまっている選手がいても不思議ではありません。仮にそうだったとしても、私はそれを責めることはできません。それでもあえて、選手たちには問いたいんです。

 

「みんな、『三冠』獲りたいんでしょ?」

 

って。今日これまで書いてきたことは、選手やスタッフから見たら、まったく的を射ていないかもしれません。また、ちょっとでも的にかすっていたとしても、まあ余計なお節介というか、重箱の隅をつつくような些末なことだとは、重々承知しています。

ただ、チーム全体が三冠という「1試合(だけ)にとらわれない目線」を共有できていたとしても、鹿島戦で見え隠れした「1試合にこだわる姿勢」のほんの少しの甘さが、大魚を逃す結果に繋がってしまったら本当にもったいない!と思い、最後まで胸に秘めておいたままにするか悩みながら書き続け、間もなく投稿(公開)ボタンを押そうとしております。

 前節の結果を受け、プレミアリーグEASTの頂点に立ち、3冠への挑戦権を得るため必要なのは、勝利のみとなりました。これまで繰り返してきた日常を変える必要はないと思いますが、積み重ねてきた日常を「表現する方法」は、これまでにないくらい問われる一戦になるでしょう。疲れを振り切り、甘さを捨て、一つひとつにこだわり、これまでに得た勝利からくる満腹感をも抑えるほどの、新たな勝利への欲求でまだ飢えられているのか?試合に出る、出ない関係なく一人ひとりが等しく問われていると思いますが、その結果を小平グランドで見ることができたら…最高の一言です。

 

個を生かし、組織をなす

今季のJ1が終了しました。まだチャンピオンシップ・天皇杯があり、J2・J3はここからクライマックスを迎えるわけですが、まずは皆様、お疲れ様でした。

 さて、東京。先日、正式に篠田監督の契約更新が発表され、来季も指揮を執ることとなりました。篠田トーキョーに関して、1つ前に妄想多めでエントリをあげましたが、今日は篠田監督の志向するサッカー、そこから浮かぶ各ポジションに求められる(求めている)役割、それを踏まえた来季の選手構成など、なるべく(あくまでも私の見立てによりますが)実態に即した形で、来季に思いを馳せてみたいと思います。

 

 

 1つ前のエントリで、篠田トーキョーのスタイルを

アグレッシブに前から守り、奪ったら前線を見て、飛ばせれば前田(平山)に当てる。無理ならば梶山・田邉を中心に漸進し、中島や河野のキープ力・ドリブルで仕掛け、東が有機的に絡み、フィニッシュまで持っていく。

 とシンプルに表現しました。当然、今もこの考えでいますが、このままでは話が進まないので、私なりにもう少し掘り下げてみます。

 守備は、積極的なプレッシングがメインタスク。1トップ+トップ下が横並びになり相手センターバックへプレッシャーをかけるところがスタートで、両サイドハーフは中(相手センターハーフや1つ飛ばしの縦パス)を警戒しつつ、相手サイドバックへボールが出れば迷いなくチェックに入り、空いた相手センターハーフには1トップ+トップ下がプレスバックするよりは、東京のセンターハーフが前に出て対応するケースが目立ちました。

 そうして相手に圧力をかけ、苦し紛れにロングボールを蹴ってくれれば最終ラインが難なく処理。かいくぐられて縦パスをつけられても、最終ラインの4枚(主にセンターバックどちらか)がポジションを捨てて前に出て、強く当たりに行ってインターセプトを狙う。そこでも取れなかった場合はさすがにピンチを迎えるわけですが、当たりに行ったセンターバック以外の最終ライン3枚はカバーの意識を高く持ち、概ね中を割らせない(外へ追い出す)応対はできていて、結果、終盤の4試合でわずか1失点に抑えることができました。

 また、篠田監督就任当初は行けるところまでプレスをかけ続け、疲労が見え始めた終盤は、高橋や吉本を投入して5バックにする方法でリードを守ろうとしていましたが、終盤戦では比較的早い段階でプレッシングをやめ(主に先制点を奪った後になりますが)、全体的にラインを下げてのブロックディフェンスも敢行。仙台戦では監督の指示ではなく、選手たちがピッチ内で話し合ってラインを下げた、なんて声も聞こえてきましたが、試合の機微を見て柔軟に対応できている部分は、チームに原則が落とし込まれている証拠。地味に見逃してはいけない部分でしょう。

 そして攻撃。前からのプレッシングにより高い位置で奪えれば、迷わずショートカウンターを発動。なんですが、実は前で取り切れるシーンはさほど多くなく、基本的には長いボールを蹴らせて回収、あるいはブロックディフェンスを敷く中でボールを奪って、自陣から攻撃を開始するケースの方が多い印象。

 そんなビルドアップのシーン。中心は両センターバック+両センターハーフ。時には4枚が近いポジションを取りながら、時にはセンターバックが開き、センターハーフの片方が間に降りながらボールをコントロールするところからスタートしますが、ポイントは、この2パターンにおける「次のボールの行先」が違う点。

 すべてのシーンでそうだ、というわけではないことを御了承いただいた上で話を進めますが、4枚が近いポジションを取る場合、当然相手も中(縦)を警戒して全体的に中へ収縮してくることが多くなります。そのタイミングを見計らってサイドバックはグッとハーフウェーライン付近までポジションを押し上げ、中からボールを受ける役に回ります。特に顕著なのが左サイドで、室屋が機を見て上がったところに丸山からのビシッとしたグラウンダーのパスが通る、というシーンをこのところ頻繁に見かけますよね。方や右サイドは、橋本が本職ではない影響なのか森重と合わないのか、ややぎこちなさが残ったまま。つぶさに見ていると、森重が橋本にもっとこうしてほしいと要求するシーンが散見されますし。とはいえ、意図としては右も左も「収縮させて外へ」で一致しています。

 一方、センターバックが開き、センターハーフ1枚が間に降りてくる場合ですが、センターハーフの片方はセンターバックの間に降りてビルドアップに関わる、もう片方は逆にビルドアップにさほど関わらず、ハーフウェーラインを越えて2列目の3人と近い距離を取る。そして、サイドバックは自陣に残ってパスのクッション役(例:中でのパス交換がちょっと詰まった際に、目線を広げるための横パスを受ける)を担い、結果として後ろ5枚で回しながら、前の4人いずれかに縦パスを通すことが主眼となります。

 また、この時サイドハーフはインサイドエリア(ピッチを縦に5分割した際の、センターエリアの両隣)に絞ることが多いのですが、絞ったサイドハーフへのパスコースを作る(相手ブロックの門を広げる)意味で、サイドバックが開いたセンターバックに押し出されながらもさほど高い位置を取らないのは理に適っているなぁ、と個人的には感じています。伝わるか分かりませんが、下図のイメージ。

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 そうして、上手く2列目+押しあがったセンターハーフのいずれかにボールが入った後は、1トップも含めた5人で近い距離を保ちながらパス交換を行い、最終的にはドリブルからのシュート、ポストプレーからの展開、あるいは一発のスルーパスなどでゴールに迫っていきます。サイドハーフが中島&河野ではなく、中島&水沼だった仙台戦、大宮戦でも意図・狙いは変わらなかった(個人的には水沼にアウトサイドエリアで勝負させるのかな?と思っていたが、そうでもなかった)ので、おそらくこの部分は練習から徹底されているのだと推測します。

 ただ、当然相手も中を崩されまいと対応してきて、主にバイタルエリアは混雑します。その分、外が空いて時にはオイシイスペースを与えてくれる場面もあるわけですが、サイドアタックには明確な意図を感じられません。先ほどの「後ろ4枚で回している間に押し上げたサイドバックへパス」するパターンでも、「中でボールを回している中で空いた外へサイドバックが駆け上がってきてパス」するパターンでも、クロスを全く上げないわけではありませんが、一般的に「この流れならクロスだろ」というシーンで素直に上げていたシーンは数えるほど。

むしろ、2列目の選手が近づいてきてボールを受け、あるいはセンターハーフに戻して、そこからもう一丁中で勝負する選択の方が多く見られ、ちょっとだけポポヴィッチ時代を思い出したりもするわけですが、あくまでクロスは次善の策という印象。クロスの球質もハイクロスは極めて少なく、グラウンダーやプルバックがメインとなっているなぁと感じています。

 こうなると、1トップの役目はだいぶ限定的に。シュートの選択肢は「足9:頭1」くらい極端なものになり、そもそもシュートを狙う動きよりはポストプレーなどで2列目の選手のシュートをお膳立てをする役回りが増え、実際にラスト5試合の1トップシュート数は、G大阪戦2本、広島戦0本、鹿島戦2本、仙台・大宮戦1本(広島戦のみ平山、残り4試合は前田)。この数字をどう見るかは人それぞれだと思いますし、私は「役目上致し方ない」と消極的肯定派ではありますが、1トップがセンターフォワードタイプ、少なくともハンマータイプである必要性は、今のチーム戦術からは感じられないのが正直なところです。

 

 

 と、ここまで私なりの篠田トーキョー論(ちょっと深掘りVer.)を書いてきました。この点を踏まえて、では来季どんな陣容になりそうか?を妄想してみます。

 まずは、「各ポジションの役割」をもう少し明確化させてみたいと思います。各選手のタイプを一言で表す単語は世界でいろいろとありますが、いろいろと織り交ぜて表現してみるならば、私は以下のとおりと考えます。

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 90分プレッシング…ではないものの、比較的ハイラインを敷く時間帯が長いことを踏まえると、GKはカバーエリアの広い「リベロタイプ」が理想。まあ、なかなか日本では育ってきていないのが現状ですが。

 最終ラインですが、センターバックは高さがあることにこしたことはありませんが、どちらかと言えばカバーエリアが広く、またハイラインの裏をカバーできる走力があるタイプが理想。少なくとも、2枚のうちどちらかはそうであってほしいなと。サイドバックは上下動を繰り返せる運動量豊富なタイプや典型的なクロッサーよりは、攻撃ではビルドアップ時に正確性を出せ、クロスの場面でも低くて速いボールを狙って出せるパサー、守備ではカウンター対応やカバーリング時にとにかく1対1で粘り強く対応できるセンターバック寄り、このどちらかを長所としたタイプが、今のやり方なら適している印象です。

 そして中盤。センターハーフはいわゆる日本的な「攻撃的ボランチ」「守備的ボランチ」という概念ではなく、「ボックス・トゥ・ボックス」と「レジスタ」タイプの併用が篠田トーキョーのスタイル。もちろん、バランスの悪さを懸念される方はいるでしょうし、来季篠田監督がバランスを取りに走る可能性は否定しません。ただ、特長を強く押し出したいのであれば、あえてこのまま1シーズン戦ってみる手はあると思います。

 それはサイドハーフも同様で、ウインガー(クロッサー)を1枚は起用するのではなく、トレクァルティスタ(≒トップ下)的な、とにかく2枚とも中で勝負できるタイプを起用していくのではないかと推測します。後述しますが、現陣容は結構このタイプが揃っていますしね。

 2トップは明らかなハンマータイプを置かず、縦関係でも横関係でもモビリティのあるセカンドトップタイプ2枚を使っていくのではないでしょうか。もちろん、モビリティがそこそこあって、懐の深いポストプレーができるファーストトップが全くいらない、というわけではありませんが、優先度は低くなっていくのではないかと感じています。

 

 このような役割分担だとして、では今の陣容がどう当てはめられるか?対象は(怪我人も含めた)現時点でチームに所属している選手+レンタルに出ている選手(三田、幸野、ハ・デソン、駒野)+来季新加入が内定している選手(鈴木、岡崎、山田、廣末、波多野)です。

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 GK。まあ、正直考えもので。秋元は終盤安定感を増してきたものの、絶対的な…という雰囲気は出し切れず。また、カバーエリアの狭さはシーズン通して感じられ、ハイラインとの相性はイマイチ。ただ、圍、榎本が秋元以上かと言われれば答えに窮し、廣末、波多野の新加入2名はポテンシャルこそ秘めるものの、まずはJ3から。なので、隠れた補強ポイントだと私は見ているんですけど、めぼしい人材も見当たらず。今Jを席巻している韓国人GKでも引っ張ってくるか…ん?権田(SVホルン)?…ノーコメントで(苦笑)

 センターバック。私は、高橋のCB起用込みで現状維持派。高橋は、センターハーフレジスタ&ボックス・トゥ・ボックスだと考えれば、そのどちらにも当てはまらず中盤では起用しづらいところ。さりとてCBでも森重、丸山を差し置いてスタメン…というほどではなく、本人のキャリアを考えれば環境を変える手もあるんでしょうけど、ユーティリティさも含めてできれば手元に置いておきたいなと。吉本は、ハイライン時の不安が拭えない一方、ブロックディフェンス時の堅さは信頼できるタイプ。相手次第ではスタメンでも。

また、森重にも移籍の噂があります。もちろん、残留してくれれば戦力計算としてはこの上ないプラスになるわけですが、最終ラインの中心はいよいよ丸山になってきているのでは?とも私は見ているので、もし違約金を満額取れるのであれば(億には乗るよね?)思い切る手はあるかと。そうなれば、J3との並行も考えて当然補強は必要になりますが、J1なら昌子(鹿島)や三竿(湘南)、通用するかは丁半博打もJ2なら井林(東京V)や林堂(愛媛)あたりどうでしょう?あとは徳永センターバック起用に踏み切るとか、来季から外国人枠が広がるので外国人選手という手もありますでしょうか。山田、岡崎の新加入2人はJ3からになるでしょう。

 サイドバックはGK以上の補強ポイント。まだ、右サイドは室屋、徳永と信頼感のある選手を2枚揃えられ、柳も後方に控えていて質・量ともに確保できそうですが(ファーストチョイスは室屋になると予想)、左は小川に1シーズン託してみたい気もする一方、駒野のレンタルバック含めて2枚だけではさすがに心もとなく、できればもう1枚、チーム全体の保有数も踏まえて、最悪駒野の放出を伴ってでも即戦力を1人獲得したいところ。

ただGK同様、他チームの顔ぶれを見ても左サイドバックは人材が枯渇気味。今年いいプレーしていたかなぁ、とパッと思いつくのがJ1では輪湖(柏)、吉田(鳥栖)、J2だと香川(山口)や内田(愛媛)あたりで、CBタイプだけど左サイドバックとしても面白そうなのも福森(札幌)ぐらい。一部では太田(フィテッセ)の名前が出ていますがこれとて現実的ではなく、さてフロントがどう判断するか、ここは見ものです。正直、誰も獲らない(獲れない)のであれば、他のポジションでどんなに良い補強ができても弾劾裁判ものかと。

 センターハーフレジスタタイプはレンタルバックのハ・デソンに期待。今季はコンディション不良により不完全燃焼に終わりましたが、そこさえクリアすれば、1シーズンフル稼働はしてくれないまでも、チームの戦力アップには間違いなく寄与してくれるはず。梶山の復調もチームの底上げに繋がりましたし、スケールの大きさを感じさせてくれる鈴木がここに食い込んでくれば、層の厚さも担保されるでしょう。野澤は…頑張れ。

 ボックス・トゥ・ボックスタイプですが、こちらは橋本をファーストチョイスに。橋本の良さは、まさに思い切った攻撃参加にあって、切り替えの遅さは要改善も、攻め上がったあとの守備で、対人の強さが活かされるかと。井手口(G大阪)がまさにそんなプレーでA代表にまで駆け上がりましたが、橋本もやれる…はず。米本も、元来は駆け回っていろんなところに顔を出してというタイプですが、いかんせんパスの丁寧さに課題を残し続けたまま(橋本も似たり寄ったりですが)。また、ついに両方とも痛めてしまった膝の状況は心配せざるを得ず。であるならば、しばらくは米本にクローザー役を担ってもらいつつ、1年間仙台でセンターハーフとして活躍した三田の台頭に期待を寄せたいところ。幸野は…レンタルではなく完全移籍で環境を変える時期な気がしますね。

 サイドハーフ。これまで書いてきたとおり、左右ともトレクァルティスタタイプとなれば、主力はムリキ、中島、河野の3人。田邉は今季を活かしたセンターハーフ起用も睨みつつ、私はこの3人に加わって前目で勝負してほしいと思っています。また阿部も、怪我が癒えてシーズン当初に見せたキレを出せるのであれば、十分戦力として計算は立つかと。対して、どちらかと言えばクロッサータイプの水沼、石川、平岡は優先順位が下がってしまうところ。まだ水沼は、終盤戦で中寄りでもプレーできる、特に逆サイドにボールがあるときに、どうシュートを撃てる(狙える)ポジションを取れるか?という部分で期待していいものを見せていたと思いますが、石川と平岡はちょっと食い込みづらいかなと。羽生は米本とはまた異なるクローザー役として起用される可能性は十分あると思います。

と考えると、獲得が噂される永井(名古屋)も、現状のスタイルで推し進めるのであればサイドハーフとしてフィットする画は正直思い浮かびません。1トップも…裏抜けの脅威はとんでもないものがあり、守備面での貢献も及第点以上のものが期待できる一方、ポストプレーには難があり、細かいボールタッチ、フィーリングも疑問符が付きます。まあ、私だったら違うところにお金をかけますけど、果たして。

 トップ下。水を得た魚のごとく、東は配置転換を機に存在感を発揮。いろんな攻守両面での「線」を繋ぐ潤滑油として、来季も必要不可欠だと見ています。これでシーズン6、7ゴール取ってくれたら、言うことありません。バーンズはサイドハーフでも良かったんですが、人が混んでいるセンター(相手バイタルエリア)でもしっかりとボールを受けられ、かつ瞬時にターンができるスキルを活かすならば、むしろトップ下かなと。佐々木は引き続きJ3での研鑽になるかと思いますが、ルヴァンカップで一度トップ下起用を見てみたいなぁ、という願望はあります。ボールタッチのスキルだけなら、東やバーンズより光るものがありますからね。

 1トップ。今のままの顔ぶれなら前田がそのままファーストチョイスになるでしょう。本人的に今の役割に納得しているかはさておき、攻守両面での献身さ、接近戦での強さ・巧さは他の3人を大きく引き離しているので。ただ、林はJ3でのプレーを(数試合ですが)見た限り、もっとJ1でチャンスがあっておかしくないところ。カテゴリー(相手DFの強度)が違うので一概に比較はできませんが、今季の平山よりはいろいろ説得力のあるプレーができていたと思いますし。その平山ですが、終盤戦のプレーが今のMAXならば、もはやJ1では厳しいと言わざるを得ないレベル。J3で数試合継続して90分使われて、コンディションが上がって改善する、という一縷の望みはありますが…どうなんでしょうか。ユ・インスはもう1年J3中心で…って、オーバーエイジに入っちゃうんだっけ?

そう考えれば、私は大久保(川崎)の獲得に大賛成。下がって受けることもできますし、裏に抜けることもできますし、守備も前田ほどではないかもしれませんがしっかりとタスクはこなしてくれるでしょう。なにより、川崎ではそれらをこなしながら、でもゴールを一番に見て味方に要求し続け、結果も残してきたわけで。そんな勝ち気な性格がチーム全体のケミストリーにどう影響を与えるかは分かりませんし、衰えが…という声も否定はしませんが、向こう1、2年ならまだまだ健在なはず。一人ぐらい「異分子」がいた方が、チームとしては爆発力を秘められるのではないでしょうか。

 

 

 と、ここまで妄想してみました。補強がどう進むかは見守るのみですし、天皇杯を獲ってACLに…なんてことになったらまた話は変わってきますが(ACLは出たい)、皆さんなりに今季を振り返って、それを基に来季こうなったらいいなぁ、あの選手取りたいなぁ、この選手とはお別れかなぁ、といった未来を想像してみると、少しはシーズンオフの暇つぶしになるかもしれませんよ。

 

Go Forward

「難しいことは考えずに、楽しんだらいいんじゃないですか?」――ある日の味スタで知人と試合前に談笑している中、篠田監督について問われた私は、こう答えた記憶があります。

 こんなブログを定期的に読んでくださっている方がどれだけいるかは分かりませんが、城福監督が解任され、篠田監督が就任して以降、トップチームに関して書いたエントリは、直近の「56.3%」1本だけ。「今季はブログ結構書くぞ!」と意気込んでいたこともあって城福監督時代はそれなりに書いてきただけに、この筆の進まなさは自分でも驚いている次第。

 じゃあ、なんで筆が進まなかったのか?その理由を自問してみると、大きくは「戦術的に深掘りする要素が少ない」かつ「半期のリリーフ登板だと思っていたから」の2点に集約されるんだろうな、と自答しました。その2点に、残留争いを抜け出すための「内容より結果が全て

という考えが乗っかり、結果として半ば思考放棄にも近い「難しいことは考えない!」に行きつき、今に至るわけです。

 しかし、複数のメディアでクラブが篠田監督に続投を要請すると報じられ、9割方来季の続投が決まったと言ってもいい現状。また、思考放棄状態だったとはいえ、何も思わずにいたかというとそうではなく。というわけで、そろそろ思考放棄を止め、リーグ戦ホーム最終戦を前にここで何やら1つ書いておこうかなと思い立ち、キーボードをカタカタさせてみます。

 

 

 そもそも、篠田体制下の東京を私はどう見ているか。答えは冒頭に書いたとおり、「戦術的に深掘りする要素が少ないな」という印象。もちろんJ1残留を最大のミッションとし、コンディション面における前任の負の遺産や怪我人、J3とのやり繰りを踏まえれば、篠田監督がこの短期間で戦術的な要素を押し出せる状況ではなかった、と見るのが筋でしょう。しかし、そういった副次的な側面を排除して、試合内容にだけフォーカスしてみると、良く言えばシンプル、悪く言えば前時代的なサッカーだな、と私は感じていました。

 そんな篠田監督就任後、最も印象に残っているゲームは、皆さんどれになるでしょうか?私はこの間の鹿島戦…ではなく、就任2戦目となった磐田戦。常に先手を奪われる苦しい展開の中、後半アディショナルタイムにユ・インスが劇的なゴールを決めて勝利した一戦でしたが、怪我人の影響があったにせよ、田邉のセンターハーフ起用には驚かされましたし、平山を差し置いてのユ・インス途中投入もおっと思わされました。ただ、なによりもインパクトがあり、篠田監督に対する個人評の方向性を決定づけたが、ムリキのフル出場でした。

 

 シーズン開始後にチームに加入したムリキ。加入当初はコンディションが整わず、プレースピードも遅く、強度も低く。J3での「目覚まし」も経ながら城福前監督は起用法に四苦八苦していましたが、最終的には2トップの1角として起用され、守備の負担を軽減させながら攻撃に注力してもらうタスクを与えました。しかし、篠田監督は東のトップ下起用にこだわりを見せ、おのずとFWは1枚に。その座には額面通り前田や平山を起用したため、ムリキを広州恒大時代にも起用されていた左アウトサイドへ置く選択を取ります。

 攻撃では効果てきめん。東と入れ替わりながら常にポジションを流動的にとり、ボールの受け手にも出し手にもなりながらフィニッシュの場面でたびたび相手の脅威となれていました。一方で、守備では最低限にも達していないようなプレスバックしか行わず、サイドバックとの守備連携もほぼ皆無。磐田の先制点は東京の左サイドから攻めたものでしたが、この場面以外にもしばしば東京の左サイドは数的不利に陥り、危ういシーンを作られました。

とまあ、ここまでは「攻撃に特長がある外国人選手をサイドで起用したときあるある」としてよくある話。さらに、スタミナを消耗し、攻撃で見せ場が減ってくる70分前後に途中交代しがちでもあり、この日のムリキも60分を過ぎようとするあたりにはすでに「これ、交代もやむなしかな…」と感じる仕草が見え始め、私は勝手に「いつ、誰と代えますかね?」と思いながら見ていました。

 しかし、篠田監督は動きません。それどころか高橋→野澤の交代でさらに攻撃性を高めると、後半はほぼ鳴りを潜めていた当のムリキが70分に同点弾。さすがにこれでお役御免か…と思ったらそれでもなお代えず。守備時のエネルギーは完全になくなり、より相手の狙いどころとなって後方支援していた小川がガス欠になる、なんて二次災害がありながらも、ひとたび前を向けば常にアタックする姿を見せ続け、90分には決勝点につながるフリーキックをゲットするなど、攻撃面では最後までエネルギーを出し続けました。

 

 今日のサッカー界で、ここまで明確に「攻撃90、守備10」的な極端な攻撃偏重比率でタスクを課されている選手は、おそらくリオネル・メッシバルセロナ)、クリスティアーノ・ロナウドレアル・マドリー)ぐらい…というのはたぶん間違いで。世界中、カテゴリーを問わず見渡せば、まだまだこんな「王様然」とした選手を中心にしたチーム作りをしているチームはごまんとあるはずです。

 けれど、王様を中心としたチーム作りがモダンなスタイルかと問われれば、答えはNO。現代サッカーの戦術とスカウティング能力は王様が空けた穴を見逃してくれるほど甘くはなく、クラブのレベルが、コンペティションのレベルが上がれば上がるほど、王様の居場所は無いに等しくなっています。

それでも篠田監督は、前時代的な王様に浮上のきっかけを託しました。城福監督が何とかムリキをチーム組織に組み込みたい、片や、攻守のバランスも失いたくないという二兎を追い、成功しかけた場面もありながら徐々に失速していった反動もあったと推測はできますが、ムリキの溢れる攻撃的センス・スキルに攻撃の大部分を一任し、ムリキからの波及効果でチーム全体のアタッキングマインドも呼び戻そうとしたギャンブルは、結果的に磐田戦で勝ち点3をチームにもたらしました。

また、残念ながらムリキは怪我で離脱しましたが、篠田監督は思考を変えずに同ポジションに中島を起用。ムリキほどではないにせよ攻撃偏重のタスクを与え、中島は今、東京に来て一番輝いていると言っても過言ではない時期を送っています。さらに、センターハーフに梶山が舞い戻ってきて、かつ田邉と並べる「勇敢」とも「蛮勇」とも取れる采配を見せ、一連の浦和との戦いではボッコボコにやられましたが、怯むことなく鹿島戦では好内容を披露。守備のリスクを顧みないムリキフル出場というギャンブルから始まった…と思っているのは私だけでしょうけど、ともかくシンプルなアタッキングでここまで一定のポジティブな成果を残してきたことは、評価に値すると思います。

 

 と、ここまでお読みいただいて薄々感じていただけていたら幸いなんですが、この一連のくだりを見続け、あまりにも分かりやすい一点突破で勝ち点を上積みできてきた現状に対して、戦術面での補足は必要だったか?必要ないでしょう、と感じていたわけです。強いて言えば、「前線からのプレッシングの対象・狙いが相手によって違っていたかも?」と書ける部分はあったと思いますが、それとて明確に差異があったわけではなく、基本的には、

アグレッシブに前から守り、奪ったら前線を見て、飛ばせれば前田(平山)に当てる。無理ならば梶山・田邉を中心に漸進し、中島や河野のキープ力・ドリブルで仕掛け、東が有機的に絡み、フィニッシュまで持っていく。

文字にすればたったこれだけの、戦術的には深掘りする要素が少ないと思われることを必死に、しゃにむに、シンプルにやり続けてここまできた。それが篠田トーキョーだと私は見ています。

そんな、磐田戦後に薄らぼんやり思ったことに端を発した個人的な考えを、ここまでまとめてブログへ書くに至るまでにはいくらか時間が必要でした。この時期まで引っ張る必要があったかは分かりませんが(苦笑)。そこに「これでカップ戦どちらか取れれば儲けもので、メンタル面を叩き起こした上で来季は新監督を…」と勝手に思っていたことを踏まえたら、そりゃ何も書くことないですよね、ね、ね?というわけです。

 

 

はい、ここまでは言い訳として、未来のお話を。

先日行われた鹿島戦。試合内容の良さと味スタで8年ぶりの勝利だったことが加味され、いくつかのメディアでは「今季ベストゲーム」と評されました。私も、体調を考慮してテレビ観戦ではありましたが、見ていてストレスの少ない90分だったと感じていますし、篠田監督は「この試合内容を最低限なものにしたい」と語り、多くの方はその意見に賛同して、今後の更なる向上に期待を寄せているのではないかと推測します。ただ、これまでの過程も踏まえつつ、鹿島戦のゲーム内容を最低限に設定したとして、そこからまだ伸びしろはあるのでしょうか?

 先ほど書いたとおり、今の篠田トーキョーはかなりシンプルなサッカーを見せています。繰り返しになりますが、肝は「前線からのプレッシング(とコンパクトネス)」「前田(平山)の収まり」「中島・河野の個人技」「梶山・田邉のキープ力」「東の潤滑性」の5つ。鹿島戦は、このいずれもが高水準だったことによる快勝劇でした。

先制点は森重のインターセプトから始まったショートカウンターでしたが、前線からのプレッシングがしっかりとハマったが故に、森重はあそこで思いきって勝負できましたし、全体がコンパクトだったために、奪ったボールがすぐに中島まで渡り、相手の陣形が整わないうちに攻め切れたと見ています。また、(特に前半は)前田のボールの収まりが良く、相手の意識を収縮させられたことで中島・河野が時間、スペースともに余裕を得ることができていましたし、東が他の前線の選手とかぶることなく、しかし消えることもなく効果的なポジションを取れていたことも、見逃してはいけないでしょう。さらに、後方から梶山・田邉がボール保持の面で支え、サイドバックが上がっていける時間も確保できていました。

今後もこの5つの肝が有機的に絡み合って機能すれば、ある程度相手に脅威を与えられるサッカーはできるでしょう。ただ、今はまだ「コレクティブ」とまでは言えず、ハマった時は強いけど、ハマらないと脆さを隠しきれない状況。なので、私がここからさらに上積みを期待できる(上積みをしてほしい)部分は「コレクティブさのアップ」となります。ここからは得意の妄想が多分に含まれますので、ご承知おきを。

 

妄想のスタート地点は、中島・河野の立ち位置。今、攻撃の中心がこの二人であることに疑いの余地はありません。であるならば、なるべく二人に良い形でボールを持たせたい、できることなら二人の得意な形になった時にボールを預けたい。そう考えた際、どのエリアに二人を立たせておくかを整理するだけでも、チーム全体に想像以上の利益をもたらすのではないか、と考えています。

今、戦術の最先端、あるいは分析の最先端では、ピッチを縦に5分割し、より細かいポジショニングを要求する、あるいは観察するようになっていると、いくつかの媒体で目にしました(その走りはジョゼップ・グァルディオラのアイデアとも)。確かに、守備戦術が年々コレクティブなものになってきていて、攻撃側が今までどおり漠然と「中央・サイド」という概念のままなのであれば、守備に屈する場面が増えるのは自明の理。見る側もほんの少しずつでいいから意識しながら、プレーする側には強く意識するよう求めていかなければいけない部分だと思っています。

で、中島・河野の二人をどのエリアに置くか?ここからは便宜上、5分割した真ん中を「センターエリア」、その両隣を「(左右)インサイドエリア」、大外を「(左右)アウトサイドエリア」と書いていきます。また、守備時は最前線に東を前田と並べた4-4-2で前からプレスをかけ、良いところで奪えればショートカウンターを仕掛けることを優先順位として高くしてほしい――それが実は、篠田監督のメンタリティからすれば最もらしい――とも思っていますが今日はこの点には触れず。これから書くのは「奪った位置が低かった時、あるいはショートカウンターを仕掛けられず一旦下げた時にビルドアップから攻撃が始まる」ことを想定したものです。

 

結論から書くと「中島は左アウトサイドエリア、河野は右インサイドエリアが良いのでは?」と考えます。鹿島戦でのスタメンで、図にするとこんな感じ。

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 皆さんがどう感じているか分かりませんが、私は「中島にはスペースを与えて、河野は密集地で」ボールを預けたいと思っています。中島は得意のドリブルで推進力を生んでほしいため、なるべくスペースを与え、前を向いた状態でボールを預けたい。一方の河野は、ポストプレーとまでは言いませんが相手を背負った形、あるいは相手のゴールに対して背を向けて、もしくは半身の体勢でボールを預けてもしっかりと次へ展開できる技術があるので、あえて相手2ライン間の狭いところに位置させたいのが一番の狙い。

 その2人へボールを預けるためのビルドアップは、森重・丸山の両センターバック+梶山の3人に担ってもらい、田邉は河野と同じ高さを意識しながら、しかし中島に近づきすぎないように左インサイドエリアにポジションを取り、河野と同じような役回りを遂行。橋本・室屋の両サイドバックはやや高めにポジショニングし、機会があればオーバーラップを仕掛け、前田は基準点役として、あまり動かずに相手最終ラインを固定させるようなポジショニングを取りながらボールを引き出してもらう。東はあまりポジションにとらわれず、機微を見て裏抜けもよし、下りてくるもよし、得意の流動性を活かしてもらう。

その上で、右側は河野を中心とした右インサイドエリアで、複数人がボールを中心に近い距離を取り、細かいコンビネーションで崩しを図る。そこで相手をはがせればそのまま前進し、スルーパスやクロスからフィニッシュまで運ぶ。では、右側で詰まった時にはどうするか?無理して縦に行くのではなく、梶山や森重に下げて、左アウトサイドエリアにいる中島にサイドチェンジパスを送る、あるいはビルドアップの段階で1列(主に田邊)を飛ばして通せるときもズバッと中島に楔のパスを通して、スペースのあるなかで仕掛けてもらう。

このように、チームとしていくつかのプレー原則を作り、それぞれの選手はその原則を意識しながらポジションを取り、ボールを動かし、場面に応じて臨機応変に振る舞うことができれば、相手に対してより脅威を与えられるのではないかと感じています。

 

 と、ここで妄想を止めてもいいんですが、久々なのでもう1つ突っ込んで。上の案だと、実はサイドバックが死んでしまうというか、持ち味と役回りがリンクしない危険性があります。右側は、河野が右インサイドエリアまで絞って右アウトサイドエリアを空けているので、ボールを中で回している間にサイドバックにタイミングよく上がってきてもらってからのクロスまでイメージしたいけれど、橋本は決してクロスに特長がある選手ではない。対する左側も、中島は左アウトサイドエリアに開いて待つためサイドバックがオーバーラップ(厳密にいうと中島の外側を追い越す動き)を仕掛けるスペースは確保しておらず、クロスに持ち味がある室屋の良さを1つ消してしまいかねない、といった具合。仮に左サイドバックが小川でも同じことが言えるでしょう。

 そこで、「左右のサイドバックを入れ替えて、もう少し違う立ち位置も取れるんじゃないか?」と考えてみたところ、私の妄想は以下のような結論に至りました。

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 構える守備時はやはり4-4-2で、攻撃に移ったら中島を左アウトサイドエリア、河野を右インサイドエリアに位置させるところまでは同じですが、ビルドアップを要する攻撃になった際、室屋をウイングバック的な位置(ハーフライン越えてもいいくらい)まで押し上げ、残りの3人が右にスライドして3バック化。田辺、梶山の両センターハーフはセンターエリアとインサイドエリアの境目にポジションを取り、横のままにも縦関係にもなりながら中継点となり、前述のとおり右側は近距離で人をかけ、左側は中島やってまえ!で攻める。こうすることで、室屋が右アウトサイドエリアを駆け上がってクロス、というアイデアも加えられますし、最大7人を攻撃にかけられることで厚みも増す机上の計算が立ちます。

その分、後ろにはリスクが生じますが、対人に強い橋本を含めて3枚いればある程度の攻撃は食い止められると思いますし、カウンターでの失点を「必要悪」として織り込んでおくぐらいの心構えを持ち、とにかく前方向へエネルギーを注ぐぐらい突き抜けられれば、結果として俗に言う「東京らしさ」に繋がっていくのではないかと思ったり思わなかったりしています。

 

 

 まあ、こんな妄想も、来季の陣容がどうなるかによっては一発でパーもあり得るわけで。すでに、何人か名前が出ていますしね。ただ、逆に言えば、篠田監督が漠然と「こういうサッカーをしたい」ではなく、「チームとしてこういうプレー原則を持って、このポジションの選手にはこういう役割を担って欲しい」と明確にアイデンティティを示せるのであれば、おのずと今のスカッドで足りない選手(あるいはあぶれる選手)があぶりだされるでしょう。

そうやって現場から明確な思考が示されれば、フロントはあぶれる選手をいかに高く売り、足りない選手を獲得できるかの勝負になり、見ている側も「フロント仕事した」あるいは「フロントつかえね~」という評価をしやすくなるのではないかと考えます。

 

 フロントが主導して「東京味」を作り出し、そこに「○○風」の彩りを添えられる監督を連れてくる考え方も、当然あるでしょう。今、1つのサイクルが終わったとされる東京にとっては、このやり方で数年かけて頂点を目指すことが一番くどくないやり方とも言えるでしょう。

 しかし、篠田監督の続投がもし明日の試合後、あるいは最終節の大宮戦後に発表されるようなであれば、(天皇杯の勝ち進み具合にもよりますが)今季から来季への空白期間が異常に長い状況下で、篠田監督が「東京味」のメインの味付けを決められるシチュエーションとも言えないでしょうか?

 明日の試合内容に、来季への上積みを見出せるかは分かりません。ただ、明日までは難しいことは考えず、是非とも勝ってポジティブな雰囲気を共有してホーム最終戦を終えられたら幸せだなと思います。

 

56.3%

  いきなりですが見出しの数字、何のパーセンテージかお分かりになりますでしょうか?

 

正解は…「今季のリーグ戦における、先制点を奪った試合の勝率」でした(9勝1分6敗)。この勝率を下回るのは、低い順に福岡(37.5%)、甲府、磐田(ともに40.0%)、湘南(45.5%)、名古屋(50.0%)といずれも残留を争っているチームばかり。当然、下位にいるチームですからそうなるわけですが、6敗はリーグワーストでした。また、前半終了リード時の勝率(4勝3敗、勝率57.1%)もワースト3位で、3敗はこれまたリーグワースト。とにかく、「逃げ切れない」結果が明確に数字として残っています。

 では、横(他チームと)の比較ではなく縦(過去の自チームと)の比較はどうか?と思い、Jリーグのデータサイトで調べてみたところ、以下のような結果が出ていました。

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 データサイトで遡れる2000年以降で見ると、今季はワースト2番目の低勝率で、6敗は横の比較と同様ワースト(タイ)。特に近4年は高勝率を誇り、先制した試合での1試合当たり勝ち点も高い数字をマークしていただけに、今季の悪さは余計に目立ってしまっている印象を受けます。

 近4年となると、指揮していたのはランコ・ポポヴィッチマッシモ・フィッカデンティの両外国人監督。ポポヴィッチは攻撃で、マッシモは守備でチームを一枚岩にまとめ、先制点を奪った試合でさらに一押しかけて、あるいは虎の子の1点を大事に守る形でしっかりと勝ち点を奪い続けていました。かたや今季の体たらく。いったい何がそうさせているのか思いを巡らせると…おそらくすべてなんでしょう。

 

 

 例えばフィジカル。先日、こんなエントリを書きました。

re-donald.hatenablog.com

 今季の東京は、とにかく後半の後半に失点が多く、その要因を池田誠剛前フィジカルコーチの指導に求めることは言い過ぎではないのでは?という主旨。篠田監督に代わり、明らかに練習の量・強度は上がったと聞きました。もちろん、ACLがなくなり週1ペースでコントロールしやすくなった部分はありますが、それでも「90分持たない感」を払拭するまでには至っていないと感じています。

 

 例えばメンタル。昨年まで、あれほど「先制したら強かった」チームにいた選手たちが、いきなり今季、先制して追いつかれたとたんにバタバタしてしまう、それどころか、追いついた相手の勢いを食い止められずに逆転されてしまうゲームしかできなくなっています。しかできなく…ってのは言い過ぎかもしれませんが、今季に関して言えば、逃げ切れないことがトラウマ化している、あるいは逆に「逃げ切る成功体験の少なさ」が試合中盤~後半のメンタルにマイナスの影響を及ぼしていると考えるしかありません。

恐らく、事の発端はACLの決勝トーナメント1回戦、対上海上港戦。ホームで2-1と勝利を収め、乗り込んだアウェイでも押しに押されながら90分耐えきるも、アディショナルタイムで失点を喫し敗退を余儀なくされたこの試合で選手や城福前監督が受けたショックは、今思えば私の想像を大きく越えていたんでしょう。その後決して、リードした試合中盤、後半に萎縮してしまって何もできない…というほどではないにせよ、選手一人ひとりの心のなかに、ほんの数パーセントでもトラウマ、あるいは成功体験の少なさから不安が除いてしまっているのならば、その不安が結果にダイレクトに反映してしまっているとするならば…

 

 例えばタクティクス。例に出しやすいので浦和戦を取り上げますが、城福監督時代のアウェイゲーム(622日、●2-3)も、篠田監督に代わったホームゲーム(917日、●1-3)も、「前半から前プレ→カウンター等で先制→でもスタミナ持たない→手を打つも耐え切れず逆転負け」という結果でした。

リードしてある時間に至った後の両監督の采配はそれぞれに色がありましたが、失点しても全く慌てない、ぶれない浦和の攻めに対して、その打った手はハマりませんでした。これ以上やりようがなかったか――残念ながら、ナンセンスな考えも含めていろいろ思いが巡るも結論は出ず、なんとも「残尿感」の残る今日この頃です。そのあたり、先日のホーム浦和戦後にとある方が読み応えのあるエントリを書いていたので、以下に紹介させていただきます。

chono.hatenablog.com

 スカウティング技術の発達が目覚ましい現代サッカー界において、「試合中のアドリブ力」が監督の資質におけるプライオリティの中で上位に来ていることは、認識しておいた方が良いのかもしれません。

 

 例えばスキル。昨日のルヴァンカップ浦和戦。結果はまたしても逆転負けでしたが、私は阿部勇樹那須大亮の両ベテランのスキルに屈した印象しかありません。西川、柏木が代表選出により不在となった浦和は、今季見せてきた攻撃時のバージョンアップ型(極端に言うと、ビルドアップ時に自陣に3人しか残らず、残りはみんな敵陣に入る)を採用せず、いわゆるペトロヴィッチ式4-1-5で挑んできました。

 しかし、西川、柏木不在の影響は大きく、決してビルドアップがスムーズだったとは言えませんでした。また、敵陣に人数をかけなかったことで、東京にボールが渡った直後にカウンタープレスをかけることも少なく、高橋、吉本、田邉、橋本の4枚である程度ボールをコントロール「させてもらえて」いたように思います。その流れを何とか生かして、後半立ち上がりに東がゴールを奪いましたが、そこでスイッチが入ったのか、失点直後から浦和のラインが全体的に高くなり、失った後のカウンタープレスを敢行してきました。

ここで光ったのが阿部と那須。阿部は全体のバランスをコントロールしながら前半以上に的確なボールさばきを見せ、足が止まり始めてきた東京守備陣の網の目をズバズバかいくぐるパスを連発し、常に東京の最終ラインに、後方からですがプレッシャーをかけ続けていました。

そんな勢いで浦和が十重二十重と攻めかかり、しかし何とか東京が耐えて自陣深くでボールを奪っても、襲い掛かってくるカウンタープレス。そして、回避すべく東京の最終ラインから放たれたロングボールに対して、那須がほぼ完勝。前田が相手でも平山が相手でも関係なく、また単純に競り勝つのみならず、ボールの落下点での身体の入れ合いだったり、あえて一度収めさせてから足を出すタイミングであったり、とにかく前を向かせないスキルを存分に発揮し、東京の攻め手を潰せていました。

この時間帯、誰か一人、どこかでボールを収められる選手がいれば…と思いながら見ていましたが、この日の顔ぶれで任せられる選手は残念ながら見当たらず。全員がカウンタープレスにバタバタさせられ、かろうじて前線へボールが入っても概ねつぶされ、セカンドボールへのアタックも不発。今年の浦和戦はすべてそうですが、個々のスキルの差が残酷なまでに結果とリンクしていることは否定できないでしょう。

 

 これらの中で、1つでも改善が見られれば、上向きになれば、負けが引き分けぐらいにはなるかもしれません。2つ3つなら、そのまま逃げ切れていた試合があったかもしれません。もちろん、希望的観測に過ぎない思い出はありますが、今季の東京はこのいずれも突き抜けたものを持てなかった、総じて「力不足」だったシーズンなのだと受け容れるしかない、というのが、今の私の心境です。受け容れ難いけど。

 

 

 でも、それでも、週末に迎える今季4度目の浦和戦で、たとえ結果(=決勝進出)に繋がらないとしても、窮鼠猫を噛む姿を見せてほしい。天皇杯で勝ち上がって、どうか年末まで楽しませてほしい。何より、残りのリーグ戦3試合を消化試合にはしてほしくない。そんな希望をチームに託して、ツイッターで済んだかもしれないぐらいの冴えないエントリを締めたいと思います。御清聴…じゃないや、御拝読、ありがとうございました。