続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

Are you still hungry?

 今季のFC東京U-18は、夏のクラブユース選手権、冬のJユースカップをともに制し、「二冠」を達成しました。ただ、チームが年初に打ち立てた目標は、さらに大きい「三冠」達成。そのためには個人が、チーム全体が「1試合にこだわる姿勢」と「1試合(だけ)にとらわれない目線」、この2つのメンタリティを、己の中でせめぎ合わせながらも常に等しく保ち、1年間を過ごさなければなりません。それがいかに難しいものであるかは、論を待たないところでしょう。

今年…に限った話ではありませんが、私は基本出不精なので、全ての試合を目にしてきたわけではありません。よって、ここまで個人が、チームがどのように歩みを進めてきたのかについて、なにか偉そうに書くことはできません。それでも、私なりに断片的に見てきた「点」を無理やり「線」に繋げてしまっていいのであれば、贔屓目抜きで「右肩上がりで進んできた」と胸を張って言えます。

 しかし、クラブユース選手権、Jユースカップ二冠の裏で、プレミアリーグEASTでは9月11日、大宮ユース戦以降の6試合で2勝4分と、突き抜けきらない状況が続いています。Jユースカップは3回戦(名古屋U18戦)、準決勝(京都サンガU-18)、決勝(広島ユース)の3試合を現地、もしくはテレビで見ることができ、それぞれかなり苦労しながらも勝ち切っていた姿が目に焼き付いていただけに、はてどうしたものか?と思う日々を過ごしていました。

そんな中、日曜日に行われた鹿島ユース戦。友人の車に同乗させてもらい見にいくことができました。前日大宮ユースが新潟ユースに勝利したことで、今節優勝が決まる可能性はなくなっていましたが、それでも結果如何では「王手」をかけることができる一戦。結果も去ることながら、終わった後に何か感じるもの、感じられることがあれば…と思いながら会場であるカシマサッカースタジアムへ到着しました。

 

 

到着してほどなく、両チームのウォーミングアップが始まりました。ユースの試合をご覧になっている方なら御存知かと思いますが、鹿島ユースはかなり独特というか、クラブユースとしては異質な「部活」感を強く感じさせるアップを行うことで有名。対して、東京U-18は良くも悪くも自由で、ゆらゆらした雰囲気からいつもアップはスタート。この日も双方イメージ通りのアップスタートとなり、「鹿島、相変わらずだなぁ」と思いながら流れをしばらくぼんやり見ていると、東京U-18はほどなくして、ロングボールを蹴り合うアップを始めました。

プロでもユースでも当然にロングボールを蹴り合うアップは行い、そのシーンを見たことがある方も多いと思いますが、多くは2名がタッチライン沿いに広がり、ピッチの横幅を使って蹴り合います。しかし、この日の東京U-18は、それぞれがゴールラインとハーフウェーラインとに広がり、ピッチの縦幅を使って蹴り合っていました。CBの選手がヘディングで跳ね返すアップをする際に縦幅を使うことはありますが、ロングボールのアップを、ピッチの縦幅を使って…はほぼ見たことがなかったので、何か意味があるのかしら?と思いながら見ていました(全員がやっていたかは、すでに失念したが(苦笑))。

 その謎が解けないままアップは終了し、いよいよキックオフされましたが、開始から鹿島ユースがはっきりとした戦術を見せます。攻撃では「自陣からロングボール→前線で収まればよし、収まらなくてもセカンドボールに集中→二次攻撃からクロスやシュート」の形をやり続け、守備では「4-4-2で並び、3ライン間が30mに収まらんほどコンパクトに保つ。2トップは東京U-18の最終ラインにプレスをかけるのではなく、センターハーフへのパスコースを遮断しながら、外へパスを出させるように仕向け、ボールが外へ出たところで人数をかけて取りきる、もしくは蹴らせる」形を忠実に遂行してきました。往々にして、鹿島ユースとの試合はこうした堅い展開になりがちで、ものの5分も経たないうちに「今日も苦労するなぁ…」と思った一方、「おうおう、受けて立ってやろうじゃないか」と選手でもないのに燃える部分もありました。

 が、その熱は早々にいささか冷めてしまします。その原因は「目測の甘さ」と「精度のなさ」。鹿島ユースが次々と放ってくるロングボールに対し、東京U-18の選手たちはことごとく…と書いてしまっていいほど落下点の手前でジャンプしてしまい、身体が伸び切って前に跳ね返しきれない、あるいはかぶってしまって後ろにボールが流れるシーンが頻発。ロングボールを跳ね返しきれず、セカンドボールが東京U-18陣内に残ってしまうことが鹿島ユースにとっておあつらえ向きな展開となることは開始直後に分かりましたが、目測の甘さはまさにその展開を呼び込んでしまう要因となっていました。

 それでも、地上戦において水際で食い止め、1波多野の好セーブもあって失点は許さず、徐々にボールを持てるようになります。先ほど書いたとおり、鹿島ユースのボールを外に追い出す守備にハマってうまくいかない部分は多々ありましたが、それでもハイラインの裏に対するケアが十分だったとは言えず、11半谷を中心に裏をとろうとするフリーランが少しずつ見られるようになります。

しかし、その動きに対するロングボールが軒並み精度を欠き、裏を取れた場面は30分までで1度あったかどうか。また、鹿島がボールサイドに人をかけてくる分、逆サイドが空くことはたびたびありましたが、そこを狙ったサイドチェンジも不発に終わり、30分を過ぎようとするあたりでは、まったく長いボールが出なくなってしまいました。こうして前半は、鹿島が優勢のまま終了。ハーフタイムに

 

 

 とつぶやき、後半どう打開してくれるか?あるいはこのままいってしまうのか?期待と不安が同居していましたが、実はここでもう1つ思っていたことがありまして。それが、試合前にその謎を解けなかったロングボールを蹴り合うあのアップ。

 芝の感触を確かめるためにやっていたアップであることは間違いなく、しかし、前半は全くロングボールの精度を欠いてしまった(ショートパスも不十分だった)ことに「何のためのアップだったんだよ!」と思う部分がありましたが、それ以上にピッチの横幅ではなく縦幅で蹴り合っていたのは、カシマサッカースタジアムの風景に慣れるためだったのかな?と、ふと思い始めました。

 行ったことがある方ならご存知でしょうけど、カシマサッカースタジアムは球技(サッカー)専用スタジアムで観客席とピッチの距離が近く、座席は四方とも2層構造(2階建て)で屋根付き。また、座席シートの色も1色ではなく、赤・白・青の3色で、厄介なのがいわゆる「ゴール裏(1階部分)」が、ホーム側は白と赤、アウェイ側は白と青の2層に分かれている点。さらに、この日は快晴の青空ではなく、時折薄曇りもかかるお天道様だったことで、メイン席から見ていても、一瞬ボールを見失いかけることがありました(私だけ?)。

 もちろん、ピッチレベルの光景を見たことはないので断定することはできませんが、鹿島ユースはここがホームなわけですから、選手たちにとっては全てが見慣れた光景。かたや、年一、年二でしか訪れない東京U-18の選手たちにとっては、ある種「異様な光景」だったはず。「いやいや、Jリーグを開催できるレベルのスタジアムでの試合経験は幾度もあったでしょ?」と問う方もいるでしょうけど、今季でいうと西が丘、味スタ西敷島公園(群馬)、日立柏サッカー場ベストアメニティスタジアム鳥栖)、ヤマハスタジアムなど、比較的収容人数が少ない小さなサイズであったり、四方に屋根がなかったりと目測を誤らせる要因は少ないスタジアムばかり。

よって、私はあえて「ゴール裏の風景」に目を慣れさせるために、縦幅を使ってロングボールを蹴り合っていたのかな?とこの段階では推測しました。まあ、どういう意図であったかはスタッフに聞かなければ分かりませんが、もしこの推測が当たっていたとするならば、芝生に負けてロングボールの精度を欠いた点と同様、「何にもアップが役に立ってないじゃないか!そういうところを大事にするのがアップだろ!」と小言の一つも言いたくなる前半ではありました。

 

 

後半。一転して入り方に成功したのは東京U-18。オフィシャルサイトのマッチレポートに、佐藤監督が「相手の圧力に徐々に慣れ自分たちのゲームになってきている。怖がらずにトライし続けよう。45分走りきろう。」とハーフタイムに指示を送っていたことが書かれていましたが、鹿島ユースのあえて出てこずに、引き込んで守ろうとしていたやり方に慣れてきたのか、そもそも相手の圧力に慣れてきたのか、最終ラインの選手がボールを長く持つのではなく、その1つ前、あるいはもう2つ前に早めにボールを入れ、相手陣内でゲームを進めようとする意志を強く感じさせる入り方を見せます。さらに、ショートパスや個人技がじわじわと相手にダメージを与え始めてもいて、深い位置にも入っていけるようになりました。

この時間目立っていたのは、10松岡と14内田。10松岡は、フットサルU-19日本代表のトレーニングメンバーに選出されるという新しい刺激も受けてか、狭い局面でも全く動じず。タッチライン沿いで相手3人に囲まれるも、ボールを自分の頭越しに浮かして3人まとめて外すという南米感あふれるプレーも披露し、ゴールにこそ繋がりませんでしたが、切れ味の良さは目につきました。相手8番とのコツコツしたやり合いも、なかなか見どころあり(お互い主審に見られていたら警告ものでしたが(苦笑))。

14内田も同じように狭いところでも、相手に囲まれたところでも…というドリブルでしたが、一緒に見ていた友人が「ギリギリまでボールを自分にモノにしていられるのがスゴイ」といったニュアンスの言葉で14内田のドリブルを評価していました。確かに、ボールを晒しすぎず、でも足下につきすぎない絶妙なタッチと(自分の足とボールとの)距離感は相手からすれば奪いづらく、自身からすれば相手が足を出してくれるまで待てるわけで。そこで足を出して来たらその隙間を、出してこなければそのままボールを運んでいけるドリブルは、見ていて唸るばかりでした。

こうして、高い位置にボールの基準点を置けるようになったことで、サイドバックの上がりがスムーズになったり、センターハーフがするするっと上がってこられるようになったり、あるいはサイドで攻めている際、中の人数を確保できたり、といった好循環が、60分を過ぎるあたりには出来上がっていたように思います。その流れを得たまま70分に先制点を奪えたことは、私はただの先制点以上に東京U-18を勇気づけ、鹿島ユースを落胆させたように見ていました。

 と同時に、「何でこれが前半から見せられなかったか?」という思いも湧いていました。11/27の横浜F・マリノスユース戦は文字情報しかありませんが、この試合を含めた直近3試合(Jユース準決勝京都U-18戦、決勝広島ユース戦、11/27マリノスユース戦)はいずれも試合の入りが緩く、日曜の鹿島ユース戦を含めて4試合連続、前半(の前半)は及第点をつけがたい内容だったと思います。

もちろん、いつも前半からフルスロットルで、自分たちにとって有利な展開で試合を進められるとは思っていませんが、4試合連続で入り方が緩いのも、普通ではあまり考えられません。また、佐藤監督は夏以降たびたび、「今年のチームは、ベンチに私じゃなくドロンパの人形が座っていても…」と例えてチームの自主性や問題解決力を評価していて、私もこの点については全く否定しませんが、いつも帳尻が合う結果になるわけではありません。Jユースの準決勝、決勝はともに延長勝ちで、90分なら引き分けに終わっていたわけですし。

 話戻って、鹿島戦。先制点後、鹿島は待ち構える守備を捨て、前からプレッシャーをかけてきました。普通はここで慌てそうなものですが、むしろ出てきてくれて(鹿島側から見て)中盤より後ろにスペースができてラッキーと言わんばかりに、東京U-18の前線の選手たちはそのスペースを有効活用できていました。それでも鹿島ユースは諦めることなくボールを食らいつき、身体をぶつけて何とか攻撃を食い止め、奪い返したボールは前線へと放り込み続けます。

 迎えた、無念のエンディング。失点シーンに関してはロングスローからの展開で、そのうちJFAからハイライト映像が提供されると思うのでそちらをご覧いただきたいのですが、このスローインも、1つ前のプレー(確かセットプレー)で1波多野が長いボールに対して若干目測と判断を誤ったところからゴールを脅かされ、何とかクリアした結果、鹿島ユースが得たもの。42平川は試合後に「試合終了間際の失点は甘かったというか、不運だったと思います」とコメントしていましたが、私はこの流れを不運で片付けてしまうのを、良しとはしたくありません。甘かった、という言葉もありましたし、平川からすれば何の気なしに出た言葉かもしれませんが、最後の1プレーだけではなく、試合全体を1つの流れとして捉えた時に、この結末が必然だったとまでは言いませんが、自らが招いたものであったことは否定しがたいと感じています。

 

 

 そんな試合から一晩、二晩経って、このエントリをつらつら書いている中で、かつてイビツァ・オシム元日本代表監督が発したこんな言葉を思い出しました。

シーズン終了間際で選手が疲れていたり、サッカーに対して満腹していたりする選手が何人かいる。簡単ではない状況で準備しなければならない。肉体的、精神的な疲労を克服できるか。選手一人一人が試されている。

朝起きてご飯食べて、学校行って勉強して、友達とだべって昼ご飯食べて、また勉強して小平行って練習して、帰って風呂入って寝て。それを平日繰り返して週末に試合をして、たまの休みに遊びに行って。恐らくそんな日常を今年も1年繰り返しながら、気がつけばもう師走に突入したました。

改めて戦績を振り返ってみると、7/2 プレミアEAST第7節、マリノスユース戦以降、公式戦では22戦負けを経験せずにここまで歩みを進めてきていました。リーグ戦も一発勝負も、ホームもアウェイもセントラルも入り混じる中、疲れている選手がいてもおかしくないですし、「満腹感」を覚えてしまっている選手がいても不思議ではありません。仮にそうだったとしても、私はそれを責めることはできません。それでもあえて、選手たちには問いたいんです。

 

「みんな、『三冠』獲りたいんでしょ?」

 

って。今日これまで書いてきたことは、選手やスタッフから見たら、まったく的を射ていないかもしれません。また、ちょっとでも的にかすっていたとしても、まあ余計なお節介というか、重箱の隅をつつくような些末なことだとは、重々承知しています。

ただ、チーム全体が三冠という「1試合(だけ)にとらわれない目線」を共有できていたとしても、鹿島戦で見え隠れした「1試合にこだわる姿勢」のほんの少しの甘さが、大魚を逃す結果に繋がってしまったら本当にもったいない!と思い、最後まで胸に秘めておいたままにするか悩みながら書き続け、間もなく投稿(公開)ボタンを押そうとしております。

 前節の結果を受け、プレミアリーグEASTの頂点に立ち、3冠への挑戦権を得るため必要なのは、勝利のみとなりました。これまで繰り返してきた日常を変える必要はないと思いますが、積み重ねてきた日常を「表現する方法」は、これまでにないくらい問われる一戦になるでしょう。疲れを振り切り、甘さを捨て、一つひとつにこだわり、これまでに得た勝利からくる満腹感をも抑えるほどの、新たな勝利への欲求でまだ飢えられているのか?試合に出る、出ない関係なく一人ひとりが等しく問われていると思いますが、その結果を小平グランドで見ることができたら…最高の一言です。