続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

「プロパガンダ」のその先に

 トップチームについての1つ前のエントリにおいて、「第1のターン終了のお知らせが近いと臭う中、仙台戦は要注目」と締めくくりました。で、蓋を開ければ0−4の惨敗にポポヴィッチ監督退席処分のおまけつき。続く清水戦2人少ない相手に0−1の敗戦、そして大ブーイング(ポポヴィッチ監督がメインスタンドにて仁王立ちで試合を見ていたのを見つけた時はさすがに吹いたけど)。正直心身ともに堪える連敗で、第2のターンへ進むどころか、なかなかに暗澹たる日々が続いておりました。が、その後のACLブリスベン・ロアー戦と新潟戦は、苦しむ場面がありながらもきっちり連勝。真っ向同じスタイルがぶつかり合ったブリスベン戦はまた別の意味がありましたが、引いてブロックを整えてカウンターという戦術を取ってきた新潟相手に、いなすところと怖さを見せるところをきっちりと使い分けて2点をもぎ取り、逆に与えた決定機は1度ぐらいという完勝劇には、新潟がチーム作りに苦しんでいると言う現状を差し引いても、ホッと胸を撫で下ろすことができた方も多かったのではないかと思います。ただ、先を見据えたとき、どうしても拭い去れない思いがありまして。まあ、「過去に捉われすぎても、未来を見すぎてもダメ」が持論である自分がこういうエントリを書くことに抵抗感がない訳ではありませんけど、ポポヴィッチ体制の下キャンプが始まってほぼ3ヶ月が経った今、あえて先のことを書いておきたい気持ちがそれを勝ったと言うことで、ご勘弁ください。


 冒頭のリンク先でも書いたとおり、スタートの2ヶ月には何の文句もありません。それを踏まえた上で、鹿島戦における「負け方」は、次のステップへ進む1つの契機とするには絶好のものだった、そして、ポポヴィッチ監督自身からそれを匂わせるコメントが出たことで、「第1のターン終了か?」というエントリを書きました。ただ、この4試合を見た上でその「第1のターン終了か?」という自問について自答するならば、「まだまだ第1のターンは終わってなかったし、むしろずっとこのターンが続くのではないか?という感じすらある」というものになるでしょうか。それは、ポポヴィッチ監督の言葉から容易に想像がつくところで、この連勝における試合後コメントは

ブリスベン戦後コメント
 両チームともに素晴らしい試合をした。魅力的で攻撃的なサッカーをしたので、観にきていただいた方たちにも喜んでもらえたのではないか。この悪天候の中、多くのファン・サポーターに足を運んでいただいたが、結果と内容でお返しができたと思う。サッカーというのはいつも自分たちの思い通りになることはなく、苦しい状況や困難なこともある。ただ、そのようなときでも自分たちがやっていることや力を信じて突き進み、貫くことが大切だと私は感じている。今日の試合も、自分たちが信じてやってきたことが表現できたと思うし、素晴らしい試合になった。アジアの舞台で日本を代表して戦い、ラウンド16進出を得られたこと、そしてこのようなサッカーを展開して結果を得られたことは、日本のサッカーを背負って戦う立場として、非常によいものをみせられたと思うし、これからも日本代表として継続してよい試合をしていきたい。


 (監督としての評価も上がるのでは?)私個人のイメージアップよりも、クラブが一つになってアジアの舞台で東京のサッカーを発信していきたい。私が最初から言い続けていることは、東京というブランドを作りたいということ。ただ、そのためには時間が掛かる。重要なことはもちろん結果で、誰もが結果を出したいと思っているし、過密日程の中でも結果を出さなければいけない。ただ、長いシーズンの中で、結果が付いてこないときもあるはずだが、大事なことは信じて戦うこと。私は自分のチームや選手を信じているし、迷ってはいけない。私がやるべきことは早くチームを成熟させて、レベルを上げていくこと。そしてシーズン当初のような試合をして、結果を出し続けることだと思っている。

新潟戦後コメント
 今日は賢くクオリティの高い試合ができたと思っています。そしてこの試合が証明したように私たちはホームでもアウェイでも関係なく、試合開始から終了まで試合を支配することができるチームだと証明できたと思います。今日はゲームをしっかりコントロールして支配して攻め続け、点を取りにいく姿勢を見せることができたと思っていますし、結果を得るにふさわしいプレーができたと思います。さらに忘れていけないことは水曜日にACLのタフな試合があり、今日の試合とあわせて連続してクオリティの高い試合を見せることができた点は、さらに評価できることだと思いますし、今日戦ってくれた選手たちには感謝したいと思います。


 大切なことはこれを継続していくこと。みなさんにも考えていただきたいことは、結果だけで判断して欲しくないということ。3連敗中のときは連敗に関する質問が多かったのですが、サッカーのことを理解していただき、どのような方向性で進んでいるのか、これから先どのようなチームになっていくのかを考えて、そのような目でサッカーを見ていただきたいと思っています。

 というもの。特に新潟戦後のコメントからはあまりにもブレない意思が見て取れて、これを額面どおり、素直に受け取っていいものか少し悩んでしまうほどでしたが、試合内容含めて考えれば、これが本音であることに疑いの余地はないのかなと。また、この自答に更なる根拠をもたらしたのが、ブリスベン戦後(北京国安戦だったかもしれないけど(苦笑))のテレビインタビューにおいて用いた「プロパガンダ」という言葉。決して塚田通訳が意訳したわけではなく、ポポヴィッチ監督がハッキリとこの単語を口にしたのをしっかりと見て、聞いてビックリしたわけですが、実際にここ4試合、特に連勝した2試合でこれまで以上に先鋭的な姿勢を打ち出し、原理主義的なサッカーを貫き、その成果を試合後に誇ってみせたところを見ると、この言葉が大仰な物言いであるとスッパリ切り捨てることができないぐらい、ランコ・ポポヴィッチの哲学は揺るぎないものなんだなと、改めて思い知らされました。


 ここで話は少し横にそれますが、5/9発売の「Footballista」内に掲載された西部謙司さんのコラム「戦術リストランテ」における今回のテーマは、去るCL準決勝、チェルシーバルセロナから見る「なぜバルセロナは敗れたのか?」というものでした。その中で西部さんがチェルシーバルセロナ封じとして分析した結果導き出したのが、「ゼロトップの『4−1−5』」と「究極のブロック守備『5−4−0』*1」の2つ。
 1つ目は普段アンカーを置く中盤逆三角形の4−3−3を用いるチェルシーが、右ウイング(マタ)をセントラルハーフ(ランパードラウル・メイレレス)と並ばせ、その空いたウイングのスペースに1トップ(ドログバ)を落として、文字通りゼロトップにして守るというもの。「偶発的なもので、継続性はなかった」と断りは入れていましたが、さしものバルセロナもピッチの横幅を5人に塞がれては苦しいし、中央に人を寄せられてしまえば突破が難しくなるのは道理。で、攻めはどうするか?という点についても、アンカーの前にいる5人のうち「誰か」が−しかもシステマティックなものではなく、臨機応変に−飛び出していくことで、逆にバルサ守備陣が捕まえづらくなるという形でもって引くことのデメリットを軽減させる形が奏功したと分析されていました。2つ目は2ndレグの最終盤に見せた形で、とにかく得点を与えないために中盤(ハーフラインを超えて10〜15mあたりまで)でのボール回しには一切絡まず、DF5+MF4の2ブロックを極限まで下げ、ポジションをほぼ崩さずに守備ができるところまで引き寄せてから人数をかけて奪いに行く守備。西部さんはこれを「ハンドボール的な守備」と表現し、今後も攻撃におけるテクニックやパスワークの向上が続くようであれば「前でプレスする」局面が失われ、それを放棄して自陣で受けて守るこのやり方を取っていかざるを得ないと分析されていました。


 話を戻しまして、ここで皆様に質問。(細かく言えば違うところが少なからずありますが)この2つの守り方をやられ、東京が苦杯を嘗めた試合がありましたよね?…………………そう、正解は3/30広島戦。攻めては5−4の2ブロックを敷かれ、どの局面においても数的優位を作られて徐々に攻撃の糸口を失っていき、守っても攻め残っていた佐藤寿人、そして2、3列目から不規則に飛び出してくる選手を捕まえることができず、幾度も浅いラインを突き破られ、最後はミキッチと佐藤の阿吽にしてやられたあの試合です。そして、西部さんは今後もサッカー界においてはその流麗さを信奉し、サッカーがパス中心のゲームである以上、そのパスプレーに秀でた「バルサ化」を目指すチームと、そのパスサッカーから流麗さを奪い、カウンター等でゴールを目指す「チェルシー化」に目が向くチームが増え、この2タイプがトレンドとなり、せめぎ合っていくという趣旨のことも書かれていました。思えば、広島はペトロヴィッチ(現浦和)監督時代には「バルサ化」の旗頭とでも言うべきチームでした。ペトロヴィッチ監督の言動は、今のポポヴィッチ監督に勝るとも劣らないほど原理主義的なものが多く、ショートパス主体で相手をいなし、勘所を突く縦パスでスイッチを入れてゴールに迫り、J1昇格1年目でACLの切符を手にするまでに至りました。それが、森保監督が就任した今年の広島は、パスサッカーを放棄したとまでは言いませんが、5−4−1でベタッと守ることを全く厭わず、少ないパス本数で比較的ダイレクトにゴールへ迫ることも忘れないという、これまでとは違う姿に生まれ変わり、ここまで19得点9失点、勝ち点19で3位につける好スタートを見せています。
 これは、試合の対戦相手や意義によって、攻撃的な姿勢と守備的な姿勢の双方を同じ11人+αで表現できる多面性を持っていることの証左ともなりますが、良くも悪くも上位と下位の力差がないJリーグにおいては、この多面性こそが生き抜いていく、勝ち抜いていくために必要な条件なのかもしれません。実際、現在首位の仙台は昨シーズンまでの「ブロック守備+カウンター」に「前線からのプレッシング」を上手にまぶして、相手によって戦い方を変えることができるチームですし、昨シーズンの柏はボール支配率がほぼちょうど50%。攻めのチームなのか守りのチームなのか、「バルサ型」なのか「チェルシー型」なのか実はよく分からない中、それでもネルシーニョ監督の下で多面性をフルに活かしてタイトルを掴み取りましたし、2010年の名古屋、2007〜2009年まで3連覇を果たした鹿島も、多面性を持ってしぶとく勝ち点を落とさなかったことがタイトルにつながったといってもいいチームでしたから。加えて、一芸に秀でた特徴を持つチームが戴冠したシーズンは2006年の浦和(きっちり守ってカウンター、攻めはブラジル人万歳!)まで遡らなければならないこと、さらに言えば、攻撃の一芸でリーグを制したのが2005年のG大阪のみ(2ステージ制も含めるなら、2002年の磐田もそう言っていいかもしれませんが)という点からも、Jリーグというリーグ戦は、端的に言うのならば「攻撃<守備」という歴史を紡いできたと言えるのかなと。
 そのことを鑑みれば、今東京が、ポポヴィッチ監督がやろうとしていることは「歴史への挑戦」であり、「プロパガンダ」なんでしょう。その一方で、矛しか持たず、その矛を研ぎ澄ませることだけに注力するという多面性を否定するようなやり方が果たしてこのリーグで通用するのか、そして、チェルシーが見せたようなブロックディフェンスがパスサッカーに対する守り方として標準化しつつあり、そのチームが攻撃面でも水準以上のものを持っていたとき、「単純化」している今の東京がそれを上回る術を持っているのか、あるいは将来持ちうるのか、疑問を持たざるを得ないところもあるわけです。そして、サッカーにおいて私は多面性を好む側の人間です。もちろん、日々そんなクソめんどくさいことを考えているわけではないし、試合ごとに勝ち負け、内容に一喜一憂はしますし、試合を肴にいろんな方とあーだこーだ言ってお酒でも飲む楽しみも味わっています。しかし、今ポポヴィッチ監督が推し進める「プロパガンダ」にいつまで乗っていけるのか、いつまでついていけるのか、自分でもまだ答えが出せていませんし、今現時点で心の底から「このサッカーについていくぞ!」と断言できない自分は、確実にいます。


 皆さんは今、どういう風にこの3ヶ月を振り返り、そして、これから先をどう捉えていますか?

*1:2ndレグにおいてテリーが退場したため、フィールドプレーヤーが9人である