ふと、仕事を終えてツイッターを開くと、珍しく通知が。何かと思って見てみると…
4-3-3の守り方って、よく知らないんだよなぁ。4-1-4でブロック作るの?教えて @B_F_F_H おじさん
— ちようぬ (@24h_f_p) 2020年1月14日
ん?急になんだ?と思っていろいろ見ていると、「ワッショイ兄さん」こと後藤勝さんの、こちらのウェブマガジンから話が始まったようで(有料記事となっております。悪しからず)。
どうやら、今行っている国頭キャンプにて新システムとなる4-3-3にチャレンジしていて、それを受けて、冒頭のツイートが飛んできた模様。まあ、今は戦術ブロガーさんが西に東にいらっしゃって、むしろ私もそんな皆様からご教授願いたいところですが、今日はいろはの「い」的な、ライトな内容をササっと書いてみたいと思います。
といいながら、いきなりお断りから。
現代サッカーは攻守が非常にシームレスで、かつ「攻撃」と「守備」の間をつなぐ「トランジション」が非常に重要視されています。また、戦術の多様化により、相手がこうしてくるからこう守る(攻める)バリエーションが増えていて、言い換えれば、1つの図に守備のすべてを落とし込むことが難しい世の中になっています。
というわけで、今日は相手が「4バック&2センターハーフ」で「GK・DFからのポゼッションから攻撃がスタートする」シチュエーションに限定した4-3-3の守り方(に関する私の私見)を書いていきます。是非、この前提は押さえてお読みください。
私の理解の範囲内では、4-3-3の守り方は大きく3パターン挙げられます。その1は「マンツーマンのハイプレス」。
これは「攻撃においてボール保持を原則とし、敵陣に味方を多数送り込んでいる」ことが前提というか、セットで考える必要がありますが、敵陣でボールを失った後、即座に守備へ頭を切り替え、ボールホルダーに一番近い選手がまずプレスをかけ、これに呼応して周りの選手も自身に一番近い相手を掴まえに行くスタイル。
なので、上図ではポジションどおりに相手を捕まえていますが、WGがボールホルダーを掴まえ、右SBに味方の左IHまたは左SBが捕まえにいってもよし。とにかく、瞬時に相手の視野・判断を根こそぎ奪い、敵陣で再びボールを奪う、あるいは相手にクリア「させる」ことが目的な守り方になります。
とはいえ、90分間すべてこのやり方でボールを奪えるはずもなく。もう少しバランスを整えた陣形が4-1-4-1。
両WGをIHと同じ高さまで落とし、4-4の2ブロック+間にアンカーでバランスを取りながら守るやり方。4-3-3の守備とは?と聞かれて、恐らく一番多数派となるスタイルかと思います。
ただ、4-1-4-1のポジションを取った後の守り方は、あれもこれも。例えばロングカウンターを攻撃の主眼とするチームならば、上図よりもっと重心を下げ、IH+ボールサイドのWGは自陣に入ってしまってもいいでしょう。場合によっては、ボールサイドのIH+アンカーで2CHのような形をとり、逆サイドのIHがSHのようなポジションを取って、相手SBの上がりを警戒する、なんて考え方もあり。もちろん、逆サイドのWG+CFがカウンター要因。
一方、「可能ならショートカウンター、けど、大概は無理せずに繋いで(リンクを作って)攻めたい」チームが4-1-4-1で守るのであれば、まさに上図のとおり。いや、むしろもう少し最終ラインを押し上げて守備の縦ラインをコンパクトにし、ボールホルダーへ常にプレッシャーをかけながら、相手の選択肢を狭めたところでボールを奪う、というやり方になるでしょうか。
グァルディオラ監督は4-3-3の使い手として名高いですが、かつてバルセロナ時代は、ネガティブトランジションの意識高揚も含め、1つ目に挙げた守備の仕方をよく見せていました。一方、バイエルンを経てマンチェスター・シティに腰を下ろした昨今は、「狭いスペースを攻め、広いスペースを守りたい」とたびたび語っているそうで、2つ目の守り方をより多く見せている印象。これ1つ取っても、どれが正解でどれが不正解、なのではなく、そのチームのマインドによってこれも正解、あれも正解になる。サッカーは面白いもんです。
で、数年前まで4-3-3の守り方は、おおむねこの2つを幹として、各チームが枝葉を生やしていました。しかし、ある1人の指揮官が3つ目の幹を植え付けようとしています。それが、ユルゲン・クロップ。リバプールの指揮官となって4年余り。今季の強さはまさにアンタッチャブル、まさにインヴィンシブルとしか言いようがありませんが、選手の入れ替えも含めながら、いよいよ自らの理想をピッチで体現させつつあります。そんなクロップが、今リバプールで見せているのがこの形。
原則は以下のとおり。
1:CFがボールホルダーへチェックして守備開始。
2:WGは敵SBをカバーシャドー(ボールホルダーと守備対象の間に立って、パスコースを消す) し、ボールを中に出させる。
3:中盤3人はフラットに並び、IHは相手CHにマンツーマン気味でマーク(黄色矢印)。ただし、WGのカバーシャドーが外され、相手CBからSBにボールが出たら、SBへ猛然とアタックする(赤色矢印)。
4:アンカーは基本カバーポジションを取る。
5:SBはポジションどおり相手SHを掴む。ただし、IHが赤色矢印の動きを取ったあと、相手CHがアンカーのカバーエリア外に動いてきた場合は、マークしていたSHを捨てて、相手CHを掴まえる。
6:CBは2トップをマークしつつ、後方スペースへのロングボールに備える。
まあ、今のリバプールに関しては本当にいろんなメディア、多くのライター・ブロガーが戦術分析をしているので、そちらを検索して読んでもらった方が分かりやすいと思いますが、敵陣でボールを取り(きり)たい1つ目に挙げたような意識を主眼に持ちつつも、後方のバランスもいびつ(おろそか)にしない2つ目に挙げた要素もまぶされている、非常に理に適った戦術だと言えるでしょう。
さて、今季のFC東京が、この3つの幹からどれを自分たちの幹にするかは、まだ全く分かりません。「こうやって攻撃したいからこう守る」の「こうやって攻撃したい」が分からないですし、永井・ディエゴ不在の4-3-3と、彼らがいる4-3-3では、似て非なるものになるでしょうから。
それでも、新しいチャレンジは、見ている私たちにとっても新しい刺激になるわけで。キャンプの成果は1月28日にひとまず明らかになりますが、それまで皆様、好き好き妄想を膨らませるのも一興ではございませんでしょうか?