続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

素人の、問わず語り

 このカテゴリを使うのは久々ですが(昨年の10月以来)、たまにはサッカーと競馬以外のことを少しだべらせていただければ。
 昨日(正確には今日、ですが)9mm Parabellum Bulletの5thアルバム「Dawning」が発売されました。

 今年は結成9周年という(9mmにとっては)アニバーサリーな1年であり、約2年ぶりのアルバム発表ということで、先行シングルとなる「Answer and Answer」発売からテレビ、ラジオ、雑誌等各種メディアにいろいろ登場しております。その中で、ネット上で発表されているインタビュー2つをリンクしておきます。


ナタリー [Power Push] 9mm Parabellum Bullet 結成9周年インタビュー
9mm Parabellum Bullet − 9mmだから鳴らせるロックの“夜明け”


 ナタリーはこれまでの道のりを振り返りながら、exciteはDawningについて細かくメンバーがそれぞれ語ってくれています。なお、これの何倍のボリュームもあるインタビューが掲載された音楽雑誌も販売されておりますので、気が向いたらそちらもご購入いただければなお良いかと(笑) で、本人たちの言葉をそれぞれが各々の感性で飲み込んでいただければこんな一ファンが他に何か言うこともないんですし、以前当ブログで自分にとって音楽って「聴く(そこから派生して、下手なりにカラオケで歌う)」ことに止まっているジャンル(=「語る」までいかない)とか書いている手前、なんか偉そうに書くのもお恥ずかしい部分はあるんですが、恥も外聞も無くちょっとダラダラ書いてみようかなと。まあ、ホントチラシの裏なので、斜め読みしていただければ。


 いきなりですが、とあるバンドと、どのタイミングで出会うかによって、そのバンドに対するイメージは全然変わってくると思います。例えば9mmで言えば、メジャーデビュー前の「Gjallarhorn」や「Phantomine」をリリースした07年以前から知っているのか、そこでにわかに注目を集め、いよいよメジャーデビューとなった「Termination」や翌年の「VAMPIRE」を作り上げた08年に出会ったのか。代々木公園に1万人を集めるなどその存在がより広く知られ、「Black Market Blues」でミュージックステーションに出演し、初の武道館ライヴも成功させ、初のセルフプロデュース作となった「Revolutionaly」を世に出した09〜10年で惚れたのか(私はここ)、サクサクガツガツライヴをこなしながら、栗山千明さんへ「ルーレットでくちづけを」を楽曲提供したり、東日本大震災もありながら、それに負けない強さのある曲が詰まった「Movement」を披露したりした11年に触れたのか。大まかに言ってこの「4つのターン」の、どこのタイミングで出会ったかによって、それぞれ持ちうる印象はかわるのかな?と思っています。
 インタビュー記事を借りれば、初期の9mmは、

──この2作品を今、振り返るとどんな思いがありますか?
菅原 「Gjallarhorn」は最高だなと思います。かなり無茶して、1日で8曲とか録りました。しかも録音したのに、1曲使ってないっていう(笑)。
滝 「atmosphere」と「Talking Machine」はワンテイクでOKだったしね。
中村 レコーディングというものがよくわからないから、もはやモニタの調整もしてない(笑)。
かみじょう 俺は置いてあったドラムをノーチューニングで叩いてました(笑)。
菅原 一番大変だったのはエンジニアさんだよね。
滝 今聴くと「うるさっ」って思います(笑)。でも、テンションがすごいなって。これは本当にみんなビックリしただろうなと思います、あのうるささは。

 といった感じで、とにかく尖った感じだったと聞き及んでいます。6/24に放送されたスペースシャワーTVでの9mm特番でも、当時のライヴ映像を見たVo.&Gt.菅原卓郎(以下「卓郎」)が「刺し違えてでも…」という表現で自分たちを評していましたしね。ただ、「Termination」では「Discommunication」や「Punishiment」といった尖がりまくった、今でもライヴでは外せない曲もありながら、「Sleepwalk」や「The World」のような、それこそアコースティックで演奏しても全く曲の良さが殺がれないような曲も作るなど、新たな側面を出したように感じています。これについては、Gt.滝善充(以下「滝」)が

──ただ、「Termination」は9mmにとって土台となるアルバムになりましたよね。
菅原 まさに制作中に滝が「土台を作るんだ」って言ってたんです。
滝 それまでのインディーズの曲はいろんな意味で散らかっていたので(笑)。どんなバンドなのか、いまいち自分もよくわかってなかったような気がします。だからこそ、土台を作りたかったんですね。

 と語ったように、メジャーデビューをきっかけに1つバンドの芯を作ろうという時期だったようです。また、「Talking Rock!」という雑誌での、当時のインタビューでは

──僕(インタビュアーであり音楽評論家である吉川尚宏さん)が感じたのは、パッと聴くとすごくシンプルに聴こえるんだけど、よくよく聴くと1曲の中にすごくドラマがあってさ。(中略)かなり凝った内容なんだけど、マニアックに行き過ぎずに、あくまでシンプルに聴かせようとしているそのバランス感がすごくいいなと思って。(後略)
滝 そこはもうほんとに一番意識しているところで。大事なのは、やはり曲の構成とメロディですね。そこをカチッと強いものにしておけば、どれだけ楽器が歪んだ音をガーッと鳴らして曲が崩壊しそうになっても、きちんとした曲として聴こえるだろうというというのがあって。その辺はうまく作れたアルバムだと思っていますね。

 と語るなど、直球も変化球も投げるけど、1曲1曲に力を込めて「俺達のサウンド」追求していた時期なのかなと想像します。しかし、

──メンバーの関係性みたいなところでいうと「Termination」くらいから演奏面や精神的な部分も含めて、それぞれの役割が明確になってきたりしました?
菅原 この頃はまだごちゃごちゃしてる感じですね。当然、曲を書くとか歌詞を書くとかそれぞれの役割があるんだけど、それをどうやったらうまく作用させられるかはまだわかってない時期じゃないかな。

 と菅原が語ったとおり、まだ見定まったものがないまま進んでいた時期でもあったようです。それは、2ndアルバムとなる「VAMPARE」の制作に当たって、

──2ndアルバム「VAMPIRE」をリリースした2008年は、バンドのバランスが整ってきた時期でもあったんじゃないですか?
菅原 俺はまだこのくらいのときはしんどかったですね。歌詞が全然できなくて。それで、余計閉じこもっちゃってた。「VAMPIRE」まではずっとそんな感じです。「VAMPIRE」自体の雰囲気は、開けていて、カラフルで、すごくいい感じなんだけど。
──うん。「Termination」という土台を踏まえて、いかにいろんなアプローチができるのかを楽しんでいるような。
滝 俺は、その時期くらいから、だんだん制作の調子がよくなってきたかな。「Supernova / Wanderland」(2008年5月リリース)もかなりよくできたなと思っていて。「Termination」での悩みながらの曲作りを「もうしたくねえ! ロックンロールだ!」みたいな感じでいったら、勢いよく曲が書けました。

 ともメンバーが語ったとおり、まだ4人が4人、全員が自信を持って進めていたわけではなかったからなのかなと。まあ、どの世界もそうですが、「らしさ」を追求するにあたって「産みの苦しみ」というのは絶対あって、この時期の9mmはまだそれに苦しんでいたのかな?と。それでも、このアルバム制作でまた1つ違う側面として出てきたのが、Ba.中村和彦(以下「和彦」)の作曲への参加。これについて、和彦は

──和彦くんが初めて作曲したのも「VAMPIRE」からですよね。
中村 そうですね。「Termination」の頃はわからないこともたくさんあって。自分は曲を作ったことがないし、何もできない感じがあって。「よくわかんないけど、とりあえず曲を作ってみてもいいのかな」っていう、そんな感じでしたけどね。
──前に和彦くんと話しているときに、年下ということもあって、最初は3人に気を使う部分もあったと言っていて。そういう面でも、バンドメンバーとして対等な関係になっていったのもこのあたりからですか?
中村 そうですね。このあたりから遠慮なくツッコんでいく感じは出てきましたね。

 と語っていますが、何と言いましょうか、あくまで個人的な感想として、初めて「Termination」を聞き、その後「VAMPIRE」を聞いた時に、「VAMPIREはやたら低音の部分が強くなったなぁ」という印象を持ったんです。それは、和彦がようやくメンバー内での遠慮がなくなったことが影響していたことによるベース音そのものの変化もあったでしょうし、逆に滝が

──サウンド面で、いしわたりさん(当時のプロデューサー)が影響を与えてくれたところは?
滝 アレンジ面とギターに関しては、かなり勉強になりました。ギターも「もっと上(のフレット)を弾け」ってすごい言われて。「そんな上いっていいのか?」って思ってました(笑)。そこから、上で弾くことがめちゃくちゃ増えて。それまでは卓郎と同じパートを弾いたりするのが好きだったんですけど、分けたほうがいいんだなと。自分でも、そこで弾くのが9mmっぽいなって思うようになっていきましたね。

 と語ったとおり、高い音程についてもよりこだわりやアレンジの種類が増えたことにより、バンド全体としての音の高低さが格段に広がったことによりそう感じたのかな?とこのインタビューを読んで感じました。それこそ、フットボールアワー後藤が「高低差で耳キーンなるわ!」ってツッコんでくれるくらいにね(笑) また、「Talking Rock!」でのインタビューで、

──(2ndアルバム「VAMPIRE」)を作るに当たって、どういうことを意識したのかな?
滝 とにかく1stがきちんと目標どおりに出来たので、2ndは応用を利かせて、なおかつ1stの硬派な雰囲気とは違った、楽しい感じの音を出したいなと思って。
──(インタビューが続き)僕はとにかく1曲1曲のハジけた感じが最高だと思います(笑)
菅原 「We are innocent」の拍が2倍になる変化に気付いてもらって、「バカだねー!でもおもしろいよね!」といってもらえるのが一番楽しいしね(笑)
かみじょう そういうのが言われたくてこのバンドをやっているようなところもありますから。レコーディング中も「バカすぎて最高だな」とか、そういう会話ばっかりだし(笑)
滝 だから、あまりシリアスに受け止めず、難しく考えずに、純粋に、カッコいいな、楽しいなというところで共有できたらいいと思うし、この後のツアーも同じ気持ちなんですよね。思いっきりハジけて楽しめたらいいなと思っているし(後略)

 と語っているとおり、あまり深く考えずに、9mmというバンドの幅を広げよう、自分たちがカッコいいと思える、バカだなと思える、身に寄り添った曲を作ろうという意識が、逆に聞く側からすれば「なんか、新しいぞ」って聴こえたのかもしれません。当人達が意識せずとも周り(私だけ?)がそう受け取るって、すごい吸引力というか、説得力のあるバンドですよ、ハイ。


 そして、09年。私はこの年にリリースされた「Black Market Blues」で9mmと出会い、一瞬にして心を撃ち抜かれて、それ以降どハマリしているところ…ってのはさて置き、この年の9月9日に初の武道館ライヴを成功させ、その勢いも噛ませた上で10年に作られたのが「Revolutionaly」。初のセルフプロデュースアルバムとなったわけですが、メンバーはこのアルバムに対して

──初武道館の翌年に発売した3rdアルバム「Revolutionary」(2010年4月リリース)は、セルフプロデュース作品でしたね。
菅原 歌詞の面でも、それまでの9mmを踏まえてるんだけど、さらにちょっと開けていく。そういうのが「Black Market Blues e.p.」(2009年6月リリース)くらいからあって、そのテンションをアルバム1枚通せたんですよね。自分的には「この時期からが俺です」くらいの1枚です。
中村 今の9mmにかなり近いものが、ここで出てきた感じはありますね。淳治さんにプロデュースを頼まなかったのは、時間がなかったところもあって。人が増えると意見も増えるし、結局時間をかけた作業になってくるので。だったらパッと出して、すぐに実行できるような形でやろうと。よく言えば、その瞬間を凝縮したような。
かみじょう シングル曲も3枚も入ってますし、初めて自分で作曲したり、セルフプロデュースだったりと、いろいろ思い入れがあります。1stアルバムで土台を作って、2ndアルバムはすごいふざけて、この3rdアルバムが決意表明みたいな感じになった気がしますね。
──滝くんは?
滝 僕はあんまりいい思い出はないですね。作曲に集中できないようなことがいっぱいあって、なんだかもう目まぐるしくて……。「キャンドルの灯を」のメロディで納得いくものがどうしても出てこなくて。武道館が終わってからプリプロが始まるまでの1カ月くらいずっと考えていて、それが苦しかったです。

 と語っています。和彦が「今の9mmにかなり近いものが…」と語っていますが、「Lovecall From The World」や「Cold Edge」というどストレートなロック、パンクの曲で始まり、初めてDr.かみじょうちひろ(以下「ちひろ」)が作曲した「3031」があったり、「Invitation」や「Finder」といったバンド結成初期の頃に元音源が作られていて、言ってみれば自分たちの源流を今の自分たちが見つめ直したらどうなるのか?という実験的な部分もある曲もあったりしながら、「命ノゼンマイ」から「キャンドルの灯を」までのメロコアと言ったらいいのか、歌謡曲的といったらいいのか、とにかく今までには無かった、けれど今では9mmの代名詞とも言えるジャンルの曲を立て続けにぶちこんで「いやー、このバンド、ズルいぞ(笑)」と思わせてくれた上で、締めに「The Revolutionaly」という再びの160kmど真ん中ストレートを投げ込んで終わるという、和彦の言葉よろしくな構成のアルバム。正直「Dawning」含めた5枚のアルバムの中で、私はこの「VAMPIRE」が一番好きなアルバムです。もし、何かしらで自身のアンテナに9mmが引っかかって、「9mmの曲を聴いてみたんだけど、おススメは?」と人に聞かれたら、私は迷わず「VAMPIRE」を薦めますね。もちろん、全部聴いてほしいんですけど、とっかかりとしては9mmらしさが全て詰まっていると断言できるので。それは、「Talking Rock!」のインタビューで、

──今回の3rdアルバムを聴いていると、そこまで短期集中的な感じで作り上げたという印象がまるでないんだよね。すごく作品性が高いというか、いつもよりも時間をかけて熟考しながら作ったのかなあみたいなさ。(中略)時間をかけて実験的なことも織り交ぜつつ、煮詰める作業が多かったんじゃないかと想像したんだけどね。
かみじょう でも、時間がない中でも、ものすごく密度は濃かったですけどね。
滝 そうだよね。しかも前作は”バンド楽しんでます!”みたいな、いい意味での無責任なテンションがあって。でも、今回はもう少し”音楽をしている”感じとでも言うか。
菅原 そう!いい意味でバカなアイデアは当然入っているんですけど、そこを包み込んでしまうような堂々としたものを、僕はこのアルバムに感じるんですよ。
──(インタビュー進んで)だから、結果的には2nd以降の経験の中で掴んだセンスとスキルがすごくいい形で実を結んだ作品なんじゃないかと。
滝 そう思います。ホントに作品性が高いというか、芸術的な作品というと大げさかもしれないんですけど、でもそう言っていいほどの出来だと思っていて。(中略)今回の「Revolutionary」はもっと4人で音楽をしてますというか、4人で音楽を作りましたという、そういう意識がとても強いですね。

 と語ったとおり、これまで以上に4人の個性と思いがガチッと噛み合って、今まで以上に丁寧かつ真摯な曲作りがあった上での作品という点もあります。これまでのアルバムの中で最も少ない10曲構成なんですけど、その短さゆえに良さがギュッと詰まった濃縮果汁版!という側面もある…かな?
 その後、多くのライヴをこなしながら、東日本大震災という苦しい出来事も経ながら11年に「Movement」をリリース。このアルバムについては、

──4thアルバム「Movement」(2011年6月リリース)のリリース前に震災があって。ただ、アルバムに「新しい光」や「カモメ」といった震災以降という状況の中でも耐えうる力強い曲が収録されていることは、バンドにとってすごく大きかったと思う。
菅原 うん。そういうエネルギーを持ってる曲を、震災前からずっと作っていたのは間違ってなかったんだなと思いましたね。
──さらに「Movement」は9mmの音楽的な成熟も感じさせるアルバムになっていて。
菅原 まさにそんな感じがします。当時は勢いを重視して「パンチ出すぞ!」って作ってたつもりだったんですけど、今聴き返すとすごく丁寧に作られているなって。
──「Revolutionary」と比べて、スケジュール的にもじっくり作れた?
滝 そうですね。「Revolutionary」のときに感じた不快感を全部払拭するような(笑)。曲としても、腰を据えて響いてくるような曲たちだと思ったし、実際の制作も腰を据えてできました。だから、曲と制作スタイルが合ってたのかもしれない。逆にいえば「Revolutionary」は、あの勢いのある曲と制作スタイルが合っていたのかもしれないですよね。
かみじょう 制作の渦中にいたときはわからなかったんですけど、5枚あるアルバムの中で、一番9mmの理想型にたどり着いてる感じがあると思います。テンションだとか、奇をてらう方向ではなくて、音楽的なまとまりとか完成度を重視するベクトルに振り切った作品だなと。

 と各々が語っているとおり、今改めて5枚のアルバムの曲を聴き直してみても、ちひろが語っているとおり奇をてらっておらず、一番音が滑らかで、まるでボートに乗って川下りを楽しんでいるかのような感覚を覚えます(伝わらなかったらごめんw)。それは、滝が

この日(Movement YOKOHAMA)のLIVE DVD「act IV」(2012年4月リリース)を、あとで観て思ったんですけど、みんなすごい演奏がうまくて(笑)。それまでの「act」シリーズと比べると、どれだけうまいのかすぐにわかるくらい。

 と語っていますが、「VAMPIRE」のところで音の高低さが広がって…と書いたのに倣えば、このアルバムでは各自の演奏が上達したこと、スケジュール的にじっくり腰を据えて曲を作れたこと、セルフプロデュース2作目である程度の余裕が生まれたことなどによって、バンド自体の「懐の深さ、奥行き」がより広くなったという印象を受けていて。それによって、「Movement」というアルバムを川に例えれば、その川自体は「荒地」から「銀世界」みたいに蛇行しているところもあるし、ところどころ「Survive」や「Endless Game」のように激しくうねったり流れが急なところもあるけれど、いきなり大きく道を逸れて物騒な森の中につっこむことはなく、いきなり悲鳴を上げるような高低差のある滝があるわけでもなく、安心して川下りを楽しめるロケーションになっているのかなと思っています。また、菅原はこのアルバムに「Movement=移動」というタイトルをつけた理由として、エンジニアの方が「なんか移動しているみたいだね」とつぶやいたことを受けてつけたようなことを確か言っていたと思います。確かに、「荒地」で始まって「カモメ」で終わる構成と、菅原のこの一言を受けて、当時は私も始めと終わりで違う景色が見えたように記憶しています。ただ、2年経った今改めて聴き直すと、例えば北海道から沖縄に移動して全く景色が違う…といった意味合いではなく、先ほど書いたような1つの大きな川(道でもいいんですけど)をある地点からある地点まで移動したことにより、最初いたところと最後たどり着いたところの景色が違うといった、つながりのある移動だったという印象の方が強くなりました。
 それをより強調させるのが最後の曲「カモメ」。朝日が昇るころ、上流からスタートした川下り。途中様々な地点を経ながら下っていったその到着地点は、海へと続く波の1つも立たない穏やかな流れと、あまりにも綺麗で、あまりにも切なくて、だけど「悲しい」のではなく「明日への希望」を抱かせる夕日が沈みかけている下流だった。そう表現したくなるくらい、カモメという曲が持つ独特さは、これまで9mmが作ってきた曲の中でも群を抜くものがあります。後にシングルカットされたストリングスバージョンも本当に素晴らしいアレンジですし、12年の「MTV unplugged」で披露されたアコースティックバージョンは情感が込められすぎていて自然と泣けてしまうぐらいのアレンジとなっていますが、いずれにしてもこの「カモメ」という曲は、いつの時代に聞いてもその良さが色褪せない、後世にずっと残していきたい普遍性のある曲だと胸を張って世におススメしたいと思っています。


 そんな年月を経て、9周年となる今年に満を持してリリースされた「Dawning」。Exciteの方のインタビューに

――アルバム制作はどの辺りから始まっていったんですか?
滝 今回の制作自体の最初は、『ハートに火をつけて』のシングルに入ってる「ラストラウンド」だったんですけど。それで勢いがついたというか。そこから毎月、スタジオに1日カンヅメで曲作ったりして。リリースの予定も決まってなかったですけど、曲だけひたすら溜めてました。
菅原 それが昨年(2012年)の年始ぐらいだよね。
滝 そう。それから、【MTV Unplugged】(2012年5月)を挟んで、「ハートに火をつけて」を録って。その時点で、『Dawning』に入ってる曲も大体出ていて。「『ハートに火をつけて』に全部出し惜しみせずに入れちゃっても、この勢いだとたぶん来年くらいには、それを越える曲が出てくるだろう」ぐらいの感じがあったんで。そこからさらに勢いよく作りまくっていった感じですね。

 とあり、「MTV unplugged」を挟みながらのレコーディングだったようですが、そのライブが大きかったことは「Talking Rock!」のインタビューで

──ちなみに、前作の「Movement」から今作の「Dawning」までの間に、さっきも出てきたアンプラグドライブがあったわけだけど、実は今回のアルバムを聴きながら、このライブの経験もかなり大きかったんじゃないかなと思ってさ。
中村 いやー、それはまさにその通りです!
滝 かなり大きかったですね。
菅原 「Movement」の最後がミドルテンポの「カモメ」で、そのあとにその曲をシングルカットした時にストリングスを加えて、わりとそういう壮大なアコースティックモードがバンドの中で溢れつつあったから、どんどんそっちの方向に行っていたかもしれないんだけど、そのアンプラグドライブで、その要素をいい意味で一旦消化できたところがあって。
(中略)
中村 それぐらい集中したので、それが明けてからの爆発力がものすごくて(笑)
菅原 アンプラグドが終わって、エレキギターに持ち変えてスタジオでドカーン!と一発鳴らした瞬間にみんなが”やっぱこれが最高だ!”となって(笑)。俺達はエレクトリックバンドなんだというのを実感したりもして。
かみじょう まあ、もともとそうなんだけどね(笑)
──だよね(笑)。だけど、そのアンプラグドライブで体得したアコースティックなアンサンブルが、今回のアルバムを聴いていると、すごく生かされている印象があってさ。
菅原 そうです!それは確実にあります。

 と各メンバーが語っているとおり。あまりにも艶やかで、まったく違う9mmの側面を見せたライブでしたが、しかしメンバーの特徴が削がれることなく、曲の持つエネルギーが失われることなく、4人がより1つにまとまった印象は受けていて、メンバーもそう思っていたことがなんだか嬉しかったり(笑) また、

──前回の取材で、新曲を作ってそれを録る前に先に一度ライブでやることで、その曲の表情や温度差を体感することができる…つまりその曲を理解した上でレコーディングすることができて、すごくやりやすかったと言ってたじゃない。
菅原 そうです!もう、全然違いましたね。
滝 しかも、僕らもそうだし、スタッフもその新曲をライブで体感することで、例えばエンジニアさんに何も言わなくても分かるぐらいの感じで録ることができたから。
中村 さらにその曲に必要だと思うアイデアもライブを通して思い浮かんできたりもして。
滝 つまり、一度身体で馴染ませて、その曲をリアルに感じつつ、同時に客観的にその曲を見ることができたので、そこはホントに大きかったですね。

 と「Talking Rock!」でのインタビューにあったように、今回収録された曲は12年の各ライブにポーンと放り込んで、その肌感覚を大事にしながら曲を作り上げていったとのこと。中にはワンマンではないライブ=自分たちのファンだけではない舞台でそれを行ったこともあったようですが、自分たちのファンですら知らない曲をそういったフラットな舞台に放り込むのは正直怖い部分もあるのでは?と素人は考えてしまいます。ただ、私が知らない人に9mmを紹介する時に「正直、ズルいバンド」という言い方をすることがあるんですけど、これまでの道のりの中でいろんなことにチャレンジして、自分たちで自分たちの枠を広げてきて、もはやどんなタイプの、どんなジャンルの、どんな質感の曲をやらせても、卓郎、滝、和彦、ちひろの4人が演奏すればそれが「9mmっぽい曲」になってしまうんですよ。もしかしたら、こういう言い方は暴論なのかもしれませんけど、私はこの9年で9mmが辿り着いた境地は、そこまで言い切っていい場所だと思っていて。年齢を重ねることに、キャリアを重ねることに、違う自分を出したいという欲求が思わぬ方向に向いてしまうことなんて世の中ザラにあることで、それが「感性」を大事にしなければいけない芸術の分野ならなおさらだと思うんですけど、そうならずにここまで突き進んでこられた9mmの「才気」には、畏敬の念を捧げるほかありません。
 さて、1曲ごとのメンバー評はexciteのインタビューや、チョコチョコ引用させていただきました「Talking Rock 7月号」をじっくりこってり読んでいただきたいと思います。ファンの方は一度自分で聴き倒して、自分なりの「Dawning評」を持った上で読んだら面白いと思いますし、もし今9mmに興味があって、これから「Dawningを聴いてみようかな?」と思われている方がいたら、逆にこれを読んでから聴くと、より9mmらしさをこのアルバムから感じられるのかな?と思うほど、ボリューム満載のものとなっておりますので、ぜひともよろしくお願いします(ステマではありませんw)。で、私も恥ずかしながら直感な短評を書かせてもらいます。


 大きく分けると、私はこのアルバムは第1〜3幕に分かれているのかなと感じました。第1幕はM-1「The Lightning」、M-2「Grasshopper」、M-3「Answer and Answer」までの3曲で、題するならば「This is 9mm」。「The Linghtning」は聴いてて安心するというか、9mmらしさ全開のパンクサウンド。全体的にスタッカートが利いていてキレの良さがありながら、間奏では「Born to love you」を髣髴とさせるお祭りサウンドがあったり、でも間奏後半にはらしい歪み方があったり。で、ラスサビではライブで自然とハンドクラップが巻き起こりそうな小節があって(ちなみに、「ああ きらめくように生きるには」の部分のダッ、ダダッ、ダダッダッダ!っていうところが大好物ですw)、その勢いのまま疾走する感じが、いかにもオープニング感を表しているなぁと。で、その勢いを受けた「Grasshopper」。和彦が作曲した曲が今回2つ入っていますが、その1つ目。これは、メンバーがどのメディアでも言っているとおりザ・シンプルなロック。イントロ、間奏、アウトロの詞が乗っていない部分のサウンドは9mmっぽいんですけど、メロディはいい意味で9mmらしくないというか、1発目に聴いた時に「ん?これ、往時のLUNA SEAっていうか、ボーカル・河村隆一でも全然違和感なくね?」と感じてしまったほど。今までこういう質感の曲はありそうでなかったので、「おいおい、まだ引き出しあるんかい!」とツッコみたくなりましたw
 そして、第1幕を締めるのが「Answer and Answer」。シングルでは2曲目に真逆といっていい「Snow Plants」という曲が入っているので、この曲が持つ荒ぶる魂が強く印象に残りましたが、この流れだとこれぐらいがちょうどいいというか、ホップ・ステップ・ジャンプでお後がよろしいようで、という立ち位置に収まったなぁと。また、この第1幕はいずれも卓郎が書く歌詞が前向き。「明日を向いて歩こうか 諦めるのは飽きたのさ」「生き抜いたあとで息抜きすればいい」(The Lightning)「跳べ 迷わずに 合図待たずに あの月を狙って 可能性を今覆すために 裸足で踏み出すのさ」「希望ってやつを信じているのさ 裏切り覚悟で」(Grasshopper)「はじまったんだ 何言ってんだ 終わりじゃないのさ」「間違ったって 気にすんなって 笑い飛ばすのさ」「繋がったって どこ行ったって ひとりじゃないのさ」(Answer and Answer)など、自然体で押し付けがましくない前向きさを持った歌詞が居並んでいます。この理由は…「Talking Rock!」をお読みくださいw


 続いて第2幕。M-4「Zero Gravity」、M-5「シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜」、M-6「Scarlet Shoes」、M-7「コスモス」、M-8「Wild West Mustang」までの5曲で、題するならば「Merry-Go-Round」。「Zero Gravity」はちひろが作詞・作曲ともに担当。もうなんというか、「21世紀のアイドルソング」ですよ、ええ。「スシ食いねぇ!」とか歌っていたころのシブがき隊とか、「オリジナルスマイル」歌っていたころのSMAPとか、あるいは花の8○年組のアイドルに歌ってほしい!って思ってしまいました。今なら…ももクロちゃんとかいいなぁ。特に、「夜は明けなくても 暗闇おそれないで この手つなぎ続けて」の部分とか、もうこれはって感じですよ。でも、ドラムの進行とかギターリフとか、9mmなんですよねぇ。不思議。「シベリアンバード」はロシア…じゃないや、旧ソビエト連邦を思い起こさせるイントロとサビが特徴的な曲調で、「Talking Rock!」のインタビューで高速フォークダンスというフレーズがでてきましたが、まさにそんな感じ。まあ、こんな早い曲で優雅に踊れたもんじゃないですけど(笑) メロディーラインもコードも種類が多くないのでそれはもうスンナリ覚えられますし、ライブでハイになりすぎたオーディエンスがフォークダンスじゃなくてコサックダンス踊るんじゃないかな?ぐらいには盛り上がりそうな高揚感と、でもどこか切なげな歌詞が不思議なミックスの仕方をしている1曲です。
 続く「Scarlet Shoes」は、個人的に一番オススメしたいというか、グッと来た曲。卓郎の言葉遊びも巧みですし、滝のギターエフェクトもいろいろ遊んでいますし、ドラムもいきなりスチールドラムっぽい音が出てきたり、イントロから間奏明けの流れで急にムーディになったと思ったら、またサビに向けてガツンと8ビートの縦ノリに戻って、その勢いのまま駆け抜けたり。とにかく3分6秒の中でいろんな顔を見せてくれる曲です。ほどほどに酔っ払って、割といいテンションの時にカラオケで歌い上げたらなんかカッコいいかな、なんて(笑)。「コスモス」はここまでの流れから一転して、ゆったりとした、全く歪みのない1曲。これは滝が「あの震災の後に「そういう辛い出来事があっても、ラジオとかで流れるような、そして聴いてもらえるような曲を作りたい」といって書いた曲」と語ったとおり、柔らかい、温かい、美しいメロディーと「むすんでひらいて またむすんで 離れないように」という普遍性のあるメッセージも含んだ抒情的な歌詞が特徴。変な話、何も考えずにフラットな気持ちで聴けたら、という曲に仕上がっていると思います。そして、この第2幕を締めるのが、アルバム収録としては「The Revenge of Surf Queen」以来となるインストゥルメンタル、「Wild West Mustang」。この第2幕を「Merry-GO-Round」と評したのは、たった1周する間にあれやこれや、いろんな風景を目にすることができるメリーゴーランドに乗っていたような気分にさせられたから。洋の東西も、年代も、曲調も全く異なる5曲が、それでも9mmという1つのメリーゴーランドに収まっている凄さは、割とすごいんじゃない?という思いもありますし。で、この「Wild West Mustang」はアメリカの荒野を開拓する…とか、西部劇を瞬時に想像させるメロディーとなっていますが、ひねくれている私は同じ西部でも、西部劇ではなく西部警察のオープニングを思い出してしまったんです。このメロディーに乗って、渡哲也扮する大門圭介率いる「大門軍団」が颯爽と現れ、数々の事件をバッタバッタと解決し、最後にお馴染みの大爆破!みたいな。 いや、割とマジでアテレコしてみたら合ったりして。誰か、やってください(笑)


 そして、最終第3幕。M-9「Starlight」、M-10「ハートに火をつけて」、M-11「Caution!!」、M-12「黒い森の旅人」、M-13「The Silence」の5曲。題するならば「old and New」。今回、4人は複数のメディアのインタビューで「1周した感じがある」と語っています。9mmというバンドが9mmであるためにどうするべきか、それを模索しながらいろいろやってきたのが1周目だとすると、このアルバムからはまた別の周回に入ったと。でもそれは、今までやってきたことも正解だし、それを受けて次に進もうとしている自分たちにもワクワクしている表れで、これまでを踏まえたどこか古さすら感じさせる曲も、これまでにはなかった新しい曲も、どれも9mmなんだよ!と胸を張ってオススメできる曲が揃ったパートかなと。
 「Starlight」はどこかポピュラーで、けれどうねりがあって、だけどファッショナブルな部分もある、これまでの9mmらしいoldさを感じさせる曲。残り5曲、後半戦が始まったよ!と告げるにふさわしい縦ノリのビートがありながら、どこか冷静さも内包していて、何かフワフワした物体の中に誘われたかのごとき気持ちにさせられます。続く「ハートに火をつけて」もスカのリズムを基調にしながらどこか歌謡曲的な部分もあって、だけどキッチリメタルやってます!という9mmらしい「変化球も直球」という曲。シングルだけあって、という言い方が正しいかは分かりませんけど、アルバムの後半に鎮座されている重鎮という感覚もあります。「Caution!!」は和彦作曲の2つ目。「Grasshopper」のところで「イントロ、間奏、アウトロの詞が乗っていない部分のサウンドは9mmっぽいんですけど、メロディはいい意味で9mmらしくない」と書きましたが、これもまさしくそんな感じ。2曲とも意図して滝やちひろが作った曲とは違うタイプの曲を、でもバランスは見失わずにという意識で作ったようですが、まさに言い得て妙。「GrasshopperはLUNA SEAでも」と書きましたが、倣って書けば「Caution!!はラルク・アン・シエル」かなと。特にサビの部分はhydeがあの高い声で歌ったら似合うなぁ、と第一印象で感じてしまいました。「いいか目を覚ませ もう目を覚ませ 水の泡になる前に 水の泡になる前に」というラストの部分は、まさにラルクですわ。和彦、意外とJPOP聴いて育ってきたのね、みたいな部分が透けて見えておもろしかったです。
 さぁ、ラスト2曲。「黒い森の旅人」はNewをも超えた、9mmのNext Stageへの序曲。前作で「カモメ」を披露し、いよいよこんな曲も手に入れたか!と感嘆していましたが、それと同じか、もしかしたらそれを上回る衝撃でもって(私の中に)迎えられたのがこの曲。例えいつの日か、9mm Parabellum Bulletというバンドがその終わりを迎えたとしても、この曲だけはどうにかして孫の代まで語り継いでいきたいとさえ思わせる完璧な仕上がりで、なんかライブでこれを聴いたら泣いてしまうんではないかと。何がそこまで…というのは、なんか語ってしまうと野暮ったいので、こればかりは騙されたと思って聴いてみてください。なお、今週の金曜日、夜11時30分からフジテレビ系列で放送される「僕らの音楽」でこの曲を披露するそうなので、1人でも多くの人に見て、聴いて、感じてほしいと切に願っています。ももクロちゃんとの対談もあるそうなんで、是非ともももクロファンの方、よろしくお願いします!で、これでアルバムお終い!でも何の問題もないというか、むしろ次がある方がどうなん?と思っていましたが、やられちゃいました、「The Silence」。原点とも言えるメタルな、パンクな、カオスな、でもセンシティブで、儚くて、美しくて。余韻というものすら許さない強さは、逆に清々しいとさえ感じてしまいました。滝は「黒い森の旅人で終わると、「Movement」診たいな感じになると思うんですけど」と語っていますが、この「黒い森の旅人」から「The Silence」という曲質の流れ自体は、「The World」から「Punishment」に続く1stアルバム「Termnaition」に似ているのかなと。そういう意味では、このラスト2曲はまさに「Old and New」と言っていいと思っています。


 まあ、とにかく冗長になってしまいました(苦笑) なんか、知らない人に9mmを紹介したいなぁと思って書き始めたけど、さして興味ない人どころか、ファンですら誰もこんな長文読まねぇよ!ってほど。ただ、1つだけ最後強調させてもらえるならば、「とにかく1度、聴いてみてください!」ということ。その時代時代で細かいニュアンスは異なっていますけど、大きく切り取ればどのシングル、どのアルバムを聞いてもそれが9mmですから。それが琴線に触れなければそれ以上は何も言いませんし、もし琴線に触れたならば、次に聴いた曲、その次に聴いた曲がさらにあなたを9mmの核心へと引き寄せていきますから。