続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

立ち位置

 今野、森重という超レギュラークラスの2人を欠いた水戸戦で昇格に大手をかけ、ほぼ今季のベストメンバーが揃った鳥取戦でしっかりと勝利をものにし、1年でのJ1返り咲きを決めました。さらに、日曜日に鳥栖が北九州に敗れたため、こっそり優勝も決まりました。まずは、めでてぇ、めでてぇ、めでてぇな!ってなもんで。


 このブログでも何回か書いた記憶があるのですが、「Jリーグ」というサッカーリーグは、他国とは一線を画す独特なリーグだと言えます。いわゆるビッグクラブというチームが存在せず、その常連−鹿島、名古屋、G大阪、数年前の浦和−こそあれど、毎年優勝候補がコロコロ変わることはまずないと言っていいですし、一昨年の広島、昨年のC大阪、そして今年の柏とその年2部リーグから昇格してきたチームが、即そのシーズンの終盤まで優勝争いに絡むことも早々ありえないところ。とは言え、スペインなどのように2強が突出しすぎてどうしようもない、という状態に比べれば、健全な競争原理が働いている今のJリーグ、海外に目を移すとセリエAブンデスリーガのような状態の方が、一ファンとすれば歓迎すべきことだとは思っています。
 ただ、その競争は予想以上にシビアで、ちょっとしたボタンの掛け違えやビジョンの欠落による激しい浮き沈みの恐怖はどのチームの目の前にもありますし、レベルの差がそこまで極端ではないことにより「自分たちの立ち位置」を計りづらく、どうしても「高望みしてしまいやすい」状況が生まれやすいという風に最近は思っていまして。例えば浦和。ここ数年フロント、ベンチ、選手たちが決してひとつの線で結ばれることなく時間だけが無情に過ぎ、今季はいよいよ降格圏内に足を突っ込むまでになりました。例えば新潟。今季はACL圏内がチームの目標だったと記憶していますが、ここ2年が頑張って何とか一桁順位を確保したという過程、そしてシーズンオフの選手の出入り収支をシビアに見ればそれは高望みだったと言わざるを得ず、結果も序盤から終盤まで残留争いを繰り広げる日々となりました。例えば甲府。大木(現京都)監督、安間(現富山)監督と続いた「繋ぎ倒す」スタイルを引き継ぎつつ、ハーフナー・マイクパウリーニョら攻撃陣の効果的な補強もあって新たな攻撃の要素を確立させた内田監督と今一つ説得力に欠く理由で契約継続せず、代わりに守備重視の三浦監督を招聘するも全くチームにいる選手の個性と噛み合わず、それまでに築き上げたものを壊してしまった上で新たなものも築けずに途中解任。佐久間GMを急遽監督に据えるも、残留は限りなく厳しい状態となっています。例えば山形。チーム母体、経営規模などから考えればある面では望外とも言える2年連続J1残留を受け、今年はそれまでの守備一辺倒のスタイルから攻撃的要素を強めたスタイルへの転換を図りましたが、個人的には攻撃的なパーソナリティはあまり感じない小林監督のまま、選手の顔ぶれも昨年大活躍した田代、増田、キム・クナンをレンタルバックで失い、それを補う攻撃陣の補強もできないままというまさに「高望み」なシチュエーションとなってしまい、結果は敢え無く撃沈。去る週末、福岡にホームで0−5と敗れた後にはファンが選手バスを取り囲み、小林監督やクラブ関係者が直接対話をしなければならなかったほどの騒動も巻き起こるなどそれまでの積み上げが無に帰ってしまいかねないほどの状態にあります。


 で、自分たちの立ち位置を計りきれないという点では、いわんや昨年までの東京もそうだったと私は認識しています。ナビスコカップでは2度戴冠し、天皇杯でも近年はほぼ安定して5回戦以上まで進出、ベスト4も2度経験していますが、リーグ戦においては最終盤までリーグタイトルを争う年があれば残留争いに片足を突っ込む年もあり、「まあ、降格はしないだろうけど、優勝ってのもねぇ…」という風に毎年感じていました。しかし、08年に就任した城福監督は、チームのスタイルを一新させつつリーグ戦6位、5位と結果も残し、いよいよ10年は集大成としてはっきりと「タイトル」を口にして、それを目指すシーズンとなりました。ただ、結果はご存知のとおり。今冷静に振り返れば、10年シーズン開始前というのはENEOSが撤退して運営資金に小さくないダメージがあり、浅利、藤山の両ベテラン、茂庭、ブルーノ、佐原といった中堅どころがチームを去り、補強も森重、キム・ヨングンリカルジーニョ、ユースからの昇格(重松、阿部、平出)など若手に留まり、チーム保有選手は当時J1最小の26人、平均年齢も2番目の若さという頼りない一面が確実にありました。その当時、少なくとも私はこのタイミングでタイトル宣言をすることが間違いだったとは思いませんし、そこを後悔する気持ちは微塵も持っていませんが、それが「高望みだったのでは?」という問いに、全力で否定することもできないこともまた事実だったかなと思っています。
 しかし、今年の東京の立ち位置は、これまでのどのシーズンよりも明確でした。成し遂げるべき目標はシンプルであり、それはマストなものであるとまで言っていいものでした。突然私事ですが、拙ブログはもろもろの事情で10年10月〜11年4月までお休みをいただいていたため、今シーズンを迎えるにあたっての何かをエントリにしていません。なので、今ここでちょっとそのことを書かせていただきたいのですが、先ほど書いたとおりシンプルで明確なゴールに向かって歩を進めるに当たり、果たして東京の選手たちが「受けて立つ」ことにどれだけこだわれるのか、どれだけ耐えられるのか、不安に思っていました。これまでの東京を見ていてもお分かりのとおり、自分たちの時間帯では手がつけられないほどの圧巻パフォーマンスを見せたかと思う一方、一度歯車が噛み合わなくなるとその試合はそのまま何もなく終わってしまうことも度々ありましたから。そして、「受けて立つ」ことはニアリーイコールとして「押し気味だけど耐える」ことを強いられるわけで、そこをどれだけ我慢して自分たちを出し続けることできるのか、そこに不安を覚えないといったらさすがにそれは嘘でしょう、とも。加えて、(驕りでもなんでもなく、戦力をフラットに見れば)「横綱」たる東京に対して100%で望まないチームなんてあるはずがなく、アウェイともなれば相当なプレッシャーなどが待ち構えていることは明白だったため、一本調子の代表格とも言えるFC東京というクラブが相手の手練手管にどれだけ臨機応変に対応できるのか、その点にも不安を覚えたところです。
 シーズンが始まってからについては拙ブログである程度いろいろ書いてきたつもりなので、ここで改めて深く振り返ることはしませんが、J2というステージは想像以上にタフで、難しくて、しかしさらなる降格がない故か理想を追いかける外連味のないチームが揃っているところでした。その中で、これまた想像以上に相手チームは手を変え品を変え、時には試合前のミーティングとは全く違うことをやってくるチームもありました。また、昨年同様かそれ以上にセンターラインに怪我人が続出し、戦術の変更も余儀なくされました。けれど、やらなければいけないことはずっとハッキリしていて、そのために何をすべきか?というある面では単純に物事を考えられることができた今シーズンは、これまで以上に相手どうこうではなく自分たちがどうであるのか、自分たちでどうするのか、自分たちが何を感じるのか、そういった自分や仲間と向き合う時間がどのシーズンよりも長く、濃厚だったのかなと。その結晶、その成果は、

チームとして良く話すようになって試合毎に何が良くて何が悪くて、次に何をすべきかを話しあってきていました。色々なコミュニケーションを取れることができたのは良かったと思う。

 という羽生のコメントに集約されていると言っていいでしょう。また、メンバー固定しすぎだの何だの言われていましたが、現段階で登録33人中(すでに退団したホベルトペドロ・ジュニオール含む)29人が試合に出場し、うち23人がスタメンに1度は名を連ね、17人がゴールをあげるという結果が事実としてあり、監督・選手以下が異口同音に語った「チームで戦ったシーズン」という言葉には1%の偽りもありません。まとめっぽいことに入りますが、J2に落ちてしまった事実は消えませんし、あの時に感じた悔しさや悲しさは一生忘れることがないでしょう。けれど、J2で1年戦えたことは何物にも変えがたい貴重な経験でしたし(遠征好き&イナゴ集団のサポーターにも、いや、「にこそ」言えるのか?(笑))、リーグ戦を制したことで感じた喜びや高揚感もまた、一生忘れることはないでしょう。そんな1年にしてくれた選手たち、監督・コーチ陣、そしてフロントには、心から感謝したいと思います。


 えー、お後がよろしいようで…という感じですが、もう少しだけお付き合いください(苦笑)
 シーズン中、選手や監督、多くのサポーターからは合言葉のように「強くなってJ1に戻る」というフレーズが聞かれました。個人的にはそんな目線で見ることは一度も無かったシーズンですが、J1昇格が現実のものとなった今以降はそういう目線で見なければいけないなと。とは言え、この週末に報道されたことが事実だとすれば、来年指揮を取るのは別の人間になっているでしょう。また、選手の顔ぶれも、現在の31人にレンタルバックや新入団選手も加われば35名を超える大所帯となるため小さくないスリム化が必要で、どういうメンバーとなるのか全く読めない状況にあります。それこそ来年フロント・監督以下がチームをどんな「立ち位置」と見るのかも含め、現状で来年の話をするのはさすがに条件が整っていないし、気が早すぎるでしょう。
 でも、そんな今たった1つ言えるのは「待ち遠しい」という気持ち。久々のJ1相手となった天皇杯3回戦、対神戸戦で感じたヒリヒリ感は、決してノックアウトトーナメントで延長までもつれ込んだというシチュエーションのせいだけではありませんでしたし、6,000人弱という今シーズン平均観客数の半分にも満たないお客さんしかいなかった味スタから聞かれたチャントのボリュームは、6,000人のそれをはるかに凌駕していました。今年J2で戦ったからこそ、J1の強さ、早さ、高さ、隙のなさ、そして雰囲気の素晴らしさをこの試合で感じましたし、それがまた日常になることの喜びは、素直に感じたいなと。
 さぁ、リーグ戦もあと2試合。スッキリ勝ってJ2にお別れを告げ、天皇杯も行くところまで行って、今年を良き1年で終えたいね!