続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

M−1グランプリ2009 決勝雑感

 敗者復活戦雑感から1日(決勝からは2日も)間が開いてしまいましたが、決勝の雑感です。まあ、日も経ってしまったし、すでにいろいろ素晴らしい批評も出ているので、私はサクサクっと(笑) 点数は100点満点でつけさせていただきます。


ナイツ 90点(634点)
 噛んだ、というのは厳しすぎますが、塙さんの方がちょっと詰まる部分もあった印象。塙さんの方のフレーズ1つ1つもやや弱かったように思いましたし。緊張していたのかなぁ?それとも、あの伝説のドッキリの際に使ったネタだったから…ってのはないか。でも、その分土屋さんが上手くフォローしていたというか、変な間を作らせずにリードしていたように見えました。で、あまり出番順は関係ないように見えるネタだと思いますけど、それでも割り切って基準と考えたのが知事(88点)と松本さん(85点)ぐらいなもんで、あとの5人は確実にプラスの方向に点数をつけている事は、それだけデキが良かったということでしょう。去年の1番手、ダイアンは619点ですから、634点ってのは凄く高評価ですしね。かく言う私も、ノーマルな基準点(87、8点)よりはプラスにつけました。


南海キャンディーズ 88点(607点)
 山ちゃんのフレーズセンスが改めて世に広まった(と思われる)のが、まずは嬉しいなぁと。「そこは踏み込んじゃいけないサンクチュアリ」以外は、めちゃくちゃ面白かった〜。1回目の「パニック!」とか「レゴブロック」は面白いを通り越して凄かった。ただ、しずちゃんとの息が合ってないというか、しずちゃんがいろんな意味で「重く」て、どうしてもボケとボケの間がぶつ切りになっちゃう、そう感じてしまうんですよねぇ。山ちゃんの繋ぎの技術も足らなかったのかもしれないし、審査員はそのスムーズさを欠いた部分にマイナスを見たんでしょう。リーダーも遠回しにそういうコメントしていた、と思いますし。
 で、しずちゃんがここから大きく変わることはないでしょうから、こと「M−1」という舞台に限って言えばここが限界なのかも。とは言え、それが今更南キャンのタレント活動に何か傷をつけるとは思わないですし、逆に個々の評価は今回改めて高まったとも言えるでしょうから、今年3年ぶりにM−1にチャレンジした事は、何も間違ってなかったと断言します。…私がそれを断言してもどうしようもないけど(笑)


東京ダイナマイト 85点(614点)
 実は、東京ダイナマイトの漫才ってあまり見た事がなくて、なので「これが東京ダイナマイトなんです!」と言われれば、「はいそうですか」としか答えようがないんですが、これが5年ぶりに決勝に上がってこれた自信作です!と言われても、それには「はいそうですか」とは答えたくないかなぁと。まあ、これは完全に個人の趣味嗜好の話ですけど、この程度のテンポ、ボケの強さ、タイミングしかないのであれば、大井競馬場にもっとテレ朝に頭からいるべきコンビがいたと思ってしまいました。もちろん、準決勝で彼らが上位8組に入った、それはそうなんでしょう。けど…って、これ以上は無限ループになってしまうのでここら辺で強制終了(苦笑) そもそも論、賞レース向きのコンビじゃない!という見方は、正解?間違い?

 
ハリセンボン 83点(595点)
 まあ、春菜本人が認めているとおり、出だしでリズムをつかめなかったのが全てでしょうかね。まあ、そもそもそこまでしゃべくる漫才をするコンビではないですけど、それでもあのつっかえ方はマイナスに見られても仕方ないでしょうか。「おすそわけ」という題材の発想については悪くないと思います。「煮物全部こぼれたわ!」以外のフレーズ1つ1つはちょっと弱かった感もありますけどね。
 しかし、女性同士のコンビって男性同士に比べたら、どうしても題材・発想に限りがあると思うんですよ。極端な例えで言えば、男性同士なら最悪軽くシモに走っても笑いになる部分がありますけど、女性同士でそれはちょっと厳しいわけで。掘り下げたらえらい時間がかかりそうなのでここで止めにしますけど、ハリセンボン、アジアン、クワバタオハラモエヤン、メメといった女性コンビが決勝に行くだけではなく、決勝で勝負するためにどうしたらいいのか考えを巡らせてしまうような内容でした。まあ、ネタ設定の問題だけではないですけどね。


笑い飯 97点(668点)
 まあ〜、凄かったですね。どんな言葉で形容したらいいか思いつかないぐらい面白かったです。「鳥人」と突飛すぎる設定をつかみの2ネタぐらいでバチッと認識させて、誰しもの頭の中に「鳥人」の画を描かせた。それだけでもお腹いっぱいなのに、そこから畳み掛ける事この上なかった。巨人師匠の「情景が思い浮かぶ」という言葉が、このネタの素晴らしさを過不足なく伝えていたように思います。年を追うごとに「去年越え」や「マンネリ」というネガティブなものに縛られていくはずなんですけど、実際にコケた年もありましたけど、ここにきてまだこんなネタをひねり出せる発想力と、突飛すぎる発想を可視化できる演技力や構成力には、素直に脱帽です。


ハライチ 92点(628点)
 大井競馬場で見たとき、そして録画したものを見返した1度目の評価は「あまりにスロースタート過ぎたのがマイナスではあるんでしょうけど、よく盛り返したなぁ」と言うものでした。でも、もう1度見直してみると、「CM挟んでよかった」ってのは明らかにアドリブでしたし、出だしの仔犬が轢かれて…というくだりも、もしかしたらわざとトーンを一度落としたのか?と思ってしまうぐらい「狙った感」が伝わってきました。普段、こんな入りをしたのを見たことなかったですし。
 と言うのも、去年大竹まことさんがナイツを評した際に「ヤホーとか言って油断させといて畳み掛けてくる」みたいな評価をしていたと思うんですけど、ハライチもネタを追うごとに笑いをもって行きたい、終盤に向けて盛り上げて行きたいネタの構成。そこにきて、笑い飯のあの大爆発。であるならば、その残像を消すとともに、自分達の終盤の爆発のために敢えてテンションを落として入るってやり方は、もしかしたら一世一代のギャンブルでもあり、けれど計算し尽くされたものでもあったのかなぁと。実際、スカスカのニットあたりからのスタジオの笑いの量は、もしかしたら笑い飯以上だった印象もあるし。結果最悪の出番順となってしまいましたが、大大大健闘だったと思います。来年また待ってるよ!


モンスターエンジン 85点(610点)
 詰め込みすぎ、でしたかね。フルモデルチェンジした事は十分伝わってきました。いかにも大阪らしいしゃべくり漫才で、西森はともかく大林も噛むことなく(笑)4分間突っ走ったかと。ただ、いかんせん詰め込みすぎ。ボケの数を多くしたい、実際多くしたけど、1つ1つの前フリが結構くどくて、肝心の笑わせたいフレーズに行くまでにダレてしまった部分がいくつかありまして。これは止むを得ない部分ですけど、笑い飯、ハライチが作った「過不足ない、いいリズム」という流れがマイナスに働いたのは否めませんかね。ただ、M−1に合わせようという心意気やよし、というのも事実で、来年以降どうして行くのか、このベースにどれだけ上積みさせられるのかには注目して行きたいと思います。


パンクブーブー 93点(651点)
 This is M-1、と言っていい4分間だったんじゃないでしょうか。4分間のどこにも無駄がないし、澱むところが一つもなかったし、ワードセンスも巧みだし、しっかり終盤に向けて盛り上がっていったし、といった感じで。
 ここからは、今年のM−1で強く感じた、強く主張したい部分の1つなんですが、このネタに何か特別に熱く語らせる要素は無いかもしれません。終わってしばら〜く経った後、「あれ、パンクブーブーってどんなネタしてたっけ?」という風になるかもしれません。けれど、それでいいじゃないですか。「形式的すぎる」とか「誰々の丸写しじゃん」という評価があるかもしれません。けれど、そんな事はどうだっていい。例え特別に目新しい事がなかろうが、逆に目新しすぎようが、あの日、あの時一番面白かったコンビがチャンピオンになる、それでいいじゃないですか。「M−1とは何ぞや?」という問いに対しての答えは、恐らく十人十色。そのいずれもを否定するつもりはありませんけど、私は「その日一番笑わせてくれたやつがチャンピオンで何が悪い」、そう強く言いたいです。…ここまで書いてきたことを、思いっきり自己否定してる?(苦笑)


NON STYLE 96点(641点)
 敗者復活戦と同じネタで、それを見た際の評価はそこまで高くなかったし、大井競馬場で1本目のネタを見終わった直後の感想は「ちょっと微妙かなぁ」というものでした。しかし、テレビの前で、100%集中してネタを見たら凄かった。去年以上にベーシックなスタイルの漫才で、であるがゆえに「ごまかしの効かなさ」は去年より上だったと思いますが、石田さんの言葉以外の部分の演技力がハンパないし、それを別のところのボケで活かす繋ぎの技術もハンパないし、もちろんボケを無理なく無駄なく畳み掛けてくる勢いもハンパないし。敗者復活戦の際にそれほど評価しなかったのは、大枠しか見えずにこのネタの醍醐味の部分を見れてなかったからかなと思ったほどです。別に過大に評価しなくてもいいから、これをけなしたり卑下してほしくはないなぁと素直に思います。


 最終決戦についてはさらに短く(苦笑)。NON STYLEは1本目と構成が被る部分の多いネタで、しかも結果的に決勝9番目→最終決戦1番目と連チャンになってしまったことで、笑いの量が相対的に減った感じ。これは仕方ない。一方のパンクブーブーもそれほど1本目と変わらない感じではありましたが、落ちなかったですね〜。こちらは逆に、1本目が強烈な自己紹介となり、自分達の良さを十分浸透させられた上でやれたのが大きかったのかも。笑い飯については…まあ、いろいろ出ますわな(苦笑) でも、個人的にはチンポジネタを持ってきた事の是非なんかはどうでも良くて、個人的には今回のように「4分2ネタ」にしちゃうと、どうしても1回リセットされちゃうんですよねぇ。確かに、4分1ネタで押し切れるようなものってなかなか作れないのは分かるけど、1本目のネタがある程度通用することは勝ちあがってくる際に本人達も手応えとしてあったでしょうから、ここでもう1つ搾り出して勝負しきってほしかったなぁと。そういうわけで、私もパンクブーブーに投票したと思います。さすがに満場一致には驚いたけど、その説得力は十分にあるネタをしていたので、これもアリでしょう。おめでとう!



 ここからは、笑い飯についてもう少し。チンポジネタを持ってきたことの是非については、正直どうでもいいです。でも、終了直後のよしもとオンラインでいろいろ語っていた書き起こしを見て、一つ強く思ったことがありました。それが、「どこまで本気やったん?」という点。会話の流れをぶった切って一言だけを切り取るのは意訳かもしれませんが、哲夫は「でも、結局優勝せんかったら意味ないやろ!」と、西田は「ほんまに優勝する気でやったんよ」と語っています。果たして、それがどこまで本心なのか。普段はヘラヘラした感じのキャラもある二人ですけど、やりきった感と、悔しさと、なんちゃらと、様々な思いが交錯している終了直後に出た言葉だけに、そこそこの本音ではあると思うんです。
 笑い飯といえば、M−1。M−1といえば、笑い飯。そういっても過言ではないくらい、笑い飯の芸人人生はM−1とは切っても切り離せないものだと思います。その中で、毎年去年の自分達を乗り越えて8年連続決勝進出。これはもう誰も成し遂げられないレベルの素晴らしいことです。しかし、「結成10年以内」という条件があるM−1との別れは確実に近づいていて、その「別れ方」って、今後の笑い飯にとって凄く大事だと思っていまして。この別れがこじれてしまうようだと、彼らにとっては致命傷になりかねない、そこまで思うことがあります。じゃあ、最高の別れ方はなんだと問われれば…やっぱり優勝でしょう。王道を行かない、斜に構えてあえて「そこかーい!」という道を歩くのが笑い飯らしい、だから、優勝せずともらしさを貫いてM−1の舞台から降りる、そう思う方もいると思いますが、私はその意見には賛同できません。やっぱり、はっきりと優勝して別れを告げなきゃダメ。で、今年はメンツ的にも、1本目のネタの手応え的にも優勝してM−1とスッパリ「別れられる」チャンスだったと思ったんですが…。だからこそ、どこまで本気だったのか、優勝したいという言葉がどこまで本心なのか、聞いてみたい気がします。そして、今年またこうやって良くも悪くも「笑い飯」を貫いた事で、(来年も出れるみたいですけど)M−1と分かれた後の笑い飯がどこへ向かうのか、凄く漠然と不安になった事を記して終わりにします。