続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

2009Jユースサンスタートニックカップ 第17回Jリーグユース選手権大会決勝トーナメント2回戦 東京U−18 4−1 三菱養和FC レビュー

 昨日は深川グランドへ行き、ユースの試合を見てきました。関東圏でやる試合としては、これが最後。三菱養和を応援される方々もたくさん来られて、スタンドは満員。ピッチサイドにも大勢の人が訪れ、公式では800人が来場したとか。凄い注目度でした。まず、簡単に試合から。敬称略で失礼します。


 立ち上がりからペースを掴んだのは養和。中垣内、玉城、加藤の「トリデンテ」のところでボールを回されてしまい、そこから田鍋、田中豪のサイドアタックや木村のポストプレーなどで前線まで押し込まれ、その上1対1の勝負や球際の部分でのフィジカル勝負でも養和に分があり、東京は苦しい状況を強いられました。そして15分、DFラインで落ち着いてボールを回そうとしていた中で(恐らくですが)平出、松藤のCB間で普通では考え難いほどのミスコミュニケーションが起こり、そこでルーズボールになったところを田鍋に突かれて養和が先制。ここでやや慌ててしまった東京は、勢いを増した養和のプレスも相俟ってポゼッションが雑になり、苦しいロングボールを前線に送るシーンが続出。養和とすれば奪いどころがはっきりしているおかげで守備がしやすく、そこからの攻撃にもリズムはありました。
 しかし、東京もただ黙って見ているわけではありません。突いたところは「田鍋の後ろ」。養和を全く知らない者として、この日1、2の注目を浴びせていたのが田鍋でした。そりゃ、飛び飛びでU−18代表合宿に呼ばれ、名だたるユース観戦ブロガー(マスコミ)がこぞって「コイツすげぇ」というわけですから、そりゃ注目せざるを得ないだろうと。実際、攻撃に関してはスピード、テクニック、無理の利き具合といった点で高1とは思えないものをもっていることは垣間見えました。点取られちゃいましたしね。しかし、守備に関しては、正直「もっと頑張りましょう」だったかなぁと。養和がどういう守備のタスクを田鍋に任せているかは知る由もありませんが、戻りが遅れる、あるいは、そもそも戻らないという場面が結構あって、そこを阿部や梅内が上手く使ってサイドを崩すというシーンが何度か見られ、ここが前半は一つの(唯一の、と言ってしまっていい?)突きどころとなっていました。
 そして43分(私はもうロスタイムだと思っていた(苦笑))。中盤でボールを持っていた年森(か山崎かはちょっと覚えていない)から左のスペースにポジションを取った梅内にパスが出て、受けた梅内がクロス。ニアで待っていた山口が潰れて、ファーにポジションを取っていた重松の下へボールがこぼれます。このボールを重松が冷静にボレーで叩き込み、同点に追いつきました。やはり、得点は左サイドから。あの局面も、梅内を田鍋が見るのかSBが見るのかはっきりしておらず、結果的に「1対1の勝負」という場面が生まれました。そして、「山口が潰れて」と書きましたが、中には「繋いで」と表現する方もいまして。あの密集地帯で意図的に繋いだのだとすれば、山口のプレーはウルトラファインプレーでしょう。それを冷静に決めた重松もさすがの一言。ともかく、DFラインのミスから失点し、その後もどこからしくないプレーが散見されていただけに、凄くいい時間帯に同点に追いついたなぁと。このまま前半は終了しました。


 後半。東京は、引き続きやや不安な入りをしたように見えました。しかし50分、そんな空気を一掃するスーパーゴールが。松藤(でしたよね?)のパスカットからショートカウンターが発動し、左の梅内にボールが出て、梅内はすかさず中をルックアップしてセンターの重松へパス。この時点で重松はフリーになっておらず、むしろ右サイドの三田は完全にフリーな局面。私もそうですし、私の周りからも「ヒサオ空いてる!」という声が上がり、おそらくほぼ全員が三田へパスをするものだと思っていたでしょう。しかし、重松は三田に一瞥をくれて、三田の動きで相手DFを釣ったのち、巧みなステップワークから躊躇いなく右足を振り抜きます。これがポストを叩きながらゴールに吸い込まれ、東京が2−1と逆転に成功しました。はっきり言って、あのシュートの衝撃を上手く言葉で言い表せない自分が歯がゆい、恥ずかしいと思えるぐらい、もの凄いシュートでした。重松は試合後「味方の動きはわかってたが、最初から自分で打つ気だった」と語っていたようですが、確かにそうでなければ生まれないと断言できるほど、トラップからシュートまでの動作に無駄、躊躇い、迷い、そういったネガティブな類の感情が1%も含まれていなかった、見事なゴールでした。
 試合は、これで一気に東京のペースに。何が一番変わったかというと、この時間帯から急に東京のプレスがハマるようになった点。現地にいるときは、ぼんやりと「重松1枚が残って残りの9人がコンパクトさを増した」ことでカバーしきれたのかな?と見ていましたが、昨日の夜に早速アップされていたFoot!土屋さんの観戦記を見てスッキリ。どうやら倉又監督が、前半は重松と2トップを組んでいた山口を1列下げて4−2−3−1のような形にし、養和のトリデンテに対して山崎、年森、山口をミラーゲームのようにぶつけて、前半生じていた中盤でのナチュラルな数的不利の状態を解消させる策を講じたとのこと。そこに加えて「立ち上がりは押されていても、後半15分過ぎぐらいから自然と差が生まれる」と言っていい東京のスタミナ、フィジカルの強さが養和のそれを上回り始め、前半立ち上がりとは全く真逆の展開−東京は中盤でボールをもてて、落ち着いてパスできていた。一方養和は、ロングボールが目立つようになり、単調な攻めに終始した−に。また、重松が動けるフリースペースが増えたことで、相手の狙いもずらせるように。
 そして58分、これまた素早い展開から楔を受けてターンしようとした三田を養和DFがエリア内で倒してしまいPK(微妙にエリアの外だった気もしたが…)。これを重松が決めて、なんとこの大一番でハットトリック達成!ここで、完全に試合は東京のものになりました。養和も一気に3枚替えを施し、田中輝も投入して反撃を試み、加藤のおしゃれすぎる「ループ」スルーパスからのシュート、サイドからのクロスボール、FKのこぼれからの加藤のシュートなどで東京ゴールを脅かしますが、ここで立ちふさがったのが守護神・崔。前半から足下では危なっかしい面を見せていましたが、シュート、ハイボールへのリアクションは完璧な内容で、この時間帯も「そこキャッチできれば…」という局面で、ことごとく期待に応えるセービングを連発。この猛攻の時間帯に反撃しきれなかった養和の足は完全に止まり、85分には阿部のCKを梅内が打点の高いヘディングで叩き込んで4−1に。このまま試合は終了し、注目の1戦は思わぬ差がついて幕を閉じました。


 スコアは4−1。ですが、紙一重だったと思います。養和は重松の同点弾まではほぼ完璧な、プランどおりの試合だったんではないでしょうか?若干繰り返しになりますが、1回戦では出場できなかった中垣内がアンカーに戻りゲームをコンダクトし、その前で玉城、加藤の両センターハーフが上手くフリーのスペースを見つけながら動きながらボールを捌く。そこから木村のポストプレーやフリックオンでガツッとゴールに迫るシーンがあれば、両サイドの田鍋、田中豪の仕掛けからチャンスメイクできていたシーンもあり、非常にバランスのいい攻めをしてくるなぁという印象を受けました。じゃあ、攻められっぱなしだったかというと、これまた上でも書いたとおり、東京も押し込むことはできていました。そして、思った以上に「シュートは打たれていない」という印象も強く残っています。そういう意味では、守備の勝利でもありました。その立役者は、松藤と年森だったかなと。
 年森は、文字通り「チームの中心」にどっかりといました。決して何か突出したもの、スキルがあるわけではないし、背格好も、プレーも、(極端に言えば)「どこにでもいそうなタイプ」であるが故に、今年見た数試合の中ではそこまで強い印象には残っていませんでした。そんな年森が、この試合では左腕に腕章を巻いていました。この試合で年森がキャプテンとしてプレーするに至った経緯は分かりませんし、キャプテンマークがプレーを向上させた、なんてことを言うつもりはありません。それは、年森個人の普段の努力に対して、それこそウルトラ失礼な話ですから。でも、この大一番でキャプテンを任された。その事実が、チーム内での年森の価値であり、存在であり、期待感の表れなのは疑いようのないものです。そして、年森はプレーで、声でチームをまとめる、中盤の守備のフィルターとして機能する、ボールを丁寧に捌くといった役割をしっかりと全うし、チームを勝利に導いてくれました。卒業後は都内の大学へ進学だそうで。まだこのチームで3試合残ってますけど、彼から滲み出るパーソナリティをもってすれば、必ずチャンスは巡ってくるはず。また、その姿を生で見れる日を楽しみにしています。長居?…9分9厘無理です(涙)
 そして、松藤。率直に言って、この日の大発見でした。オフィシャルのユース試合結果を眺めてみますと、1月からCBとしてレギュラーだった様子。しかし、7月から9月、彼の名前をスタメンで見ることはなくなりました。どうやら怪我だったようですが、私が今年ユースっ子を見たのがこの時期に固まっていたので、そりゃ知らなくて当然というわけです。ただ、そのプレーぶりに一目で惚れちゃいましたわ。とにかく、落下地点を読みきる早さ、ジャンプするタイミング、ジャンプの高さ、いずれをとっても「うおっ!」の一言。相手が184cmの木村だったからなおさらインパクトが強かった部分はありましたが、それでも帰宅してプロフィール見て思わず「172cmかよ!」とつぶやき、可楽blogさん作成のメンバーリスト見て「168cm!?どっちなんだい!ど〜っちでもいいや」みたいなことを思いついたりと、ともかく木村を徐々に押さえ込んでいく様は見応えがありました。平出とのコンビも、前半はともかく後半は意思疎通できていてカバーリングを怠ることがなかったですし、重松の2点目につながる起点のパスみたいに足下の技術もありますし、来年の守備陣の核は松藤と廣木でOK!という印象を受けました。
 もちろん、重松も忘れてはいけません。前半早々にタックルを受けて右足首を痛め、「こりゃダメか?」と思いましたが、何とかプレー続行…っていうレベルじゃなかったですね。いろんな意味で「鬼神」のごときプレーぶりで、今日重松を始めて見た人は惚れたでしょうし、今まで重松を見続けてきた方は惚れ直したでしょう。で、2点目の凄さはそれを語れる方にお任せするとして、個人的には「後ろ向きにボールを向けて、そこからどう前を向くか」という点に凄みを感じました、ってお話をほんの少し。ターゲットマンとしての役割もあるわけですから、当然上から下から様々なパスが向かってくるわけですけど、重松は自分の数m手前に来たところで相手にわざと体をぶつけ、それを受けて跳ね返そうとする相手の力を利用して1m、いや50cm相手との距離を作ってボールをトラップするんですよね。これはかつてウェズレイが得意としていたような動きなんですけど、その動きの何がいいかって、ぶつけられて間合いが離れたその時点で、次何をやるにしても相手DFは後手を踏むことになるんですよ。距離をつめて奪いにいくにせよ、逆に間を空けて受けに回ったにせよ、よほど素晴らしい守備をするか、重松がミスをしない限り振り向けちゃうんですよ、これが。振り向いてからの所作(=前を向いてのプレー)が素晴らしい、見応えがあるというのは、ある意味攻撃の選手とすれば当然であってほしいわけですけど、じゃあどう持ち味を生かすか=どう前を向くのかという部分については、トップのFW(東京の、という意味ではなく日本人全体)でも思いのほかできていない印象がありまして。なので、この「受ける技術」にはシビれましたし、ホントに凄かったと思います。
 ぶっちゃけ、重松の好プレー集を作ってアーセナルあたりに売り込みをかけたら、ベンゲルは買っちゃうんじゃないか?とさえ思いました。だって、今日の重松の動きが、あまりにも今のアーセナルの1トップ(というか、ファン・ペルシー)に求められるタスクと合致してたんで。メンタリティーも十分だし(笑) まあ、買いたいって言ってもあげないけどね!…って妄想が過ぎました(笑) そんな重松(と阿部と平出)は、一般ファン相手に早速ファンサービスを。みんなで「プロってすげぇ〜」みたいなことを言っていたんですが、「トップチームのFW」として重松が味スタで躍動する姿を見るのはそう遠い未来の話じゃないな、そう思わせるほどの仕事をしてくれました。あと3試合、足首は痛むかもしれないけど、頼むぞ!
 というか、みんな良かったけどね。崔は野太い声とハイボールの強さでチームを救ったし、阿部の運動量と体幹の強さはすぐにプロでも通用するレベルだったし、オレの平出(来年彼の番号でユニ買うぞ!)は松藤に隠れてはしまいましたが、安定した守備で要所を締めてました。廣木と山崎は…飛ばして(何で!?)、梅内は田鍋の存在を消すことに一役も二役も買っていましたし、三田はサイドでの起用でしたが(贅沢!)、サイドで縦にという動きだけじゃなく、PKを取ったシーンのように真ん中に入ってきて積極的にプレーするシーンは高感度高し。山口は後半から中垣内をつぶすという難しい要求にしっかりと応え、その上で攻撃もしっかりと出来ていてお疲れした。前岡は短い時間ながら、自分がなすべきことを分かっているプレーぶりがGood。うん、みんな良かったよ!


 締め。何か綺麗なことを書いて終わろうと思いましたが、何にも浮かびませんでした(苦笑) ただ、「来て良かったな」と。今年からユースを見始め、試合数としてはたったの5試合(U−18を4試合、U−15深川を1試合)でした。けれど、トップチームの選手とはまた違う各々のモチベーションや戦う気持ちが見て取れて、そして、基本的に「初物」ばかりを見る(特に対戦相手)ことで、改めてサッカーの多様性、奥深さ、楽しさ、厳しさ、そういったものを強く感じることが出来ました。そう思わせてくれたのは、間違いなく「青赤」を身にまとった若き戦士たちのおかげ。そんな彼らの今季最後の公式大会で、(恐らく)今季関東圏でやる最後の試合をこの目で見れたことは幸せそのものだし、残り3試合、絶対勝ち抜いてくれると信じるに足る試合内容で、安心して「長居で大暴れしてこい!」と送り出せた、そんな気がします。残り3試合、行こうぜ行こうぜ〜!



P.S 準々決勝(20日)はM−1の敗者復活戦を見に行くので無理だけど、もしそこを勝ち上がってくれたら…相方に相談だ!(多分無理)