続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

「アキレスと亀」を見てきた

 昨日のレイトショーで見てきました。北野映画を劇場まで足を運んで見るのは「HANABI」以来、テレビ等も含めても「BROTHER」以来とかなり久しぶり。動機は、予告編や漏れ伝わってくる情報を見る限り、内容とか手法は全く違えど、なんとなく世界観が「HANABI」に近いものがあるのかなぁ?と思ったため。「HANABI」は本当に感動したもんでね。以下ネタバレ含むため畳みます。
 まず一つ。「HANABI」とは全く近くありませんでした(苦笑)。話の流れ然り、映像のタッチ然り、色彩感覚然り。はっきり言って「救いようのない残酷物語」という捉え方を私はしているんですが、青を前面に押し出して静かに主人公が抱える絶望感を感じさせてくれた「HANABI」に対し、今回の「アキレスと亀」は芸術を主題として扱っている影響もあってか非常にインパクトのある映像のタッチで、いろんな色でその場面場面の感情を表現していて、ある種分かりやすい面もあったのかなぁと。話の本質をどこに見いだすかは、あまりにも難しすぎる設問ですけどね(苦笑)
 その一方で、後半は「芸術という、実のところ影も形もつかめないものに執着する夫・真知寿(ビートたけし)に理解を示し甲斐甲斐しく連れ添っていく妻・幸子(樋口可南子)」という流れが中心にあり、「一度は耐え切れず離れてしまった妻が死に損ないの夫を迎えに来てまた新たな一歩を踏み出す」ラストシーンの印象が強く残る「夫婦愛がテーマでしょ」と思う方はいるでしょう。その見方を否定するつもりは全くありませんが、私は冒頭の通りそこがメインテーマの映画だとは全く思えませんでしたね。その点は北野監督自身がほぼ日刊イトイ新聞での糸井重里さんとの対談であっさりと否定してますし(笑)。なもんで、個人的にはあそこまで真知寿の苦悩、葛藤、絶望感、破滅さ、しおらしさを描いたのであれば、最後も気持ち悪いくらいのネガティブな終わり方で良かった気がします。それもまた北野監督らしい作り方なはずですし。事実「もっとひどいエンディングは用意していた」らしいんですが、さすがにそれは「プロデューサーに止められた」そうです(笑)。見たいなぁ、その終わり方。
 終わり方、という点で言えば、ラストシーンは上でも書いたとおり妻が夫を迎えに来て、手を繋いで歩いていくという構成でしたが、これがハッピーエンドか?と言われると100%そうとは言い切れないんですよね。その点は、糸井さんとの対談の中で

っていっても、どういうふうにも
取れるようにしてあるからね。
最低限、救いがある
エンディングにしてあるんだけど、
それも考えようによっては、
このふたりがまた無茶やるんだろうな、
ってことも考えられるわけだし。

 と北野監督自身が語っている通りで、はっきり言って「オチ」は無いに等しいのかなぁとも思うところ。

「オチ」で考える現代性−タケルンバ卿日記−

 自分でいろいろ書くのが面倒なのでロードの力を借りますが(苦笑)、今回の作品はズバリのこのエントリの結びにある「オチがないのを楽しみたい」映画だった気がします。まあ、北野監督の映画は総じて「オチがない」ものが多い気はしますが、海外での高い評判ほど日本の興行収入が上がらないのは、難しすぎる話の内容なのではなく、「オチがない作り」が大きいのかもしれませんね、今更ですけど。その点は、北野監督作品の中では異色の(=勧善懲悪と言う分かりやすい)作品である「座頭市」が一番ヒットしたのも、ロードのブログ内にある「オチを求め」「答えを知りたい」今の日本人の現代性が寄与しているのかなぁとも。ただ、これはどっちが良いとか悪いとかではなく(興行収入的には大いに重要かもしれませんが)どっちの形も「映画」なわけで、この辺の振り幅の広さが北野監督の最大の魅力なのかなぁ?と改めて感じたところです。
 …「アキレスと亀」の感想からだいぶ逸れちゃいましたね(苦笑)。まあ、終わったあと取りとめも無くいろんな方向に考えが働いてしまうくらい「持ちのいい映画」(糸井重里曰く)だということです。まんまと北野監督の思惑にハマった、とも言えるでしょうが(笑)