続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ついに始まった、真の「掛け持ち」との戦い

 J3へセカンドチームを送る決断を下した昨シーズン、U-18の選手たちがどこまでU-23の一員としてJ3を戦うのか?それに伴い、U-18はどこまで学年を問わないシームレスさを求められるのか?そのことを、決して本筋とはしていないながら、頭のどこかには置きながら1年ゆるゆると試合・文字情報を見続けて来ました。

 そんな2016年の出場記録について、こちらの方が素晴らしい文章とともにまとめてくれているので、まずは改めてそちらをご覧いただきたく。

 エントリ前半に上げられている出場記録一覧を参照すると昨季は、今季トップ昇格を果たした岡崎、鈴木がほぼJ3に専念し、生地もJ3寄り。これまたトップ昇格した内田はU-18側にいながらも要所でJ3へお呼ばれし、その他の選手はU-23やオーバーエイジの頭数などを見ながら「足りないところを補う」格好でJ3を戦っていた、と見ることが出来ます。

 もちろん、U-18のメンバーに強いることとなった「掛け持ち」の影響は、薄くしか追いかけられていなかった私にも分かるくらい、顕在化していたものもありました。それでもU-23の面々、あるいはオーバーエイジの起用により、ギリギリ掛け持ちの「限界点」は超えなかった印象はあり、U-18のAチームはJ3での個々の経験もありながら、一定以上はユニット、グループを継続して起用しながら戦えたことで、カップ戦2冠を達成することが出来た、という考えも持っています。

 年が明けて2017年。先のちようぬ氏のエントリにもあるとおり、オーバーエイジの役割を受け(入れ?)てくれていた圍、水沼、林容平はチームを去りました。昨季U-18のメンバーとして、あるいは特別指定としてJ3を戦っていたメンバーがトップチームのスカッドに複数加わりましたが、U-23組だけでは頭数が足りない現状に変わりは無く。果たしてJ3は、あるいはU-18のAチームはどのような顔ぶれで戦っていくのか?を気にしながら、ここまで見てきました。

 蓋を開けてみたらJ3は昨季以上に、オーバーエイジの起用がなく、U-18組の登用が目立ちます。想像するに「よりJ3の舞台をU-23組、U-18の選手たちに経験させてあげたい」明確な意図と、「DAZNに放映権が映り、『J1原則土曜開催』が崩れたことによってマッチデーのカブりが増え、オーバーエイジをJ3に割きづらくなる」やむを得ない事情の2つがあると見ていますが、これが当たっている・いないはさておき、恐らく今季は昨季以上に2種登録されたU-18の選手たちがJ3で戦う機会が増えると見るのが正しいのではないでしょうか。

 

 そんな中で4月8日に開幕したU-18プレミアリーグイースト。ここまで3節が終了しましたが、そのスタメンはまさに、J3との掛け持ちの影響をフルに受けるものとなりました。開幕戦、そして今日の試合は当該週にJ3開催がなかったため、おそらく現状考えうるフルメンバーがスタメンに名を連ねます。

 

 かたや、J3開催があった浦和ユース戦のスタメンは、

  と、ご覧のとおり半数以上の6名が替わっていました。そして、浦和戦は見ることが出来ませんでしたが、開幕戦、そして今日の試合を見る限り、連携の構築や戦術の浸透に関しては昨季以上に骨が折れる作業になると断言していいほど、ゲーム内容は芳しくない印象を持っています。

 開幕戦と今日と、攻撃はともに長めのボールが多く見られました。センターハーフにはともに長短のパスを操ることが出来る18品田、23平川がいましたが、一方で最終ラインの4枚はビルドアップに長けている印象はなく、最前線に長身の14原が入っていたこともあって、現時点では長め中心の選択に落ち着いているのかなと。その点では、納得しうる部分もあります。

 しかし、精度の問題も去ることながら、長いボールを蹴るタイミングや、長いボールを蹴った「あと」についてチーム内で約束事やプライオリティーがあったか、それが見られたか言われれば、答えはNO。「長いボールには意図が必要ない」という時代はとうに過ぎ去り、長いボールを蹴る意味や、セカンドボールの対応含めてどういったポジショニングを取るのかが定まっていないまま長いボールを蹴ることは、いまや単に相手にボールを渡してしまう行為にすぎません。残念ながら、この2試合では「とりあえず蹴っている」場面が目立ち、攻撃にテンポやリズムが生まれるシーンは数えるほどでした。

 

 一方、開幕戦と今日で明確に違う点もありました。メイントピックだと私が感じたのは、18品田のポジショニング。開幕戦は極力最終ライン(センターバックの間や横)に下りることはせず、センターハーフの位置のままボールを引き出す、もしくはセカンドボールを拾うために1列前へ積極的に上がっていく動きが中心でした。対して今日は、明確な意図を持って最終ラインに下り、ビルドアップに加担する動きが多く見られました。

 どちらが良い・悪いは相手もあることなので、一概には言えません。ただ、品田と平川の良さ、その良さを活かすことを考えると、彼らが横並びのまま単にボールを引き出して叩くにとどまるよりは、彼らが縦関係になり、奥行きを持った基点が複数ある方が個人的には良いと思っていたので、さて今日はどうなるか、楽しみ先行で試合を見始めました。

 が、結果はこれまで書いてきたとおり。品田が最終ラインに下りてボールを受けても、平川が中盤の位置でボールを受けても、その次に受けて欲しいの選手のポジショニングが常にボールから遠く、出し手として次の展開を作りづらい状況ばかり。中でも10小林(幹)、8小林(真)の両サイドハーフの位置取りがやや中途半端で、最終ラインからボールを引き出す、14原や15久保をサポートする、サイドバックの上がりを促す、このいずれをもやりきれない状況が散見されたことが、攻撃の流動性を欠くことに繋がったように見えました。

 とまあなんだかんだ書きましたが、攻撃は水物な部分もあり。こういった攻撃が芳しくない状況でも守備が安定していれば、チームとしては体をなせるわけですが、2試合とも14原、15久保のファーストプレスから2列目が上手く連動して中盤でボールを引っ掛け、そこからのカウンターで得点に繋がったシーンはありました。ただ、昨季のこの時期と比べると2列目の連動が不十分な場面もしばしば見られ、安定感があるとまでは言えない印象を受けています。

 そして、切り替えの遅さや個人の強度不足も隠せません。球際の強さは東京U-18が長らく伝統として売りにしてきた部分で、体格やらなんやらはもちろん影響するでしょうが、組織がどうこうではなく個人戦術、気の持ちようで何とでもなる箇所。今日見せてしまった少しの甘さ、弱さは、全員が意識して排除していってほしいと強く感じています。

 

 以前までは、シーズンインとなる4月に出来上がっていないことはある程度折込み済みで、課題が見つかることは決して悪くないと見ることも出来ました。今もそうである…と考えたいところですが、この先もメンバーが試合ごとに入れ替わる、その頻度や数が昨季以上になりそうだと仮定すると、佐藤監督以下スタッフ陣に求められる仕事は、非常に難しいものになるのではないでしょうか。

 また、個人の比較で言っても、昨季の主力だった半谷、松岡、生地、内田ら複数置けていた「個で打開できる選手」が、今季は15久保こそ大きく目立つものの、次の名前がまだ、ピンとは思い浮かんできません。そうなると、よりチームで、よりグループで、よりユニットで崩しのアイデア、パターンを共有していかなければなりません。

 ただ、繰り返しになりますがJ3との併用が昨季以上の「重さ」としてのしかかってくる可能性がある中、どこまで熟成度を高められるのか、その熟成度をどれほどゲームで表現できるのか、今はまさに半信半疑と言ったところ。U-18にとって、昨季はポジティブに捉えられることが多かったJ3の存在が、今季は足枷となるリスクであることを否定はできないと思います。

 それでも、FC東京というクラブはこうした「掛け持ち」と付き合っていくことを理解して、覚悟してセカンドチームをつくり、育成年代を「強化部」の流れに組み込んだわけで。現場の皆様には申し訳ない言い方になりますが、ついに、真に始まった掛け持ちと監督は、コーチは、フロントは、そして選手たちはどう戦っていくのか。私は私なりに、試合を通してその過程を追いかけられたら、そして、その先に勝利が1つでも多くついてくることを願っています。

17年Jリーグ観た記 其の22 J2 横浜FC-千葉

 前節は黒星を喫したものの、堅実な守備をベースに上位に位置する横浜FC。一方の千葉は、トピックスに上げやすい「ハイライン・ハイプレス」が功罪分けているのか、勝ち点を伸ばしきれない状況。とはいえ、試合前で両チームの勝ち点差は2。横浜FCが上位をキープできるのか、千葉が上昇の足がかりを掴むのか。

続きを読む

17年Jリーグ観た記 其の20 J1 G大阪-大宮

 ACLとの並行に(怪我人の多さなどで)苦しみながらもリーグ戦では上位に位置しているG大阪。対して、昨季の躍進が嘘のように大きな、大きな苦しみと戦っている大宮。ACLを控えたフライデーナイトマッチを制したのは。

続きを読む

新3大・篠田トーキョーに頑張ってほしいこと

 ポジティブだった2・3月から一転、4月はここまで3試合勝ちなし。試合内容やその他漏れ聞こえてくる処々を聞いていると、必要以上にネガティブになることはないと思いますが、楽観的でいられる状況ではありません。

 課題を挙げれば、キリがないでしょう。高萩1人の離脱でこれほどまでにまた、問題が噴出するとも思っていませんでした。ただ、脊髄反射であれこれバラバラに言い続けたところで事態が好転するわけもなく、一方でここまでの篠田トーキョーの歩みを見て「この部分はもう、ちょっとなぁ…」と思う部分もバラバラあり。

 というわけで、4月に入ってから見聞きするようになったいろんな意見の中で、皆さんの意見も参考にさせていただきながら、私が今、篠田監督以下スタッフ陣、選手たちに「何とかここだけは頑張っていただきたい!」と感じている部分を3つ、書いていこうと思います。

 

 

其の1 コンディショニング(=フィジカル)(≠スタミナ)

 札幌戦。景気よく先制しながらもじわじわ札幌に押し返され、時間を経るごとにフィジカル面でも見劣り始め、後半20分を過ぎると、ほぼ完全に足をなくす。何やら、昨季の城福監督&池田フィジカルコーチ時代の悪い例を思い起こさせる内容で、さすがにガッカリさせられました。

 もちろん、ドーム内の室温は(試合開始前)22度でやや季節とマッチングせず、芝も深めに設定されていたようで、身体に堪えるシチュエーションではあったかもしれません。それでも、総走行距離は札幌が117.608kmだったのに対し、東京は113.852km。完全に「走り負けた」試合だったと言わざるを得ないでしょう。

 しかし、ここまで8試合の平均走行距離は115.0km(小数点以下切り上げ)。これはリーグ10位と縦の比較でみれば協調できる数字ではありませんが、2016年が114.7km2015年が111.8kmだったため、横の比較で見れば「走れていない」と単純には言いづらい状況。また、スプリント回数に至っては、今季平均が184回で何とリーグトップ。さらに、今季総走行距離で相手を下回った試合は件の札幌戦しかなく、浦和戦の総走行距離は今季最長の120.311kmで、何人かの選手からは「やりたいことはできた」「ポジティブな面もあった」という声が聞こえてきました。

 となると、4月に入ってからの「悪いイメージ」とここまでの「悪くない数字」とのギャップはなんなのか?どこから生じているのか?を考える必要があります。で、あれこれ考えてみましたが、やはり行きつく先はコンディショニングの問題になるのかなと思います。

 

 ただし、一口にコンディショニングと言っても、現代スポーツの世界では区分けが細かくなっていて、今の東京に足りないのは「スタミナ(=心肺機能)」ではなく「フィジカル(=身体能力)」だったり「アスレティック(≒予防医学)」の部分なのかなと感じています。

 前述のとおり、素走りできていないわけではありません。(強いられているものも含めて)スプリントも重ねられています。対して(具体的な数字は見られないのでここからは印象論となりますが)、例えば自陣空中戦の勝率の低さ。鳥栖戦では丸山が豊田との競り合いで跳ね返せなかったところから失点につながりましたし、セットプレーにおいても林の長身、リーチの長さに助けられている部分が多く、ストーンの役割ではないフィールドプレーヤーが跳ね返しているシーンは、実はさほど多くない印象もあります。

 例えば1対1。守備面では1対1でボールが取れない、そもそも相手のボールホルダーに対してある程度のところまで寄っていくけど、そこでもう1、2歩踏み込めない場面がとにかく目立ちます。1、2歩踏み込めないのは個人戦術による部分もあるので、一概にフィジカルの問題だけとは言えませんが、それでもコンディションが良く、身体をぶつけに行って取れる自信があるのならば、ここまで軟弱な守備をわざわざやる必要はないはずです。

攻撃面でも主にサイドバックの選手、特に室屋なんかはせっかくサイド深くでボールを受けても、そこから「ギュッ!」と形容したくなる一歩の速さが出せず、鳥栖戦では吉田に、札幌戦では田中に完敗。ボールを失った後の切り替えや、被カウンター時の帰陣でのロングスプリントやスタミナ面では貢献できているだけに、歯がゆい思いは隠せません。

 

 また、ここにきて怪我人が増えてきました。高萩はクラブの手が及ばない領域だったので仕方ありませんが、浦和戦では大久保、ウタカが揃って使えず。ここまで書いてきたフィジカルの低下も含めて、全体的にバイオリズムの谷間に早くも突入した感は否めません。

 かつての考え方で言えば、よく言われるのが「コンディションの谷間はシーズンに2回来る」説。欧州(8月開幕、5月閉幕)で例えれば、特にビッグクラブは欧州コンペティションとの兼ね合いもあり、「11月と2月にヘバる」クラブが多い、といった感じですが、そういった通説と比べても、今が谷間だとすればいささか早い訪れとなっています。

 しかし、ここで言いたいのは早い・遅いという時期のお話ではなく。スポーツ科学の分野は日進月歩。近年は「チーム単位」ではなく「選手個々」でコンディションを計測し、その結果・状態に合わせて選手個々の負荷を調整してトレーニングすることが主流となりつつあります(いろんなサッカー雑誌調べ)。

 Jのクラブが、あるいはFC東京がどこまで最新の理論、機器等を取り入れられているかは分かりません。ただ、FC今治岡田武史オーナーの交遊録も生かし、ドイツの「SAP」社と提携して欧州の最新理論を取り入れようと試みていたり、G大阪がJ2時代に今までとは異なるアプローチで、シーズン通してフィジカルコンディションを「維持する」ことに成功した、なんてことをもあったやに聞いています(詳細は以下のブログをリンクさせていただきますのでご一読を)

 

pal-9999.hatenablog.com

 

 というわけで、私が今からでもいいので取り組んでほしいのが、この「維持する」あるいは「予防する」という観点のアプローチ。J1とACLの並行ならともかく、J1とルヴァンカップ程度のやりくりならそこまで必要ないんじゃないの?と思われる方もいるかもしれません。しかし、東京はJ3とのやりくりもあって、お題目だけじゃなく真に「全員が戦力である必要性」が、ACLに出場していない他チームよりも高いことは明白です。そんな中で、早々に全体のフィジカルレベルが低下してしまう、そこから脱するのに時間を要することは、可能な限り避けなければいけません。

私が知らないだけで何か東京も手を施しているかもしれませんが、プロは結果がすべて。目に見える形でスタミナ面だけではなくフィジカル面、アスレティック面にアプローチしていることを、是非とも見せてほしいと感じています。

 

 

其の2 スカウティング

 当ブログで何度か書かせていただきましたが、正直、篠田監督自身のやり方やコメントを見る限り、戦術的な幅と言いますか奥行きと言いますか、とにかく「あんまり引出しがない」ことは、もはや多くの方が感じられていることだと思います。象徴的なのが、浦和・ペトロヴィッチ監督が先週の試合後に発したこのコメント。

相手のスターティングメンバーを見て、相手の狙いがだいたいどんなものか分かった。相手は全員がハードワークして、守備を固めて、ボールを奪ってカウンターを仕掛ける。それが相手の狙いだったのではないかと思うが、相手のそういった狙いにハマらないような戦い方を選択した。その中で、逆に自分たちが狙いとするところで得点を奪って、最後まで戦い抜く中で勝利した。

 はい、バレバレでした(苦笑)。ただ、繰り返しになりますが、そんな相手の思惑の裏をかく戦術的アプローチを示せるだけの引出しは、残念ながら現状持ち合わせていません。

 であるならば、逆に開き直って「今日の試合、我が軍はかく戦えり!」と誰もが分かるスタメンを並べる。そして、徹底的に相手をスカウティングして、スタメンの11人に週中の練習で対策をきっちり落とし込むぐらいのことはやってほしいところ。

 例えば鳥栖戦、マッシモ・フィッカデンティ監督が志向するサッカーは篠田監督が誰よりも知っているはずで、例えば3センターハーフを横にスライドさせるためのサイドチェンジが有効であることは明確だったのに、スカウティングが足りなかったのか選手がやりきれなかったのか、大きな展開を繰り出せたのは前半も終わりに差し掛かったところになってから。後半に入ってようやく、クロスをファーサイドに送って…という場面が見られるようになりましたが、前半の無策さを不満に思ったファンの方は多かったはずです。

 また、「自分たちのやりたいことができなかった」とよく聞きますが、今期に入ってからは正直「じゃあ、何をやりたいのか?」「では、何をやらせたったのか?」が見えない試合が多い印象(私の見る目の無さもありますが)。それはやはり、スカウティング不足が多少なりとも影響を及ぼしていると考えますし、戦術面で見劣りするチームが、フィジカルもスカウティングもなく戦っていこう、上位に進出していこうというのは、さすがに楽観的過ぎる気がします。

 

 

其の3 役割分担

 スカウティングをガッチリして、その結果に基づいたスタメンを選ぶ。ただ、そこで終わりなのでは意味がなくて、大事なのはそのスタメンに何をさせたいのかを明確にすること。

 3月は、良いのか悪いのかはさておき、高萩がピッチ内のほぼすべてをオーガナイズし、その他の選手がその指示を聞きながら、自ら判断する部分も含めて役割分担の明確化をはかれていました。

 顕著だったのが、第2節大宮戦。立ち上がりからプレッシングによりビルドアップがままならず、無為無策にボールを失ってはボールを回され、前半はアップアップな展開になりました。そのせいか、多くの選手からは「決して良い試合ではなかった」という類のコメントが聞かれましたが、高萩だけは違っていました。

 僕自身は、前半はあの展開で良いと考えていた。相手に決定機は作らせていなかったので、ボールを奪った時にはカウンターを狙おうとした。前半終盤には何本かカウンターを仕掛けられた。

ボランチがボールを受けに下がれば、リズムを改善できたかもしれないが、僕自身はあえてせず、我慢をしてセカンドボールを奪おうとしていた。

後半は相手にスペースができたので、自分もDFラインに入って起点になることや、そこから前線に上がってサポートする意識を高めていった。

先制のCKにつながった場面では、謙佑の声が聞こえた。全体を見回す中で、どこに出せば良いか少し迷ったが、謙佑はスピードがあるので、アバウトであっても、早く出しておけば追いついてくれるだろうと(笑)。あのようなシーンを増やしていけば、もっと相手に嫌がられると思う。もちろんそれ一辺倒になっていはいけないが。

いきなり『ゴール前が特長』のチームにはなれない。やはりFC東京は強固な守備が自信につながっていると思う。我慢して失点をゼロにする中で、1点、2点…をとることを模索していた試合だった。

 あの展開の中で、強がりではなく冷静にこうしたコメントを残せる選手が今まで東京にいたかと言われれば、おそらくNO(高橋なんかは、後日振り返って…なら結構語れていましたかね)。そして高萩が、篠田監督以下コーチ陣が試合前に選手たちへ伝えていたことを言語化してくれたのかと言われれば、それもきっとNO。となれば、「そりゃ高萩がいなくなったら、誰もコントロールできなくなるよな」という批評が出てきても、反論しようがありません。

 高萩が戻ってくれば、ある程度またオーガナイズしてくれるでしょう。けれど、高萩に全てを期待して今は何もしなくていい、だなんてなるはずもなく。とにかく今は、難しいことはしなくていいので、「お前はこれをしっかりやってくれ」と各選手にまず1つ、明確な役割を与えることさえやってくれたら、少しは事態が好転するのではないかと思うんです。

 守備面だと、センターバックにはチャレンジ&カバーをしっかりやってもらう。サイドバックには絞って中を見るのか、幅を取ってサイドアタックを見るのかはっきりさせる。センターハーフのどちらかは、じっとこらえてバイタル付近とカウンターをケアする「黒子役」として徹底させる。

攻撃面だと、黒子役ではないセンターハーフにパスなのかアタックなのか、行動範囲も含めて指示を与える。サイドハーフは選手の個性とスカウティングの結果を踏まえ、走り屋タイプなのか小回りタイプなのか、オープンにやらせるのかクローズにやらせるのか判断する。それらを踏まえ、フォワードの選手をポストタイプかムービングタイプか決める。

 そこから先のコンビネーション熟成やら連係向上やらは、ぶっちゃけ期待していません。とにかく、個々がまず何をなすべきかをはっきりさせ、そこにスカウティングの結果を梅干しがごとく添え、幕の内定食出来上がり!程度で構いません。とにかく「誰が何をすればいいか分からない」という試合はもう見るに堪えないのでありまして、なんとか、なんとか「1×11=11」になるように体をなしてくれれば…と思っています。

 

 

 篠田トーキョーの上限値は、もしかしたらこの4月の急減速で見えてしまったかもしれません。しかし、高萩の復帰こそ必要にはなりますが、その上限値――鹿島戦や川崎戦で見せたような戦い方――を高いところで維持することさえできれば…私はそこに望みがまだあると信じています。

首位・浦和から勝ち点差は6。まだ何かを諦めるような時期ではありません。これ以上遅れを取らないように、今はシンプルに方々手を尽くしてくれたらと期待しています。