続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

「追い風参考記録」から見る収穫

 本題に入る前に1つ。今回のエントリの書き出しを、城福監督の試合後コメント引用から始めようと思い、オフィシャルサイトの試合結果ページへ飛んでみたらなんと、

※選手・監督の試合後コメントにつきましては、FC東京公式ケータイサイトよりご覧ください。

 とのこと。そんな公式ケータイサイトはすべてのコンテンツを閲覧するために月額300円が必要な有料サイト。
 昨季までは試合結果ページにマッチレポート、選手・監督コメントが掲載されていて、公式ケータイサイトではそのコメントがより詳しく載っているという棲み分けだったと記憶していますが、もし今季このやり方にするのであれば、新規ファン開拓を半ば放棄したとも取られかねないのでは?と危惧するところ(無料コンテンツの充実なくして…と思いますし、一見さんがいきなり有料サイトに課金してくれるとも思えない)。また、有料サイトからコメントを引用することがどこまで「シロ」なのか、正直微妙なところもあり(これはブログ書いている人とか限定な話なので本筋から若干それますが)。
 また、見る人によって監督・選手コメントに対する重要度は違ってくると思いますが、個人的にはとても大事にしている部分であり。できれば次の試合からすぐにでも、元の形態に戻してくれたらなぁと感じています。もっと言えば、Jリーグ側が認めていないと言われている(要確認)、試合後公式記者会見映像の各クラブサイト上配信も、すぐにでも始めてほしいところ。自クラブ、マスコミ、一記者のフィルターを通した文言からしか語れない、妄想を膨らませられない状況は、もはや近代的とは言えないと思うんですけど、いかがでしょうか?


 ってなところで本題へ。ACLグループリーグ出場をかけた大事な一戦は、個人的には「杞憂」という言葉がこれほど当てはまることはない、という展開だったと思います。チョンブリFCにとってはアウェイで、しかも気候がまるで違う中で思うような力を発揮できなかったのかもしれませんが、それでも前半10分と経たないうちに2−0になっているとはゆめゆめ思わず。
 その後も一方的な展開が続き、終わってみれば公式戦で東京史上最多の9得点。しかも得点者が7+1名(オウンゴール選手)というバラエティーっぷり。シュート数も東京20−1チョンブリで、ボール支配率もどう少なく見積もっても東京60−40チョンブリと圧倒。あまりにも一方的すぎて、終わった直後に「追い風参考記録だな、これは(苦笑)」と思ったほどで、この結果を真に受けることはさすがにできませんが、それでも城福監督が

我々が目指すところと比べるとまだまだだが、我々が目指すところが何処か、みなさんにお伝えできたと思う
(公式ケータイサイトから引用…していいかどうか悩んだけどやる)

 と語ったとおり、収穫は大いにあったと思います。


 まずは守備の方から。城福監督とマッシモ・フィッカデンティ前監督と、監督として持ちうる哲学が異なることは誰の目にも明らかで、どこまで変化が見られるかが注目ポイントでしたが、この試合で見られたのは2つかなと。
1つ目が「ポジションの流動性」。「相手が最終ラインでビルドアップし始める」局面を切り取って比較すると、マッシモ時代は(特に)最終ライン4枚+中盤3枚がまずポジションをセットし、その形をなるべく崩さない中で、前線がプレスに行く・行かない、中盤以降がボールにチャレンジする・しないを振り分けていたかと思います。片や昨日は4−4−2の形をとり、ブロックを作って様子を見る場面はありつつ、基本的には積極的なプレッシングをチーム全体として意図し、マッシモ時代から見れば「まだそこはステイか?」と思うような場面でも各選手がポジションを離れてボールホルダーにチャレンジしていたように見えました。
 2つ目が「最終ラインの高さ」。マッシモ時代も(特に武藤が移籍した後=2年目のセカンドステージは)プレッシングを頻繁に行い、前からボールを取りに行こうとする姿勢は見せていましたが、それでも最終ラインは裏を取られるリスクを徹底的に排除するかのごとく、ペナルティエリアから5〜10mのところにとどまることを基本としていました。しかし、昨日はプレッシングに呼応するかのごとく最終ラインを高く設定していて、それはブロックを組んで相手のボール回しを様子見する場面でも変わりませんでした。
 マッシモ前監督はその徹底したポジショニングとライン設定で失点を減らし、上位進出を果たした。対して城福監督は、現状守備においても「アクション」という単語を用い、守備でも前方向への推進力を出すことで失点を1つでも減らしたいと考えている。その違いが結果にどう影響するのか、あるいは、その違いをどう楽しむが大事で、どちらが良い悪いという話ではないことは、あえて書いておきます。
また、1つ違いを顕著に表すプレーがあったとすれば前半、自陣右サイド深くにボールが流れてきて、森重が先に追いつくも相手FWが背後からプレッシャーをかけてきた場面。昨季までであれば、まったく無理せずタッチに逃げ、すぐに陣形を整えることをしていたかと思いますが、昨日はやや無理な体勢ながら前へボールを飛ばし、あわよくばピッチ内に残ってマイボールになれば…という選択をしました。もちろん、これもどちらが良い悪いという話ではありませんし、森重がプレー選択の段階でどこまで意識していたかは想像の域を出ませんが、もし昨季とは判断の基準を変えていたのだとすれば、早くも城福監督の思いがプレーに反映されていると――邪な書き方をすれば、昨季までの判断は「仕方なく」やっていたとも――取れるシーンだったかなと思います。


 かたや攻撃。これも前半だったでしょうか、自陣でワンタッチのパスが4、5本繋がって相手のプレスをかいくぐったシーンで「おぉ〜」という声がスタンドから上がった時には「ハードル下がったなぁ」と苦笑いしたところですが、ボールを大事にしようとする意識はすでに植えつけられたというか、思い出したというか、まあとにかく明確に見られました。
 その中心にいたのはハ・デソン。前半は緩急があり、長短もあり、パスミスもないほぼパーフェクトなパフォーマンスでした。後半はややガス欠気味で、システムが4−3−3に替わってチーム全体がグチャグチャになったこともあって前半ほど輝けませんでしたが、彼が中央にドンと構えてくれたことにより、チームのパス回しが潤滑になったことは異論を待たないでしょう。
そんなハ・デソンに引っ張り上げられたかのように米本も躍動。最終ラインに落ちてボールを受けたかと思えば、数mのフリーランでボールホルダーに対してアングルをつけてあげたり、数十m一気に駆け上がってゴール前に顔を出したかと思えば、ヘディングまで決めてみせるなど、持ち味である縦横無尽さを守備のみならず攻撃でも発揮しました。これが継続して出せれば、今季は得点も増えていくのではないかと期待させる内容でもありましたね。
 一方で、パスを繋ぐことだけにこだわることはなく、水沼や阿部が鋭い動き出しで裏を狙えばシンプルにロングボールを出す、あるいは、手数をかけずに前へ進められる局面ではシンプルにやるなど、(結果的に中途半端だったチョンブリの守備が味方した部分もありますが)チームとしての緩急もうまく使い分けられていたように感じました。徳永が果敢に何度も上がっていくだなんて、マッシモ前監督の時にはほぼ見られませんでしたしね。
 マッシモ前監督が決して「攻められない監督」だったとは思っていません。得点数が上がらなかったのは事実ですが、「攻めのバリエーションを増やす」のではなく、「少ないチャンスでどう得点を奪うか?
という一点突破を、一定のレベルでチームに落とし込められていた点は忘れてはいけないと思います。その点で比較すれば、かつて東京を率いていた頃の城福監督は「攻めのバリエーションを増やす」にウェイトを置き、「チャンスを作る(増やす)ためにどう攻めるか?
という考え方だったと理解していたので、揺り戻しがどこまであるのか期待も不安もありましたが、この試合に限って言えば、非常にいいバランスにあったと思います。


 と、いくつか書いてきましたが、(繰り返しになりますけど)チョンブリが思った以上に何もなく、拍子抜けさせられた試合だったわけで。この先相手が手強くなり、スカウティングも進み、日程がタイトになってきた時に例えば、

・高く設定した最終ラインの裏を繰り返し狙われた際の対応策
・プレッシングを交わされた後の二次防衛
・「ハ・デソン潰し」を敢行された際の対応策
・相手により引かれた際の崩し方(これはどのチームにも言える課題ですが)
・4−3−3の完成度(この日はかなり不満な内容だった…)
・一芸に秀でた選手たちの処遇

 などの点に対してどうアプローチしていくのかは、まだ何とも言えません。まあでも、この1試合で多くのことについて何か言えるとも思っていませんで、そこは2/23のACL全北戦〜3/19J1第4節鹿島戦まで続く7連戦の中で、少しずつ読み解けていけたらいいかなと。なんにせよ、「アドバルーン」としてはこれ以上ない、今季初の公式戦だったと確信しています。