続々々・メガネのつぶやき

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18年Jリーグ観た記 其の5 川崎-湘南

 開幕戦、アウェイながら磐田を3-0で下し、白星発進となったディフェンディングチャンピオン川崎。ホーム開幕戦に迎えるは、J1復帰を白星で飾った湘南。ともに連勝を狙う、金曜日の神奈川ダービー

 

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短評

 川崎はエドゥアルド ネットが最終ラインに下りるか下りないかで形が変わるが、概ね下りた3-1-4-2で攻撃。自陣から丁寧にビルドアップし、敵陣に入っても複数人が近い位置を取ってポゼッションしながら崩しにかかる。ネガティブトランジションは即時奪回を試み、失って数秒はボールにフルアタック。それが叶わない場合、4-2-3-1でバランスを保ちながら相手を見る。

 対する湘南。5-3-2で守るが自陣に引きこもることはなく、特にネット、大島に対して松田、菊池、石川らがかわるがわるアタックして、ミドルサードでボールを奪いたい意図を前面に打ち出す。そうして奪えれば、ボールを下げることなく縦に早くアタック。ただ、ロングボール一発はほとんどなく、隣のレーンの選手に斜めに当てて、受けた選手はまた隣のレーンにと、プレー原則は攻撃でもはっきり見て取れた。失ったら、こちらもゲーゲンプレッシング気味。

 こうしてお互いアグレッシブに攻守を繰り返し、見ていてほぼストレスを感じない展開となるが、20分頃にはさらに意図が見える。川崎は「左で作って右で仕留める」形。大島、中村、家長、車屋らが敵陣左サイドに集結し、細かくパスを繋ぐ。そのうちに、守備時は左SHにいる小林が知念と並んで中で待ち、空いたスペースにはエウシーニョがオーバーラップ。左でそのまま崩してクロスなら中に2枚いるし、右にスペースがあれば一度サイドチェンジして、エウシーニョが一仕事できる形を意識して続ける。

 かたや湘南は「カウンター」と「ストッパーのオーバーラップ」。20~30分は前述の攻撃に手を焼き押し込まれたが、30~35分の間に狙い通りミドルサードで奪ってカウンターのシーンを3度作り、WBのみならず山根、大野の両ストッパーまで攻撃に参加する場面も見られた。また、セットプレーもバリエーションが多かった。

 前半は結局スコアが動かなかったが、川崎はプレーエリアが「左48%:中38%:右14%」と狙いを象徴する数字になり、湘南も奪ったあとの精度がもう一つ上がれば…と良い意味で期待を持てる内容に映った。

 後半。入りが良かったのは湘南。奪ったあとや狭いところに入った次のパスに精度が出始め、川崎のプレッシングをいなす場面も見られた。

 しかし、スコアを先に動かしたのは川崎。56分、中村が右から左へサイドチェンジ。車屋と家長が上手く絡んでサイドを崩し、家長が早いクロスを送ると、ニアサイドに飛び込んで合わせたのは小林。前半から見せていた「左で崩して…」がついに実ったシーンだった。

 湘南は岡本→ミキッチで攻撃へ出ようとする。すると、ほどなくしてスコアに繋がる。61分、山根の鋭いミドルシュートから得たCK。秋野のボールをアンドレ バイアが競り勝ち、落ちた先にいたのは松田。ピタッと止めて、ズバッとサイドネットに突き刺し、湘南が同点に追いつく。

 その後は前半からのハイスピードバトルが影響したか、徐々に中盤にスペースができ始める。川崎は大久保を投入し、小林、大久保、中村、家長の4人で攻めきろうとする場面を増やせば、湘南もしっかり耐えながらカウンターの機会を窺う。

 75分以降、決定機は川崎が多く作るが、超決定機は89分湘南に。途中投入されていた野田がネットを上手く交わしてハーフウェーから独走。GK新井と1対1に持ち込み、冷静に足下を狙ったが、新井がなんとかセーブしてノーゴール。アディショナルタイムでもスコアは動かず、勝ち点1を分け合う結果に終わった。

 

MVP:家長 昭博(川崎)

 全員がしっかりとした技術を持って繋げるのが川崎で、ビルドアップでは大島や中村がフォーカスされがちだが、その先のアタックで抜群の存在感を見せていたのが家長。左サイドにこだわることなく幅広くボールサイドに顔を出し、ボールを持てばドリブルあり、足首だけでコースを変えられるパスあり、シュートあり。

 得点に繋がったクロスも精度が高く、90分通して11キロオーバー、スプリント26回と違う「足」でもチームの助けとなっていたのが印象的だった。