続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

このままでいいのか?このまま進むのか?

 きら星のごとく、Jリーグにその姿を現したのは、2009年。その姿をこのように評したライターもいました。

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 U-17日本代表で指揮官と選手として同じ時を過ごした縁もあってか、米本拓司は地元・ヴィッセル神戸との競合の末、城福浩が指揮を取っていたFC東京へ入団。今野泰幸(現G大阪)がセンターバックへコンバートされたこともあり、1年目でセンターハーフのポジションをつかみ、ナビスコカップ決勝では優勝へとつながる目が覚めるようなミドルシュートを叩き込み、ニューヒーロー賞とMVPをダブル受賞。年末にはA代表にも招集され、まさに順風満帆なスタートを切りました。

 しかし、好事魔多し。翌年はシーズン前に左膝前十字靭帯及び半月板損傷の大怪我を負い、リーグ出場はわずか7試合。翌年もシーズン早々に左膝前十字靭帯を損傷し、リーグ戦出場はわずか1試合。もちろん、ここで終わっただなんて思いませんでしたが、若くして2度も膝を大怪我をしてしまい、果たしてどこまで戻ってこれるのか、今思えば半信半疑でした。

 しかし2012年、米本は帰ってきました。しかも、たくましくなって。

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 復帰戦で見せた涙は、今も忘れられません。そして、怪我を感じさせないプレーを徐々に取り戻していく…いや、怪我のブランクを感じさせない成長した姿は、様々な人の心を惹きつけました。ロンドン五輪は惜しくもバックアップメンバー止まりでしたがA代表のラージグループには名前を挙げられる機会が多く、13年はランコ・ポポヴィッチ体制2年目のチームにあって、これまで以上の「攻撃的守備」を見せ、ボール奪取数で日本人最多を記録しました。

 その守備は、カルチョの国からやってきたマッシモ・フィッカデンティの下でもう一つ階段を上ります。任されたポジションはインサイドハーフ。中盤の横幅を3人でカバーする、相当に厳しいタスクでしたが、チームとしての組織力の上に持ち前のスタミナと危機察知能力といった個を乗せ、まさにチームの心臓としてその存在感を見せ付けました。15年東アジア選手権で5年ぶりのA代表選出は、決して過大評価ではなかったでしょう。

 

 しかし、前述のコラムで、米本自身がある課題を挙げていました。それが「つなぎのパス」。中村憲剛(川崎)やダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)の名前を挙げ、自身のワンステップ先の姿を見据えた言葉をつむいでいました。あれから4年。指揮官は再び城福浩に戻り、副キャプテンも任された今季。皆さんがどう評価しているかは分かりませんが、私は正直「こんなもんか?」とガッカリしています。

 まず目に付くのが、パススタッツ。あるサイトによると今季ここまでのパス本数は1191本、成功率は79.9%。昨季のパス成功率は77.9%でしたが、マッシモ時代の中盤の選手は往々にしてこの程度で、またマッシモのやり方であればこれも許容範囲内でしたが、城福監督に代わり、曲がりなりにもパスアタックを近2年よりは重視するなか、センターハーフがこの程度の成功率でいいわけがありません。

 まっこと残念なことに、センターハーフのパス成功率が低いのは米本だけではなく、高橋(78.6%)も橋本(78.5%)も、時々使われる梶山(78.9%)もみな80%を切っていて、「これでポゼッションを指向しようとかちょっとね(苦笑)」とか「米本だけが…」という見方はできます。

 ただ、これはデータを得られず印象論でしかありませんが、今季のパス成功率を担保しているのは「近い選手へのリターンパス」か「最終ラインに下りてからの近距離パス」の2つで、前線への楔のパス、サイドチェンジ、中距離のスルーパスなど、攻撃のスイッチとなるパスに関しては、過去と見比べて、横ばいかそれ以下だと感じていて。

 もちろん、センターハーフのパス成功率が伸びないのは、米本自身がどうこうもありますが、チームとしてのプレー原則のなさによるところもあります。けれど、「つなぐ」のか「飛ばす」のか、「ためる」のか「進めるのか」、その判断は試合が始まってしまえば個に委ねられる部分であり、その判断がマッシモ時代の「限定」から城福監督の「開放」に振れた今季、決して芳しいものになっていないのは、いささか寂しい限り。

 と同時に、持ち味である守備が効いている、目立っているかというと、それも若干怪しいと感じていて。これもデータで示せるものはありませんが、昨季の4バック+3センターハーフから4-4のブロックに切り替わった今季、カバーするエリアは間違いなく縮まりました。単純に考えれば、任されるエリアが縮まったのならば、その分周辺に目が行き届き、構えて狙える場面が増えてもおかしくないのに、なにか今季はいままでのような「おーっ、そこで取りきるか!」というシーンが減っている印象があります。

 

 先日発売された、フットボールサミット第35回。1冊丸ごとFC東京な回の中で、米本のインタビューも掲載されていました。もちろん、著作権等々あるので記事内容を引用はできませんが、読んだ第一印象は「こぢんまりしちゃったな」と。年齢も26を数え、様々な経験を経て、今季は副キャプテンとして振る舞う中、個人的には「小さくまとまってしまいかねないな」と。もっと言えば、キャリアを積むということは、当然自身にポジティブに作用することの方が多いでしょう。しかし、今季の米本は、これまで積んできた経験が良い方に作用していないのでは?とすら感じます。

 世の中には、極端に言えば「ゼネラリスト」と「スペシャリスト」の2タイプしかなく、複雑怪奇な面も見え始めた現代フットボール界は、前者(フットボール界では「ユーティリティ」とか「ポリバレント」とか)が幅を利かせているように感じます。が、デビューから数年の米本は間違いなく後者で、コンビを組んでいたのが梶山だったこともあって、それで良かった。

 そこから時を経て、様々なタイプとコンビを組む中で、様々な監督との邂逅を経て、周りからの期待を受けて、何より「僕はこれからもチャレンジしていきたい」と本人が語るとおり、米本拓司は徐々に、ゼネラリストへとシフトしようとしている。けれど、限定されたシチュエーションの中で力を発揮し、できることを精一杯やることこそが米本拓司の魅力だと感じている私は、スペシャリストとしての完成形を見たい。もしかしたらこの齟齬が、今季の私にとって、今季の米本が今一つ躍動していないように見て「しまう」原因なのかもしれません。

 

 皆さんは、今の米本拓司に何を期待するのでしょうか?FC東京ファンに限らず、世のサッカーファンは、今の米本拓司をどう見ているのでしょうか?そして、米本拓司は、今の自分を「迷わず進めている」と言い切れるのでしょうか?

 私はまだ、答えを見つけられずにいますが、このまま中途半端に見えるまま日々を重ねるのは…やっぱりいやなんだ。

シーズン当初の連戦のツケ、で済ませていいのか?

Q:今、FC東京が勝ち星を重ねられない原因をどこに見ているでしょうか?次の4択から答えなさい。

 

1 攻撃回数(シーズン2位)やシュート数(シーズン7位)ほど結果が出ていないオフェンス

2 被シュート数(シーズンワースト3位)が多く、大事なところを抑えきれていないディフェンス

3 65分以降から急激に失速するフィジカル

4 一枚岩になりきれず、同じようなエラーを引き起こすメンタル

 「おい、『受け容れ難い城福の采配』『3足のわらじ(リーグ、ACL、J3)を履くシーズンだと分かっていながら手当てが不十分だったフロント』って項目がねぇだろ!」という類のクレームは右から左へ流しつつ、また、1~4が複合的に入り混じったからこうなったと言われれば元も子もないのを承知で、さてみなさんはどれを選ぶでしょうか?

 3、4月なら、私は「2」と答えました。しかし、5月に高橋のアンカー起用や前田、羽生らベテランの献身さで底は脱し、ファーストステージ後半は「1」。で、今も「1」は深刻な部分がありますが、ここ数試合を見ると「3」と答える人が多いのではないかと推測します。

 

 今季、FC東京は山崎コンディショニングダイレクターとの契約を更新せず、池田誠剛フィジカルコーチを招聘しました。

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 この記事が出た時点(12月29日)ではまだACL出場は決まっていませんでしたが、間違いなくACLへの参戦、それに伴うスケジュールの厳しさを見越した招聘。詳しい経歴は知りませんでしたが、ロンドン五輪で韓国U-23代表のフィジカルコーチとして銅メダル獲得に貢献したことはさすがに知っていて、1月14日に正式発表されて以降、さてどんなコンディショニングを作ってくれるのか、それなりに興味を持って見てきたつもりです。

 が、今思えばケチのつけ始めだったのが、ACLグループリーグ第1節、全北現代戦。ハ・デソンが韓国に入ってからの練習でふくらはぎを痛め出場がかなわず、駒野も試合中にふくらはぎを痛め、肉離れと診断され長期離脱。ほぼ同じタイミングで、複数の選手が同じ箇所を傷めるのは偶然だったのか、必然だったのか?それは推測でしか書けませんが、現代サッカーにおいてこのようなケースが起きた場合、フィジカル部門が責められてもやむを得ないと思います。

 その後訪れた連戦。城福監督以下、J1、ACL、J3との並行を四苦八苦しながらやり続け、ターンオーバーも見せながら、3、4月を戦ってきました。が、いざ連戦が始まって気になったのが「急にor全く使われない選手」の出現。中には戦術的な理由でそうなったパターンもあったでしょうけど、それだけでは説明がつかない事象(選手)も確実にいました。

 シーズン当初からコンディションが上がってこなかったバーンズ、怪我が癒え、片鱗は見せるも長続きしなかったハ・デソン、4月途中に加入後、フィットするまでに相当の期間を要し、今もなお100%とは言い切れないムリキの外国人選手を筆頭に、阿部は第14節から、前田は第16節から急にスタメンを外れ、ともにベンチ、ベンチ外となる時間が増えました。

 今季の東京においてシーズンイン後、クラブから正式にリリースされた怪我人は、全北戦絡みの駒野、ハ・デソン、第4節鹿島戦で負傷した橋本、4月のトレーニング中に怪我を負った中島、5月のJ3で怪我を負った林、そして先日グローインペインと発表された柳の6名。いずれも全治は3週間以上で、それ以外の細かい怪我については、あったかなかったかは知る由もありませんが、クラブからの公式リリースはもちろんのこと、各種マスコミからも聞こえてきません。

 もちろん、どこからを「リリースすべき怪我」とするかはクラブの自由で、全ての怪我・コンディション不良をリリースする必要はありません。しかし、それをしないということは、それを言い訳にはできないことになり、それをしないということは、それを邪推するファンやマスコミがいて、現に今こうやってなにやら疑いの眼差しを向ける人も出てくるわけです。

 

 と、試合前に影響が及ぶレベル(=スタメン・ベンチの選択肢は減る)に留まっていれば、まだ良かったんです。しかし、今はついに、いよいよコンディショニングの不十分さ(と疑っている部分)が試合内容に影響を及ぼすレベルにまできたような気がします。

 今日の川崎戦、試合前の両チームスタッツ紹介で、東京の前後半別の失点が紹介されていました。その数字は、前半が5失点、後半が19失点。さらに、Jリーグ公式サイトのデータで15分刻みの数字を見てみると、以下のとおり。

 0~15分   3失点

16~30分   2失点

31~45分   0失点

46~60分   4失点

61~75分   5失点

76~90分  10失点(うち、アディショナルタイム4失点)

 当然、疲れてくる時間に失点がかさむチームは東京だけではありませんが、総失点数に対する61分以降の失点割合62.5%は、J1ワースト1位。ちなみにワースト2位は名古屋55.5%(36失点中20失点)、3位が鳥栖52.6%(19失点中10失点)で、50%超えはこの3チームのみ。名古屋と鳥栖がどのような理由でこうなっているかは分かりませんが、東京については今、理由を挙げるとすれば「フィジカルとメンタルの合わせ技で、主にフィジカル」という仮説は立てられると思います。

そう思う理由は大きく2つ。まず先日、トーチュウバイル内の記事で池田フィジカルコーチがこんなことを語ったという記事がありました。

第1ステージは連戦が続いたため、つなぎのようなトレーニングしかできなかった。(中略)今週(注:7/7以降)からハードにやると選手には言ってあります。これから巻き返しますよ。

記事を見た瞬間は脊髄反射的に「いやいや、連戦の時にフィジカルをどう維持するかが、あなたの大事なお仕事だったのでは?」と真顔で問い返したくなる内容で、正直ガッカリしました。

が、冷静に考えてみると、つなぎのトレーニングしかできず、シーズン前満タンでスタートしたガソリンがついにエンプティとなったファーストステージ後半、そして、もう一度フィジカルを上げるために負荷をかけ始めているであろうセカンドステージ後半ここまで、判で押したように65分以降走力・持久力が果てていくのは、誰あろうチーム全体の、そしてフィジカル部門の判断によるものだったというのは、言い過ぎではないはず。

と同時に数字は正直で、走行距離のここまでの平均は115.874kmでリーグ4位にもかかわらず、フィジカル面での危うさが、思い起こせばここからだった?と思っているアウェイ浦和戦以降、114.6kmを超えられずにいて、きょうの川崎戦はついに109.2kmにとどまりました。

もちろん、暑さが影響する時期ですし、今日の試合に関しては走る距離を問われる内容ではなかったと思います。けれど、ここまで明確に数字が落ちていることを、ただ「暑いからしゃーない」というところに落とし込んでしまうのは違うと思いますし、走行距離が伸びていかない≒前半から大して走っていないなかで、それでも65分からガクッと来てしまう現象は、フィジカルトレーニングの不十分さを疑うには十分なモノだと感じています。

 

もし救いがあるとするならば、再度負荷をかけ始めた成果が数週間後に現れる可能性がある点だと思います。しかし、今日の結果を踏まえると、降格圏16位湘南との勝ち点差は、わずかに7。当に覚悟していた方が多数だと思いますが、いよいよ全員が残留争いに両足を突っ込んだと認識しなければいけない状況となりました。そんな中、果たしてそこまで、今の東京に猶予は与えられるのでしょうか?

そうは言っても、フィジカルはすぐには上がってこない部分でもあり、一ファンがもがいてもどうしようもないのですが…現状は、もはや待ったなしだと思います。