続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

幕開け

 いよいよ明日、2022年のJ1リーグが開幕します。金曜日に用意された、栄えある開幕カードは川崎-FC東京。ツイッターで済むレベルかもしれませんが、せっかくなのでショートプレビューを。

 

 


 まず、明日の試合に触れる前に。


 川崎は2月12日、FUJIFILMスーパーカップで一足先に公式戦を行いました。結果は浦和に0-2の敗戦。勝負にこだわる、というコメントがあった一方、選手交代などを見ると今後に向けてのテストマッチだったともとれる90分、という印象を受けました。

 この試合、まったりとではありましたがテレビ観戦。その中で注目していたのが、川崎のアンカーポジション。昨季、前半戦は田中碧がほぼ完璧にその役割をこなし、田中の海外移籍後は橘田が一気に台頭して、穴埋めに成功しました。そして今季、アンカーもセンターハーフもこなせる瀬古を獲得し、移籍も噂されたジョアン・シミッチは残留。橘田も健在で、果たして鬼木監督が誰をチョイスするのか?と見ていましたが、スタメンはシミッチを選択します。

 ただ、前半は上手くチームが機能しませんでした。シミッチがオープンに前を向いてボールを持てるシーンは多くなく、浦和がプレッシングの手を緩めて自陣での守備を選択した後も、効果的なパスムーブは少なかったかなと。これは、シミッチがダメだったというよりは、浦和のアンカーつぶしが非常に良かったというべきでしょう。試合後に岩尾が

まず守備のところでは、川崎さんはボールを保持するのが非常に得意なチームですが、(自分たちは)どこにボールを通されるのがオッケーで、どこに通されるのがダメージになるかが整理されていました。前半は柴戸選手や自分が前に出ていって(ジョアン)シミッチ選手を消しにいくシーンがあったと思いますが、そういったオーガナイズのところで3人のバランスが崩れないように意識していました。

 

 

(Jリーグ公式サイト マッチレポート選手コメント(https://www.jleague.jp/match/supercup/2022/021201/live/#player)から引用)

 とコメントしていましたが、岩尾・柴戸の両センターハーフと、この日は左サイドハーフで起用された伊藤が上手く連携しつつ、江坂・明本の2トップの動きともしっかり絡み合いながら川崎の良さを消すことに成功しました。なおかつ、この流れの中で先制点を奪うこともできたことで、試合の流れが常に浦和にあった、とも言えるでしょうか。

 

 


 さて、この点も踏まえて、明日の試合について。まずは、川崎のボール保持時。


 スーパーカップを東京のアナリスト陣がどう分析して、チームのプレッシングをどう方向付けるかは想像の域を出ませんが、アンカーの自由を奪いに行くことは間違いなく試みるはず。とすると、例えば川崎の右CB(おそらく谷口)がボールを持っている局面だとして、

1:CFが、谷口から見て左側を消しながらプレッシャーをかける。

2:同時に左WGが、川崎の右SBへのパスコースを消して前・中方向へボールを誘い込む。

3:この間に東京のインサイドハーフがグッと前に出て、川崎のアンカーをボール奪取圏内に取り込む。

 というプレッシングが理想形。そのうえで、

1:右WGは誰を見るのか(川崎の左CBなのか、下りてくるインサイドハーフなのか)を明確にする。

2:アンカーに近づかないもう一方のセンターハーフが、川崎の右SBとボールに近いインサイドハーフどちらにも瞬時に反応できるポジションを取る。

 この2点をエラーなくやれれば、ボールをどこで奪い切るかは局面ごとに変わるとしても、川崎に相当な圧を感じさせることができるのではないでしょうか。で、これを90分やりきれれば100点満点ですが、現時点でそこまでのインテンシティを90分保てるかは、正直半信半疑。なので、少なくとも開始15~20分は――私がここまで書いた形が頓珍漢な想像だったとしても――相手を敵陣にとどめておくんだ!というアグレッシブな守備をチーム全体が体現してくれることに期待しています。

 

 


 続いて、東京のボール保持時。


 スーパーカップにおいて川崎は序盤、外切りのプレスを意識していたように見えました。しかし、岩尾が常に相手のプレッシャーがかからない立ち位置を取り続け、柴戸や伊藤が連動して浮いたポジションを見つけることで、川崎が敵陣でボールをひっかけるシーンは、少なくとも前半はほぼ皆無。また、酒井・馬渡の両サイドバックが幅を取る役割を担っていましたが、浦和の両センターバックが川崎の圧にひるむことなく強いボールをサイドバックにつけ続けてもいました。

 こうなると、悩むのはウイング。外を切って中にボールを出させても通されるだけ。かといって中に意識を絞り過ぎると大外のレーン(この試合では浦和のサイドバック)がガラ空きになる。自ずと、迷いが生じて立ち位置が中途半端になる。そうすると、インサイドハーフも立ち位置や狙いどころがボケてしまい、連動性が失われる。こうした悪循環を前半のうちには解消できず、何分だったか忘れましたが、レアンドロ・ダミアンが、自身としては間違っていない追い方をしたのに後ろが連動しないことで「なんでだよ!」というリアクションを露わに。守備が上手くハマっていないことを示す象徴的なシーンでした。

 翻って東京。明日も川崎が外切りのプレッシングを意識するならば、主導権を握る・握れないを左右するのは、まずはアンカーの出来次第となるでしょう。どこまで細かく適切なポジションを取り続け、ボールを引き出し、相手を引き寄せられるか。そして、相手のプレッシャーに屈せず、どうボールを展開させられるか。そうしてアンカーが役割を全うしてくれる前提のうえで、ではどうやってボールを前進させるか。この点については、開幕が近づくにつれ「外回し」というキーワードが複数目につくようになりました。こちらの記事でも、東がその点に触れています。

 

https://www.goal.com/jp/ニュース/j1-fctokyo-higashi-abe-interview20220215/blt3601785be02a3d2

 

 誰が幅を取って外回しの潤滑油になるかは、蓋を開けてみないと分かりません。というよりは、試合の中で局面は動き続けるので、プレーモデルとして誰が立つかの優先順位はあるにせよ、正直誰が立ってもチームが回れば問題ないのかなと。

 むしろ見どころは、そうしたミクロな部分ではなく「川崎の中切りプレスを、志向する外回しでもって無効化、悪くても半減化できるか?」というマクロな部分。GK+CB+アンカーが相手を中に寄せたうえで外を使い、相手がそこへ食いついてきたら、食いついて空いたスペースに誰かが入ってボールを受ける。あるいは、無理せず空いている味方につける。これを丁寧にやり続けながら「漸進」していく。ここをチーム全体が共有してプレーできるか否かが大事で、かつ、誤解を恐れずに書けばその精度を私は問いません。開幕戦だからこそ如実に表れるであろうその意識を90分通して示し続けられるかに注目してみたいと思っています。

 

 


 久々に、オフシーズン通して想像・妄想が働きました。まあ率直なところ、しぶとく守ってカウンターにカタルシスを覚える人で、これまではアルベル監督が言うところのポジショナルプレーは、自分の好みの対極にあったものと言えます。また、シーズンが終わる頃に果たして、自分のサッカー観に「ポジショナルプレーもアリだな」と刻まれるかも、今は正直分かりません。

 ただ、せっかく自分が愛するチームが、これまでの自分にないものをもたらしてくれる可能性があるならば、自分もいろいろと学びながら、自分なりに追いかけていけたらと思っています。その先――今年なのか、来年なのか、はたまた次の監督になってからなのか--にリーグ制覇がついてきたら、最高ですね。

 

 


P.S というところまで、実は昨日のうちに書き終わっていたのですが、新型コロナウイルスの影響により、起用できない選手がほどほどいるようで。他のチームも、オミクロン株の感染力の強さに苦慮しているなか、一度まん延しないために歩みを止めた方が…と思う部分もありますが、どのみちいずれは、誰しもが役割を全うできるようになることが理想なので、起用されるチャンスが巡ってきた選手の奮闘に期待します。