続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ともに得た手応え。ともには得られない勝ち点3。

 負けという結果を見れば、最悪の結果となってしまいますけど、最後まで戦い抜いた。そして、フィジカル的にも出し切った選手たちの戦いぶりは評価されていいと思います。これが負けではなくて違う結果になってもおかしくなかった時間帯もありました。まだまだチームとして成長していかないといけない部分もあると感じています。今日デビューした選手もいますし、これからの連戦でチームの力を伸ばしていけるように、チームの力を合わせて戦い抜いていきたいと思います。

  これは、試合後のG大阪・レヴィー クルピ監督のコメント。敗軍の将はしばしは「評価されていい」「違う結果になってもおかしくなった」と語りますが、この日ばかりはこの言葉が負け惜しみには聞こえませんでした。

 

 とはいえ、立ち上がりは完全な東京ペース。12分で2点を奪えた展開がなにより、なわけですが、この結果を引き込んだのは、長谷川監督がチームに落とし込んだ2つのゲームプランだったかと。

 1つ目は「徹底した右サイド狙い」。まずは、前半終了時の平均ポジションから。

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 湘南戦は「右で作って左でゴリゴリ(by 小川)」でしたが、この日は右でとにかくゴリゴリ。例えば岡崎が持ち上がり、またはチャンからパスをもらい、そこへ大森が寄る。当然G大阪は同サイドの選手でケア。井出が岡崎をチェックし、大森に…が問題でした。大森が上手いポジショニングを取ることで、藤春が出て行けば空いたスペースにオリヴェイラが斜めに走り抜けて受ける。

 とすると、藤春ではなくマテウスが大森につきに行くのがよい?と思いがちですが、そうなると岡崎が一旦中に預け、薄くなかった中をついてゴーゴーゴー。G大阪としては本当に嫌な存在だったと思います、大森は。上の平均ポジションでもいわゆる「ハーフスペース」に常に居続けられたことが見て取れ、2点目のFKは大森のドリブルから。厄介だったと思いますよ、大森の対応は。

 2つ目は「横幅の狭いコンパクトプレッシング」。前節湘南戦でも、大森が「まずポジションを意識して守備をした」とコメントしましたが、この日はより顕著。ゴール裏の2階席から試合を見ていて「いやー、随分と守備時のポジションが狭いな~」と思って見ていましたが、帰って録画を見直すと、やはり狭かった。

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 これは前半20分のシーン。大森、東の両SHは外側にいる藤春、オ ジェソクの両SBを捨て、中をケア。そんな2人に位置を合わせるように岡崎、小川はほぼ同じ縦位置。このポジショニングは立ち上がりからで、「中で作って外」を1つの狙いにしていたであろうG大阪の出鼻をくじいたことは間違いないでしょう。

 

 しかし、このシーンはG大阪反撃の狼煙でもありました。序盤から2CB+遠藤でビルドアップを担い、その間に両SBを上げ、SBにボールを入れて同サイドのSH(井出、ファン ウィジョ)と連携して外を崩すか、前述した「もう一丁中に食いつかせて外へ」を狙います。が、東京の緊密なポジショニングからのプレスに手を焼きます。

 ただ、上の場面。遠藤とCHのコンビを組んだマテウスはセンターサークル内にいて、遠藤に顔をのぞかせたのは、この場面ではなんとファン ウィジョ。中を閉じる東京の守備に対し、それでも強気にSHを絞らせて中でポイントを作ろうと試みます。

 さらに、この場面でファン ウィジョが下りてきたポジションに倉田が下り、ファン、井出が同時に中に絞る、さながら「2-1-4-3」のような立ち位置でボールを回すシーンが増えると、スタミナをやや失った東京のプレッシングは立ち上がりほどの効力を失いました。

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 次の場面は、まさにG大阪の狙いを反映したもの。東京は疲れが見えるものの、以前横幅が狭い立ち位置。それに対し、G大阪はCB+遠藤でビルドアップ、遠藤の前2枚は倉田とマテウス。オ、初瀬(藤春の負傷交替により途中投入)はかなり高い位置を取り、ファンと井出は中に絞ってさながら長澤と3トップ化。

 東京の2トップは相手のビルドアップ3枚に対して追いきれなくなり、遠藤の前に倉田、マテウスとパスコースが2つあることで、東京の中盤4枚、特に高萩、橋本はポジションを捨てて遠藤にちょっかいを出しにいけない。さらに井出、ファンが中へ絞る、しかも東京の2ライン間を狙って絞ることで、岡崎、小川は中も外も気になりポジションを固められる。

 さて、この後どうなったか?金縛りにあった…とは言い過ぎですが、東京の各選手はただ立っているだけになってしまい、ボールを持っていたファビオからズバッと縦パスがファン ウィジョに通り、近いポジションにいた井出がボールを受けてシュートを放ち、林に好セーブを強いるところまで作ります。

 この後井出がPKを得るシーンはまたちょっと事情が異なりますが、2-1で東京がリードしているとはちょっと思えないほどの流れで前半は終わりました。

 後半も流れは変わらず。G大阪はハーフタイムでより攻撃を整理。前半も1,2度ありましたが、遠藤が完全にCBの間に下り、マテウス+誰かがCHに位置する3-4-2-1 or 3-4-1-2を形成する場面が増えます。

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 これはすでに同点になった後、62分の1シーンですが、遠藤がCBの間に下り、マテウスの横に井出が入り込み、ファンが長澤と並んで2トップ化した3-4-1-2。東京も永井に替えて前田を入れ、前線からのプレッシング再活性化を図りますが、遠藤が最終ラインに下りた時のG大阪のテーマは「東京の幅を広げる」だったと私は見ていて。

 例えばこの場面。東京目線で見れば、遠藤が下りる動きに2トップが反応。それ自体は悪い判断ではありませんが、MFラインは前半より広く、遠藤は前田のチェックさえ外せれば…という局面。それでもMFラインはわずかでもプッシュアップして相手の2CHに対して出て行きますが、今度はDFラインとの幅が広がる。じゃあDFラインを上げれば…と考えがちですが、ファンのスピード(裏抜け)はケアしなければいけない。

 結果、この後どうなったか?答えは、遠藤が前田のプレスを外し、センターサークルでポツンとフリーになっていた倉田に縦パスを入れる、でした。この局面で倉田が見えていて、そこにパスをビシッとつけた遠藤がスーパーではありましたが、G大阪は狙い通りの攻撃を繰り出せていて、東京はかなりしんどい状況になっていたように思います。

 

 それでも東京は、足を止めませんでした。それは、走行距離ではなくスプリント数に表れていて、走行距離が東京 115.539km-114.274km G大阪に対し、スプリント数は東京 205回ー146回 G大阪と圧倒的な回数差。個人も見てみると、G大阪がみな満遍なくというか、20回以上スプリントした選手がいなかったのに対し、東京は森重、チャン ヒョンスがともに10回以下、方や20回以上が6人。

 60分で32回スプリントした永井はちょっと意味が分からないとしても(苦笑)、サイドに位置した選手いずれもがスプリント20回以上。それだけ最後まで横幅の狭い4-4-2を保ちながら、最後までサイドの選手が中から外へ、あるいはプレスバックのスプリントでチームの守備をやりきろうとしたかが伝わってくる数字となりました。

 もちろん、夏場にこんなことしていてもつはずがありません。相手にボールを持たれた際、いわゆるリトリートしての、あるいは自陣でブロックディフェンスをプランBとしていずれ持たなければいけないでしょう。けれど私は、たとえ身に堪えるプランだとしても、今はこれをやり続ける方が良いと考えます。

 キャンプからチームを作ってきて早2ヶ月。例えば第3節磐田戦では自陣にこもるやり方も見せましたが、ようやく2ヶ月で前プレ・幅狭・スプリント!が板についてきたわけで。さらに、攻撃は長谷川監督以下チームのスカウティングが利いていて狙い通りのプレーができており、今節はようやく複数得点にもたどり着きました。とすれば、それほど暑くない中でできることを続け、試合で揉んでよりブラッシュアップして欲しいなと。

 さらに、今年は連戦の先に1ヵ月半のブレイクがあります。夏に向けてのプランB形成はその期間で十分に構築できるはず。今はまだ、欲をかく場面ではないでしょう。

 

 冒頭に戻って。G大阪はこれで1分4敗となりましたが、苦境を脱するヒントは得られた試合だったと思います。対する東京も次なる課題は見えましたが、今は得られた手応えのポジティブさが課題へのネガティブさをしっかりと上回っています。それでも勝ち点0と3がはっきり分かれる。プロは厳しい世界です。いやー、勝ててよかった。

 さて、気が休まることなく明日も試合。ルヴァンのメンバーでも同じプレー原則を見せるのか。それとも、3バックの仙台に対して、別の手を打ってくるのか。純粋に、楽しみにしています。