続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

何も変わっていないじゃないか by安西先生-データから見るここまで-

 一歩進んでは一歩下がり、二歩進んでは二歩下がる。そんな歩みを見せている今季のFC東京。先日、開幕からの7連戦を踏まえた戦術面からの感想をアップしました。

re-donald.hatenablog.com

 そこでは、拙いながら戦術面で思ったことを中心に書きましたが、今日はデータを中心にここまでを振り返ってみたいと思います。ん?時期が中途半端?いえいえ、土曜の川崎戦からまた日程がタイトになってくるここがいい時期かなと思いましてね(誰に言ってるんだ)。

 なお、データの元数字はお馴染み(?)こちらのサイトから拾い上げました。

www.football-lab.jp

 

 

 何を中心軸に見ていこうか少し考えましたが、先日の戦術面振り返りで「守備はまあまあ、攻撃は寂しい」と書いたことを踏まえて、主に攻撃面から見ることにしました。まずは、基本的なスタッツ部分から。

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 比較対象としてマッシモ時代の2シーズンと並べてみました。パス本数、クロス本数は増え、30mライン侵入回数や攻撃回数も格段に増えている一方、パス成功率、ボール支配率はマッシモ時代と同等かそれ以下。つまり、「パスは増えてるけど、それだけミスも増えている」「パス本数や攻撃回数は増えているけど、それが実効的な主導権保持にはつながっていない」という結果が見て取れました。

 もちろんこれは、前回から引き続いて何度も書きますが、大宮戦での敗戦を受けた前向きな意識変化からもたらされたもので、これだけをもって「城福、ぜんぜんアクションしてねぇじゃねぇか!」と批判するつもりはありませんで、もう少し深くデータを読み解くために、状況別の数字を拾ってみました。

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 まずはパスの方向別データ。前・横・後の比率に大きな変化は出なかったものの、横方向のパス成功率が微減し、80%を割り込んでしまいました。誤差の範囲内と言えばそうかもしれませんが、全体のパス成功率の低さも相まって、「案外横パスを奪われている」という印象は拭えません。続いて、距離別のデータ。

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 ここは、マッシモ時代と明確な差が出ました。それもそのはず、マッシモは低く構えて奪い、そこから縦(裏)一発も全くOKという形で攻撃していたわけで、当然にロング・ミドルの比率は高くなります。一方、今季はショートパスの比率が60%近くまで上昇しています。

 これだけ見れば、マッシモ時代から意識は変えられている…と前向きに捉えられなくもないんですが、ここでも問題なのはパス成功率。ロングパスの精度が落ちているのは、単純に武藤がいなくなって多少無理目なパスがそのまま無理で終わっている、あるいは、前回の戦術面エントリーで少し書いたとおり、ボールを奪った後のポジティブトランジションにおいて裏抜けする動きをチームとしてのファーストオプションとしていないため、ロングパスが大方「一か八か感」をかもし出しているせい、と見ていいかと思います。

 一方で、ショートパスの成功率が80%を超えていないのは、紛いなりにも開幕前にアクションサッカーを掲げているチームとしては、シーズンイン後に戦術面の変化に踏み切ったことが影響しているとはいえ、看過できないところです。

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 最後はエリア別のデータ。マッシモ時代と比べて、今季は敵陣でパスを増やしていることが分かります。特に、昨季と比べると4thエリア(センターラインより自陣側約18mまで)でのパス比率が減り、1st+2ndエリア、いわゆるアタッキングサードでのパス比率が大きく増えています。ここに、30mエリア侵入回数の多さを付随させれば、「成功率こそ上がってこないものの、及第点レベルでは効率よく敵陣にボールを運べてはいる」という言い方ができるでしょうか。

 ただ、ここでも気になるのがパス成功率。自陣のパス成功率が70%をも切っている点は、先ほどのロング・ミドルパスの成功率減とそのままリンクする部分もあります。しかし、全体のパス成功率が上がってこず、ショートパスの成功率も80%を超えていない部分が足を引っ張っているのもまた、見逃してはいけないでしょう。

 

 こんな状況の代表格として、あえて名前を出すとすれば…米本でしょう。あるandroidアプリ(有料)で個人のパス本数トップ50(とその50名の成功率)を見られるところがあるのですが、第6節終了時点で米本はパス本数361本で第22位でした。なんと、FC東京の選手でトップ50に入っているのは米本だけという点がまずびっくりするところではありますが、そんな米本のパス成功率は75.9%にとどまっていました。これは、トップ50の中で下から7番目の低成功率で、かつ米本より成功率が低い6人は西(鹿島)、岩波(神戸)、平岡(仙台)、藤田(鳥栖)、下平(横浜FM)、三竿(湘南)といずれも最終ラインの選手。また、いずれのチームもパスで主導権を握ることを主眼においているわけではなく、ロングパスも多用するわけで、当然に成功率が上がりづらいことが頷ける顔ぶれです。

 しかし、(米本だけではなくチーム全体として成功率が上がっていないわけですけど)米本が自陣でのパスシチュエーションや、様々な局面でのショートパスシチュエーションで精度を高められていない点が、ここまで結果として残酷なまでに叩きつけられると、だいぶ寂しい気持ちにはなってしまいます。

 米本のパス精度が上がってこないことについては、FC東京ファンの中でもやきもき…を通り越して諦めや批判にまで達している方もいらっしゃると思います。また、ハ・デソンが復帰し、もう少しコンディションが整って90分戦えて、チームメイトもハ・デソンのリズムに協調できてくれば、相対的に米本にかかるパス面での負担は軽くなるでしょう。じゃあ、そうなった時に米本がパスの部分を意識しなくても良くなるかと言ったら、それはNO。むしろ、ハ・デソンがすでに意識的にマークを強められている中で、より米本にはやってもらわないと困るんです。

 最終ラインからしっかりとボールを引き出し、横方向へのパスやショートパスを確実に味方につなぎ、ハ・デソンとともにチームのリズムを作ったうえで、そこから次に何ができるか?このセンターハーフとしての「順番」とも言えるプレー原則を、米本にはなんとか体現してもらいたいと思っています。

 

 ただ、成功率が上がってこないのは個人のスキルだけなのか…ってお話まで膨らませる余裕はないので、今日はこんなところで(苦笑)。思うところはもちろんありますよ。例えば、4-4-2というアングルをつけづらいシステムそのものが成功率の上昇を妨げているとか、パス本数トップ50に森重、丸山どちらも出てきていないとか、ポゼッションサッカーやる気あるの?(城福監督の言うアクションサッカーはポゼッション主体なのか?ってところから疑問)とか。まあ、そこの部分は、皆様おのおの考えてみてくださいませ(投げやり)

 さて、週末は多摩川クラシコ。正直、今の川崎は強いです。鹿島もなかなかに止まりませんが、何試合か見た限りでは、このまま1stステージのタイトルを取っても、何も驚きません。柏戦から中5日、城福監督がどんな策を練って、どんな意識を練習で落とし込んでいるかは想像の域を出ません。また、選手たちがこれまでの現状をどう捉え、実のところどうしていきたいのかもまた、妄想の域を出ません。

 ただ、私個人としては、ここでもう一丁自らボールを保持して、自ら主導権を取りにいく戦い方をしてほしいと思っています。逆の言い方をすると、今の川崎に対して、これまでのスタッツどおりのサッカーをしても、私はコテンパンにやられるだけだと思っています。だったら、どうするか?アクションを起こすしかないでしょう。「相手の良さを消しながら、自分たちの良さを出す」とか、この試合に限ってはくそ食らえです。もちろん、500%勝利を祈ってはいますけど、仮に敗れるとして、この試合に限っては美しく、華々しく散ってほしいと思っています。って意味もなく熱くなって、今日はお終い。良い子は寝る時間だよ!