続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

2013シーズン開幕によせて

 いよいよ明日からJ1、明後日からJ2の2013シーズンが開幕します。オフシーズンも育成年代の試合であったり、海外サッカーであったり、トレーニングキャンプであったり、各種ファン感イベントであったり、それぞれのファンがそれぞれにサッカーと触れ合っていたかと思いますが、やはりトップカテゴリーの真剣勝負を待ち焦がれていた部分は確実にありまして、今年もいよいよ始まるのかと思うと昂ってまいります。


 21年を迎えるJリーグ。この20年間は歴史ある欧州・南米の各国リーグに少しでも近づけるよう、かなりのスピード感を持って成長することを目指し、結果として世界に胸を張れる「成人した」部分が確実にできたと実感しています。そこは、卑下することなく誇っていいと思います。しかし、時代の潮目は1日経てばガラッと変わることもあります。どこに時代の潮流があって、何が正しい選択なのか、それを日々模索していくことが人生なのかもしれません。
 Jリーグもまた、さらなる進化・成長を遂げるためにいろいろな方策を打ち出しています。例えば「J3」の創設。先日、理事会において2014シーズンからJ3を創設することが正式に決まりました。現時点では10〜12チームで発足し、準加盟を前提とするなどいくつかの方向性が分かっており、具体的な内容は3月6日に発表されるとのことですが、この動きは単にJクラブを増やすことにとどまらず、数年先にはJ1⇔J2⇔J3の昇降格、JFLの存在意義及び完全な住み分け、現状の「J1:18チーム、J2:22チーム、J3:10〜12チーム」というバランスの変更にまで話が及ぶでしょう。各カテゴリーのバランスについては、一部マスコミで「J1を10クラブ程度にまで絞ってプレミア化させて…」という活字が躍っているほどで、個人的には(J3を12チームと仮定し)52チームを「J1:16チーム、J2:20チーム、J3:16チーム」ぐらいのバランスがいいのでは?と思っていますが、いずれにしても近い将来、変化が生まれることは確実でしょう。
 例えば「秋春制」。犬飼氏が突然花火を打ち上げ、喧々諤々の議論が繰り返されているこの話題。当初は「欧州とカレンダーを合わせることで移籍を容易に…」であるとか、「体力の消耗が著しい夏季を避けることでコンディション面の維持及びプレーレベルの確保が…」などの意見を主としてどうにか入れ込もうとされてきました。最近では、スカパーの某番組に出演した原博美技術委員長がFIFAのカレンダー、それに基づくAFCのスケジューリングから、現行のままでは厳しいのでは?というお話をされていました。当然、反対意見は噴出。中でも積雪・低温・インフラ整備・日程の組み方などで「日本にはそぐわない」という意見には私も妥当性を感じていますし、それらの反対意見に対してJFA・Jリーグ側がどこまでの設備を要求していて、それには概算でどのぐらい費用が必要で、どこまでJFA・J側として補助ができるのかといった具体的な数字をまるで提示せず、ただ秋春制の抽象的なメリットだけを主張し続けるのは不誠実だなぁ、とも感じています。しかし、裏を返せばJFA・J側が本気で秋春制をしたいと考え、合理的かつ具体的な数字を提示し、それを読んで納得できる、肯定できるとなれば、無碍にする話でもないと思います。まあ、北国出身で積雪の凄さを知っている身として、納得できるハードルはものすごく高いですけどね。
 例えば「移籍市場」。Jを取り巻く移籍に対しての考え方、捉え方はここ数年大きな変化を見せました。いわゆる違約金のかけ方や契約満了時の選手へのアプローチなどで定められていたJ独特なシステムは、FIFAからの再三に渡る是正要求を飲む形で「FIFAルール」へと移行しました。また、かつてはビジネス面での獲得と揶揄されることが多かった日本人プレーヤーが、ドイツを筆頭にいくつかの国では純粋な戦力として獲得されたり、獲得の噂が立ったりするなど、「供給国」としての地位をじわじわ確保しつつあります。しかし、その対価が正しく移籍元のクラブに入ってきているのか?と問われると、全てがYESとは回答できません。もちろん、移籍のやり方が変わってまだ間もないことは一応のエクスキューズとしてありますが、だからと言って自分が応援するチームの主力が0円で奪われ手しまうことが快いこととは言えません。また、国内間でもこの制度変更を見越してきっちりと複数年契約を交わしているチームもあれば、一気に契約満了の選手が生まれる状況となり、選手を0円で取られるチームもあるなど、確実にフロント力の差がでている現実も見て取れます。今後、さらに「供給国」としての道が伸びると思われる中、どのチームのフロントがより時代の流れを読めるのか、上手くマネージメントできるのか、そこが戦力の差として現れるのはそう遠くない未来の話だと言えるでしょう。


 そんなこんな、大局的なお話は例を出せばキリがありません。もちろん、そのいずれもがJリーグの将来を左右するお話で、「別に、上に任せとけばいいじゃん」とないがしろにしたり、「そんなの関係ねぇ!」と無関心でいたりすることは避けたいと思っています。ただ、一ファンとして、「そこで行われているサッカーの試合」「目の前で繰り広げられる一つひとつのプレー」を心の底から楽しむことが第一義であるというか、根本の楽しみとして忘れてはいけないなと思うことも、最近しばしばあります。
 Jリーグが始まって20年が経ち、同時に放送業界の技術革新も日進月歩で、今では国内外問わず数多くの試合をクリアな映像で見ることができる時代となりました。そして、サッカーというスポーツを文章で語ろう、あるいは戦術的な見地から掘り下げていこうとするマスコミ、ライター、ジャーナリスト、ブロガーが雨後の筍のごとく表れてきています。かくいう私もそんなカテゴリーに入る1人ですが、生半可な知識量や観察眼しかないのに知ったかぶって戦術を追いかけ、舌足らずな文章で知ったように語ろうとするとえらい目にあうことが往々にしてあります。反省しています。また、「この試合の本質を探りたい!」と思って戦術面の戦いや組織にばかり目をとられてしまうことで、実は本質を見落としてはいないかい?と思うこともあります。
 確かに、戦術は必要です。グループで戦うことは必要です。11人がエゴを捨てて、意思統一して連動することができれば「判定勝ち」には近づくでしょう。けれど、サッカーは「ノックアウトでの勝ち負け」か「引き分け」しかありません。そして、相手をノックアウトする、あるいは相手にノックアウトされるのは個人のスキルです。100本パスを繋いで、ぐうの音も出ないほどに相手を蹂躙してお膳立てをしても、最後シュートを打つ選手が外してしまったんではスコアは動きません。いくら11人が惚れ惚れするほど適切な距離感で、相手の守備組織の隙間をつくことができても、パスがズレ、トラップがズレ、ドリブルがはねてしまってはゴールに近づくことは出来ません。守備においても、いわゆるブロックディフェンスを図形のように正確に構築し、相手に攻撃するスペースを与えないことに成功しても、ボールを奪い取るのは個人のタックルでありインターセプトでしか為しえません。また、GKが自身のスキルを全てフルに発揮して「当たり日」となった日には、相手の攻撃陣とファンは溜め息をもらし、歯がゆさを覚えることしか出来なくなります。
 (だいぶ前置きがめんどくさかったですが)今季私はJリーグに期待するのは、そんな「個の力」。組織の良さが語られる社会は、成熟している証と言えます。しかし、結果的に組織を構築するのは個でしかありません。世界に通用する選手が増えてきたことは事実としてありますが、その際たる選手である本田圭祐が2月に代表に招集された際の取材時に、「(チーム)戦術としてではなく、個人戦術で伸びないと目標に到達できない。それが最優先課題だと考えている」と答えたように、個の力、個での局面で相手を上回ることをシンプルかつ実直に追い求めていくことが、さらなる成長に繋がるのではないか?そう感じています。
 実際にスタジアムやテレビの前で「うぉー!」とか「いや、これは凄い!」などの感嘆の声しか漏れないような素晴らしいプレーが1つでも見られることを期待しています。味方のグループ戦術の良さをより高いレベルに引き上げるくらいの個の力、あるいは「グループ戦術?何それ、美味しいの?」と言わんばかりに個が組織を破壊するシーンを1回でも多く見られることを期待しています。そして、そんな一つひとつのプレーを、単純に、純粋に捉えて、スタジアムやテレビの前で喜怒哀楽を感じられたら幸せかな、と思っています。まあ、要は「サッカーを難しく捉えず、目の前に繰り広げられる『光景』を肌で感じよう」ってなところで。老いも若きも、男も女も、常連さんも一見さんも、等しくサッカーを楽しみましょう!