続々々・メガネのつぶやき

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高円宮杯 第21回全日本ユース(U−18)サッカー選手権大会 ラウンド16 東京U−18 2−0 青森山田高校  雑感

 今年2度目になる俺ダービー、しかもノックアウト方式の公式戦ということで、かなり盛り上がりつつも複雑な心境を抱えて、西が丘へ行ってまいりました。試合内容については、リンク先のダイジェストテキストをご覧下さい。で、あえて私は青森山田目線で振り返ってみようと思います。


 立ち上がりは、確かに青森山田の時間帯だったと思います。「前線から中盤での高い位置からのプレス」という東京のやり方を警戒してか長いボールが中心ではありましたが、それが単純に効いていたシーンが1度や2度ではなかったですし、柴崎と差波のダブルボランチが意識的に縦の関係になり、ボールコントロールの際に的を絞らせていませんでしたから。中で作って外、という形もしっかり作れていましたしね。
 しかし、その上手くいっていたはずの縦の関係が徐々に足を引っ張り始めるんですから、サッカーってのは面白いもので。ある時間帯から長いボールがスペース狙いから人狙いに代わり(意図的かは不明)、そこでのエアバトルやセカンドをいかに拾えるかに試合のフォーカスが移っていったように思うんですが、この日はそのエアバトルで成田、橘の2トップが小林、松藤の東京CBコンビに完敗を喫し(まあ、それが持ち味の2トップではないんですけど)、徐々に前線でのボールの収まりが悪くなっていきます。で、入れてははね返され、繋いではカットされ、が続くうちに、まず縦関係の前にいて、立ち上がりはいいポジションで2列目より前の4選手のフォローに走っていた差波の存在感が消えていきます。そして、程なく低い位置でゲームをコントロールしていた柴崎が単独で狙われるようになり、アンダープレッシャーの下で(個人的には悪い癖だと思っている)「感覚に頼りすぎなパス出し」が散見されるようになりました。こうなると、青森山田の武器であるサイド攻撃も活性化せず、徐々にペースが東京に流れていることは、自明の理でもあったように思います。
 で、失点シーン2つ。1失点目は東京オフィシャルでも、また、著名なブログ・コラムいくつかでも「DF舛沢のミス(GK三浦のロングフィードを空振り)」と書かれていますが、うーん、まあ、ミスと言われればミスなんでしょうが、三浦のキック精度とこの日のピッチコンディション(諸所でイレギュラーバウンドしていた)を考えれば、ミスと言い切るのはかわいそうな気もします。むしろ、個人的にはGK櫛引がもう少し何とかできなかったか?という方が気になったぐらい。まあ、櫛引も飛び出すのかステイするのかは、相当難しい判断だったわけですが(苦笑) ともかく、奪われたくなかった先制点を奪われて、少し意気消沈した様子は見て取れました。この時間帯、声が全くと言っていいほど出てなかったですからね。で、2失点目は完全に崩されてのもの。江口のヘッドにも、佐々木のドリブルにも、秋岡のフリーランにも、全ての対応が後手になってしまい、秋岡のシュート時にファーサイドの江口は完全にフリーになっていましたし。これは言い訳のしようがないでしょう。前半は惜しすぎるぐらい惜しい展開で2点のリードを許す形になりました。


 後半。今度は東京がいい入り方をして、前岡が後半のファーストシュートを放ちます。というところで、黒田監督は完全に押さえ込まれた成田を諦めて2年生の館川を投入。全くの初見ですが、パンフを見ると180cmと、小兵が大好きな青森山田にしては大型なFWだそうで。実際、館川の頑張りで前半はまったく歯が立たなかったエアバトルが劣勢ぐらいには押し戻せて、かつ柴崎と差波のダブルボランチの距離感が前半より近くなり、中盤センターでしっかりとボールを捌けるようになったことで、再度流れをつかんだ時間帯は確実にありました。しかし、そこに立ちはだかったのが小林と三浦。この日の小林のカバーリングはスーパーなレベルで、オフィシャルのダイジェストにも「小林がスライディングで…」という記載多数。終盤にはお前は往年のカンナバーロか藤山か、ってなぐらいに見えてしまうほどでしたよ。三浦も安定したセービングと果敢な飛び出し、多彩なパントキックで目立ちに目立っていました。後半ロスタイムのFKの場面―ゴール前20m弱のところから、柴崎は壁の横すれすれを抜けて、ゴール右サイドギリギリに素晴らしいシュートを放つも、三浦が横っ飛び一発でグッドセーブ―は相当しびれましたしね。この俺ダービーは、俺の三浦と俺の櫛引の対戦でもありましたが、この日は三浦に軍配を上げたいかなと思います。ってなわけで、2−0で東京がベスト8進出を決めました。


 冬のイギョラカップの時以来ですから…約半年ぶりかそれ以上、とにかく久々に青森山田の試合を生で見ることができたことは、とても嬉しかったです。柴崎が思った以上に成長していないというか、まあ、変わってないなぁ…という点に寂しさは覚えましたが、差波に可能性が感じられたこと、三田、佐々木の両SHがしっかりと武器になれていること、館川というラッキーボーイになれそうな2年生の台頭など、収穫も見て取れたので。
 で、ユース教授がスポーツナビでこのようなコラムを書かれていました。まあ、おっしゃるとおり青森県という地理がハンディになることは間違いないでしょう。しかし、そんなことは今も昔も、そして未来永劫変わらないものであって、「移動という大きなハンディを抱えながらも、しっかりと結果を残す。こうした強さが青森山田にはある」と褒めてもらうのは嬉しいですけど、けれどこのことを今更コラムの主眼において書かないといけないぐらい青森山田はヤワじゃないよ!と言いたいですね。移動が大変なのはもはや日常であり、当たり前の話なんですから。
 むしろ、個人的にこの試合に見出したい意義として思うのが、「相手、立地、歓声、丸ごとアウェー感満載な公式試合を経験できた」という点。青森県内において、そして、現在では東北圏内において青森山田高校サッカー部は、(県内・県内の他の高校と比べて)恵まれた練習環境と実力と、選手権15年連続出場&プリンスリーグ東北8連覇というネームヴァリューを携えて、「ガリバー」として君臨するまでになりました。そんな状況下、高校年代3大タイトルの1つである高円宮杯という舞台で、日ごろ決して交わることのない関東地区のJユースクラブと、東京都内で、もろもろあってこの試合に思いを託したい(トップで思うことをユースに持ち込むのは良くないとは思いますが)東京ファンのチャントと歓声がこだまする中でゲームができたことは、かなりの刺激になったはず。このアウェーの中で何ができて、何ができなかったのかをしっかりと反芻してもらって、さらに逞しくなっているであろうチームを、冬の選手権で待っています。準優勝まではきました。あとは、優勝しかないでしょう!


 東京についても短く。まだ去年半分と今年半分しか見ていないミーハー野郎がこういう言い方をしていいのか分かりませんが、今年はより倉又イズムに溢れたチームになってるなぁという印象をさらに強くした試合でした。中1日という条件は同じながら、運動量が落ち、足が攣る選手が多かったのは明らかに東京側。しかし、ハードワークする気持ち、お互いをカバーしあう気持ち、最後までやりきる気持ちは微塵も衰えませんでした。むしろ、例えば早々に足を伸ばすシーンが見られながら、最後の最後まで自分を出し続けた(脅威であり続けた)武藤の姿を、ピッチ狭しと東奔西走し続けた江口の姿を青森山田の選手たちはどう見ていたんだろうか?と聞きたくなったぐらい、言葉にすると軽いですけど「戦っていた」のは東京だったかなと。
 私が記憶している限り、彼らが目指すべきトップチームの状況がこれほどまでに悪くなったことはありませんでした。直接の影響はなかったかもしれませんけど、この試合を前に青赤の一員である彼らが彼らなりに思うべきところはそれぞれにあったと思います。実際に、この日2得点をあげた秋岡は某携帯サイトのインタビューで「僕らも同じFC東京ですから」と語っていましたし。でも、それなんですよね。One of Themであり、One for Allであり。そのOneはフロント、監督、コーチ、スタッフ、選手、下部組織に限らず、青赤に携わる全ての人間なんですよね。U−18はいまだ頂からの景色を知らない高円宮杯の頂点を目指して、トップチームは唯一絶対の目標である残留へ向けて、今こそ心をひとつにして頑張りましょう!