続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

Jリーグディビジョン1 第15節 柏0−3東京 レビュー

何から伝えればいいのか 分からないまま時は流れて
浮かんでは消えてゆく ありふれた言葉だけ
君があんまりすてきだから
ただすなおに好きと言えないで
多分もうすぐ雨も止んで二人・・・

 と、小田和正の「ラブストーリーは突然に」の一部を引用してスタートしましたが、まさにこんな気持ち。見るべきところがありすぎて何を取り上げたらいいか悩み、でも、それに対してありふれた言葉しか浮かんでこなくて。おまけに、あまりに素敵すぎる勝利に「強いって言っていいんだよね?」と僕は戸惑う、てな具合。でも、雨も止んだ先に待っているのは「たそがれ」じゃないよ!…というわけの分からない前フリは止めにして、試合について書こう(笑) 何を取り上げたらいいのか悩んだのなら、思ってること全部書いちまえ!ということで、書きなぐりタ〜イム。


1 速攻(ロングボール)と遅攻(ショートパス)の使い分け
 柏と言えば「前からの連動したプレス」が一つの持ち味で、この日もキックオフ直後は前から行こうという姿勢がのぞかれましたが、東京は開始からの攻撃で4回連続ロングボールを使ったんですよね。うち1本はカボレが上手く抜けるか?という惜しいものもあり、柏のプレスに対して機先を制することができました。そして、得点シーンも速攻から。このシーン、東京は全員が自陣へ戻っていたため、栗澤のFKのこぼれを羽生が拾った時点では前には誰もいなかったんですが、羽生からナオへボールが渡り、アタッキングサードへ入らんとする時点になると、ボールより前にいる人数が東京4に対し、柏が3という状態。しかも、その4の中にブルーノがいて、後方からは米本、右サイドからは徳永もフォローに走るという、今までにはほとんどみられなかった「分厚いカウンター」を仕掛けることができました。結果的に、ブルーノのトラップミスが上手いアクセントになり、ナオがするっと抜け出して難なくゴールを奪うことができましたが、点になってなかったとしても、早い時間帯でこの姿勢を見せることが出来たことは大きかったですよ。このシーン以降、柏は前の選手はプレスに行きたいんだけど、後ろは縦への速さを警戒するあまりラインを下げてしまい、中盤がスカスカになりましたからね(テレビ観戦なので、正しいかは微妙)。
 こうなると、今の東京の代名詞である「遅攻」が生きてくる局面になります。改めて、この試合ではポゼッションの仕方を注目してみていたんですが、パッと思ったのは「リバプールに似てるなぁ」という点でした。その際たるところは「2バック」。昨シーズンのリバプールは、最終ラインでボールを持っているときには、CB2枚がグーンと両サイドに大きく開いて半強制的に両SBを高い位置に押し上げさせ、CBの間にはボランチシャビ・アロンソ)が下りてきて回す形をベースにしながら戦っていました。今の東京はボランチが完全にCBの間に入るところまで下りては来ませんが、凄く似ている組み立て方をしている気がします。で、この形の特長としては「サイドで数的優位を作る」という点があるわけですが*1、この試合でもサイドでトライアングルを作り続け、狭い局面でも細かく繋いで相手をあえて食いつかせつついなしながら、機を見て縦に早く攻めるorセンターでフリーになっている選手を使うorサイドを変えてフリーの局面を作るといういい攻撃が何度も見られました。最後には完全に柏が取りどころ(プレスの仕掛けどころ)を見失ってましたからね。そして、バックパスを全く恐れなくなっている点も見逃せないところ。どっかの国の会長は「バックパス禁止令」的な発言をしていましたが、前にパスコースが無いのに無理をしてボールを失う事ほどバカらしいことは無いわけで、選手が「作り直す」ことを覚えてくれている点は、凄く頼もしい限りです。この2バックについてはキャンプから取り組んでいるということが漏れ伝わってきていましたが、ブルーノ&今野(平松)という思わぬCBコンビの結成ということが最後のピースとしてハマった事で、いよいよ形になりそうな気配です。
 で、何が一番いいかって、この使い分けに全く無理がないところ。どこでボールを奪って、奪った直後がどういう局面か、その際の味方のポジショニングがどうであるかという点を各選手が冷静に見れていて、「ここは縦に早く」とか「ここは繋ごう」という大きなところでの意識の共有を、複数の選手が瞬時に出来ているん印象があるんですよね。だからこそ、1点目のようにカウンターの場面で(最終的に)6人も攻撃に絡めているわけで。だからこそ、遅攻で相手をいなせているわけで。「頭が悪い」と揶揄されることが多かった(私だけ?)東京が、徐々に「インテリジェンス」も身に付けてきている、そんな思いがこの試合で確信に変わりつつありますよ。


2 センターラインの構築完了
 4月に「今望むこと」の1つとして、センターラインの構築を挙げました。そこから早2ヶ月、ようやくセンターラインが固まりつつありますね。
 GK。塩田がベンチに戻ってきて、練習でも切磋琢磨している状況だとは思いますが、権田を先発で使うことに、もう1%のためらいも必要ないぐらいにまで成長しているかと。この試合1つ危なすぎるキックミスはありましたけど、危なげなくビッグセーブをしてしまう点は頼もしい限りですし、「11人目のフィールドプレーヤー」としての存在感は、塩田のそれ以上かと。ますます城福監督を悩ませてほしいです。
  CB。今野とブルーノのコンビ結成は必ずしも意図したものではなかったと思いますが、怪我の功名と言ったらいいのか、結果オーライと言ったらいいのか、とにかく今や「この2人じゃなきゃ困る」というレベルにまで到達しました。もちろん2人のポゼッション、ボール運びの能力の高さが今の東京に欠かせないところではあるんですが、この試合は守備も完璧。柏の攻撃があまりにも単調で、狙いどころを定めやすかったとはいえ、FWに入るボールはほとんど前でカットできていて、たとえ収められたとしても振り向かせて仕事をさせるといったシーンは皆無といっていいほど。もともとボランチ色の強い2人ですから、こういった守備をさせれば(こういった守備で事足りるなら)見ていて安心感100%ですよ。前半の、「ブルーノが北嶋に寄せられるも頭上を越すパスで今野にボールを渡し、その今野も再びチェックに来た北嶋の頭上を越すパスでブルーノにリターンした」シーンは感心&大爆笑でしたわ。
 ボランチ。梶山・米本のコンビは日進月歩の勢い。特にここ2、3試合は「飛び出す米本、とどまる梶山」という、一見したら各々が持つ特徴と逆なんじゃない?と思うようなコンビネーションがビッタリハマっている印象です。梶山は、見た目の運動量は米本に任せつつ、自分は自分のリズムでプレーすることに対して楽しさと悦びを感じているんじゃないか?と思えるほどで、でもその分しっかりバイタルエリアの守備や低い位置からのビルドアップでしっかり仕事しているので、全く問題ないでしょう。こういう「周りを操りつつ、自分も出す」ことがますますできてくれば、文字通り東京のキングになる日も近いんじゃないかなぁと思います。縦でも横でもない、斜めのパスがお洒落すぎるぜ!そして米本。自分の中では、試合を重ねるごとに「見た目はガムシャラ、中身はクレバー」というイメージになってきてますよ。バイタルエリアの埋め方、ボールホルダーへの顔出し、次のプレーを考えたトラップ、オーバーラップのスムーズさ、そのいずれもが見た目とは違って(超失礼!)全く無駄がなくて実効的。かつ、見た目どおりの(しつこい)粘り強い守備もマーベラス。特にこの日は、後半のフランサとのやり合いが見ていて面白かったなぁ。あまりに面白かったので、録画で再度確かめたぐらい。ちなみに、直接体をぶつけた上で「ボールを奪う=ヨネの勝ち、ドリブルで抜くor効果的なパスを出す=フランサの勝ち、それ以外=ドロー」という見方で数えた結果、4勝1分け1敗と完勝でした。もちろんフランサ以外のプレーヤーとマッチアップしたときも全く引けをとらず、前半の栗澤に食らいつき続けたシーンなんかは見ていて震えましたよ。
 FW。平山は、ついにセカンドトップの仕事を全くサボることなく、得点を取っちゃいましたね。前半から相手を背負いながらも反転してシュートを放ったり、ドリブルで突っかけてシュートまで行くなど、これまでには無いほどゴールに対しての意欲が感じられましたが、何度でもいいますけど、現状セカンドトップとして与えられている役割(下りてきてのポストプレー等々)を一つも放棄することなくそれができていた点は、なんの不満も言いようがありません。これだけやってくれるなら、75分すぎてヘバっても結構。もちろんスポーツニュースのハイライトではあのシュートシーンだけ切り取られるでしょうから、まだまだ世間的には「純粋ストライカー」という印象のままでしょうけど、東京系以外のいろんなブログ等を周っていると、そろそろ見ている人にはバレてきた感じもありますね。そして、カボレも目覚めきったと宣言していいでしょう。持ち味である裏・縦へのスピードが戻ってきた点もそうですし、平山と(無理のない程度に)交互にポストプレーをこなそうという姿勢も見られますし(トラップが流れ気味なのだけは残念)、2点目に象徴されるように「次のプレーへの予測・準備」がしっかりとできていますし。これからますます暑くなっていく中で、去年のように萎んでしまわないかは心配ですが、今まで寝ていたんですから、これからしっかりと取り返していただきましょう!
 これだけセンターラインがよければ、サイドの(サイドに流れる)プレーヤーもプレーしやすいですよね。彼らが欠けたときのバックアッパーも、GK塩田、CB平松、ボランチ浅利or金沢、FW赤嶺と揃っていて、誰が出てきても同じことをやろうとしている(できるかは別)意思統一さも、今後に期待をしてしまう点ですね。


3:いい攻撃はいい守備から。
 まあ、文字通りの話なんですが、今の東京は「プレスのかけ方の改善」と「攻撃をしている時の守備への準備」がものすごく上手くいっていて、そのおかげで攻撃面も上手く回っているのかなぁという印象があります。
 プレスについては、FWがサボらずに最終ラインにチェックに入り、ある程度コースを限定してくれることで、後ろの選手が狙いどころを定めやすくなっている気がします。交代で入った鈴木、赤嶺もこの点に抜かりは無かったですし、ナビスコ清水戦のユースケも守備では頑張っていたと思うので、ここは監督・コーチ陣による「意識付け」が上手くいっていると見ていいでしょう。
かたや準備については、次節スタジアムで観戦してから最終的には結論を出したいところなんですが、SBやボランチのどちらかも絡んで攻撃したものの、シュートまで行ききらずに相手ボールになって攻められる」というシーンはサッカーではよくあることで、この日の試合でも何度かそういうシーンがありましたが、そこから効果的な攻撃(主にカウンター)をほとんど許していないんですよね。その要因を推測するならば、

1:ラインを高く設定してコンパクトにすることで、相手に裏以外のスペースを与えていない。
2:攻撃に絡んでいない方のサイドの選手の絞り方がいい。
3:ボランチがファースト(セカンド)ディフェンダーとしての役割を全うできている。

 の3点が挙げられると思いますが、あくまでもこれは推測。何故あそこまでセカンドボールを拾いまくれたのかという点も含め、次の清水戦ではこの「守備」の部分について、自分なりに見てみたいと思います。


4:適切な競争原理
 これは完全に中断期間のナビスコ4試合がもたらした産物ですが、ベンチメンバーのレベルがぐんと上がってきてますよね。GK1人+フィールドプレーヤー5人を、GKは塩田、阿部、廣永の3人が、フィールドプレーヤーは平松、茂庭、佐原、椋原、藤山、金沢、浅利、田邉、大竹、鈴木、赤嶺、ユースケの12人が常に争う形になり、記憶が正しければ、1度も前の試合と同じベンチメンバーのままということはなかったはず。茂庭と佐原がともにベンチ外なんて昨シーズンじゃ絶対に考えられないことでしたし、昨年はベンチスタートも含めれば34試合皆勤賞だった藤山が、今季はまだベンチスタート3試合、出場ゼロ分(ナビスコはあり)ですし、大竹ですら出場機会を減らしてるぐらいですから、相当に競争が激しくなっているのが一目でわかります。その「下からの突き上げ」は確実にスタメンクラスの選手にもいい影響を与えていて、この日スタメンに戻った代表帰りの今野、長友、怪我明けの羽生は、それぞれまだ100%ではない(はずの)中でもスタメンとして起用されたことを納得させるに十分のプレーを見せてくれましたからね。昨シーズンから「小平で結果を出した奴にこそ」という姿勢を貫いている城福監督ですが、ここに来て完全に形になったといっていい気がします。



 とまあ、いいところを上げればキリが無いところ。正直柏が何にも出来ていなかった(悪い時のウチみたかったなぁ…。見ていて、ちょっと切なくなりましたよ)点は考慮すべきですが、それでも、良くも悪くも相手に合わせてしまう悪癖がある東京が、低調な相手をスパッと切って捨てたことは評価したいです。浮かれすぎるのも、過信してしまうのも絶対によくないと思いますが、これを自信にするのは間違ってないはず。次節「フルメンバー」の清水にも是非勝利して、6月中に星を五分に戻して欲しいところです。

*1:SBがSHと近いところにいることで、単純に味方SB+SH対敵SHになるし、そこにボランチのもう1人がフォローアップするorトップが下りてくることで、トライアングルも作れる