続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

CLベスト16 プレビューその1

 いよいよ日本時間で明日早朝からCLが再開となりますね。Jは開幕、欧州サッカーはクライマックスに向けて歩みを進めるこの2〜3月は、仕事の忙しさ、キツさ、ストレスを晴らしてくれるサッカーコンテンツがたくさんあって、嬉しい限りです(体力が持たない可能性はあるけど(苦笑))。
 というわけで、直前過ぎてアレなんですが、CLベスト16全8試合のプレビュー、というよりは、全16チームについては今の個人的な印象ををサクサクっと書きます。今日は明日の早朝行われる試合にでる8チームについてです。
 なお、左側のチームが1stレグでホームゲームを戦うチームで、スコアや勝敗予想はしませんので悪しからず。


アーセナル−ローマ
 プレミアリーグを追いかけている方ならご存知のとおり、ただいま絶不調のアーセナル。日曜の対サンダランド戦の感想でも書いたとおり、「主力に怪我人続出+バックアップメンバーの力量不足(あくまでトップオブトップのレベルで考えての話)」が大きく響いている状態。その上、冬の補強もアルシャヴィン1人に留まり、ベンゲルも戦術やフォーメーションの変更による状況の打開を図れていないところ。正直、ポジティブな面を探すのが困難なほど、状況はよくないですし、1、2週間そこらで改善されるとは思えないほど、深刻な問題もあります。
 ただ、手の打ちようがあるとすれば「今こそハードワークを」という点。今は、自分たちのリズムでサッカーを進められないことで、代名詞でもある「パスワーク」はもちろんのこと、そのパスワークを支えてきた「ハードワーク」すら失われている状態。アーセナルのパスワークは、そのワンタッチによる継続性のある攻撃や、ところどころで見られる一撃必殺のスルーパスなどにばかり目が行きますが、その裏打ちとして、全員が走ること・動くことをサボらず、常に細かいポジションチェンジを繰り返すことでフリーになる、つまりはハードワークがその源流にあったはず。パスワークについては、キーマンとなるセスクやアデバイヨルが戻ってこないことにはどうしようもない面はありますが、ハードワークについては、もう一度一人ひとりが昨シーズンの今ぐらいに見せていたパフォーマンスを思い出し、その姿を見せることが必要不可欠でしょう。この点ができた上で敗れるなら、その時は素直に負けを認めるしかないですね。今こそ、「泥臭いアーセナル」が見たいです。


 かたやローマは、11月中旬に復活の兆しを見せ始め、今のその上昇気流に乗っている状態。その要因を挙げるとすれば、「ゼロトップからの脱却」と「ブチニッチ開眼」の2つでしょうか。ローマといえば、スパレッティ就任後から代名詞ともなった、いわゆる「ゼロトップ」で多くのファンを沸かせてきましたが、その戦術に欠かせないトッティが怪我で離脱することが多くなり、さらに今季序盤はマンシーニの移籍やジュリオ・バチスタ、メネズといった即戦力候補の不振、ゼロトップに対するマンネリなどでガタガタの状態でした。
 その流れが変わったのが、11/4の対チェルシー戦。そこまでは4−2−3−1で戦っていたものを、この試合からデ・ロッシをアンカーポジションに下げ、ブリーギを中盤に入れた4−3−2−1、あるいは4−3−1−2という形へ変えました。私もすべてを見ているわけではありませんが、これにより中盤の守備力が劇的によくなり、サイドより中央で働けるバチスタ、メネズがようやく本領を発揮し始めたことで、得点力も増しました。そして、この時期依然怪我で戦列を離れることが多かったトッティに代わり、ポイントゲッターとしてプレーしたブチニッチが(昨季からの継続性もありますが)完全に開眼し、トッティ不在を感じさせないプレーも数多く見せるようになったと記憶しています。ここに来て新システム、戦術の浸透度も高くなっていますし、怪我人の度合いもアーセナルほどではない感じ。ローマにとってイングランド勢は文字通り「鬼門」といっていい歴史はありますが、今こそその壁を破るチャンスが来たんじゃないかと思います。



アトレティコ・マドリーポルト
 久々のCL参戦となったアトレティコ・マドリー。楽ではないグループに入るも早々に勝ち上がりを決め、リーグ戦も「アンブリア峠」(今季、2強以外のどのチームにもある強豪との連戦のマスコミ通称名)こそ苦しんだものの、それこそ峠を越えてからは持ち直して3位でウインターブレイクへ突入しました。が、年が明けると人が、チームが変わったかのような大苦戦続き。なにせ、ここまで年明けの公式戦1勝3分5敗ですからね。
 その原因は、明らかにリーガとCLの2足の草鞋を履ききれなかった選手層の薄さにあるでしょう。特に中盤から前は、怪我さえなければMFマニシェ、パウロ・アスンソンマキシ・ロドリゲス、シモン、FWフォルランアグエロの6人でほぼ固定され、総得点(46点)の約78%(36点)をこの6人が挙げているため、誰か一人抜けるだけでも痛手なところを、複数名抜けることになると耐えられない状態になり、それが年明け続いてしまっている(今年この6人がスタメンで揃ったことは一度もない)のが響いているところ。とはいえ、いない人のことを言ってもしょうがないですし、サブにもバネガ、ラウール・ガルシアルイス・ガルシア、シナマ・ポンゴルといいメンバーはいますし、監督交代がやや状況を好転させている感じは見られるので、またどこかで必ず上向いてくるはず。それでも、マニシェアグエロフォルランがフルに出れる状況じゃなければ厳しいとは思いますが、反撃のスタートがここになることをファンは祈るべきでしょうね。


 ポルト。今季ほとんど試合を見れていないので、チームについては何とも言えないところではあるんですが、日本人としてはやはり触れざるを得ないのがフッキ。序盤はジョーカー的な役割を与えられ、途中出場が多かったようですが(スタメン11試合、途中出場6試合という数字からも分かるかと)、今やすっかりレギュラーとして定着し、年明けはリーグ戦7試合で4得点。さらに、リーグ戦・カップ戦含めてで7試合でゴールを挙げているんですが、その7試合は6勝1分と不敗神話続行中。まだCLの舞台ではゴールのないフッキが、いよいよ得点を挙げてチームを勝利に導けるか。注目です。


インテルマンチェスター・U
 新たにモウリーニョを監督に迎え再スタートを切ったインテル。補強も含めて序盤は得意とする4−3−3を多用し、結果もそれなりに出ていたものの、内容については「芳しくない」という評価が多く、補強の目玉だったマンシーニクアレスマがいつまで経っても馴染まないこともあってか、11/22のユベントス戦あたりからは中盤をダイヤモンド型にした4−4−2へと移行したところ、結果は維持しつつ内容は向上したという評価が大勢を占め、さらにスターぞろいのメンバーの中に上手くリバス、サントン、バロテッリといった若手を組み込みつつ結果を残しているあたりは、さすがモウリーニョというところを見せています。そして、気がつけば2位ユベントスとの差はすでに9ポイント。まだまだ安心できるところまでではないですが、気持ちをいよいよ念願のビッグイアー獲得に傾けてもいい状況にはなってきたかなぁと。モウリーニョは「ファーガソンキラー」でもありますしね。
 で、この先イブラヒモビッチがキーマンになるのは間違いないと思いますが、大注目はアドリアーノでしょう。いくらイブラヒモビッチがスーパーな活躍を見せているとはいえ、相手はリーグ戦で14試合連続無失点というとんでもない記録を作ったマン・Uが相手。一人でできる仕事は、そこまで多くないと思います。であるからこそ、イブラヒモビッチと同じレベルのポテンシャルを秘めるアドリアーノが爆発すれば、さしものマン・Uも無傷ではすまないでしょう。駄々をこねて幾度となくモウリーニョから突き放され、冬にはまたレンタル移籍か!?という話が出ながらも、今インテルに残っている(モウリーニョモラッティオーナーが残している)ということは、戦力として認めているからこそ。今、この期待に応えないでどうする!と私は思いますね。狙うは、ヴィディッチのいないホームの1stレグで大きなアドバンテージを握ることのみでしょう。


 マンチェスター・Uも序盤はやや出遅れましたが、12月のクラブW杯を制覇したあたりからいよいよエンジンがかかり、現在公式戦11連勝中(27得点5失点)と手がつけられない状態にまで持ってきました。どこが特別良いとか、これが大きな要因だ、といったものは感じられないものの、一人ひとりが自分の持ってるものをしっかりと出し切り、当たり前のことを(高いレベルで)当たり前にできている自然な感じが、逆に今の調子の良さがどこまでも続きそうな錯覚を覚えさせるほどにも感じています。
 しかし、この大一番へ向けて不安がないわけではありません。ヴィディッチがクラブW杯決勝、対LDUキト戦においてもらったレッドカードの適用がこの試合となり出場停止、しかも、代役として成長著しいエバンスも直前のリーグ戦で負傷により途中交代し、出場は微妙な情勢。というわけで、恐らくオシェイがCBにはいると思いますが、今季オシェイファーディナンドというCBコンビはほとんど組んでおらず、長くやってはいますが連携の面で不安を抱えることになります。そこに来て、相手は(恐らく)イブラヒモビッチアドリアーノという超絶2トップ。2ndレグはホームに戻り、ヴィディッチも戻ってくることを考えれば、1失点は御の字ぐらいの覚悟で望むべきでしょうね。最悪なのは、早い時間に失点して相手を乗せてしまうこと。注目は立ち上がり15分です。



リヨン−バルセロナ
 リヨンはリーグ戦では定位置の首位を守って入るものの、ここ2、3年と比べると苦戦している印象が否めません。攻撃陣ではベンゼマこそ2桁得点を挙げていますが、その他のFWで5点しか取れておらず、ゴヴは怪我により離脱、期待の新加入だったピキオンヌは完全な期待はずれ、フレッジも移籍志願を公にするなど相変わらずの奔放ぶりと散々な内容。ジュニーニョ、エデルソン、マクンといった中盤の選手の得点がそれなりにあることで何とか体裁は保っていますが、怖さは小さくなっているのが正直なところです。守備陣は怪我人に祟られており、特に左右SBのスタメンクラスであるクレルク、レヴェイエールが揃って長期離脱中で、本来CBであるブームソンやガサマ、ボランチであるトゥラランサイドハーフであるシェルストレームをコンバートせざるを得ない状況となり、25試合で16失点という見た目の数字こそいいものの、不安定さが散見される状況である様子。
 そんな中で迎える相手は、なんと「最強」バルセロナ。攻撃に関してはベンゼマの一発やジュニーニョのセットプレーから点を奪うチャンスは少なくないと思いますが、ポイントは果たしてどこまで守備陣が耐えられるかでしょうね。よもやホームで3失点喫するとなるとほぼ挽回不可能ですし、2点失うのも正直厳しい印象(たとえ3−2で勝ったとしても)。何とかして、どうにかして1失点で済ませたいところですが、そのためには思い切った策−例えば、今季ボランチの位置でプレーすることの多いジュニーニョを1つあげて、ボランチ2枚はガチガチに守れる人を使う、あるいは玉砕覚悟で打ち合う−が必要になってくるかと。ピュエルの手腕と度胸が試される1戦になりそうです。


 バルセロナ。「今、世界で最も強いと思うクラブチームは?」と全世界のサッカーファンに質問すれば、恐らくマンチェスター・Uとトップを争う、それぐらい素晴らしいチームになっています。正直、私も「グァルディオラは1年目は苦労するだろうなぁ」と思っていたクチですが、お見それしましたとひれ伏すほかありません。どうしても、メッシ、エトーイニエスタ、シャビといったあたりに目が行きがちですが、ビクトル・バルデスはすっかり「安定感」という言葉が似合うようになって来ましたし(稀なチョンボはありますよ、誰でも)、去年燻っていたアビダルマルケスヤヤ・トゥーレ、アンリも本来のパフォーマンスを取り戻し、ダニエル・アウベス、ピケ、ケイタ、カセレス、フレブの移籍組も早々に馴染み、ピント、プジョル、シウヴィーニョ、グジョンセンのベテランが要所を締め、ビクトル・サンチェス、セルジ・ブスケッツ、ペドロ、ボージャンら若手も、機を見ながらトップチームに組み込んでいる−つまりは全員がしっかりと自分に与えられた役割をこなし、チームの勝利のためのみプレーできているという印象が強いんですよね。これは、先ほどマンチェスター・Uを評した時にも書きましたが、当たり前のことを(高いレベルで)当たり前にできているからこそ強いんでしょうね。
 もちろん、リヨンは一筋縄では行かない相手です。ややスピードに難のあるプジョルマルケスベンゼマにぶっちぎられる、あるいは得意とはいえないセットプレーでの守備を突かれて(相手にはFKマイスターがいますからね)失点するというシーンは、想像可能な範囲です。しかし、ここでもこれまでやってきた通りのプレーを選手がしてくれれば、ここは通過点に過ぎないと思いますね。