続々々・メガネのつぶやき

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EURO08 準々決勝 オランダ−ロシア

 予選ではほとんど隙を見せることがなかったオランダ。しかし、今日の相手は相手の隙を見つけて付け込む事に関しては右に出るものがいないヒディンク監督率いるロシア。オランダが千丈の堤の高さを見せ付けるのか、それともロシアが蟻の一穴を見つけて瓦解させるのか。
オランダ 1−3 ロシア
スコア:56分 R・パブリュチェンコ
     86分 R・ファン・ニステルローイ
    112分 D・トルビンスキー
    116分 A・アルシャヴィン


 ロシアの完勝でした。不安だったのはフリーキックに対する守備だけで、それ以外は攻守両面ともオランダを完全に圧倒していたと思います。特に攻撃面ではサイド攻撃を中心としながらも、単調なクロスを入れることはせずに徹底したショートパスでの崩しを意識し続け、そのパスワークでタメを作ってオランダ守備陣を引きつけている間に2、3列目から選手が飛び出してくることで完全にバランスを崩させることに成功していたんじゃないかと。さらに言えば、グループリーグ第3節で主力を休ませたオランダが先に完全にヘバってしまい、中2日しかなく大きなメンバー変更をしなかったロシアが最後まで献身的に走り続けたという点が、この試合で如何にロシアが主導権を握り仕掛け続けていたか、そして如何にオランダが自分達のリズムを最後まで掴む事が出来なかったかと物語っていると思います。試合の入り方が良かったですしね、ロシアは。ロシアというとどうしても「(いい意味でも悪い意味でも)大味なサッカー」というイメージが付きまとう人が多いと思いますし(私はそうです)、海外でプレーする選手がサエンコ(ニュルンベルク=ドイツ)だけしかいなくてどれだけのレベルの選手が揃っているのか未知数だった部分もあって私は相当低評価だったんですが、ヒディンク監督はいいチームを作り上げましたねぇ。おみそれしました。
 オランダ。脆かったですね、グループリーグからは想像できないぐらい。攻撃面ではサイドをロシアに制圧されてしまったことでピッチを広く使うことが出来ず、終始狭くて窮屈な展開を強いられてしまいましたね。それでも崩せるだけの力があるとは思ったんですが、ファン・ニステルローイが全くポスト役としての仕事が出来ず、ファン・デル・ファールトスネイデルの両司令塔もどこか集中し切れていない様子で、判定にもいちいちイラつきながら自らリズムを失ってしまった印象。これではゲームを作れないのも仕方ないですよね。後半になってファン・ペルシー、アフェライと攻撃的な選手を入れましたが、それでも崩しの場面で思うようにいかずに我慢しきれずミドルシュートを打ってチャンスを手放すシーン連発。ミドルシュートが悪いとは全く思いませんが、作られたシチュエーションではなく打たされたというものばかりではどうしようもないかなぁと。最後まで「らしさ」が見られなかったのは残念でした。そして守備面。細かくポジションを変えたり飛び出してくるロシア攻撃陣にぼやかされてしまい、選手間のバランスが文字通りバラバラ。流れたり飛び出して来るする選手を誰がどこまで面倒を見てバランスを保つのかという約束事があったとは全く感じられず、好き放題に空いたスペースを使われてしまいましたね。こういう後追いの守り方は想像以上に応えるんでしょう、明らかに運動量が減っていくのが手に取るように感じられました。2、3失点目はまさに疲れてしまったがゆえの失点*1ですからね。ただ、守備に関しては結果大差で勝ったイタリア、フランス戦でもある時間帯では完全に押し込まれていたわけで、この日も結果1失点で耐えて1度は追いついたところでもう一つギアが上がらなかった、攻守の歯車が最後まで噛み合わなかったというのが一番の敗因なのかもしれません。
 これで、準々決勝は全て2位通過のチームが勝利。そして、敗れた1位通過3チームに共通するのが「グループリーグ第3節で主力をほとんど休ませた」という点。もちろん休ませてリフレッシュさせることでプラスに働くこともあるんでしょうが、3試合とも1位通過のチームが立ち上がりに集中しきれずに主導権を握られてしまっている(ポルトガルとロシアは結果的に先制点を奪われた)んですよ。これについて考えた時に、私の結論としては「ワールドカップ以上に短期決戦の大会だけに、一度張り詰めたものが少しでも緩むと隙が生まれてしまう」「ギリギリの緊張感が肉体の疲労感を凌駕して体を突き動かすという風」な理解でいます。となると、明日の試合のスペインの入り方は大注目ですね。

*1:2失点目はDF5人全員がクロスを上げたアルシャヴィンのウォッチャーになってしまい、後ろから入ってきたトルビンスキーはどフリーでしたし、3失点目はスローインに対して完全に集中を切らしてしまいました。