続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

果たした「マイナーチェンジ 」

 お久しぶりです。採点業務は残念ながら三日坊主癖が出てここまで続かず、久々のブログ更新となりました。

 

 そんなこんなしているうちに、J1リーグは早くも約2/3を消化。猛暑を超え、酷暑とも言える季節はようやく終わりを迎えつつあり、残暑から秋へと向かう中、J1の優勝争い、ACL圏内争い、残留争いはそれぞれ一歩ずつ、フィナーレへと向けて歩を進めています。

 さて、FC東京は15勝3分5敗、勝ち点48。第8節に首位に立ってからここまで、16節連続で首位をキープし続けています。

 もちろん、盤石な歩みではありません。序盤の快進撃を支えた選手の移籍があり、連敗があり、クラシコでの惨敗があり。それでも、これまでのFC東京であれば、いずれかの理由で大きく失速していてもおかしくなかったなか、首位をキープしていることは、大きく評価していいでしょう。

 4月下旬に1つ、景気のいいエントリを書きました。

 「昨季から何を継続できていて、何を変えたのか?」をテーマに、自分なりにうすーく考察してみたものですが、今日は当ブログではお馴染み(?)、「フットボールラボ(https://www.football-lab.jp/)」内のデータを用いて、ダラダラと今季ここまでを見てみたいと思います。お暇な方は、どうぞお付き合いください。

 なお、これから先のデータ(数字)はすべて、フットボールラボ内のJ1チームサマリー(https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2019)及びFC東京シーズンサマリー(https://www.football-lab.jp/fctk/)から引用しております。

 

 

 まずは、基本スタッツの18年及び19年(第23節広島戦終了時点)の比較から。

項目 19年 18年
試合平均 リーグ順位 試合平均 リーグ順位
ゴール 1.4 6位 1.1 13位
シュート 11.4 13位 13.4 9位
枠内シュート 4.0 12位 4.0 11位
パス 402.2 13位 413.2 14位
クロス 13.3 15位 15.8 11位
直接フリーキック 11.9 9位 11.0 17位
コーナーキック 5.4 3位 6.1 2位
ドリブル 11.5 12位 12.4 12位
タックル 20.0 10位 22.7 3位
クリア 24.7 5位 22.1 14位
インターセプト 2.3 10位 2.1 9位
オフサイド 1.5 13位 1.8 12位
警告 0.8 17位 1.0 12位
退場 0.0 5位 0.0 8位
30mライン進入回数 38.4 11位 44.3 7位
PA内進入回数 12.0 8位 15.7 6位
攻撃回数 112.9 11位 120.3 10位
ボール支配率(%) 44.8 14位 47.8 12位

 昨季からリーグ2桁順位のスタッツが多く、パッと見「なんでこれで上位やねんw」と思ってしまうところですが、今季もそれは変わらず。まあ、ホントに相変わらずです。

 細かく見ていきましょう。まず目につくのはシュート数。昨季より1試合平均で2本減。平均で2本減って結構インパクトある数字だと思いますし、攻撃回数、30mライン進入回数(=敵陣ゴールラインから30m以内のエリアにボールを進めた回数)、ペナルティエリア進入回数、ボール支配率、いずれも昨季より減。正直、これには驚きました。

 「いや、そりゃ攻撃回数が少なきゃ(減ったら)30mライン進入もPA内進入も比例して減るでしょ」と思われる方がいるかと思いますが、決してそんなことはなく。例えば神戸。攻撃回数は112.0回で東京とほぼ同じですが、シュート数は14本で6位、30mライン進入回数は45.0回、PA内進入回数は14.8回でともに5位、ボール支配率は56.9%で2位。「1回のボール保持時間が長く、けれどしっかりと敵陣30m内まで持っていけるため、攻撃回数は少なくなるけど、シュートまで持っていける」という数字になるチームもあります。

 話戻って。そうした攻撃に関する数字が昨季よりも減っているにもかかわらず、枠内シュートは昨季と同じで、ゴール数は昨季より上。結果として「よりゴールに向けての精度が高まっている」数字となっています。

 さらに突っ込んでみます。フットボールラボでは「チャンス構築率」という数字も出していて、これは「攻撃回数÷シュート数」で割り出されるものですが、東京はこんな感じ。

項目 今季 昨季
試合平均 リーグ順位 試合平均 リーグ順位
攻撃回数 112.9 11位 120.3 10位
シュート 11.4 13位 13.4 9位
チャンス構築率(%) 10.1 13位 11.1 9位
ゴール 1.4 6位 1.1 13位
シュート成功率(%) 12.6 3位 8.1 15位

 昨季もチャンス構築率が高かったとは言えませんが、今季はさらに割合減。けれど、ゴール数は増えているため、シュート成功率は約4%アップ。単純に言ってしまえば、「決定力が高まった」状況にあります。

 が、ただ単に「決定力アップ、バンザーイ!」としてしまうのは、ちょっと違うというか、もったいないというか。なにかほかのデータからシュート成功率4%アップを補足できないか?ということで、いろいろなデータ・数字をさらに見ていくことにしましょう。

 

 まずは、この表からご覧ください。

対戦相手 シュート 枠内シュート ゴール 攻撃
回数
30m
進入
PA
進入
PA内シュート 30m
進入割合
PA進入
割合
PA
シュート率
1 川崎 6 1 0 113 29 8 3 25.7% 27.6% 37.5%
2 湘南 19 7 3 116 36 19 11 31.0% 52.8% 57.9%
3 鳥栖 16 6 2 121 49 12 12 40.5% 24.5% 100.0%
4 名古屋 13 4 1 125 26 9 7 20.8% 34.6% 77.8%
5 浦和 7 3 1 107 26 7 3 24.3% 26.9% 42.9%
6 清水 12 7 2 135 51 19 6 37.8% 37.3% 31.6%
7 鹿島 10 3 3 118 33 9 7 28.0% 27.3% 77.8%
8 広島 5 2 1 102 38 13 3 37.3% 34.2% 23.1%
9 松本 12 5 2 115 38 19 6 33.0% 50.0% 31.6%
10 G大阪 14 2 0 110 32 9 9 29.1% 28.1% 100.0%
11 磐田 15 5 1 125 53 16 9 42.4% 30.2% 56.3%
12 札幌 12 6 2 123 33 14 10 26.8% 42.4% 71.4%
13 C大阪 12 2 0 108 43 12 5 39.8% 27.9% 41.7%
14 大分 19 6 3 108 66 18 13 61.1% 27.3% 72.2%
15 神戸 14 2 0 126 46 16 8 36.5% 34.8% 50.0%
16 仙台 6 0 0 119 43 4 3 36.1% 9.3% 75.0%
17 横浜 9 6 4 105 24 9 6 22.9% 37.5% 66.7%
18 G大阪 9 5 3 116 34 13 8 29.3% 38.2% 61.5%
19 川崎 10 1 0 122 31 6 6 25.4% 19.4% 100.0%
20 清水 15 9 2 91 48 17 12 52.7% 35.4% 70.6%
21 C大阪 11 4 3 101 27 11 7 26.7% 40.7% 63.6%
22 仙台 9 2 1 99 36 9 5 36.4% 25.0% 55.6%
23 広島 7 3 0 91 41 7 4 45.1% 17.1% 57.1%
平均 11.6 4.0 1.5 113.9 38.3 12.2 7.2 34.3% 31.7% 61.8%
18年平均 13.3 4.0 1.1 119.7 43.9 15.6 8.9 37.1% 36.4% 59.8%

※ 30m進入割合=30m進入÷攻撃回数  PA進入割合=PA進入÷30m進入 PA内シュート率=PA内シュート÷PA進入

 「シュート成功率が高くなっている=よりゴールに迫ったところでシュートが打てている?」と仮定しまして、前述したシュート数~PA内進入回数に加えて「PA内シュート数」を集計し、30m進入割合、PA進入割合、PA内シュート率を割り出した表となります。

 昨季と比べると、攻撃回数~PA内シュート数までいずれも減少。つられて、30m進入割合、PA進入割合も減少していますが、PA内シュート率だけは昨季より増加していることが分かります。これまたそう単純な話ではないかもしれませんが、よりゴールから近い位置からシュートを打てれば、ゴールの期待値は高くなるわけで。この2%は小さな差かもしれませんが、私は小さくない変化だと見ていいと思います。

 

 続いて、こちらの表をご覧ください。

指標 19年(第21節まで) 18年
指数 シュート率 ゴール率 指数 シュート率 ゴール率
攻撃セットプレー 60 21.5% 1.2% 60 22.9% 1.6%
左サイド攻撃 50 12.2% 1.2% 51 11.8% 0.7%
中央攻撃 44 34.3% 5.7% 57 27.4% 2.5%
右サイド攻撃 42 11.7% 1.0% 47 13.6% 1.4%
ショートカウンター 52 20.4% 3.8% 64 15.1% 1.6%
ロングカウンター 71 20.0% 3.6% 69 17.7% 1.8%
敵陣ポゼッション 42 18.9% 1.8% 48 23.2% 1.4%
自陣ポゼッション 38 4.6% 0.0% 39 5.2% 0.7%
             
守備 → 攻撃 42     42    
攻撃 → 守備 47     53    
フィジカルコンタクト 53     56    
コンパクトネス 65     61    
最終ライン 44     48    
ハイプレス 49     71    

※ オレンジ色はリーグ上位5位以内。水色はリーグ下位5位以内。指数はリーグ内での偏差値。

 こちらは、フットボールラボが独自に算出している各指標を比較した表です。各項目の詳細については、ご興味があればこちらのページ(https://www.football-lab.jp/pages/team_style/)をご覧ください。で、どこに注目するかは人それぞれかと思いますが、まずは「コンパクトネス」と「ハイプレス」を見てみます。

 「コンパクトネス」指数。フットボールラボ内では

相手が(相手の自陣で)ボールを保持しており、かつ守備ブロックに進入される前のプレー時における、守備側チームの最前列の選手からオフサイドラインまでの距離。

 と定義付けていますが、指数は18年が61、19年が65と微増。また、90分を通した「守備側チームの最前列の選手からオフサイドラインまでの縦幅・横幅」も、18年が縦幅29.1m・横幅35.3mに対し、19年が縦幅28.7m・横幅35.4mとほぼ変わらず。パッと見、昨季と今季で大きな変化はないように思われます。

 しかし、15分間隔で区切って集計した縦幅及び最終ラインの高さ(=自陣ゴールラインからオフサイドラインまでの距離)がフットボールラボでは示されていて、それを表にしてみました。

    15分 30分 45分 60分 75分 90分
19年 縦幅 27.7m 28.5m 28.2m 30.1m 29.2m 28.9m
ライン高さ 39.9m 40.5m 40.1m 39.5m 38.8m 39.5m
18年 縦幅 29.4m 29.1m 27.9m 30.1m 29.6m 29.0m
ライン高さ 41.1m 40.4m 39.1m 39.5m 41.3m 39.2m

 するとご覧のとおり、開始15分までの区分で縦幅が昨季より狭くなり、最終ラインの高さも落ちている。つまり、より自陣に最終ラインを構えるけれど、全体は非常にコンパクトにまとめて相手を待つ状況を、開始15分間は意図的に作っていると言えます。

 「ハイプレス」指数。フットボールラボ内では

相手が(相手の自陣で)ボールを保持している際に、プレー者に対して至近距離に詰めるもしくは一定以上のスピードでプレー者に近付いた回数が3回以上ある場合。

 と定義。この指数が高ければ高いほど、相手陣内でのボール保持に対してアタックしていることになりますが、18年は指数71で1位だったのに対し、19年は指数49で10位と大幅ダウン。今季は昨季と比べ、相手陣内でプレスを仕掛けていないことが分かります。

 そして、こちらも15分間隔で区切って集計したハイプレス発生率(=上記定義を満たした相手攻撃に対して、ハイプレスを行った割合)とハイプレス成功率(=ハイプレス後5秒以内に、相手攻撃がシュートまで至ることなく終了した割合)をフットボールラボは示していますが、それを表にしてみました。

    15分 30分 45分 60分 75分 90分
19年 発生率 39.9% 40.7% 33.3% 44.0% 31.6% 30,6%
成功率 34.6% 30.3% 40.0% 35.8% 28.0% 23.7%
18年 発生率 49.1% 42.9% 37.4% 45.7% 41.5% 34.8%
成功率 41.0% 35.9% 41.3% 43.2% 39.2% 39.2%

 これまた如実に変化しているのが開始15分までの区分で、ハイプレス発生率が約10%も減少し、ハイプレス成功率も約7%ダウン。昨季と今季のハイプレスにおける違いをよりシンプルに表現すれば、昨季が「開始15分はガンガンハイプレスに行き、そこでボールを取りきる狙いがあった」のに対し、今季は「ハイプレスに行けるシチュエーションでも意図してプレスに行く回数を減らし、かつ、しゃにむに取りにもいっていない」となるでしょうか。

 この2つから見て取れた「開始15分」の違いは、攻撃においては時間帯別得点数にはっきりと表れています。

    1-15分 16-30分 31-前終 46-60分 61-75分 76-後終
19年 得点数 1 7 6 6 7 7
得点率 2.9% 20.6% 17.6% 17.6% 20.6% 20.6%
18年 得点数 9 3 6 11 6 4
得点率 23.1% 7.7% 15.4% 28.2% 15.4% 10.3%

  昨季がガンガンハイプレスを押し出しながら、前半(後半もですが)開始15分にゴールを奪って主導権を握りに行ったのに対し、今季は明らかに開始15分の狙いを変えていて、ゴールはわずかに1つだけ。

 ただ、これは悪い数字ではなく、前述したデータと組み合わせればむしろ理に適っているというか、十分に納得できるもの。かつ、その他の時間帯における得点がほぼフラットであることは、開始15分で戦況を見極めた後、そこから攻めに出るのか、それとも前半は我慢するのか、後半もどこで勝負に出るのか、そうして90分をトータルでコーディネートできている証拠の1つと言っても過言ではないでしょう。

 

 続いて目につくのはカウンター。フットボールラボ内では

ショートカウンターミドルサードもしくはアタッキングサードの後方でのボール奪取から10秒以内にアタッキングサードを狙った攻撃

ロングカウンター:ディフェンシブサードでのボール奪取から15秒以内にアタッキングサードを狙った攻撃

 とカウンターを2つに分けて定義付けており、それぞれの指数が高いということは、上記定義に基づく攻撃の回数・頻度が多いことと、ほぼイコールになります。

 そんなカウンターの指数をみてみると、昨季はショートカウンター指数64で1位タイ、ロングカウンター指数69で単独1位となっており、とにかく「ボールを奪ったらカウンター!」であることが、数字にも十二分に表れていました。

 ただ、ショートカウンター時のシュート率15.1%は16位、ロングカウンター時のシュート率17.7%は12位、ゴール率はともに1%台にとどまるなど、カウンターが不発に終わってしまっていた(特に後半戦)ことも見て取れます。

 今季。ショートカウンター指数は52まで下がり、順位も7位と落ちた一方、ロングカウンター指数は71に上がり、順位も1位をキープ。昨季と比べて明確にロングカウンターを多用していることを、数字は示しています。

 単純に回数の増減で考えれば、コンパクトネス・ハイプレスのところで触れたとおり、チーム全体の守備重心が自陣寄りになり、ハイプレスも控えていることでボール奪う位置が低くなっている。そのため、ショートカウンターの回数は減り、ロングカウンターの回数が増えている。これでいいでしょう。

 しかし、より注目すべきはシュート率とゴール率。指数に上がり下がりはありましたが、シュート率はショートカウンター・ロングカウンターともに20%台に乗り、ゴール率はともに昨季から倍増し、ともになんとリーグ1位。ショートカウンターは頻度こそ減ったものの一刺しの威力は増しているし、ロングカウンターはよりその鋭さを増している、そんな状況です。

年度 ロングカウンター ショートカウンター
21km/h以上人数 一人あたり距離 24km/h以上人数 一人あたり距離 21km/h以上人数 一人あたり距離 24km/h以上人数 一人あたり距離
19年 3.4人 31.4m 2.3人 28.5m 1.6人 22.2m 0.9人 20.4m
18年 2.9人 31.1m 2.0人 27.3m 1.6人 20.2m 0.9人 18.7m

 これは、それぞれのカウンター時におけるスプリントをした選手の人数と距離。ロングカウンターを見ると、一人あたりの平均走行距離はほぼ変わらないものの、スプリントをした人数が増えています。これは、カウンターが始まる位置は昨季とそう変わらないかもしれないけど、より多くの選手が頑張って長い距離をスプリントして、フィニッシュに向かっていることが伺えます。

 一方ショートカウンターを見てみると、スプリントをした人数は全く変わっていませんが、一人あたりの距離は約2mずつ長くなっている、つまり、これまで書いてきたとおり、より自陣寄りでボールを奪い、そこからカウンターが始まっていることが改めて伺えます。

  ロングカウンター ショートカウンター
  19年 18年 19年 18年
  選手名 平均距離 選手名 平均距離 選手名 平均距離 選手名 平均距離
1 ディエゴ 29.06m 室屋 28.25m 18.88m 室屋 21.02m
2 24.68m 25.13m 室屋 21m 18.24m
3 永井 28.13m ディエゴ 29.12m ディエゴ 18.79m 大森 17.16m
4 室屋 26.46m 大森 23.81m 永井 20.69m ディエゴ 18.62m
5 小川 24.82m 高萩 21.41m 小川 17.22m 永井 18.81m

 こちらは、それぞれのカウンター時における時速21km以上でのスプリント回数チームトップ5と、それぞれの平均走行距離をまとめたもの。

 ショートカウンターは大きな変化が見られませんが、ロングカウンターを見ると、18年に永井の名前がありません。これは、けがの影響により後半戦で出場機会を減らしたことも影響している部分もあるかと思いますが、それでも永井不在の影響を最小限に食い止められず、ディエゴ+誰かがメインアタックで、そこにCHの高萩まで名を連ねる必要がありました。しかし今季は、永井がディエゴとともにしっかりと脅威になれていて、その2人にプラスアルファ誰か(3人目、4人目)が支えている。それが、昨季よりスプリントをした人数が増えている要因と言えるでしょう。

 また、ロング・ショートとも今季は顔ぶれが変わっていないことは、私はとても大事だと思っていて、例えばロングカウンターで言えば、

自陣にブロックを構えてしっかり守る

  ↓

 ボールを奪ってカウンター発動

  ↓

2トップ+α(東 or SB)がカウンターに関わる

  ↓

けれど、そこにCB&CHが関わることは限定的で、カウンター後の守備に向けて、自陣の厚さも確保できている

 という型がしっかりと持てていることで、カウンターの完結に向けてユニットも組みやすいですし、仮にカウンターが完結しなくても、すぐに裏っ返されて間延びしたところを突かれてピンチを迎えることも減ったのかなと感じています。前半戦に限って言えば、カウンター部隊と後方部隊をつなぐ久保建英というスーパーな個が存在していましたしね。

 こうして、ショートカウンターではほんの数メートルですが相手を自陣に引き込んでその裏を突くことで、ロングカウンターでは関わる人数を増やし、相手守備陣にほんの刹那でも迷いや連携の乱れを生じさせることで、よりクリーンなシュートシーンを作ることができ、それがシュート成功率アップにつながっているのではないか?と、データからは読み解くことができます。

 

 と、ここまでだいぶポジティブなことばかり書いてきましたが、もちろん課題もあって。それが、ポゼッション…ではなくセットプレー。フットボールラボにおける攻撃セットプレーは

アタッキングサードでのフリーキックコーナーキックスローインから始まる攻撃

 と定義されていて、攻撃セットプレー指数は18年、19年ともに60で上位5位以内。つまり、数は打っているわけですが、シュート率・ゴール率はともに下位5位以内。まあ、決まっていません。

 それもそのはず、総得点におけるセットプレー得点の割合を見ると、フットボールラボにおいて集計を始めた12年以降17年までは、最低でも17.02%(14年)で、それ以外はすべて20%を超えていますが、昨季は15.38%、今季はわずか5.88%にとどまっています。

 まあ、それは誰あろう長谷川監督が一番分かっていて、第21節C大阪戦で三田のFKから森重が決めたことを受けて、「後半戦は苦しい試合が続く。その精度も上げていかないといけないとあらためて思っています」と語っています。キッカーの問題なのか、パターンの問題なのか、単純にエアバトルの問題なのか。いずれにせよ、残り11試合でセットプレーから5点取れれば…というのが切なる願いです。

 

 

 さて、ここまでは攻撃のお話をしてきました。が、今季より際立っているのが守備。昨季もリーグで2番目に少ない34失点でしたが、今季はここまで23試合で17失点。一時期、7試合連続で失点を喫していましたが、最近は4試合で1失点と持ち直していて、平均1試合1失点を下回ることも期待されます。

 守備の仕方、戦術的な要素については、冒頭にリンクを貼った自分のエントリでも書きましたし、もっと詳しく書かれている方もいらっしゃるのでさておいて、こちらも数字から少し探ってみたいと思います。まずは、こちら。

項目 今季 昨季
試合平均 リーグ順位 試合平均 リーグ順位
被攻撃回数 114.4 10位 122.6 13位
被シュート 12.8 9位 11.4 4位
被チャンス構築率(%) 11.2 10位 9.3 3位
被ゴール 0.7 1位 0.9 2位
被シュート成功率(%) 5.4 1位 8.2 2位

 攻撃のところでも出したチャンス構築率の守備版である「被チャンス構築率」をフットボールラボから引用したものです。

 攻撃回数は昨季より今季の方が減っていましたが、被攻撃回数も約8回の減。ここからも、今季は攻守両面でバタバタしていない(=良くも悪くも攻守が目まぐるしく入れ替わっていない)ことが分かりますが、こちらは攻撃とは異なり被シュート数は増え、結果として被チャンス構築率も約2%増えてしまっています。

 が、失点はリーグ最少。当然、被シュート成功率も5%台でリーグ最少。縦の比較で見ても、12年以降今季を除いて最も被シュート成功率が低かった14年が6.5%。この時の指揮官は、ご存じマッシモ・フィッカデンティで、実は14年も被シュートは15位、被チャンス構築率は13位と、今季と同じ…ではなく、今季より輪をかけてシュートを打たれていましたが、被シュート成功率は2位。つまり、14年も今季ここまでも「決めさせなかった」シーズンだと言えます。

 この、シュートは打たれているけど決めさせていない状況をフットボールラボ内のデータから深くあぶり出すのはちょっと難儀なところですが(守備に関連した指標が少ないため)、攻撃のところでも出した表の守備版を作ってみました。

対戦相手 被シュート 被枠内シュート 被ゴール 被攻撃
回数
被30m
進入
PA
進入
PA内シュート 被30m
進入割合
PA進入
割合
PA
シュート率
1 川崎 16 8 0 113 67 21 13 59.3% 18.6% 61.9%
2 湘南 9 2 2 119 35 9 5 29.4% 7.6% 55.6%
3 鳥栖 7 1 0 138 19 4 4 13.8% 2.9% 100.0%
4 名古屋 14 6 0 133 60 18 10 45.1% 13.5% 55.6%
5 浦和 11 4 1 120 56 4 4 46.7% 3.3% 100.0%
6 清水 16 6 1 131 39 15 11 29.8% 11.5% 73.3%
7 鹿島 13 5 1 128 70 15 6 54.7% 11.7% 40.0%
8 広島 5 1 0 103 54 5 1 52.4% 4.9% 20.0%
9 松本 11 5 0 119 26 4 4 21.8% 3.4% 100.0%
10 G大阪 18 4 0 113 51 12 7 45.1% 10.6% 58.3%
11 磐田 11 3 0 122 37 11 6 30.3% 9.0% 54.5%
12 札幌 11 4 0 108 49 15 6 45.4% 13.9% 40.0%
13 C大阪 12 2 1 108 43 12 5 39.8% 11.1% 41.7%
14 大分 4 3 1 100 29 4 3 29.0% 4.0% 75.0%
15 神戸 20 3 1 107 38 15 15 35.5% 14.0% 100.0%
16 仙台 21 5 2 118 37 14 12 31.4% 11.9% 85.7%
17 横浜 22 7 2 114 85 19 14 74.6% 16.7% 73.7%
18 G大阪 11 2 1 116 71 21 6 61.2% 18.1% 28.6%
19 川崎 16 9 3 112 61 12 9 54.5% 10.7% 75.0%
20 清水 10 3 0 101 39 10 6 38.6% 9.9% 60.0%
21 C大阪 14 4 0 105 54 12 7 51.4% 11.4% 58.3%
22 仙台 13 1 0 103 37 8 7 35.9% 7.8% 87.5%
23 広島 4 2 1 92 52 8 2 56.5% 8.7% 25.0%
平均 13.0 4.0 0.7 115.0 48.0 11.8 7.3 42.1% 10.3% 65.7%
18年平均 11.4 3.5 1.0 122.6 42.1 12.6 6.4 34.7% 10.5% 53.1%

 昨季に比べ、今季は被攻撃回数が122.6回→115.0回と減っているにもかかわらず、被30m進入回数は42.1回→48.0回と増加。また、被PA内進入回数は12.6回→11.8回と微減なのに、被PA内シュートは6.4本→7.4本と微増。さらに、被PA内シュート率(被PA内シュート数÷被PA内進入回数)は約13%も増加。普通に考えれば、PA内でシュートを打たれる割合がこれだけ増えているのに失点は減っているのは何言ってるかわからないレベルです。

 というところで、Jリーグ公式サイトで見ることができる、林の個人スタッツを見てみましょう。

 セーブ率、キャッチ率、パンチング率がPA内・PA外に分けて集計されていますが、PA内セーブ率が75.9%でリーグ3位、PA内キャッチ率が29.3%で10位、PA内パンチング率が31.0%で4位とすべてでトップ10入り。林以外でPA内3部門でトップ10入りしているJ1のキーパーは高木(大分)、飯倉(神戸)の2人だけで、いかに林がPA内シュートを防いでくれているかが分かります。

 ただ、1試合当たりの平均セーブ数は3.2回でリーグ8位。やたらめったら打たれて、やたらめったら止めているわけでもありません。つまり、林がセーブするまえに守備陣がブロックしてくれている、あるいは枠外に飛ばさせているシュートも多いということに。この先は、やはり戦術的な話とくっつけないと進んでいかないので、それはどなたか、改めてお願いします。

 加えて、失点減に寄与しているのがセットプレー守備。セットプレー攻撃は決められていない、と書きましたが、セットプレーで決められてもいなくて、今季はここまでわずか2失点。12年から見ると、最も少ないのが15年の7失点。このペースだと、過去最少も見えてきました。

 この点についても私に言われずとも皆さんしっかり書かれていて、なかでも後藤勝さんが自身のウェブマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」にて1つコラムを書かれているので、是非ともお読みください(ただし、有料です)。


 

 と、ここまでダラダラ書いてきました。結局何を書きたいのか分からないまま終わりそうなのがアレですが、データ・数字を中心に見れば(見ても?)、確実に昨季から正しいマイナーチェンジが施され、確固たるケンタトーキョー Ver2.0が今、私たちの目の前にあると言えます。

 今日から前代未聞の、おそらく後にも先にもないであろうアウェイ8連戦が始まります。コンディション面で難しい部分はきっと出てくると思いますが、ケンタトーキョー Ver2.0は、ホームよりむしろアウェイ向きとも言えるもの。臆せずこのまま戦い続け、首位のまま11月に味スタへ戻ってきてほしいと願っています。