続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ホンモノか、ハリボテか

 J1は開幕から早2カ月経ちましたが、首位はFC東京。広島との首位攻防戦を制し、クラブ新記録となる開幕からの無敗記録を8試合に伸ばしました。

 昨季も、第5節を機に上昇気流に乗り、前半戦は2位で折り返しましたが、今季ここまではそれ以上。何か、フワフワする感情も抱きながら、勢いが衰えないチームに頼もしさを感じる今日この頃です。

 では、昨季から何を継続できていて、何を変えたのか?主観も客観も含めて、今日は書きなぐってみようと思います。

 

 

 まずはチーム原則。雑誌「Footballista」でよく用いられる4パターン論-攻撃時、攻撃→守備切替時、守備時、守備→攻撃切替時の4パターンに分けて、チームの原則をピックアップする-に則って、今季の原則を私なりに推察すると、以下のとおりになります。

 

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 試合中はこれらの局面が切れ目なく繋がっていくので、どこから書いたらいいか悩みますが、今一番強調できる守備からお話を進めてみます。

 

 今季ここまで、リーグで2番目に少ない5失点。その内訳は、

サイドからのクロス 3失点(湘南戦2点目、浦和戦、清水戦)

ミドルシュート 1失点(鹿島戦)

オウンゴール 1失点(湘南戦1点目) ※ セットプレー絡み

 と、基本サイドから崩しによるものがほとんとで、中をパスワークで割られて崩されて…という失点は、今季ここまでゼロに抑えています。

 その要因は、コンパクトな守備陣形。チーム原則のところで書いたとおり、DF-MFの2ラインは縦も横も非常に狭い、いわゆる「コンパクトネス」な状況を常に保ちながらプレーしているなぁ、というのが今季の印象。

 でも、昨季も割とコンパクトだったような?と思い、「フットボールラボ」内にあるコンパクトネスさ(http://www.football-lab.jp/fctk/style/?year=2018&s=61)を参照してみると、平均ポジションにおける横幅が最も狭かったのが実は東京(と柏)で36.1m。ピッチの横幅は68m前後なので、昨季はほぼピッチの半分に横幅を絞ってプレーしていたことが分かります

 一方、縦幅は29.5mでリーグでも幅が広い部類(最も狭かった長崎が27.1m)。ここから読み取れるのは、すべての場面がそうだったとは言いませんが

2トップがアグレッシブに前からプレスを慣行し(それにより縦幅が広い)、上手くハマればいいけど、外されたときにやや後ろと距離があり、スペースを使われるたりバランスを崩すこともあった。

 となるでしょうか。

 話し戻って、今季。昨季と比べて攻撃→守備切替時に即時奪回を狙う場面が減り、まず陣形を整えてから守備をスタートさせる場面が増えたように感じています。また、敵陣からプレスをかける局面と、サッと自陣に引いてブロックを作る局面の使い分けが、昨季よりもスムーズと言いましょうか、メリハリが利いているようにも見受けられます。

 さらに、SHの中を閉じる意識が昨季以上に高く、かつ献身的に中から外へのチェックやスライドをサボらずにやってくれている印象も強くあり、その結果、以下のような流れで、外の攻撃をケアしながら、中の堅牢さを維持している守り方がしばしば見られるようになった印象があります。

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 横幅の狭さは保ったまま、縦幅も昨季より狭まっている…かどうかは、まだフットボールラボ内に同様のデータがアップされていないので分かりませんが、コンパクトネスさというしっかりとした核を持ちながら、相手のボールがどこにあるかで自分たちがどう動くべきかを全員が共通理解できていることで、安易に攻撃を許してしまう場面が減っているのではないでしょうか。

 

 続いて、守備→攻撃切替時。これは昨季同様カウンター中心で、そもそも「長谷川トーキョー=ファストブレイク中心」なのは、もはや周知の事実。でも、目下その切れ味は抜群で、特に鹿島戦では早い時間に先制できたこともありましたが、絵に書いたようなカウンターが2つ、さく裂しました。

 分かっていても止められない。これほど相手からすれば厄介なものはないわけですが、今はまさに状況。ディエゴは4試合連続でゴールを重ね、永井もスピードを活かしながらゴールでも追随。今季は加えて、SHが違いを見せていて。東は驚異的な切り替えの早さと運動量でカウンターに加担し、浦和戦では見事なアシストもマーク。久保は「アシストのアシスト役」としても、単騎突破役としても技術の高さを見せ、なくてはならない存在に。

さらに、大森、ナ サンホが後ろに控えていて、層の厚さも昨季以上。この「確変状態」がいつまで続くかは分かりませんが、すぐにパタリと当たりが止まるイメージもなく、もうしばらくは切れ味鋭いカウンターを楽しめるのではないでしょうか。

 

 とはいえ、カウンター一辺倒で攻め切れるはずもなく、遅攻になる場面はあります。昨季後半は、遅攻時の攻め手・バリエーションを増やすことができず、徐々に攻撃が尻すぼみになっていき、今季も開幕して数戦はちょっと渋いなぁ…と感じていましたが、ここにきて私は、前進の気配を感じています。

 冒頭の原則でも書いたとおり、今季の遅攻時、SHが中へ絞る動きがたまたまそうなったのではなく、意図を持って行われているように見受けられます。が、(このブログでも書いた記憶がありますが)昨季もSHを中に絞らせる動きは見せていました。

 では、昨季があまり上手く機能せず、今季ここまで上手く機能しているのは、何によるものなのか?私は「SHの高さ」と「SBの動きの質」にその要因があると考えます。

 以下の2図。上が昨季の遅攻時、下が今季の遅攻時によく見られる形です。

f:id:re-donald:20190422191100j:plain (昨季)

f:id:re-donald:20190422191111j:plain (今季)

 昨季は、SHが中へ絞るけれど、その主目的は「ビルドアップに加担する」ことで、どちらかと言えば自陣寄り(CHのそば)に位置することが多く見られました。方や今季、主目的は「フィニッシュに絡むこと」に変わり、なるべく高い位置のまま中へ絞って、敵陣寄り(2トップのそば)に位置することが多い印象を受けています。

 もう1つ踏み込むと、昨季はラストパサー役が高萩ほぼ一人で、遅攻時に高萩がCHの位置からトップ下まで出ていく。それに付随する形でSHは中へ絞るけれど、それこそ3CHになるようなイメージで橋本をヘルプ「せざるを得なかった」。で、どうしても後ろは重たくなるし、SBも上がるタイミングが難しかった。

 けれど今季は、久保が高い位置で起点になってくれるし、ラストパスも出せる。かつ、東も割と(と書くと失礼だが)スルーパスを狙える。そのおかげで高萩は無理してポジションを上げる必要がなく、2CB+2CHでビルドアップできる。そこで数的優位が生まれるので、SBも無理なくオーバーラップできている。こんな好循環がミドルサードで生まれているのではないでしょうか。

 

 最後に攻撃→守備切替時。まあ、繰り返しになる部分もありますが、昨季はショートカウンターを狙いたいがあまり、即時奪回を試みる回数が多かったと思いますが、今季はそれほど即時奪回にこだわりはなく、よほど条件が整えば行きますけど(例えば、ボールを失った選手がそのままの勢いでボールホルダーにチェックできる時など)、まずは陣形を整えることが優先。そうした上で、プレスなのかブロックなのかをチーム全員で判断できていると思います。

 

 

 まとめ。Jリーグ…に限った話ではありませんが、タイトルを取るチームの9割に言えるのは「守備がしっかりしている」こと。そして、その9割のほとんどは「守備からの攻撃」の形を持っています。

 昨季、結果的に好調時の勢いは「ホンモノ」になりきれず終息しました。しかし、今季は守備の形、やり方、意識が昨季以上にブラッシュアップされ、勢い任せではなくなっています。その上で、攻撃陣は速攻に限らず遅攻でも一定の形を見せられるようになっています。

 先の広島戦は、まさにこのことを体現する試合。前半、広島のアタッキングサイドは、DAZNによるとこんな感じ。

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 広島の特長がサイドアタックにあったとしても、90分を通してセンターエリアでのアタックが12%しかなかったのは、東京の中を閉じる守備に屈して、外でボールを動かさざるを得なかった、とも言えるでしょう。

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 対して東京は、久保が不在でしたがセンターエリアでのアタックが広島の倍。広島は守備時に5-4-1のようになることもあり、東京以上に中に人はいたはずでけど、それでも安易に外に逃げることはせず。また、後半は永井に替わってジャエルが入り、ディエゴとのコンビで中を崩す場面もあり、昨季以上に人も戦術も相手の目線を中に集中させることが出来ている一端を示した試合だったのかなと。

 つまるところ、私は昨季と違い、この勢いが「ホンモノ」になる可能性は高いと信じています。もちろん、キーマンが1年フル稼働してくれるとか、セカンドキャストがより充実するとか、求めるところはまだありますが、昨季の今頃よりさらに期待に胸膨らむ状況だと思いますし、頂点へ邁進する姿を想像しても・・・バチは当たらないよね?