続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

マイナーチェンジ

 シーズン前、「勝て、勝て、勝て、勝て、今季こそ!」とのたまいました。勝つことがスポーツのすべてではありませんが、正しい勝ちの素晴らしさ、喜ばしさは誰も否定しようがなく。真価を出し、進化を見せ、深化を図る。中断明けも、チームに「シンカ」を求めながら、チームから「シンカ」を感じながら、秋口により夢へと近づいていることを願って。

 

 ワールドカップ中断前に書いたエントリ「シンカ - 続々々・メガネのつぶやき」の終いに、こんなことを書きました。

 日本代表の頑張りもあって、大いに楽しませてもらったワールドカップがフランス20年ぶりの戴冠で幕を閉じ、7/18柏戦から再開したFC東京のJ1リーグ戦。柏、横浜FM相手に連勝を飾り、「いよいよ優勝争いも本格的に…」と誰もが夢を現実として捉え始めて以降の8試合、2勝2分4敗と急失速。首位広島の背中は、再び霞の先に消えていきました。

 この8試合、6得点8失点。1試合1失点のペースは際どく保てているものの、ノーゴールに終わった試合が4試合と、得点力不足はいよいよ深刻さを増しています。その要因がどこにあるのかを一ファンとして邪推してみると、思い至ったのは・・・

 

 

 エントリ「シンカ」内で、シーズン途中から「攻撃(ポゼッション)時と守備時で微妙に可変させることで、相手の狙いを外しながら自分たちの狙いを表現することができるようになった」という類のことを書きました。

 それを可能にしたのが、橋本の自陣での振る舞い。最終ラインと協力してビルドアップの一端を担うことで、高萩がより高い位置で仕事をし、室屋がより持ち味を発揮できるようになり、アタッキングサード及び右サイドからのアタックが活性化。一方で、ネガティブトランジション時の守備の強さも見せ、最終ライン前をプロテクト。その存在感は、非常に高いものがありました。

 右サイドの活性化に関しては、私が当ブログでたびたび参考にしている「フットボールラボ(http://www.football-lab.jp/)」内のチームスタイル指標でも明らかで。話の本筋からややそれるので1つだけ挙げると、少々集計期間は古いようですが、ある時点で攻撃指標及びシュートに至った割合は以下のとおり。

左サイド攻撃  指標50  シュート率5.1%

中央攻撃    指標52  シュート率23.3%

右サイド攻撃  指標47  シュート率16.1%

 攻撃指標は攻撃サイドに大きな偏りはなく、しかし左右でシュートまで至った割合は3倍以上の差が出ています。室屋の頑張り・成長も去ることながら、チームとして右サイドを有効活用できていることは示されていました。

 

 話戻って。しかし、その屋台骨となっていた橋本がハムストリングスの負傷で、8/1鹿島戦~8/26湘南戦までの6試合、丸1ヶ月の戦線離脱となりました。

 その間、センターハーフは高萩と米本がコンビを組みました。しかし、米本のプレースタイルも相まって、「橋本が後ろを支え、高萩が敵陣で仕事」という、まさに今季の東京を支えてきた屋台骨にグラつきが見られるようになります。

 分かりやすいものを1つ。DAZN中継のハーフタイムに平均ポジションなるものが示されます。視聴期限の関係上、8/15柏戦以降の4試合に限りますが、それぞれの試合での平均ポジションは以下のとおりでした。

8/15 柏戦

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8/19 札幌戦

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8/26 湘南戦

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9/2 鳥栖

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 柏、札幌、湘南戦が高萩&米本、鳥栖戦が高萩&橋本。で、高萩の平均ポジションを見れば、米本とのコンビ時は自陣にとどまっていますが、鳥栖戦は橋本が下支えしたうえで敵陣にあります。また、室屋の高さも推定15mほど違いが見て取れます。さらに、鳥栖戦は橋本が約60分で退き、米本と交代しましたが、そこから東京の攻撃に停滞感が生まれたようにも見えました。

 

 

 とはいえ、それだけでここまで失速するか?と感じる部分があり、橋本が怪我で離脱する前から「ん?中断後ちょっとやり方変えた?」と感じていた部分もありまして。ここからは少し、そんなお話を。まずはこちらのコラムを紹介します。
www.football-lab.jp

 7月25日にフットボールラボにアップされたもので、過去2年の様々なデータを用いながら、夏場におけるデータ数値の変動とその影響についていくつかの視点から推察しているものです。

 この中で琴線に引っかかったのが2つ。まずは「攻撃回数の減少」。シュート数やゴール数そのものは、数字の上では夏場の影響を受けていないものの、攻撃回数は3月から8月まできれいな右肩下がで、8月が谷底。加えて、1回にかける攻撃時間が長くなり、前方へのパス比率も減っているそうです。

 また、フットボールラボでは様々な指標を基に、各チームの攻撃スタイルをショートカウンター」「ロングカウンター」「自陣ポゼッション」「敵陣ポゼッション」の4つに分類していますが、夏場は「ショートカウンター」型に分類されるチームが減る傾向にあるとのこと。その心はコラムを読んでいただきたいのですが、シンプルに書けば「ショートカウンターを仕掛けるために必要なハイプレスを夏場にやるのしんどい」から。当たり前といえば当たり前ですが、数字で改めて見ると、へぇと思う部分がありました。

 さて、東京。まずは、中断期間前と中断期間後のスタッツをいくつか拾って表にしたものをご覧ください。

中断前スタッツ

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中断後スタッツ

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 攻撃回数は額面どおり、中断前>中断後。パス本数も中断後は微減する一方、シュート数は3.5本、チャンス構築率(シュート数÷攻撃回数)は3.5%の上昇を見せました。

 攻撃回数もパス本数も減っているのにシュート数が増えている。この変移はいくつかの仮説に説得力を持たせることができるものだと思いますが、今夏の東京に関して言えば「何が何でもカウンターではなくなった」ことを指し示す変移なのではないでしょうか。

 上記の表には挙げませんでしたが、ボール支配率50.0%以上だった試合が中断前は15試合中5試合だったのに対し、中断後は10試合6試合。平均で見ても、中断前は46.1%に対し、中断後は48.6%と上昇。

 特に厳しい暑さだった今年の夏、トランジションのやりあいでは体力が確実に持たないなか、1回の攻撃を大事にしながら、繋ぐところはしっかり繋ぐことで敵陣での攻撃回数が増え、シュートまで持ち込むことはできていた、と見ることは可能でしょう。

 最たるゴールは鹿島戦の1点目。自陣で組み立てながら東がタイミングよく下りて来て受け、ディエゴがポストプレー。室屋が受けてクロスを上げた際には敵陣ペナルティエリアに4人が侵入し、最後は富樫が決めた流れですが、まさに1回の攻撃を大事にした賜物でした。

 

 しかし、カウンターを捨てたわけでもなく。鹿島戦の2点目は自陣で米本がクリアしたボールを、途中投入されていたリンスと永井の2人で仕留めたカウンターアタックでしたし、札幌戦の2点目も、センターライン付近の高萩から始まった少人数アタックでした。

 そんなカウンターも、内容には変化があって、フットボールラボ内で示されているショートカウンター、ロングカウンター指標の変遷の表を引用すると…

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 左がシーズンスタートで、右に行くほど節が進んでいる中で、同じカウンターでも節を経るごとにショートからロングへと意識が変わっているように読み取れます。

 敵陣でのハイプレスからショートカウンターから、多少自陣にブロックを作り、息を潜めてボールを奪ったところでグッとエネルギーを込めるロングカウンターへ。エネルギーの使いどころを考えた、これはまさに暑さを考えたマイナーチェンジと言えるでしょう。

 

 さらに、選手起用にも思案のほどが。ワールドカップの影響により歴史上類を見ない連戦となった中断前に、「Néstor Omar Píccoliに捧ぐ - 続々々・メガネのつぶやき」と称して、J1第5節~第12節(+ルヴァンカップ2試合)の10試合における各チームのローテーション具合を比較しました。

 その中で東京は、いわゆる「ピッコリ度」がリーグ14位。比較的ターンオーバーはせずに、スモールグループで戦ってきたことが分かりました。では、中断期間明けどうか?10試合のスタメンを並べてみました。

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 いわゆる「前節と同じスタメンです。」状況は1試合もなく、怪我やらなんやら事情はありますが、ピッコリ度の平均は25.3%。今回は全チーム集計していないので横の比較はできませんが、中断前のJ1に限った4連戦(第9節~第12節)でのピッコリ度が15.2%だったことを考えれば、縦の比較として長谷川監督が中断後、積極的にターンオーバーしていたことが見て取れます。

 

 これら数字のデータに加えて、私の主観で気になっているのがディエゴのプレースタイル。

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 これは鳥栖戦終了後のDAZN中継におけるディエゴ(とフェルナンド トーレス)のヒートマップですが、非常に広範囲に顔を出しているとも、肝心のゴール前に顔を出し切れていないとも取れる分布になっています。

 シュート数自体は減っているわけではなく、さすが!と唸らせてくれるゴールも上げていますが、中断前と比べると、中断後は明らかに「やや低い位置で受けてドリブル」とか「相手をひきつけておいてのパス」が増えた印象。それは、パートナーが永井だろうとリンスだろうと、富樫だろうと高萩だろうと、一貫したプレー原則のようにも見えるほど。

 長谷川監督がシーズンを経るごとにディエゴに対して「思った以上にオールラウンドにプレーできる」と評する機会が増えたかと思いますが、カウンター一辺倒から組み立ても・・・と考えたなか、「高萩の擬似トップ下化」にとどまらず「ディエゴのセカンドトップ化」に活路を見出そうとして長谷川監督がディエゴに要求していると考えるのは、決して無理筋ではないでしょう。

 

 

 これらを踏まえて、私は7~8月をこう振り返ることにします。

 広島を追いかける1番手として、シーズン開幕前の下馬評以上の結果を残してみせた中断前の自分たちに安閑とすることなく、予想された(以上の)猛暑に対応すべく、中断期間のキャンプ等でマイナーチェンジを試みた。

 その試みがすべて否定されるべきではないが、積極的なターンオーバーが結果的にブラッシュアップを若干阻害し、夏の選手移籍、橋本や田邉の負傷、岡崎の代表選出等で手駒のバランスがいささかいびつになったこともあって、良い点がぼやけ、悪い点がダイレクトに結果に跳ね返ってしまった。

 それでも、橋本が戻ってきて、岡崎も戻ってきて。田邉もおそらくもうすぐで、ここから先はスケジュールも比較的穏やか。なにより、大混戦ではあるものの依然3位。下を向く必要は全く無いでしょう。

 暑さの収まりとともに、再びファストブレイクに振れるのか。それとも、今夏のマイナーチェンジを陣容の復活とともに再度試みるのか。ファンだから一喜一憂はしますけど、心穏やかな一面も失わずに見ていけたらと思います。