続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ウイニング・スクエア

 勝利を告げるホイッスルが鳴った数分後。清水ユースが柏U-18に敗れたとの一報が届き、小平グランドは歓喜に包まれました。

 FC東京U-18、プレミアリーグEAST初制覇。その瞬間、選手でもないのに実感が湧かないというか、「イェェェェェェェイ!!!!」とはならず、静かに優勝をかみ締めていました。

 その後、複数のメディアから賞賛の声を含ませた記事が出てきました。そのいずれもグッと来る、読む価値のある内容だったと思いますが、その一方で不満も感じていました。それは、あまりにも試合内容・戦術面に触れた記事がなかったから。

 育成部門は勝ち負けが全てではない部分もあり、机上の空論にもなりがちな戦術面にフォーカスが当たりすぎることが望ましいとは思いません。ただ、迎えた青森山田戦は勝たなければいけない試合。かつ、夏のクラブユース選手権のような短期決戦とは違い、次の相手が決まっていて、1週間しっかりと用意する時間がありました。ならば、その用意を深掘りする記事があってもいいのでは?と私は感じました。

 なので、別に戦術面に明るいわけではありませんが、誰も取り上げてくれないんだったら独断と私見で自分でやるよ!というエントリになります。興味のない方は、ここで戻るボタンかホームボタンを押してくださいませ。

 

 

 皆さんがどう感じていたか分かりませんが、私は立ち上がりから「今日の東京U-18、ロングボール多いな」と感じていました。今季ほとんど試合を見ていないので比較はしづらいですが、開幕節・清水ユース戦を思い出してみると、それは明らかだったかと。

 それを確認すべく、昨日試合の録画を見直し、開始から15分間の「自陣でのビルドアップから攻撃のスイッチを入れるプレーはなんだったか?」をカウントすると、ショートパス4、ドリブル1、ロングパス5とロングボールが最も多くなりました。

 手集計な上に主観が混じったものなので正確なものとは言えませんが、5分に10小林から14原にフィードが渡り、落としたボールを13吉田がシュートを放ったシーン然り、冒頭に書いた14原が抜け出したシーン然り、東京側のロングボールは明確な「意図」と青森山田への確実な「脅威」として、試合を支配しにかかります。

 ただ、ロングボール一辺倒になってしまっては、攻撃が単調になってしまいかねません。また、青森山田も徐々に対応してきたはず。しかし、佐藤監督はしっかりとした手を、チームに施していました。

 

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 青森山田が守備時には4-1-4-1となることは、恐らくここ数試合のスカウティングで想定していた。そして、11中村から始まるプレッシングにはまってしまい、無為なボールを蹴らされてしまうことは絶対に避けたかったのではないか?ここが戦術の発進点。では、11中村のプレスをどう回避するか?その答えが、10小林、18品田の両CHが最終ラインに下りる選択を極力選ばず、3篠原、4長谷川も含めて四角形を保つことでした。

 例えば、11小林が3篠原にプレスをかける。けれど、CB+CHの4人でしっかり四角形を作れてさえいれば、3篠原とすれば前(10小林) 後(16高瀬) 左(4長谷川) 右(9吹野)と4つのパスコースがあり、よほどコントロールを誤らなければここでボールを奪われることはなくなります。

 また、青森山田の10郷家、9佐々木の両IHが11中村に追随してプレスをかけようとしても、上図大きな方の四角形内で東京側が4人対3人の数的優位を確保できていて、9吹野、6荒川をクッション役にしながら、奪われれずにビルドアップできる局面を確保することもできていました。それでもショート、ショートにこだわりすぎてしまうと、いつかはプレスの餌食になってしまうケースも出てくる。そこで必要となったのが、話戻りますがロングボールでした。

 11中村のファーストプレスは東京の狙い通り空転させられるケースが多く、10郷家、9佐々木も11中村に追随して行けばショートパスで繋がれ、自身の後ろのスペースを10小林や18品田、あるいは下りてきた14原や13吉田に使われる。

 ならばと、プレスには行かずにブロック気味に守ろうとしたシーンもありました。が、プレッシャーがなくボールを持てた東京の選手たちは余裕を持って前の状況を確認でき、青森山田の最終ラインの高さが中途半端だった(プレスに行かないのであればやや高い(裏のスペースを与えている))状況も味方して、ロングボールをどんどん入れられ、裏も取られる。

 黒田監督は試合後、「ミーティングで言ったこともトレーニングしたことも(会場の雰囲気に飲み込まれて)真っ白になってしまったら何の意味もない」とコメントしました。冒頭に書いたシーンを含め、黒田監督は盛んに選手たちへ指示を送っていましたが、前半はついぞ修正が効かず。青森山田の選手たちは、私が想像している以上に「どうしたらよいの!?」とパニックに陥っていたと推測します。

 

 やや冗長になってしまいましたが、何を強調したいかというと、この状況を生み出したのは佐藤監督の采配だったということ。

 1つ前のエントリで、「この試合で選ばれる11人は、佐藤監督が示してくれる今季の『総決算』となる」と書きました。3篠原、4長谷川のコンビは鉄板として、センターハーフにU-15深川、むさしでそれぞれ10番を背負った18品田、10小林を並べ、みんながショートパスもロングボールも繰り出せる四角形を作ってゲームを序盤から自分のものにしてみせたのは、見事の一言でした。

 また、そんなロングボールアタックを単なる選択肢ではなく武器とすることができたのは、14原のおかげ。189cmの長身と、身長がグッと伸びる前に培ってきた裏への抜け出しは、ロングボールへの反応に限らず、青森山田の最終ラインを苦しめていました。また、パートナーの13吉田も14原と適切な距離感を保ちながら、積極的なプレーで相手に脅威を与えていました。

 その両脇を固める11横山、7杉山は異なる役割でチームに貢献。11横山はそのスピードを生かしてサイドでの1対1を仕掛けつつも、外から中へ斜めに走り抜けてロングボールのターゲットとなる場面もありました。これが監督・コーチからの指示だったのか、11横山自らの判断だったかは分かりませんが、対峙した青森山田左SBの3佐藤はかなり厳しい対応を余儀なくされました。

 対する7杉山は攻撃では複数人と関わる中でのサイド突破やセカンドボールを拾う点にフォーカス。37分のシュートは決めて欲しかったが、周りといい関わり方ができていたからこそのシーンでしたし、攻→守の切り替えでも貢献度は高かった印象。

 6荒川、9吹野の両SB。立ち上がりはロングボール多用の戦術も相まってオーバーラップを自重し、守備から入ろうという意識が見て取れました。ともに本来はSHの選手で、特長は攻撃にありますが、この日は自陣での「デュエル」でも奮闘。青森山田の7壇崎、9佐々木はほとんど攻撃に絡めずじまいでした。また、徐々に攻撃でも持ち味を出し、特に9吹野は勢いのあるオーバーラップからチャンスを何度か演出。怪我で失った2坂口、5岡庭の不在を嘆かせない、見事なパフォーマンスでした。

 そうはいっても、青森山田のカウンターやセットプレーは脅威になっていてましたが、最後の砦として16高瀬が君臨。ゴールキックが当たり損ないになることしばしば、はご愛嬌で、2失点は喫しましたが、それ以上の好セーブでゴールに鍵を掛けていました。

 

 さて、得点シーンのことを書いていませんでした(苦笑)。

 東京先制。これはもう、18品田のキック精度の高さに尽きます。東京追加点。後半早い時間に青森山田が9佐々木→25瀬尾の交代を行い、8堀をより高い位置に出した5分後のシーンで、中盤でボールを拾った18品田が8堀を振り切ってからのスルーパス。受けた11横山は開始から圧倒していた3佐藤をこの場面も振り切り、見慣れない左足でネットを揺らしました。

 青森山田反撃。これは逆に、それでも高い位置に顔を出していた8堀が見事なドリブルからのシュートを決めました。3篠原に当たってコースが変わって、でしたが、あそこでしっかりと振り切ったことが良かったかなと。

 東京突き離し。決めたのは途中出場の15久保。試合中のピッチレポートで、15久保自らが佐藤監督に練習参加を直訴し、その姿を見た佐藤監督がベンチ入りに足ると判断してこの日はサブに入っていたようですが、まあ見事なシュートでした。皆さん頑張っては以来とシーンなど探して、見てみてください。

 折れない青森山田。60分に怪我でもないのに12飯田→1坪とGK同士の交代を行い、それを合図にはっきりとロングボールメインで攻めるようになっていましたが、この場面もロングボールを10郷家がヘディングでフリックし、裏へ抜けた7壇崎が冷静に決めたもの。青森山田とすれば、この得点(85分)がもう少し早ければ…と悔やまれるところはあったかもしれません。その後もお互いチャンスを作るもネットは揺れず、試合終了。東京が3-2で勝利を収めました。

 

 繰り返しになりますが、高校生年代のゲームにかかる戦術的側面・切り口からの記事は、少なくとも私はほぼ目にすることがありません。

 本来はいつの時代も、ことさら近現代は、サッカー選手にとって「スキル(テクニック)」「フィジカル」「メンタル」「タクティクス(インテリジェンス)」の4要素は欠かせないものだと感じています。日本語に置き換えても、スポーツ選手を賞賛する言葉として「心技体(が揃っている)」がありますが、現代はそこに「頭(頭脳)」を加えなければ、正確な評価はできないとも考えています。

 この4要素(俗っぽく書くとひし形の四角形)は、果たしてプロだけに求めるものでしょうか?私はそう思いません。高校生年代から、特にプロを目指してやっていきたいのであれば、この四角形のどれもおろそかにしてはいけないと思います。

 その目線で言えば、相手のプレスをしっかりと外しながら、長いボールの精度も落とさなかったスキルで、攻守両面での1対1や90分を通したフィジカルで、何が何でも強化って、俺たちが優勝するんだ!たくさんの応援に応えるんだ!J3との並行も何のその、全員でやってきたんだ!というメンタルで、そして、佐藤監督がチームに与えたタクティクスで。昨季とほぼ同じ道のりを経てたどり着いた最終節、この日の東京は納得感のあるゲームで持って、エンディングを昨季とは異なるものに塗り替えて見せました。

 この勝利により得た、もう1試合。皆さんはどう思われているか分かりませんが、私はただただエンジョイしてほしいなと。その先にタイトルがまっていれば、これ以上言うことはありません。