続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

「レゾンデートル」を確かめに

 これからライヴの感想を書こうとしている人がど頭に書くようなことではないが、私はライヴが得意ではない。もう少し厳密に書くと、ライヴ会場の雰囲気が得意ではない。今回のライヴもチケットを取ったはいいが、実は当日まで結構腰が重かった。

 そんなこと思って会場である昭和女子大学人見記念講堂へ足を運ぶやつは自分だけだろうな、と思いながらなんとか電車に乗り、三軒茶屋から講堂へ歩を進める中、多くのファンが思い思いの9mmTシャツを身にまとい、お一人様もグループも期待感を隠さず、全席指定なのに開場前から長蛇の列。「あー、これがなぁ、ちょっとなぁ」と一人苦笑しながらその列に並び、着席して開演を待つ。

 

 Gt.滝善充(以下「滝」)がライヴシーンから離れて久しい中、今回のツアーではDr.かみじょうちひろ(以下「ちひろ」)が客席から見て右手前方に位置し、Vo.菅原卓郎(以下「卓郎」)とBa.中村和彦(以下「和彦」)と並んでパフォーマンスをする、ということは、ツアー1本目となる神奈川県民ホール公演のレポートを読んで知っていたが、それでも実際にその配置を見てみると、ちょっとした興奮は沸き立ってきた。

 また、今回のツアー3本では第一部を「LIVE OF BABEL」と称し、ニューアルバム「BABEL」を曲順そのまま、丸ごと10曲演奏。その後第二部を「OUTSIDE OF BABEL」と称し、新旧様々なナンバーをファンに届けていたこともレポートを読んで知っていた。その流れを受けたこの日のライヴ。さて、どういう構成で来るのか?それも始まる前は大きな興味の一つとなっていた。

 

 お馴染みのアタリ・ティーンエイジ・ライオットのSEがかかり、会場は暗転。メンバー3人とサポートギター武田将幸(HERE)&為川裕也(folca)、5人がステージ上に現れると、ファンは一気にボルテージを上げた。そして、注目の1曲目。奏でられたのはニューシングル「サクリファイス」だった。

 まあ、いきなり卓郎がイントロのリフを間違ってしまい、演奏を止めて「ごめーん!」からの再演奏というサプライズスタートではあったが(笑)、この時点でこれまでの3本とは全く違う、と全員が気付いたはず。個人的には嬉しいよう悲しいような、「そうそう、これで良いな」という思いと「ちょっとアルバムを1枚そのままやるライヴも見たかったな」という思いが交錯するスタートとなった。

 しかし、続く「インフェルノ」「The Revolutionary」と続くなか、私はこの日2階席で見ていたが、5人全員のプレイがしっかりと目に、耳に、舌に、そして心に飛び込んでくるロケーションだったことも相まって「そんなことはどうでもいいな!この場を楽しまないと!」という気持ちに、一気に改まった。

 

 ここから先もBABELとそれ以外の曲を織り交ぜる。「Story of Glory」ではちひろのドラムプレイに目を奪われ、「The Lightning」の間奏では武田&為川のギターの掛け合いに耳を奪われる。と、ここでふと思ったのが、「あれ、今日卓郎ギターめっちゃ変えてない?」「あれ、今日曲と曲が繋げずにしっかりとフィニッシュして間を置いてて、なんかアルバム聴いてるみたいだなぁ」という2点。

 ここまでそれっぽいことを書いてきておいてなんだが、9mmライヴ、私はこの日がたったの3度目。1度目は11年「Movement YOKOHAMA@横浜アリーナ」、2度目が13年「カオスの百年 vol.9@横浜BLITZ」、そして3度目がこの日。もちろん、その他映像でライヴを見てはいたのでその印象も含めて書けば、BPMを上げ、3~4曲を切れ目なく繋げ、畳み掛けるような迫力と疾走感でファンを盛り上げてくれていたことを踏まえると、なんだか新しいというか、ちょっと不思議な感覚はあった。

 どの曲の後だったか忘れたが、卓郎がMCで「これまでのTOUR OF BABELとは違う、モバイル会員のみんなにだからこそ」「だから律儀にTOUR OF BABEL『Ⅱ』にした」という話をしていた。なので推測の域は出ないが、ライヴらしい疾走感を損なうことは全くなかったけれど、主眼はじっくり聴かせることだったのかな?と一晩経って感じるところではある。

 その印象は続く「火の鳥」「眠り姫」でもあって、「火の鳥」はおそらく少しキーを下げ、かつトリプルギターであることをフルに生かしてCD版とはいささか印象が異なる演奏をしていた一方、「眠り姫」はなるべくCD版に近いまま、BPMもほぼそのままを保って曲が持つ世界観をダイレクトに演奏と、実に趣向を凝らしていた。曲順がひっくり返っていた(アルバムでは5曲目眠り姫→6曲目火の鳥)のも面白かった。

 また、「Lost!」や(ちょっと先になるが)「カモメ」ではMVでダンスを披露していた香取直登さん、入手杏奈さん、Lost!ガールズ(by 卓郎)が舞台狭しとダンスパフォーマンス。これもまた、MVまでしっかり見ていたであろうモバイル会員向けのライヴだからこそ成立するひとコマだった。

 

 「Lost!」に続いた「光の雨が降る夜に」「キャンドルの灯を」は、一晩経って振り返ると、個人的にこの日一番グッときたパートだった。9mmのどのアルバムが一番好きか?と問われればRevolutionary!と即答する私。特にアルバム後半5曲(命ノゼンマイ~The Revolutinary)の流れが好きすぎるのだが、なかなかライヴでこの5曲が近い場所で絡まりあう場面が少ないと感じていた中、まさかここで繋げてくれるとは思っていなかったので、これはもう素直にありがとう、ありがとう!とだけ(笑)

 その後「バベルのこどもたち」で和彦がこの日最初のシャウトをかましてくれたあと、卓郎が「バベルのおともだち」として招き入れたのが石毛輝lovefilm, the telephones)。旧知の仲であることもあって、何の違和感もなく場に溶け込み、「I.C.R.A」「Supernova」を披露。そして、石毛の「いけるかー!」からthe telephonesの「Monkey Discooooooo」を、the telephonesバージョンで。ミラーボールが回り、照明の演出はどこかオールディな雰囲気も漂わせつつ、爆発しそうな勢いで奏でられた1曲に、ファンは惜しみないリアクションを送る。正直、私はMonkey Discoooooooうろ覚え程度だったので申し訳ない気持ちにすらさせられたが(苦笑)

 一息ついて5人に戻り、3拍子が心地よくムーディな「ホワイトアウト」で一度リズムを整えたかと思えば、メタルと歌謡曲が混在したいかにも9mm!という「それから」で再び場を熱くする。ちなみに「それから」の破壊的なアウトロが本当に素晴らしくてね。とまあそれはさて置き、前述した入手さんの、内面から湧き立つ感情を見事に表現したダンスをバックにした「カモメ」で再びメロウな空気感にしたかと思えば、「ガラスの街のアリス」「Everyone is fighting on this stage of lonery」とBABELの曲をたたみ掛け、時間的にも雰囲気的にも、いよいよフィナーレへ向かう道筋を見せる。

 そのフィナーレは、「ハートに火をつけて」から。卓郎がギターを置き、スタンドではなくハンドマイクで歌いファンを盛り上げつつ、間奏ではメンバー紹介。武田、為川、和彦、ちひろ、各々が凝縮したソロプレイを見せたかと思えば、再び石毛がステージに呼ばれ、ソロプレイを披露。もはや9mmのライヴではキラーナンバーとなっているこの曲だがこの日もご他聞に漏れず、スカのリズムと各パートのテクニックは心も身体も踊らずにはいられない何かを私たちに与えてくれる。たまらない。

 そして、これまたライヴではお馴染みのライヴ限定イントロ、会場全体の「ワン、ツー、スリー、フォー!」からの「Talking machine」へ。ちなみに、私の聞き間違いではなければ、このイントロに「Seven Nation Army」の(スポーツ好きなら絶対に分かってくれるであろう)リフが織り込まれていたように思うのだが、誰かそうだったか教えていただきたい!

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 とまあ余談はさておき、最後は「Punishment」。普段滝が弾き鳴らす冒頭のパートを卓郎が弾き鳴らし、ロケット砲にて紙テープが舞い、興奮はピークに達する。

 前半で「この日は曲間をしっかり取る」と書いたが、このラスト3曲は音が切れることなく、流れが止まることなく、いつもの見慣れたライヴ版9mmがそこにあった。隠さず書くと、ライヴ立ち上がりはやはり5人の光景に数ミリの違和感もあった。しかし、終わりを迎えようとする頃にはそんなことを1ミリも感じることはなく、5人の(石毛さんも含めれば6人の)9mmのエネルギー、テクニック、リレーションシップをただただ素直に、ありのままに受け止め、少し感慨深い思いも感じながら見ていたように思う。

 

 これにて閉演。しかし、ライヴ中にも卓郎が触れていたが、この後滝が戻ってくる。そもそもライヴがあまり得意じゃない私がこのライヴのチケットを購入するに至ったのは、何かの音楽ニュースサイトで滝が戻ってくると見かけたからだ。

 一度全員が下がり、ファンは手拍子を止めることなく再登場を待ち焦がれる。そして数分後、場が暗転し、再び場内に流れるはアタリ・ティーンエイジ・ライオット。ちひろが、和彦が、卓郎が登場し、少し間を置いて滝が現れた。

 その瞬間、私の隣で見ていたカップルは揃って涙を堪えきれないでいた。1階席を見下ろすと、同様のリアクションがチラホラ見られ、ライヴ終了後のツイッターには「涙」「泣ける」「泣いた」、そんな文字が躍っていた。

 その気持ちは、私も一9mmファンとして十二分に理解する。ただ、私は涙、泣ける、そういう感情にはならなかった。再び4人がステージに揃い踏みする姿は、非常に感動的ではあった。ただ、涙でカムバックを出迎えるのは、お帰りを伝えるのは、何か違う気がしていた。

 戻ってきた滝は、滝のままだった。タッピングの鋭さも、飛び跳ねる姿も、縦横無尽に動き回り、両手を広げてファンを煽る動きも、どれをとっても滝だった。本人としては、100%ではなかったかもしれない。けれど、みんなが知っている滝がそこにいたのならば、やはり受け止める側も過度に感傷的になるのではなく、「相変わらずじゃん!」「良い意味でアホやなー!」と、いつも通りで良いと私は確信していた。

 

 また、屁理屈に映るかもしれないが、私は4人でステージに立ったこの時間をアンコールだとも思っていない。4人で演奏した「ロング・グッドバイ」「新しい光」はたった2曲の、けれど、これまでにないほど濃密な、濃厚な、熱量のこもったライヴ、言い換えれば「TOUR OF BABEL『Ⅲ』」だったと思っている。

 そして、ここにBABELの中で「ロング・グッドバイ」を残した意味をどこに見出すか?それは、ファン一人ひとりで思うところが違ってくるだろう。私は、その意味をこの歌詞に見出したい。

孤独な光たちが白い手を伸ばした

僕には君がいれば何もいらなかった

 卓郎は、MCの中で「ありがとうって言い過ぎて、ありがとう度が薄まっちゃうかもしれないけど…」と語っていた。もちろん、そんなことはないのだが、昨年後半からの苦しい心中も、短い言葉ながら隠さずに吐露してくれた。

 そんな苦しい時期、白い手を伸ばしたのが誰で、伸ばしてもらったのが誰か。「僕」は誰で、「君」は誰か。それは、私たちファンが知ることが出来る部分も、知る由もない部分も含めて、その場面場面で代わっていたと推測するほかない。

 それでもあえておこがましくも書かせてもらえば、9mmに関わる全ての人が手を差し伸べ、9mmのメンバーが差し伸べてもらっていたと思うし、僕が卓郎だとすれば、メンバーも含めた関わる全ての人が君であり、僕が卓郎、和彦、ちひろだとすれば、君は滝だったのではないだろうか。

 

 

 「TOUR OF BABEL Ⅱ」は武田、為川、石毛も9mmメンバーであり、5人の、6人の9mmが作り上げた極上の空間だった。対して、「TOUR OF BABEL Ⅲ」は9mm Parabellum Bulletというバンドが私たちファンの人生の中にいてくれることの喜びを、幸せを、感謝を改めて感じさせてくれる時間だった。比較なんて必要ないだろう。これまで好き勝手に感想を書いてきたが、ただ一言に集約するなら「どちらも素晴らしかった」、これに尽きる。

 冒頭からライヴ会場が得意ではないと書いてきた。いつも当日ギリギリまで腰が重いのも間違いない。けれど、終わった後はいつもこう思う。「また、行こう」って。今回もそう思わせてくれた9mmの皆さんには、ありがとうと伝えたい。