続々々・メガネのつぶやき

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17年Jリーグ観た記 其の37 J1 浦和-広島

 ともに3連敗中。かたや優勝争いから取り残されかけ、かたや残留ラインがじりじりと遠ざかっていく、非常に厳しい状況。この劣勢を跳ね除けるために必要なのは、一にも二にも、勝ち点三。それを手にしたのは。

 

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短評

 お互い攻守ともにやりたいことは明確で、そのイメージどおり片方がボールを持てば片方はしっかり受けるの繰り返し。ただ、受け方は微妙に意識が異なり、広島はリトリートして自陣で構えるのに対し、浦和はやや前からも仕掛けつつ、広島よりは前でボールを奪いたいイメージ。

 で、広島は今季ずっとそうな気がするが、自陣で構えてボールを奪うまではいいが、そこからのビルドアップで相手を外しきれないシーンが目立ち、攻めにリズムが出ない。また、裏や縦一発で局面を打開するアイデアも一頃よりは乏しく、ダイナミックさも出てこない。対して浦和は興梠がたびたび裏を狙い、柏木もその動きを逃さずに出すことで、広島と比べれば攻撃に奥行きが出せていた。

 このまま浦和ペースかな?と思って見ていたが、15分を過ぎたあたりから、急に広島がらしいパス回しを見せ始める。浦和のプレスがやや一息ついたことと、皆川が基準点になりつつ、シャドーが少し裏を意識し始めたことが相まったように見えたが、正しいかは定かではない。ともかく、試合はこれで興味の度合いを高めた。

 しかし、お互いシュートに持ち込めず。攻める、シュート打てない、攻守交替、攻める、シュート打てない。この繰り返しになったせいか、正直時間が経つのが長く感じていた。

 得てしてこういうときはスコアが動かないものだが、この考えもハズレ。42分、駒井の裏抜けを柏木が見逃さず見事なループパス。このボールを駒井がダイレクトで中に折り返すと、興梠が右足で押し込み浦和が試合を動かした。さらに45分、再び柏木から上手くフリーになっていた武藤にパスが通り、武藤はエリア外から迷わず右足を振りぬくと中林の手をかすめて左隅に決まり、浦和がリードを広げて前半を終えた。

 後半開始前のハーフタイムインタビュー。森保監督は「次の1点を奪えれば」とコメントしたが、その1点は思いもしないほど早く訪れる。47分、柴崎のクロスを森島がワンタッチで前に繋ぐと、このボールを皆川が左足でネットに叩き込む。

 さらにここからは柏のワンマンショー。54分にハーフウェーラインからドリブルを開始すると浦和守備陣は全く止められず、ペナルティエリア手前まで侵入。そこで行ききらず、冷静に中へパスを送ると、皆川のスルーを挟み、アンデルソン ロペスがこれまた左足で冷静に決め、一気に同点に追いつく。

 たまらずペトロヴィッチ監督はラファエル シルバを投入してやや流れを引き戻すが、完全に持ち返すまでには至らず。すると72分、セットプレー守備からカウンターで柏が一気に持ち上がり、一度は相手に引っかかるも、もう一度ロペスへパスを送ると、ロペスは左足に持ち替えず、そのまま右足でシュート。これが見事にネットを揺らし、広島が試合をひっくり返した。

 試合は残り10分。広島は青山に代え森崎を投入し、試合をクローズしにかかる。対する浦和は84分にズラタンを投入。72分に投入されていた李とともに前線を分厚くし、最後までゴールを狙いにいく。

 その狙いが奏功したのは浦和。85分、阿部→シルバ→関根→ズラタンと全てワンタッチでパスが繋がり、ズラタンがやや難しい体勢ながら見事なシュートを決め同点。そしてアディショナルタイム、敵陣左サイドで開始した関根のドリブルは全く止まることなく進み、結局5人抜き。締めのシュートも中林のニアサイドを抜く冷静さで、この激しい試合にスーパーゴールで決着をつけた。

 

MVP:関根 貴大(浦和)

 はっきり言えば、その時間時間で目立った選手こそいたが(開始直後からの柏木、同点に追いついた時間帯の柏など)、90分を通して好パフォーマンスを見せ続けた選手はいなかった。

 関根も時間時間の一人で、輝いたのは終盤20分弱。ただ、その時間帯のドリブルのキレ、フリーなスペースを見つける目は特筆すべきもの。ズラタンのゴールをアシストした場面も「いつの間にバイタルエリアに!?」というプレーだったし、決勝点のドリブルに余計な言葉は要らず、ただただ「見てください」の一言。

 ミシャスタイルの一つの肝が「サイドでは、個が」。再浮上のきっかけとしては、十分に説得力を見出せる個の力だった。これを試合通じて出せれば。

 

MWP:野上 結貴(広島)

 今季これが先発で15試合目の出場。最終ライン、ボランチ併用で起用されていたと思うが、塩谷が中東へと旅立ったことを受け、いよいよ森保監督としては主力DFとしての起用となったはず。

 しかし、この試合は及第点以下。攻撃ではあまり前線に絡めず、ビルドアップ時も広島の最終ラインに求められる「出した後の動き」が今一つ。守備でも強さを見せる場面は少なく、なにより無為なスライディングタックルでむしろ相手の突破を誘発する場面が散見。関根の決勝点の場面も、出来ればもう数m横移動で粘りたかったが、あっさりとスライディング。

 塩谷も最初から良かったわけではなく、我慢して起用し続けるしかない一方、勝利を求められる時期ともなり、チームはG大阪から丹羽を獲得。個人としては、お尻に火がついた感も。