続々々・メガネのつぶやき

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2017シーズンプレビュー~守備妄想篇~

 先日、「シーズンプレビュー~攻撃妄想篇~」と題し、今季のFC東京の攻撃について、好き勝手に妄想したところですが、本日はその守備編となります。合わせて読んでいただき、「こんなこと考える奴もいるんだな」ぐらいに受け取っていただけたら、これ幸い。

 

 

 昨季の篠田トーキョーの守備は、「プレッシング」と「(システム変更も伴う)リトリート」、いわば両極端な2つを使い分けていた印象があります。

 成功例は、リーグ戦最終盤の3連勝(鹿島2-1、仙台1-0、大宮1-0)。試合開始からしばらくはプレッシングをかけ続け、そこで奪いきる…シーンは少なかったんですが、プレッシングで相手の選択肢を限定させた、あるいはプレーの精度を下げさせたうえでの次のプレーに対してしっかりとアクションを起こし、そこでボールを奪うことができていました。

 そうしているうちに早めに先制点を奪ったあとは、プレッシングの手を緩めて少し引き気味に構える陣形に切り替え、ある程度相手にボールを保持されることも容認したうえで守備を行う。さらに時間が進めば、選手交代などによるシステム変更(例:5バックにしてしまう)も見せながらしっかりと守り切る、という3連勝だったと思います。

 もちろん、失敗例もありました。天皇杯の川崎戦は、攻撃プレビュー編でも少し書きましたが、川崎の各選手のテクニックに翻弄され、立ち上がりから3、4プレー続けてプレッシングがハマらなかった結果、そのすべての流れでピンチを迎えることとなりました。また、篠田体制後の浦和戦3つのうち2つ(リーグ戦とルヴァンカップのホームゲーム)は、「先制点を奪って以降、引き気味に構える→だけど、構えただけで人を見るのか、スペースを消すのか徹底できず、いいようにやられる→結果、逆転負け」という流れとなり、「引きの弱さ」を目の当たりにすることとなりました。

 さて今季。当然、篠田監督の中でも昨季の手ごたえと反省が双方あるはずで、「プレッシング」と「ブロックディフェンス・リトリート」とのバランスをどこに見出すかについても、相当思いを巡らせていることでしょう。

 今日のサッカーは、私が偉そうに言うまでもなく攻撃と守備が一体化された、言い換えれば「こう攻めたいからこう守る」、あるいは「こう守れるからこう攻める」という考え方に立たなければいけない時代となりました。「こう攻めたい」を重視するのか「こう守れる」を重視するのか、それは各チームが判断する部分となりますが、スカッドを眺め、昨季までの流れを踏まえると、今季の東京は「こう攻めたい」を前面に押し出しても不思議ないと感じています。

 先の攻撃プレビュー編では「ゼロトップ」をメインとして、妄想を膨らませました。もちろん、今季の東京がゼロトップ的なことをするかどうかは分からないことだけは改めてお断りしておきますが、そのように攻撃すると妄想したならば、守備も連動して妄想しなきゃいかんだろうと。この点を踏まえて、これ以降はお読みください。

 

 ゼロトップの特徴は、その流動性にあります。相手の守備陣が「人を見る」やり方であればなおさら効果を発揮し、混乱に陥れることも可能となりますが、味方から見ても「意図した混沌」がピッチの中に生まれやすくなることもあって、ボールを失った直後にバランスが崩れがち、というあるあるもしばしば見られます。

 このあるあるを解消すべく、近年注目を集めているのが「ゲーゲンプレッシング」と呼ばれる戦術。私も詳しく説明できるほど知識はありませんが、知ったかぶって簡単に言えば「ボールを失った直後の数秒(数プレー)、相手のボールホルダーに対して猛アタックをかける」やり方で、失った直後に相手陣でまた取り返してしまう、それが叶わずとも、長いボールを蹴らせて後ろで回収しよう、この2点が大きな狙いとなります。

 奪われた直後にこそ。この狙いをチームとして大きく成就させたのが、グァルディオラ時代のバルセロナ。攻撃的な選手が居並び、攻撃に魅力があふれる一方で、今までどおり引いて守る、あるいはブロックディフェンスをするには、あまりにも心細い陣容だったなか、グァルディオラ監督が見出した解決策が「攻撃で相手陣に人をかけ、攻→守の切り替えのところを強く意識させ、失った数秒だけ守備を頑張って、またマイボールにする」ものでした。

 ここに走力や激しさ、いわゆるインテンシティを持ち込み、ハイテンポな中で攻守とも行いたいと考えたのが、当時ボルシア・ドルトムントの監督だったクロップで、その戦い方にいつしか「ゲーゲンプレッシング」という名が付され、このやり方でバイエルン・ミュンヘンと伍した、時には上回る戦いを見せたことで、世界の多くのチームに影響を及ぼしました。

 昨季のJリーグを振り返ると、あくまでも私の印象ですが、浦和と川崎がこれまでにないほど「ボールを失った直後」に意識を傾けていたように思います。ゲーゲンプレッシングと呼べるほど圧力が強かったとまでは思いませんが、前述した「こう攻めたいからこう守る」の「こう守る」部分が、5~6年指揮を続けていたペトロヴィッチ、風間両体制下においてもっとも洗練されていたと、充実していたことが、浮き沈みの激しかった鹿島やG大阪などとは一線を画し、安定した上位滞在を可能にしたと感じています。こういう時、一般のサッカーファンも「Opta」や「Statszone」のような分析・データサイトが見られて、「失った直後(例えば5秒以内)に奪い返した回数」みたいな数字を見られれば、もっとこの論に説得力が出るのになぁ…というのは余談なので置いておきますが。

 もちろん、奪い返した直後に奪い返せなかった場合、後方は手薄となっていて、一気にピンチになる危険性をはらんでいます。しかし、両チームとも自陣が数的同数となることをある程度覚悟したうえで、浦和は槇野、遠藤、那須、阿部らが、川崎は谷口、エドゥアルド、奈良、エドゥアルド・ネットらが1対1で食い止める、ディレイする、タッチラインに逃れるなど、個の強さでもって全体のリスクを低減させるやり方を見せました。

ともすれば、「そんなの危なっかしすぎる」と嫌う人もいるでしょう。あるいは、1対1で食い止められなかった時のやられた感でもって、「ほれ見たことか!」とのたまう人もいるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、浦和も川崎も攻撃的であり続けたいがための避けられないリスクであることは十分承知のうえで、攻撃で自分たちの力をフルに発揮したいんだという強い決意のもとで辿り着いた守備のやり方なわけで、中途半端にハイライン・コンパクト・ブロックを「やっている風」のチームよりは、数段理解できるものでした。

 

 東京に話を戻して。攻撃プレビュー編で、大久保+足下系の2列目(中島や河野ら)の場合は「距離感を密にして中で勝負。突き破れれば良いし、ダメでも相手の収縮状況を見てサイドバックがオーバーラップ」、永井を2列目に起用する場合は「あえて幅を広く取って相手守備陣の距離を伸ばした上で、両ウイングは足下で受け手の1対1、あるいは受けるふりを見せながら裏のスペースへ斜めに飛び出していく、それ以外の選手は中央のスペース、ギャップをついていく」という妄想をしてみました。

 これを受けて、どう守るか?前者ならば、テーマはこれまで書いてきた「奪われた直後」になるでしょう。少なくとも前線4人は流動的に動き、ポジションは良い意味で混沌としている。そこへ、状況に応じてサイドバックも絡み、場合によってはセンターハーフも敵陣に入っている。この状況で、失った直後にポジションを整えるための時間なんて存在していないに等しいというか、全員が守備時のポジションを取り直せ!と考えるのは、あまりにもロスが多いところ。

昨季の篠田トーキョーは、この即時奪回の意識は高くなかった印象ですが、大久保が加入し、サイドアタックの頻度が増え、高萩・梶山のセンターハーフコンビが機能するとすれば、トレンドにも乗った「奪われた直後に奪い返す意識」は、全員が持たなければいけないでしょう。具体的なプレー原則を考えてみると、

1:ボールに近い1、2人は周りに目もくれずボールホルダーへアタック

2:次にボールに近い数人は、アタックをかけたことにより想定されるパスコースを切る、あるいは予測されるパスの受け手に対して素早く寄せる。

3:その他でボールラインとほぼ平行な選手は、自分に近い相手を視野に入れつつ、すぐに寄せられる準備をする。

4:ボールより自陣側にいる選手はまず人をとらえ、数的同数ならマンマークでつききる。数的有利なら、1人は(ボール保持時から)カウンターで使われそうなスペースのカバーをしておく。

 

 思いつくのはこの4点。これらを連動してスムーズに行えるようになれば、机上の空論上ベストと言えるでしょう。で、おそらく1~3は、反復トレーニングや映像を使ったミーティングなどを重ねていけば、十分機能するものに仕上げられると思っていますが、問題は奪った後の直後の局面から一番遠い4なのかなと。

 先ほど、昨季の浦和や川崎の守備に対する印象の中で、「両チームとも自陣が数的同数となることを容認し、個の強さでもって全体のリスクを低減させるやり方」という表現を使いましたが、私が今季の守備で一番注目したいのが、「個の強さ」。

 天皇杯の川崎戦、立ち上がりからプレッシングがハマらず…と繰り返し書いてきましたが、そのいずれもがピンチにつながってしまったのは、川崎の前線の選手を、東京の最終ラインが個で食い止められなかったことが一番の要因だと感じていて。森重、丸山、徳永。世間の皆様からの印象として、「1対1でもしっかり守れる」と一定数評価をしてもらえるであろう顔ぶれが揃いながら、揃いも揃ってチンチンにされました。特に徳永は、久々の試合だったことを差し引いても及第点に遠く及ばず、丸山も結果的に右往左往させられ、森重も引き締めることはできずに終わりました。室屋は…頑張ってたかな。

 自陣にリトリートしたなかで、あるいは均整の取れたブロックディフェンスのなかでディフェンスの選手が仕事をする、目立つことは、言ってみれば普通のこと。そうではなく、決して守備側有利と言えない状況において、いかに強さを発揮できるか?現代のDFは、そこを求められています。

 私が生まれる前のサッカーは、良くも悪くもスペースがピッチのあちこちにあって、1対1がそこかしこで行われていた印象があります。そうした時代、DFに問われたのはズバリ「止められるのか?止められないのか?

止められれば称賛を浴び、止められなければ批判と罵声を浴びたはずで、求められる資質もシンプルだったと認識しています。しかし、時代が進むと次第に「コンパクトさ」が求めらるようになり、イタリアではゾーンプレスなる革命が生まれ、2000年代に入るとメガクラブ、強大国に対抗すべくブロックディフェンス戦術が確立されました。そうすると、1対1も大事ですが、いかに守備陣形の中で正確な動きができるか?個ではなく組織として相手を食い止められるか?そうしたマクロな視点に狙いが移っていきました。

 ただ、流行と廃りは繰り返すもので。奪われた直後に対する意識の向上や、ゲーゲンプレッシングを中心としたボールへの複数人のアタックに注目が集まりだした現在、その代償として、自陣には広大なスペースが生まれるようになりました。そして、そのスペースを埋めるため、あるいはカウンターアタックを防ぐため、最終ラインの選手、特にセンターバック(場合によってはアンカーの選手も)には再び、個の強さが求められるようになりました。

 前述したプレー原則で言うと、1~3の動きを7、8人がパーフェクトに行ったとしても奪いきれない場面は必ずあります。あるいは、1~3を行う前にロングボールを飛ばされるシーンだってあるでしょう。そこで4が、自陣に残るセンターバック(+センターハーフ1枚ないしアンカー)が仕事をできないようだと、事態は一気に暗転してしまうでしょう。もっと極端に言えば、センターバックが担うべき責任は思っている以上に大きく、見る側としては分かりやすく、評価がしやすくなります。比較対象として正しいかは分かりませんが、フィッカデンティ時代の最終ライン、センターバックに対する評価の仕方と、仮にここまで妄想してきたやり方が現実になったとした際の最終ライン、センターバックに対する評価の仕方は、変えなければフェアじゃないでしょう。

だからこそ、1対1で食い止めた、しっかりとディレイできた、かろうじてでもタッチに逃れた、そういった好プレーにはこれまで以上の拍手と歓声を送ってほしいと願うばかりですが、私自身はこの妄想云々ではなく、そうした「晒された際のプレー」を最終ライン全員が、中でも丸山が、吉本が、山田が、岡崎が、そして、何よりも誰よりも森重がどれだけ責任をもってやり続けられるのか?私なりに戦術面も追いかけますが、今季は今までにないくらい個の役割、個の仕事を見ていきたいと思っています。

 

 …と、いい感じのまとめになったっぽいですが、もう少しお付き合いください(苦笑)

一方で、永井を起用する場合には、「引いて受けてカウンター」という手を見せることもやぶさかではないでしょう。システムはどうであれ、

1:奪われた直後に1、2人はちょっかいを出しに行くけど、その時間を活用して残りの8、9人は人ではなくスペースを埋めに行く。

2:特にボールと逆サイドの選手は状況を注視し、一発で展開を変えられないようポジションを取る。

3:1でちょっかいを出しに行った選手は、ボールが自分の後ろ(自陣側)に出たところで追うのをやめ、あえて前に残る。残りの選手はブロックディフェンスでしのぐ。

 といった形で守り、奪い返したら前に残っていたやつだけでいってこーい!的な流れ。バーンズやユ・インスなんかもカウンター攻め残り要員としては計算してもいいんじゃないか?と思っていて、どちらかというと、リードしてからはこういうやり方になるのかな?とイメージします。

 さらに、ここまでは攻→守の切り替え部分にスポットを当てましたが、例えば相手のゴールキックから始まるシーンや、自陣からロングボールを蹴るも味方に繋がらず、相手が深い位置から攻撃を開始するシーンなど受けの守備時にどう守るか?を考えてみた時、私の注目ポイントは「1トップ+トップ下の2枚が、何を選択するのか?」となります。

 昨季からそうですが、こうした受けの守備時には、東が前田ら1トップの選手と横並びになり、4-4-2の形で守ることが多かったなか、やや不満に感じていたのが「前線の2枚がどこを見ているのか分かりづらかった」点。

例えば相手のセンターバックがボールを持っていたとして、「直接的にアタックする」のか、「間接的にアタックする(=センターバックに寄っては行くけど、ボールを奪うというよりはパスコースを限定させるような寄せ方をする)」のか、「アタックはせずに、センターハーフへのパスコースを切る」のか、どの仕事がメインタスクだったのか、ちょっと伝わってきませんでした。

どれが正解となるかはそのチームのやり方だったり、相手センターバックのパスに関する能力次第だったりするんですが、であるならば、相手のスカウティングの結果として、「この試合ではこれが正解だと思って徹底しました。もしくは、プランA・B・Cを定めました」という動きを見せてほしいわけで。私は最近、こうした前線の選手の追い方を徹底しないまま、無為に最終ラインを上げて全体が「ただ」コンパクトになっている状況を「似非コンパクト(似非ハイライン)」と呼んで「ダメだこりゃ」とのたまうようにしているのですが、東京もそんな試合がなかったわけではなく。はっきり言ってダサいだけなので、せめてわが軍はそういったことがないように…と祈っています。

 

 

 再度まとめっぽく。FC東京に対するイメージとして、フィッカデンティ監督時代の残像も込みで「守備>攻撃」と思っている人の方が、たぶん多いでしょう。しかし、補強した顔ぶれや漏れ伝わってくる監督・選手のコメントを見ると、今季は「攻撃で魅せたい」と思っているのは、ほぼ間違いありません。

 しかし、攻撃的でありたいと思えば思うほど、守備陣にかかるリスクと責任は高く、大きくなります。また、攻撃編では「近年にないくらい、私の中では期待値が高い」と締めましたが、守備編は「半信半疑」です、正直。それでも、今季の東京には「攻撃的でありたいと願うならば、守備陣こそが魅せてくれ!」と思っていますし、守備陣がフィッカデンティ時代とは違う仕事ぶりで評価を得られれば…と夢を膨らませて、シーズン前のプレビューといたします。

 いろいろ書きましたが、今はただ、開幕が待ち遠しいのであります。