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続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

Go Forward

「難しいことは考えずに、楽しんだらいいんじゃないですか?」――ある日の味スタで知人と試合前に談笑している中、篠田監督について問われた私は、こう答えた記憶があります。

 こんなブログを定期的に読んでくださっている方がどれだけいるかは分かりませんが、城福監督が解任され、篠田監督が就任して以降、トップチームに関して書いたエントリは、直近の「56.3%」1本だけ。「今季はブログ結構書くぞ!」と意気込んでいたこともあって城福監督時代はそれなりに書いてきただけに、この筆の進まなさは自分でも驚いている次第。

 じゃあ、なんで筆が進まなかったのか?その理由を自問してみると、大きくは「戦術的に深掘りする要素が少ない」かつ「半期のリリーフ登板だと思っていたから」の2点に集約されるんだろうな、と自答しました。その2点に、残留争いを抜け出すための「内容より結果が全て

という考えが乗っかり、結果として半ば思考放棄にも近い「難しいことは考えない!」に行きつき、今に至るわけです。

 しかし、複数のメディアでクラブが篠田監督に続投を要請すると報じられ、9割方来季の続投が決まったと言ってもいい現状。また、思考放棄状態だったとはいえ、何も思わずにいたかというとそうではなく。というわけで、そろそろ思考放棄を止め、リーグ戦ホーム最終戦を前にここで何やら1つ書いておこうかなと思い立ち、キーボードをカタカタさせてみます。

 

 

 そもそも、篠田体制下の東京を私はどう見ているか。答えは冒頭に書いたとおり、「戦術的に深掘りする要素が少ないな」という印象。もちろんJ1残留を最大のミッションとし、コンディション面における前任の負の遺産や怪我人、J3とのやり繰りを踏まえれば、篠田監督がこの短期間で戦術的な要素を押し出せる状況ではなかった、と見るのが筋でしょう。しかし、そういった副次的な側面を排除して、試合内容にだけフォーカスしてみると、良く言えばシンプル、悪く言えば前時代的なサッカーだな、と私は感じていました。

 そんな篠田監督就任後、最も印象に残っているゲームは、皆さんどれになるでしょうか?私はこの間の鹿島戦…ではなく、就任2戦目となった磐田戦。常に先手を奪われる苦しい展開の中、後半アディショナルタイムにユ・インスが劇的なゴールを決めて勝利した一戦でしたが、怪我人の影響があったにせよ、田邉のセンターハーフ起用には驚かされましたし、平山を差し置いてのユ・インス途中投入もおっと思わされました。ただ、なによりもインパクトがあり、篠田監督に対する個人評の方向性を決定づけたが、ムリキのフル出場でした。

 

 シーズン開始後にチームに加入したムリキ。加入当初はコンディションが整わず、プレースピードも遅く、強度も低く。J3での「目覚まし」も経ながら城福前監督は起用法に四苦八苦していましたが、最終的には2トップの1角として起用され、守備の負担を軽減させながら攻撃に注力してもらうタスクを与えました。しかし、篠田監督は東のトップ下起用にこだわりを見せ、おのずとFWは1枚に。その座には額面通り前田や平山を起用したため、ムリキを広州恒大時代にも起用されていた左アウトサイドへ置く選択を取ります。

 攻撃では効果てきめん。東と入れ替わりながら常にポジションを流動的にとり、ボールの受け手にも出し手にもなりながらフィニッシュの場面でたびたび相手の脅威となれていました。一方で、守備では最低限にも達していないようなプレスバックしか行わず、サイドバックとの守備連携もほぼ皆無。磐田の先制点は東京の左サイドから攻めたものでしたが、この場面以外にもしばしば東京の左サイドは数的不利に陥り、危ういシーンを作られました。

とまあ、ここまでは「攻撃に特長がある外国人選手をサイドで起用したときあるある」としてよくある話。さらに、スタミナを消耗し、攻撃で見せ場が減ってくる70分前後に途中交代しがちでもあり、この日のムリキも60分を過ぎようとするあたりにはすでに「これ、交代もやむなしかな…」と感じる仕草が見え始め、私は勝手に「いつ、誰と代えますかね?」と思いながら見ていました。

 しかし、篠田監督は動きません。それどころか高橋→野澤の交代でさらに攻撃性を高めると、後半はほぼ鳴りを潜めていた当のムリキが70分に同点弾。さすがにこれでお役御免か…と思ったらそれでもなお代えず。守備時のエネルギーは完全になくなり、より相手の狙いどころとなって後方支援していた小川がガス欠になる、なんて二次災害がありながらも、ひとたび前を向けば常にアタックする姿を見せ続け、90分には決勝点につながるフリーキックをゲットするなど、攻撃面では最後までエネルギーを出し続けました。

 

 今日のサッカー界で、ここまで明確に「攻撃90、守備10」的な極端な攻撃偏重比率でタスクを課されている選手は、おそらくリオネル・メッシバルセロナ)、クリスティアーノ・ロナウドレアル・マドリー)ぐらい…というのはたぶん間違いで。世界中、カテゴリーを問わず見渡せば、まだまだこんな「王様然」とした選手を中心にしたチーム作りをしているチームはごまんとあるはずです。

 けれど、王様を中心としたチーム作りがモダンなスタイルかと問われれば、答えはNO。現代サッカーの戦術とスカウティング能力は王様が空けた穴を見逃してくれるほど甘くはなく、クラブのレベルが、コンペティションのレベルが上がれば上がるほど、王様の居場所は無いに等しくなっています。

それでも篠田監督は、前時代的な王様に浮上のきっかけを託しました。城福監督が何とかムリキをチーム組織に組み込みたい、片や、攻守のバランスも失いたくないという二兎を追い、成功しかけた場面もありながら徐々に失速していった反動もあったと推測はできますが、ムリキの溢れる攻撃的センス・スキルに攻撃の大部分を一任し、ムリキからの波及効果でチーム全体のアタッキングマインドも呼び戻そうとしたギャンブルは、結果的に磐田戦で勝ち点3をチームにもたらしました。

また、残念ながらムリキは怪我で離脱しましたが、篠田監督は思考を変えずに同ポジションに中島を起用。ムリキほどではないにせよ攻撃偏重のタスクを与え、中島は今、東京に来て一番輝いていると言っても過言ではない時期を送っています。さらに、センターハーフに梶山が舞い戻ってきて、かつ田邉と並べる「勇敢」とも「蛮勇」とも取れる采配を見せ、一連の浦和との戦いではボッコボコにやられましたが、怯むことなく鹿島戦では好内容を披露。守備のリスクを顧みないムリキフル出場というギャンブルから始まった…と思っているのは私だけでしょうけど、ともかくシンプルなアタッキングでここまで一定のポジティブな成果を残してきたことは、評価に値すると思います。

 

 と、ここまでお読みいただいて薄々感じていただけていたら幸いなんですが、この一連のくだりを見続け、あまりにも分かりやすい一点突破で勝ち点を上積みできてきた現状に対して、戦術面での補足は必要だったか?必要ないでしょう、と感じていたわけです。強いて言えば、「前線からのプレッシングの対象・狙いが相手によって違っていたかも?」と書ける部分はあったと思いますが、それとて明確に差異があったわけではなく、基本的には、

アグレッシブに前から守り、奪ったら前線を見て、飛ばせれば前田(平山)に当てる。無理ならば梶山・田邉を中心に漸進し、中島や河野のキープ力・ドリブルで仕掛け、東が有機的に絡み、フィニッシュまで持っていく。

文字にすればたったこれだけの、戦術的には深掘りする要素が少ないと思われることを必死に、しゃにむに、シンプルにやり続けてここまできた。それが篠田トーキョーだと私は見ています。

そんな、磐田戦後に薄らぼんやり思ったことに端を発した個人的な考えを、ここまでまとめてブログへ書くに至るまでにはいくらか時間が必要でした。この時期まで引っ張る必要があったかは分かりませんが(苦笑)。そこに「これでカップ戦どちらか取れれば儲けもので、メンタル面を叩き起こした上で来季は新監督を…」と勝手に思っていたことを踏まえたら、そりゃ何も書くことないですよね、ね、ね?というわけです。

 

 

はい、ここまでは言い訳として、未来のお話を。

先日行われた鹿島戦。試合内容の良さと味スタで8年ぶりの勝利だったことが加味され、いくつかのメディアでは「今季ベストゲーム」と評されました。私も、体調を考慮してテレビ観戦ではありましたが、見ていてストレスの少ない90分だったと感じていますし、篠田監督は「この試合内容を最低限なものにしたい」と語り、多くの方はその意見に賛同して、今後の更なる向上に期待を寄せているのではないかと推測します。ただ、これまでの過程も踏まえつつ、鹿島戦のゲーム内容を最低限に設定したとして、そこからまだ伸びしろはあるのでしょうか?

 先ほど書いたとおり、今の篠田トーキョーはかなりシンプルなサッカーを見せています。繰り返しになりますが、肝は「前線からのプレッシング(とコンパクトネス)」「前田(平山)の収まり」「中島・河野の個人技」「梶山・田邉のキープ力」「東の潤滑性」の5つ。鹿島戦は、このいずれもが高水準だったことによる快勝劇でした。

先制点は森重のインターセプトから始まったショートカウンターでしたが、前線からのプレッシングがしっかりとハマったが故に、森重はあそこで思いきって勝負できましたし、全体がコンパクトだったために、奪ったボールがすぐに中島まで渡り、相手の陣形が整わないうちに攻め切れたと見ています。また、(特に前半は)前田のボールの収まりが良く、相手の意識を収縮させられたことで中島・河野が時間、スペースともに余裕を得ることができていましたし、東が他の前線の選手とかぶることなく、しかし消えることもなく効果的なポジションを取れていたことも、見逃してはいけないでしょう。さらに、後方から梶山・田邉がボール保持の面で支え、サイドバックが上がっていける時間も確保できていました。

今後もこの5つの肝が有機的に絡み合って機能すれば、ある程度相手に脅威を与えられるサッカーはできるでしょう。ただ、今はまだ「コレクティブ」とまでは言えず、ハマった時は強いけど、ハマらないと脆さを隠しきれない状況。なので、私がここからさらに上積みを期待できる(上積みをしてほしい)部分は「コレクティブさのアップ」となります。ここからは得意の妄想が多分に含まれますので、ご承知おきを。

 

妄想のスタート地点は、中島・河野の立ち位置。今、攻撃の中心がこの二人であることに疑いの余地はありません。であるならば、なるべく二人に良い形でボールを持たせたい、できることなら二人の得意な形になった時にボールを預けたい。そう考えた際、どのエリアに二人を立たせておくかを整理するだけでも、チーム全体に想像以上の利益をもたらすのではないか、と考えています。

今、戦術の最先端、あるいは分析の最先端では、ピッチを縦に5分割し、より細かいポジショニングを要求する、あるいは観察するようになっていると、いくつかの媒体で目にしました(その走りはジョゼップ・グァルディオラのアイデアとも)。確かに、守備戦術が年々コレクティブなものになってきていて、攻撃側が今までどおり漠然と「中央・サイド」という概念のままなのであれば、守備に屈する場面が増えるのは自明の理。見る側もほんの少しずつでいいから意識しながら、プレーする側には強く意識するよう求めていかなければいけない部分だと思っています。

で、中島・河野の二人をどのエリアに置くか?ここからは便宜上、5分割した真ん中を「センターエリア」、その両隣を「(左右)インサイドエリア」、大外を「(左右)アウトサイドエリア」と書いていきます。また、守備時は最前線に東を前田と並べた4-4-2で前からプレスをかけ、良いところで奪えればショートカウンターを仕掛けることを優先順位として高くしてほしい――それが実は、篠田監督のメンタリティからすれば最もらしい――とも思っていますが今日はこの点には触れず。これから書くのは「奪った位置が低かった時、あるいはショートカウンターを仕掛けられず一旦下げた時にビルドアップから攻撃が始まる」ことを想定したものです。

 

結論から書くと「中島は左アウトサイドエリア、河野は右インサイドエリアが良いのでは?」と考えます。鹿島戦でのスタメンで、図にするとこんな感じ。

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 皆さんがどう感じているか分かりませんが、私は「中島にはスペースを与えて、河野は密集地で」ボールを預けたいと思っています。中島は得意のドリブルで推進力を生んでほしいため、なるべくスペースを与え、前を向いた状態でボールを預けたい。一方の河野は、ポストプレーとまでは言いませんが相手を背負った形、あるいは相手のゴールに対して背を向けて、もしくは半身の体勢でボールを預けてもしっかりと次へ展開できる技術があるので、あえて相手2ライン間の狭いところに位置させたいのが一番の狙い。

 その2人へボールを預けるためのビルドアップは、森重・丸山の両センターバック+梶山の3人に担ってもらい、田邉は河野と同じ高さを意識しながら、しかし中島に近づきすぎないように左インサイドエリアにポジションを取り、河野と同じような役回りを遂行。橋本・室屋の両サイドバックはやや高めにポジショニングし、機会があればオーバーラップを仕掛け、前田は基準点役として、あまり動かずに相手最終ラインを固定させるようなポジショニングを取りながらボールを引き出してもらう。東はあまりポジションにとらわれず、機微を見て裏抜けもよし、下りてくるもよし、得意の流動性を活かしてもらう。

その上で、右側は河野を中心とした右インサイドエリアで、複数人がボールを中心に近い距離を取り、細かいコンビネーションで崩しを図る。そこで相手をはがせればそのまま前進し、スルーパスやクロスからフィニッシュまで運ぶ。では、右側で詰まった時にはどうするか?無理して縦に行くのではなく、梶山や森重に下げて、左アウトサイドエリアにいる中島にサイドチェンジパスを送る、あるいはビルドアップの段階で1列(主に田邊)を飛ばして通せるときもズバッと中島に楔のパスを通して、スペースのあるなかで仕掛けてもらう。

このように、チームとしていくつかのプレー原則を作り、それぞれの選手はその原則を意識しながらポジションを取り、ボールを動かし、場面に応じて臨機応変に振る舞うことができれば、相手に対してより脅威を与えられるのではないかと感じています。

 

 と、ここで妄想を止めてもいいんですが、久々なのでもう1つ突っ込んで。上の案だと、実はサイドバックが死んでしまうというか、持ち味と役回りがリンクしない危険性があります。右側は、河野が右インサイドエリアまで絞って右アウトサイドエリアを空けているので、ボールを中で回している間にサイドバックにタイミングよく上がってきてもらってからのクロスまでイメージしたいけれど、橋本は決してクロスに特長がある選手ではない。対する左側も、中島は左アウトサイドエリアに開いて待つためサイドバックがオーバーラップ(厳密にいうと中島の外側を追い越す動き)を仕掛けるスペースは確保しておらず、クロスに持ち味がある室屋の良さを1つ消してしまいかねない、といった具合。仮に左サイドバックが小川でも同じことが言えるでしょう。

 そこで、「左右のサイドバックを入れ替えて、もう少し違う立ち位置も取れるんじゃないか?」と考えてみたところ、私の妄想は以下のような結論に至りました。

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 構える守備時はやはり4-4-2で、攻撃に移ったら中島を左アウトサイドエリア、河野を右インサイドエリアに位置させるところまでは同じですが、ビルドアップを要する攻撃になった際、室屋をウイングバック的な位置(ハーフライン越えてもいいくらい)まで押し上げ、残りの3人が右にスライドして3バック化。田辺、梶山の両センターハーフはセンターエリアとインサイドエリアの境目にポジションを取り、横のままにも縦関係にもなりながら中継点となり、前述のとおり右側は近距離で人をかけ、左側は中島やってまえ!で攻める。こうすることで、室屋が右アウトサイドエリアを駆け上がってクロス、というアイデアも加えられますし、最大7人を攻撃にかけられることで厚みも増す机上の計算が立ちます。

その分、後ろにはリスクが生じますが、対人に強い橋本を含めて3枚いればある程度の攻撃は食い止められると思いますし、カウンターでの失点を「必要悪」として織り込んでおくぐらいの心構えを持ち、とにかく前方向へエネルギーを注ぐぐらい突き抜けられれば、結果として俗に言う「東京らしさ」に繋がっていくのではないかと思ったり思わなかったりしています。

 

 

 まあ、こんな妄想も、来季の陣容がどうなるかによっては一発でパーもあり得るわけで。すでに、何人か名前が出ていますしね。ただ、逆に言えば、篠田監督が漠然と「こういうサッカーをしたい」ではなく、「チームとしてこういうプレー原則を持って、このポジションの選手にはこういう役割を担って欲しい」と明確にアイデンティティを示せるのであれば、おのずと今のスカッドで足りない選手(あるいはあぶれる選手)があぶりだされるでしょう。

そうやって現場から明確な思考が示されれば、フロントはあぶれる選手をいかに高く売り、足りない選手を獲得できるかの勝負になり、見ている側も「フロント仕事した」あるいは「フロントつかえね~」という評価をしやすくなるのではないかと考えます。

 

 フロントが主導して「東京味」を作り出し、そこに「○○風」の彩りを添えられる監督を連れてくる考え方も、当然あるでしょう。今、1つのサイクルが終わったとされる東京にとっては、このやり方で数年かけて頂点を目指すことが一番くどくないやり方とも言えるでしょう。

 しかし、篠田監督の続投がもし明日の試合後、あるいは最終節の大宮戦後に発表されるようなであれば、(天皇杯の勝ち進み具合にもよりますが)今季から来季への空白期間が異常に長い状況下で、篠田監督が「東京味」のメインの味付けを決められるシチュエーションとも言えないでしょうか?

 明日の試合内容に、来季への上積みを見出せるかは分かりません。ただ、明日までは難しいことは考えず、是非とも勝ってポジティブな雰囲気を共有してホーム最終戦を終えられたら幸せだなと思います。