続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

いいとこ取って見たらいいじゃない~はじめてのJ3~

 磐田の地で勝ち点3を取り損ねた翌日、味の素フィールド西が丘で行われたJ3、東京U-23対藤枝の試合を見に行ってきました。第12節にして初のJ3観戦とだいぶ出遅れた感はありますが、これまで何となく思っていたことも踏まえて何やら書いてみようかと思います。

 

 

ここまで11試合、成績は2勝3分け6敗。内容はJ3ハイライトで流されるチャンス&ピンチと公式サイトの寸評から窺い知るほかありませんが、メンバーもシステムも、まさにその時々の状況次第。前節の長野戦では先日ちょっと妄想した3-1-4-2を実戦で試した、なんて話も聞いて、実は「藤枝戦でも3バックやってくれないかなぁ?

とひそかに期待して西が丘に足が向いたところ。まあ、西が丘に向かう電車内で確認したメンバーを見た瞬間、「4バックやがな!」と一人心でつぶやいて、ほんの少しだけ帰ろうかなと思ってしまいましたが(苦笑)

 それはさておき、発表されたメンバーを見渡すと、幸野が出場停止、佐々木が理由不明のメンバー外とはなりましたが、前日の磐田戦でベンチ入りしていた吉本の先発起用、中島、室屋の復帰、特別強化指定・小山のベンチ入り、2種登録のU-18組が揃い踏みなど、今季初の18名フル構成。「中島と室屋は試合展開関係なしに決められた時間だけ使うだろうから、戦術的な交代は難しそうだな」とは思いつつ、ようやく体をなしたチームに期待もしつつ、14時キックオフ。

 ファーストシュートは藤枝に譲りましたが、立ち上がりから主導権を握ったのは東京。そして、先制ゴールはわずか10分でもたらされます。中盤でボールを受けた鈴木(喜)が右サイドへパスを送ると、平岡はスルーで流し、その先で生地がキャッチ。生地の中へのグラウンダークロスは先にDFが触るも、処理を誤りクリアしきれず。このこぼれ球にいち早くユ・インスが反応しヘディングで押し込んで今季3点目をマークしました。

この先制点により、さらに意気上がる東京。試合後に藤枝・大石監督は「ここまでロングボールを多用してくるとは思っていませんでした」とコメントしましたが、前線がユ・インス、平岡と走れる2トップだったこと、藤枝が割と高いライン設定で前から来ていたこと(をある程度スカウティングできていたと思われること)を踏まえると、おそらく狙いどおりの形。また、中盤での守備が機能していて、奪ってからのカウンターも威力十分。ラストパス(の1個前)がズレたり、2トップがDFラインの裏に抜け出すも…というシーンが続いて追加点こそ奪えませんでしたが、上々の前半だったと思います。

 後半。東京はやることを変えず、一方で藤枝が守備の体勢を整えたこと、かつ、(前半からですが)システムがお互い4-4-2だったことで局面での1対1が増え、肉弾戦とまでは言いませんが、バチバチした展開に。こうなると、正直U-18組が多数いる東京が不利になるのかなぁ?と思って見ていましたが、決してそんなことはなく。鈴木(喜)は野澤に勝るとも劣らない身のこなしと視野の広さでボールを司り、生地、内田の両サイドハーフは出入りが多く、暑さ厳しい中でも運動量を落とさずタフに戦い続けます。

 何とかこの流れのうちに追加点を…と思って見ていましたが、次のゴールは藤枝に生まれます。62分、東京の右サイドから藤枝の選手がカットイン。決して不利な状況には見えませんでしたが、対応した柳は一瞬反応が遅れ、何とかカバーしようとしたスライディングタックルもエリア内で相手を倒す結果となりPKに。これを遠藤が左サイドへ冷静に決め、同点となりました。PKに繋がるシーンの1つ前、藤枝が自陣でボールを奪った後カウンター気味に東京の右サイドを突こうとしたのを内田だったでしょうか、東京の選手が懸命の切り替えでディレイさせ、守備陣形が整ったように見えたので、個人的にはだいぶもったいない失点だったなと。

 失点後、62分に内田→中島、70分に平岡→室屋と交代。室屋を入れたところで「さて、システムとか立ち位置どうなるんでしょ?」と思いながら見てみると、以下の形になりました。

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 一瞬3バックもあるか!と期待していましたが(しつこい)、室屋が右サイドバックに入り、柳が左サイドバックへ回り、なんと小川が右サイドハーフへポジションアップ。この起用については試合後に安間監督が

小川選手とは去年から(ガレス)ベイルを例に挙げながら、もう一個前ができるんじゃないかという話をしています。今はトップチームも前線で突破していく選手がいない。そこをできるようになれば懐も幅も広がると思っています。(2列目に入って以降)果敢に行ってくれていますし、まさかのスルーパスも出してくれた。もっと驚きを見せてくれるように準備してほしいと思っています。

 とコメントし、室屋を入れる際にあらかじめ考えられていた交代であったことを示唆しました。さすがにどこまでやれるのか半信半疑でしたが、前線での競り合い・エアバトルで起点になれていて(ヘディング強いね!)、プレー選択も間違いが少なく、プレスバックも及第点と思いのほか好内容。また、中島も攻撃面ではさすがのアイデアを見せ、ユ・インス、生地も徐々に疲労をにじませつつ頑張ってほしいところでは頑張れていて、勝ち越しへの機運は高まっていました。

 しかし、前半の後半と同じく最後(の1つ前)で精度を上げきれず、(足元のプレーは不安定でしたが)藤枝のGK三宅の好セーブもいくつかあり、ネットは揺らせず。82分、ユ・インスに替えて鈴木(郁)を投入し、最後の一押しを狙うも押し込み切れず、試合はこのまま1-1で終了。残念ながら勝ち点3を取り損ねた、そんな内容だったかと思います。

 

 この試合…に限らず、東京U-23としてJ3で戦う中で、もちろん勝敗・勝ち点・順位は大事になってきます。来季以降、J3へセカンドチームを参入させたいクラブが出てくるかは全く分かりませんが、J3の最大チーム数は決まっていて、その中でのセカンドチームの割合も決まっていて、その割合を超えるクラブがJ3への参入を希望した場合、成績下位のチームがはじかれることになるので(間違っていたら指摘してください(汗))。

 そう考えると、メンバーも整い、内容も押し気味だった藤枝戦は勝ち点3が欲しかったところ。次節以降、U-18の活動状況も踏まえてここまでメンバーを揃えられる保証はないので。とは言え、思っていた以上にやれていた印象もあって。これは、チームとしてある程度のグループがあって、その中でメンバー同士の意思疎通が継続してはかれている点が前向きな結果として表れ始めた点も去ることながら、個人のレベルアップもある程度組織力向上に寄与しているのかなと感じました。

 選手個々で見れば、「J1⇔J3の往来」な選手と「U-18」の選手、大きく2つに分かれます。前者は主にオーバーエイジ組ですが、単純に戦力としてだけではなく、試合勘を失わないため、あるいはコンディションを整えるため、何人も起用されてきました。吉本はCBの駒不足を埋めるためにJ3を主戦場としつつも、森重、丸山の穴を埋めるプレーをJ1・ACLで見せてくれ、高橋も開幕当初はJ3で研鑽を積みながら、今やJ1で欠かせない戦力となりました。また、丸山、ムリキ、バーンズらがコンディション調整のために起用された試合もあり、(U-23ではありますが)藤枝戦では中島、室屋がJ1、あるいはオリンピックへ向けてJ3からの再始動を果たしました。

この、コンディション調整を理由とした起用に関しては、大なり小なり他クラブのファンから「それってどうなの?」的な意見が、特にシーズン当初は聞かれていたように思いますが、私は「そんなの関係ねぇ!そんなの関係ねぇ!」ってなもんで。J1、J3の並行、かつ、これまではACLもあった関係でなかなか週中に練習試合を組めず、コンディション調整の場を小平グランドに求めづらいシチュエーションがありました。その状況下、オーバーエイジを3名まで使えると明確に謳われたJ3の場でオーバーエイジをどう起用するかはこちら次第なわけで。いずれにせよ、J1でのプレーを期待されている選手たちのJ3起用に関しては、一定の流れが出来つつあると感じています。

 

 となると、次はJ3を主戦場としている、主にU-23組のJ1起用がいつ、どのタイミングでなされるか?が注目ポイント。もちろん、その個人のレベルがJ1でも通用すると監督・コーチ陣が判断しない限りはあり得ない話で、藤枝戦だけしか見ていない私がどうこう言えるものでもないですけど、あえて藤枝戦だけを見てどうなの?と問われれば、「ユ・インスは試してみる価値あり、その他まだ…」となるでしょうか。

 今季J3を多く見ている方のお話を聞くと、ユ・インスはまだプレーに波があるようで、良い試合・悪い試合がはっきりしているとのことですが、藤枝戦でのプレーぶりは割と好印象。韓国人らしいフィジカル、スタミナ、無理が利く感じを出しつつ、シュートへの意識は高く、攻→守の切り替えの部分もサボらず。今、J1ではなかなか得点が奪えない状況が続いていて、私はその要因の1つにとある選手の不調と言ったらいいのか、迷いと言ったらいいのか、煮え切らなさを挙げたいのですが――それはまた、どこか別エントリで書きたいと思っています――藤枝戦のプレーぶりだけで評価すれば、スーパーサブとして試してみる価値は十分あると感じました。

 一方、(幸野、佐々木は見られていないのでノーコメントも)柳、野澤、平岡はまだまだ。柳はU-18時代から見ていて、およそ半年ぶりにプレーを見ましたが、まず「身体、ゴツくなったなぁ」と。特にお尻周りが逞しくなっていて、たった半年でこうなるんだから、プロのトレーニングって改めてすごいなと思った一方、もともと機敏なタイプとまでは言えませんでしたが、PKに繋がったシーン以外にも瞬間で振り切られる場面があり、筋肉量が増えたせいかキレの部分も思っていたほどではありませんでした。ただ、例えとして適切ではないかもしれませんが、ある程度上背があり、筋力もあり、ゴリゴリっとしたプレーで…という姿は、酒井宏樹をイメージさせるところ。柳自身がどんなタイプを目指しているかは分かりませんけど、酒井宏樹タイプのサイドバックは日本には少ないので、目指してみても面白かったりして。

 野澤は良くも悪くも、昨季までと変わっておらず。もともと目立つプレーをするタイプではなく、飄々とやる中で何回おっ!と言わせられるか?というプレーヤーだと私は思っていますが、この日はパスで2回、ディフェンスで1回それがあったかどうか。先日妄想した3-1-4-2ならアンカーでも…とは思いますが、現在の4-1-4-1で起用するなら、アンカーではなく磐田戦で田邊(途中から梶山)がプレーしたインサイドハーフ。そこに野澤を当てはめて妄想してみると…この日のプレーぶりでは若干物足りないでしょうか。となると…書き出しとは矛盾しますけど、もっと自分が中心なんだ!という意識を、J3のメンバーならプレーで見せてくれてもいいのかなと思います。

 そして、平岡。この日はフォワードとして起用され、前後半1回ずつ、最終ラインを突き破ってゴール前に迫るシーンがありましたが、前半は懸命に戻ったディフェンダーに食い止められ、後半は中に走り込んでいた中島へのパスを選択しました。結果的に、前半の場面はディフェンスを褒めるべきで、後半の場面は悪くない選択でしたが、この2シーンを筆頭に試合全体で感じたのが「シュートまで持ち込むアイデアの乏しさ」。もともと本職はサイドハーフで、U-23でもサイドハーフとして起用される試合が多いとは思いますが、じゃあサイドで受けて、ちぎってクロスだけの選手になるべきか?と言われれば、答えはNO。シュートまで持ち込むアイデアを増やし、シュートを撃つ意識を相手に持たせるだけで攻める側が優位に立てるシチュエーションは絶対にあって、それによりちぎってクロスがより効果を発揮することもあるわけで。次、いつ平岡のプレーを見ることができるかは分かりませんが、意識の高まりを感じさせてくれるプレーを見せてくれたら嬉しいなと思います。

 

 かたや、U-18組。岡崎はもはや立ち位置が「セミプロ」のようになり、完全に主戦場はJ3。一昨年、昨年とU-18の岡崎を少ないながら見てきた私にとっては、さてどんなプレーをしてくれるのかと思いながら見ていましたが、思いのほかやれていたな、と。特に、「横パスを受ける→相手のプレッシャーが横(斜め)方向から入る→あざ笑うかのように縦にボールを突いて持ち出す

という既視感のあるプレーが見られた時には、「変にこぢんまりとしてなくて、わたしゃ安心したよ」と思いましたが、このプレーに限らず、まったく物怖じせずにやれていたと思います。

 それは、内田、生地、鈴木(喜)も同様。内田はややボールが集まらず、自身のリズムは掴みづらかったかもしれませんが、持ち味であるドリブルや、今季進境著しい守備の意識でチームを助けていました。生地は先制点につながるクロスをはじめ攻撃面でいいアクセントになっていて、スタンドからいつ「あの」チャントが歌われるのか待っていたほど。守備面でも内田同様チームの前後を繋ぐ潤滑油となれていて、90分よく走りきったなと。

 そして、鈴木(喜)。いやー、抜群でした。開始してそう経たないうちに、

 とツイートしたぐらい、立ち上がりから中心軸としての存在感ありあり。攻撃では持つ場面とはたく場面の使い分けが良く、先制点の起点となったシーンを始め、両サイドにまんべんなくパスを散らすことができていました。また守備でも、フィジカル面では致し方ない部分こそありつつ、だからと言って相手との対峙を避けることなく中央をしっかりと締め、十分ファイトできていました。前節の長野戦では3バックの真ん中で起用され、その前には4-3-3のアンカーもやったりしたそうで、戦術面でも現状のチームには欠かせない存在に…ってのは言い過ぎかもしれませんが、堂々たるプレーぶりでした。

 彼らに限らず、高校生年代のうちにプロを相手にプレーする機会を得られるのは、おそらく幸せなこと。ただし、その機会を経験値に変えられるかは各選手の心がけ次第。また、経験値に変えられたかは、普段の練習を見ることができない私たちにとっては試合で見るしかなく、判断するためにはもう少し時間がいるところ。それを確かめられる舞台がJ3になるのか、あるいはU-18の舞台になるのかは分かりませんが(クラブユース選手権と重なる時期にどうU-18組を使い分けるのか、だいぶ興味があります)、ゆるーり追いかけ続けたいと思っています。

 

 

 とまあ、私なりに見たJ3でした。ひとまとめに書けば、J1とはまた一味違う、複数の視点を持つことができるのがJ3。そのどれを重視するかは人それぞれですが、自分なりの目線を持って、継続して見ることができればこれも一興、と言ったところでしょうか。私もまた、近いうちに見にいければと思っています