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続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

変化に見る思惑

 なにやら、FC東京関連ではお久しぶりの更新。別に倒れるほど忙しい!というわけではなく、平々凡々と暮らしておりました。
 そんなFC東京。14戦負けなしを経て、ここ5試合は1勝1分け3敗とまた厳しいターンに入り、優勝はともかく、ACL圏内も非常に厳しい状況となりました。まあ、このことについては「仕方ないよね、勝てなかったんだから」の一言に尽きるわけですが、ちょっとここ4試合(第28節大宮戦〜第31節名古屋戦まで)を流れで見てみておっ!と思う部分があったので、久々に長ったらしく書いてみようかなと思った次第です。しばし、お付き合いください。


 事の発端は広島戦、雨がそぼ降る味スタでのナイターゲーム。この試合、スタメン・フォーメーションは久々にトップ下を置かない4−3−3で、試合後フィッカデンティ監督は「試合の最初から3トップで臨むという戦術もしっかりとはまっていた」と狙い通りのシステム変更であったことを明言していました。その一番の狙いは、「3トップが前からしっかりと当たる」守備の部分にあったと思いますが、今振り返って考えてみると、その裏に隠れた攻撃の部分こそ見るべきところではなかったか?と思っています。
 インターナショナルマッチウィーク明けとなった第27節仙台戦、森重の相棒は吉本ではなくカニーニでした。カニーニと吉本を区別するにあたって最も顕著なのは「パス」。いまだにおっかなびっくりなところがある吉本に対して、カニーニは長短のパスをそれなりに操れる、ビルドアップに長けたCB。今季ここまで、後方からのビルドアップについては(私が改めて言うまでもなく)最優先事項ではありませんでしたが、大宮戦では相手の特長も踏まえてボールを握る時間が長くなることを想定して、カニーニを起用したんだな、と個人的には理解しました。実際、大宮戦でのボール支配率は54.2%、パス本数は472本(成功率76.9%)とチーム全体では「持つ・繋ぐ」ことを体現できていました。ただ、カニーニの起用そのものが「当たった」とは言いづらく、「次の試合は連戦も加味して吉本かな?」と感じた方が多かったはずです。しかし、蓋を開ければ広島戦でもスタメンはカニーニ。加えて、大宮戦ではスタメンを外れていた羽生が広島戦ではスタメン復帰し、前線はトップ下を置かない3トップ。明らかに、今季中盤戦以降の流れとは異なる「変化」をフィッカデンティ監督は自チームに仕掛けてきました。
 そして、変化したのはシステムだけではありません。シーズン当初にトップ下を置かない3トップを用いていた際、サイドを崩す役割を担う順番は「1:ウイング 2:サイドバック 3:インサイドハーフだったと私は思っていて、ウイングのポジショニングはだいぶタッチライン沿いに開いた形だったと記憶しています。しかし、広島戦での3トップはむやみに外に開くのではなく、相手の3センターバックに対してそのまま当たるようなイメージをまずは持ち、サイドを崩すのはサイドバックインサイドハーフが連携して行う、というやり方に変えてきました。ゴールシーンはまさにその形で、ハーフウェーライン当たりで太田がボールを持った際、3トップはペナルティエリア幅の中に3人とも留まり、広島の5バックを収縮させる。同時に、太田に対して複数人がふらふらっとボールを取りに「行ってしまった」のを見逃さず、米本はポッカリ空いたサイドのスペースめがけてフリーラン。そこに太田からのナイスパスが入り、米本は十分すぎる時間を得てクロス。で、今までのような2トップであれば中で待つ人数がここで1〜2人という場面が多かったと思いますが、このゴールシーンでは3トップがそのままエリア内に入り込み、結果エドゥーの裏で渡邉がうまく頭で合わせて先制という運びでした。
 また、立ち上がりから何度か、森重・カニーニの両センターバックがボールを持った際に「意図的なビルドアップ」を試みる場面もあったのかなと。そこで肝となったのが、これまたインサイドハーフの動き。これまでは少し下がってきて受ける、もしくはトップ下(河野)に近い位置まで上がって、最終ラインや高橋からトップに当てられたボールの落としを受けたり、その流れでシュートが狙える位置までさらに進んで行ったり、という役割がほとんどだったと思います。しかし、この試合何度か(1、2回程度だったかもしれませんが)、両センターバックがボールを持った際に米本、羽生がそれぞれタッチライン沿いまでポジションを開いてボールを受けようとする場面がありました。妻には試合を見ながら「羽生さん、今日は動き方面白いね〜」と知った風に言いながらも、実際にはこの動きをイレギュラーなものとしかその場では捉えられず。試合も権田のPKセーブや武藤の勝ち越しゴールで勝利し、その余韻にどっぷり浸ったことで変化の意図は深く考えずに終わってしまったわけですが、それでも何か少し引っかかる部分は残っていました。それを次節のG大阪戦で確かめられたら…と思っていたら、再び4−3−1−2に戻したことでそれが叶わず。なので、「やっぱり広島相手の特別な対策だったのかなぁ?」と普通に受け取り、「別にブログでどやっ!ってすることもないか」と思っていました。ところがどっこい、日曜日に行われた名古屋戦を現地で観戦し(グランパス君が目当てだったけどね!)、帰ってきてテレビで再放送を見た今、「あ、これはただの広島対策じゃなかったな!」と確信めいたものを感じたので、今こうやってエントリを書いているのであります。はい、いつも通り長すぎる前フリおしまい。ここからが本題です!


 名古屋戦、再びフィッカデンティ監督はトップ下を置かない4−3−3で試合に臨みました。そして、5分と経たないうちに「持って繋ぐ東京」と「ブロックを形成して守る名古屋」という構図が生まれます。そこで、再び広島戦で数回見られたあの形――インサイドハーフタッチライン沿いまでポジションを移してビルドアップする――が、広島戦にも増して見られたんです。
 もう少し具体的に。再放送やスカパーオンデマンドを見られる方は是非とも見直していただけたらと思いますが、個人的には8分、10分30秒、27分12秒から始まった一連の流れ、この3つが意図的で、狙いが顕著に見られたシーンだったかなと感じています。8分のシーンは、塩田がボールをキャッチした後すぐに吉本へ出し、吉本から森重にパスされた時点でインサイドハーフ2人が足早にタッチラインまで走り、森重から太田にボールが出た時点で以下の図のような形になっていました。



 一口に言えば(と言いつつ、あまりこう例えたくはないんですが)浦和や広島がビルドアップの際に見せる4−1−5のような形を、浦和や広島のように「ボランチが1枚降りて、3バックの両脇がサイドバックのように振る舞い、ウイングバックが前線の「5」の両翼になる」という複雑な仕組みではなく、インサイドハーフのポジション移動1発で作る」ようなイメージでしょうか。10分30秒のシーンは相手のロングボールを吉本が上手くクリアして、そのこぼれを拾ったところからスタートし、最終ラインでのパス回しの中で、一度徳永がハーフウェーラインを越えてボールを受けるも前が詰まって吉本にバックパス。そこから森重→太田と渡る間に(その前のプレーでやや前残り気味だった)米本がスッと外に開いてパスコースを作り、完全にフリーの状態に。ここは太田が簡単なパスミスをして攻撃が終わってしまいましたが、仮に米本にパスが繋がっていれば、その次の動きで完璧にサイドを崩せるような形になっていて、意図的にこの流れを作れたことに、少なくない驚きはありました。
 そして、3つのシーンの中でも特に流れがあり、狙いがはっきりしていたのが27分。エドゥーが牟田にファウルを受けてフリーキック。最終ラインにボールが戻り、森重から太田にパスが出て…という状況が図1。



 この時点ですでに米本、羽生が外へ開く動きを済ませていて、太田は米本に出そうとしますが、ここはうまく田邉に米本へのパスコースを消されたために森重へパスをリターン。そこから森重→徳永→吉本と繋がり、吉本が羽生にパスを出した後が図2。



 この時、名古屋のサイドハーフ(永井)は徳永についていて戻れず、ボランチ(矢田)は誰もいない中を警戒しすぎてスライドが間に合わず、ポジションを開いた羽生に対してチェックに行ったのがサイドバック(本多)。しかし、後手の守備を強いられた本多が羽生に対して出て行かざるを得ないことで出来たスペースに渡邉が流れ(白い矢印)、羽生からワンタッチでボールが出ます(黒い矢印)。ここは闘莉王がうまくカバーして渡邉の動きを止め、その間に本多が戻って後方のスペースは埋めましたが、永井の戻りは遅れ(サボった風にも)、矢田は先ほどとは逆に外に食いつきすぎて、渡邉から羽生へパスが戻った時の名古屋の守備陣形はだいぶ崩れているのがわかります、というのが図3。



(筆者注:図を作り間違えています(汗)。この場面、名古屋の矢田が羽生のすぐそばにいます。作り替えるのめんどくさいので、図はこのままで(苦笑))


 この後羽生から高橋にパスが渡り、高橋はエドゥーに楔のパスを入れます。エドゥーがここでキープしきれなかったことで攻撃は未遂に終わりましたが、33分にはこの時とほぼ同じような流れで、今度は羽生からパスを受けた渡邉が闘莉王を振り切ってサイドからクロスを上げており、インサイドハーフの動き方、そこをうまく使う意図的なビルドアップが相手に対して効果的であったことは疑う余地がないでしょう。また、左サイド(太田、武藤)がストロングポイントであることはすでに東京ファン以外にも十分浸透していると思いますが、右サイドが羽生の機敏な動きにより活性化してくれば、より相手にとっての脅威が増すとも言えるでしょう。
 現在、東京以外で4バックを採用するチームのほとんどは4−4−2(4−2−3−1)で、必ずサイドバックサイドハーフがいます。一方、名古屋戦で東京が見せた「3トップがさほど外に開かない状態の4−3−3」においては、明確なサイドの選手はサイドバックのみ。図にするとこのような感じ。



 一見すると、システムの齟齬が生まれやすい(東京が数的に優位に立ちやすい)と思われる中盤の中央をうまく使うことの方がいいようにも思えます(図の黒い円の部分)。しかし、相手も馬鹿ではないので、中央の崩しは明確にケアしてくるはず。だったらそれを逆手にとって、「普段いないはずの人がいる」シチュエーション――(守る側から見て)自分たちのサイドハーフサイドバックのファジーな隙間(図の赤い円の部分)に、なぜか相手のインサイドハーフがいる――を意図的に作って攻撃を組み立てていこうというフィッカデンティ監督の狙いがあるのでは?と私は感じました。当の羽生は、後藤勝さんのメールマガジン内掲載のインタビューで、「前後分断にならないよう、また、パスワークのコンビを多くつくる意味でも、味方の選手と選手の間に入らなければ」「もっと前で回したい」という類のコメントを残していますが、ここにきてカウンター一辺倒になるのではなく、繋ぎの部分でも次のステップへ進んでいきたいという意思を今のチームは持ち始めているのかな?と私は勝手に受け取りました。違ったらごめんなさい(苦笑)
 じゃあ、最終ラインがボールを持った際に毎回4−1−5のような形になるのか?というとそうではなく。インサイドハーフが高橋に近い位置でボールを受けて相手のボランチサイドハーフを中に食いつかせたうえで、空いたスペースにサイドバックが出て行ってボールを受けるというビルドアップがあったかと思えば、3トップの誰かがサイド深めのオープンスペースに抜けて行って、そこに1本のパスを通すこれまでのようなシンプルな狙いもあったりと、前半はリードこそされましたが、結構多彩な攻撃を見せることができていたと思います。後半は追いつき、勝ち越すべく早々に手を入れた――羽生に替えて松田を投入して3−4−3にし、同点後は武藤、松田がサイドハーフとなる4−4−2となった――ためにまた違う顔を見せることとなりましたが、1つの形にこだわることなく、次々とチームに新しいアイデアを入れてくれるフィッカデンティ監督の策士ぶりを堪能できた、なかなかに意義深いゲームだったかなと思っています。


 さて、ここまでは広島戦と名古屋戦をピックアップして書いてきましたが、かたや冒頭に、「ちょっとここ4試合(第28節大宮戦〜第31節名古屋戦まで)を流れで見てみておっ!と思う部分があった」と書きました。そう思ったのは、スタメンの顔ぶれのせい。広島戦、名古屋戦はトップ下を置かない4−3−3で、大宮戦、G大阪戦はトップ下を置く4−3−1−2でそれぞれ戦いました。で、名古屋戦をスカパーで解説された「米本大好きおじさん」こと長谷川治久さんが「最近、エドゥーがスタメンの時は羽生が使われ、そうではない時は三田が使われて…」的なことをチラッと言いまして。この4試合を調べてみると、確かに4−3−3時の中盤3枚は高橋、米本、羽生、4−3−1−2時の中盤3枚は高橋、米本、三田とはっきり使い分けていました。また、カニーニと吉本の使い分けについても、なかなかに興味深いところがあります。この(システムによる)スタメンチョイスの変化について、フィッカデンティ監督がどう考えているのか?どう使い分けているのか?今日そこまで書ければよかったのですが、まだ自分なりの結論は出せていません。もちろん、おぼろげに思う部分はありますし、4−3−3の際に羽生を使う理由については、エントリ内でほのかに匂わせたつもりですが(ホント?)、まとまって何かを書けるレベルにはないので、それはまたの機会があれば。
 1つ大きな見るテーマとしては、「マッシモの真の理想って、どっちなん?」という点。キャンプ、そして開幕当初はトップ下を置かない4−3−3を用いていました。シーズンの入りこそ指揮官の理想が色濃く見えると捉えるのであれば、真の理想は4−3−3なのかなと。一方で、河野、東、三田、梶山などトップ下を主戦場とする(あるいはこなせる)選手が潤沢に揃っている中で、日本のやり方も加味して採用した3−4−1−2が、後付の部分も含みながら「今の」フィッカデンティ監督の理想となっている、という見方もできると思います。ともかく、残り3試合もこの使い分けをピシッとしてもらって、そこから探れるところがあればいいなぁ…なんて邪なことも考えつつ、ビシッと3連勝してシーズンを締めくくってくれたらこれ幸いかと。