続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

あえて問う。「自分たちのサッカー」を。

 現在、クラブチームのU−18年代が参加できる全国規模の大会は3つある。その1つ、日本クラブユースサッカー選手権(以下「クラ選」)が、木曜日から開幕される。FC東京U−18は昨季関東予選で敗退し、この大会に参加することが叶わなかったため、2年ぶりの参加となる。詳しい大会概要はこちらのページをご覧いただくとして、ざっくり書くと「32チームを4×8に分けてグループリーグを行い、各グループの上位2チーム(計16チーム)による決勝トーナメントを行う」レギュレーションとなっている。この形、どこかで見覚えがないだろうか?そう、つい先日まで行われていたワールドカップのそれと同じである。


 今季、FC東京U−18は佐藤一樹新監督を迎え、リスタートを切った。その鼻緒となった大会「東京都クラブユースU−17サッカー選手権大会(通称「新人戦」)」にて、2011年以来3年ぶりに東京を制してみせた。この時期の、チームにおける合言葉は「球際」。バランスは最低限考えながらも、しかし「近いヤツがボールに行く」ことを第一に、それを怖がらずに全員がチャレンジすることで、FC東京U−18の伝統とも言える部分を今一度身に沁み込ませる作業をしていたのだと私は認識している。
 そのポジティブなファーストステップを経て始まったプリンスリーグ関東。開幕戦の山梨学院大学付属高校、第2節の湘南工科大学付属高校はいずれも完封勝ちで連勝。開幕戦を見ることが出来たが、まだまだやるべきことはたくさんありながらも、締めるべきところを締められている、例年とは少し違うスタートを切ることが出来た。しかし、第3節の横浜Fマリノスユース戦で、順調に膨らみかけていた期待を完全に萎まされた。1−7というスコアも去ることながら、何も出来なかった。皆さんがどう見たかは分からないが、私は「させてもらえなかった」のではなく、「何もしない」まま90分を終えた、そう見えた。続く第4節、大宮アルディージャユース戦にも敗れ連敗を喫し、第5節前橋育英高校戦では何とか勝利を得たが、些か(私が)モヤモヤしたままクラ選関東予選へと突入した。
 そんな中、とある練習試合において、佐藤監督が手を打ってきたと見聞きした。5月17日、首都大学東京南大沢キャンパスグランドの人工芝張替工事完了こけら落としにて、首都大学東京の相手として東京U−18が招かれたその試合で、なんと3−4−3のシステムを試したとのことだった。そして結果は、5−0の完勝。試合内容は知る由もないが、見に行かれた方のツイートなどを見ていると、想像以上にハマっているように窺えた。いよいよ始まったクラ選関東予選でもこの新システムは継続して用いられ、鹿島、千葉ら骨っぽい相手に5戦全勝という文句のない戦績を残した。さらに、冬の新人戦優勝により切符を得ていた、天皇杯へと繋がる「東京都サッカートーナメント学生系の部」においても早稲田大学国士舘大学相手に連勝を飾り、続く「東京都サッカートーナメント本戦」準決勝では横河武蔵野FCに敗れはしたものの、最後の最後まで相手を苦しめたその戦いぶりに賛辞を惜しまない見に行かれた方の感想を読むだけで、そして、「試合後、選手たちはピッチに倒れ込む。涙を流す選手もいる」というオフィシャルサイトのマッチレポートを読むだけで、少し胸が熱くなった。また、いわゆるAチームが天皇杯を目指して戦う中で、クラ選関東予選の順位決定戦を戦ったBチームが横浜Fマリノスユース浦和レッズユースを下し、関東制覇に大きく貢献したことも忘れてはならないだろう。


 その勢いを持ったまま再開したプリンスリーグ。第6節桐光学園高校、第7節國學院久我山高校と簡単ではない相手に競り勝ち、ついに首位浮上を果たして迎えた川崎フロンターレU−18戦。個人的に忙しさにかまけて東京U−18の試合を全く見にいけていなかったが、ようやく時間を割くことができ、小平グランドへと脚を運んだ。そこで見た東京U−18の3−4−3は、なかなかに衝撃的だった。3−4−3を始め、これまでの試合がどうだったか分からないので比較のしようはないのだが、川崎戦の前半は、「ピッチの横幅の使い方」と「横パス(正確に言うと斜め前へのパスも含む)」主体で川崎を圧倒してみせた。2高田、3大西、13渡邉が形成する3バックの距離感は適切で、GKの1伊東も絡みながら優位に立ってビルドアップを行い、27小山と7長澤がウイングバックよろしくタッチライン沿いで上手くポジションを取りながら川崎の守備の網を広げる。この5人の間での横・斜め前へのパスだけで、気が付けば相手陣にスッと入れていた。ラグビーを見ているよう…という表現は大袈裟かもしれないが、横の動き(動かし)で縦を取っていくやり方は、見ていて実に興味深かった。もちろん、ゴールを奪うためには縦パスが必要にもなるが、そこは6高橋と15安部のダブルボランチが上手く受け手(=最終ラインから)にも出し手(=前線の3枚やウイングバックへ)にもなれていたことでしっかりと質・量ともに確保されていたし、3バック3人ともがロングフィードをしっかりと前線へ送れる(この試合に限れば、13渡邉は精度を欠いたが)ことも、確実に相手の脅威となっていた。
 そんな後ろ7枚の有機的な動きに支えられ、前線3枚も各々個性を発揮できていた。9蓮川は相変わらずの健脚ぶりで相手をちぎってみせたし、(この試合で止まってしまったが)公式戦10数試合連続ゴールを奪うなど、システム変更がより、ゴールに彼を近づけていた。10佐々木はまだこのシステムに入りきれていなかった感もあるが、随所にらしいプレーを見せてくれた。そして、14大熊は明らかに逞しくなっていた。身体が大きくなった感じはないのだが腰回りの強さは確実に増していたし、ボールをどう迎え入れるのか?という視点で見た時の身体の使い方が格段に良くなっていた。基準点型の1トップとまでは言い難いが、真ん中にいる価値のあるFWになってきたとは言えるだろう。後半はやや苦しむ場面もあったが、お互いに疲労感が見え、少し中盤が間延びしてきた時に切り替えて縦への意識を強くし、15安部の飛び出しによるゴールや、途中出場の11渡辺による見事なカットインからのシュートによるゴールでダメを押し、終わってみれば5−1。川崎は主力2人を欠いていたようだが、それを差し引いても完勝と言える内容だった。
 続く、先週末の浦和レッズユース戦。当日までどうするか悩んだが、何となくスパッと目覚めたので駒場スタジアムまで足を運んだ。試合はセットプレーから早々に動き(東京が先制)、東京が常に先手を打つ展開となったが、この試合では川崎戦とは違い、とにかく縦パスが光っていた。その中心は、2高田、6高橋、7長澤の3人。浦和は(この試合だけかもしれないが)トップチームが用いている可変型3−4−2−1ではなく、(守備時は)割とシンプルな4−4−2を用いてきたように見え、積極的にビルドアップに対してプレスをかけてきた印象があったが、その動きを逆手にとって、終始7長澤が巧みなポジションを取り続け、そこに2高田からの縦パスがバシバシ入っていた。14大熊、9蓮川が川崎戦と比べて2割減ぐらいのパフォーマンスだったため――天然芝のせいか、コンディションのせいかは分からないが――あと一歩攻めきれない場面が続いたのは終わってみればもったいなかったが、この2人のホットラインはかなり強烈な武器となっていた。そして、6高橋は常に最終ラインからボールを引き出せるポジションを取りながら、そこで受けて叩いて終わりではなく、叩いた次のビジョンが常に鮮明だった。そして、そのビジョンを現実にするテクニックも、見ていて惚れ惚れするものだった。「センターラインが強いチームは強い」とよく言われるが、この試合の前半は、まさにその言葉がピッタリだったと思う。
 だが、川崎戦に続いてこの浦和戦でも後半に入って東京は苦しくなった。その要因は共通していた。それが「相手のシステム変更」。川崎は前半4−2−3−1で戦っていたが、後半頭から3バックに変え、システムを噛み合わせてきた。そのことにより川崎にも横幅を使われ、少し守備の網が広がったところでその隙間に縦パスを入れられ、ヘルプやマークが追い付かない場面が増えた。浦和は前半4−4−2で戦っていたが、後半頭から4−3−3(中盤逆三角形、ウイング型の3トップ)に変え、両ウイングが東京のウイングバックをけん制(押し下げる)手を打ってきた。東京は正直にそれを受けてしまって真っ正直な5バックになり、かつ3トップの両サイドの選手が相手のSBに対して前へ出て抑えるのか、プレスバックして抑えるのか混乱してしまい、同サイドのSB−ボランチ−FW間の距離が離れてしまったことで、相手にスペースを与えてしまった。さらに浦和が基準点型のFWを投入して2トップに再度戻した手にも対応しきれず、ずるずるラインを押し下げられたことで、最後の最後同点ゴールを許してしまった。まあ、この同点ゴール前に2つ、手を使ったプレーに対する微妙なジャッジが…というのは引き分け惜しみになるので止めておくが、いつ追いつかれても不思議ではないという流れを打破できなかった点は、少し残念だったように思う。


 冒頭、クラ選とワールドカップのレギュレーションが一緒と書いた。そのワールドカップ、日本代表は全く力を出し切れず、グループリーグで1つも勝てずに帰国の途についた。そして、世間では盛んに「自分たちのサッカー」というフレーズが飛び交っていた。日本代表における「自分たちのサッカー」が何なのか?私にはよく分からないし、ここで掘り下げるつもりもない。また、このフレーズはほとんどのケースにおいて、いい意味では使われていなかったように思う。
 ただ、私自身は批判を覚悟で書くが、このクラ選では今の「自分たちのサッカー」の根幹であるこの3−4−3を用いた戦いを何があっても最後まで貫いてほしいし、いわゆる「Bプラン」はいらないと思っている。上でも書いた通り、関東ではすでに研究され始めていることは否定しない。また、グループリーグで相見える愛媛FCユース、ヴィッセル神戸U−18、A.C.AZZURRI YOUTHがどのような手を打ってくるのか分からず、「Bプラン」を持たないことのリスクは、私が思っている以上に高いのかもしれない。その結果、日本代表と同じ道を辿る可能性も小さくないのかもしれない。けれど、相手が研究してくるということは、試合中にシステムを変えて対応してくるということは、相手から見た「東京U−18のサッカー」は小さくない脅威であるとは言えないだろうか。また、プリンスリーグ関東を戦い抜き、その先のプレミアリーグ昇格決定戦へと歩を進め、再びピラミッドの頂点へ舞い戻る過程の中で、今の「自分たちのサッカー」が全国の猛者を相手にどこまで通用するのかを、混じりっ気なく感じることの意義は絶対にあると思っている。もちろん、目の前の試合を全力で戦うことが大事だ。この大会を勝ち抜くことも大事だ。だけど、クラブとして純度の高い全国とのぶつかり合いが2012年のクラ選以来となる今大会において、結果よりも大事なものがあると感じている。結果よりも大事なものが得られるチャンスだと感じている。そのために、とにかく自分たちを出し切ってほしいと、切に願っている。