続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

「Fiesta」に染まる前に

 J1クラブは、6月1日に行われたナビスコカップ予選リーグ第7節を持って中断に突入。J2以下はモリモリ試合が行われますが、世の中はワールドカップモードに突入しております。そんな4年に1度の祝祭を前に、自分なりに大テーマ2つに分けて書いてみたいなぁと思うことが浮かんだので、徒然書いてみます。


1:守備を安定させる二択
 先日、中の人の遥か斜め上をいくアクセス数をいただきましたこちらのエントリにて、すごく簡単にではありますが、開幕戦から5/17 G大阪戦までの変遷を辿りながら、「可変型、どうよ?」という話まで妄想させてもらったところです。その中で、こんなセンテンスを書きました。

 川崎、広島戦を除いた他の試合では、2トップ+トップ下が上手く前線からのプレスを行い、そこに連動して3センターハーフでボールを取りきってしまう形が目立つようになり、最終ラインに過度の負担がかからずに守れていたことで失点数は減りつつありました。しかし(4/29に戦った)名古屋は、闘莉王からの大きなサイドチェンジのパスやボランチを経由した素早い左右の転換など、明確な意図を持って東京の3センターハーフを左右に揺さぶり続けました。現代サッカーにおいて、ピッチの横幅を3枚でスライドしながらカバーし続けるのは正直困難な作業。東京としては上手くワンサイドに追い込み、そこへ人数をかけて奪いきる形が理想で、ボールを上手くタッチライン沿いに「運ばせれば」しめたものなんですが、この試合は中央から次々とサイドを変えられたことにより、3枚でスライドして守るある種の限界を露呈することとなりました。

 そして、8失点を許してしまった中断前のナビスコ3連戦では、もろにこの不安部分を突かれた印象があります。
 もう少し、この部分を掘り下げてみます。4−3+前線3枚の守備の仕方として、マッシモ監督が第一に見せている形として、「前線の3枚がCB&ボランチを監視」「相手SBへはインサイドハーフが出て行ってチェック」「ボールを外に追い出し、そこに人数をかけて奪いきる」の3点が顕著に見られます。しかし、清水や鳥栖は、そのやり方に対してうまく逆手に取って、東京の守備組織を混乱に陥れました。代表的なシーンを、図で表してみます。シチュエーションは「東京が4−3−1−2、相手が4−2−3−1。相手CBから右SBへボールが出たあと」となります。

 上でも書いたとおり、相手SBにはインサイドハーフが当たりに行く約束があるため、飛び出してチェックに行きます。この時、相手のボランチに対して、トップ下だけでなく2トップのどちらか少し下りてきて視野に入れられていればいいのですが、それができずに相手ボランチに対してトップ下だけが見ている形も散見されました。こうなると、当然監視されていない方のボランチは自由に動くことができ、フリーでボールを受けられるポジションを取りに行きます。では、このボランチに対して誰が行くのか?となった際、ここ3試合では主にボールとは逆サイドのインサイドハーフが少し中に絞って付きに行きました。しかし、その結果として逆サイドがガラ空きとなり、左SBに難なく高いポジションを取られる場面が多く目につき、長いサイドチェンジのパスを通されて一気にピンチという場面もありました。
 さらにもう一つ。インサイドハーフが相手SBに当たりに行く際のコース限定が甘く、相手SBは詰められているけど比較的余裕を持って次のパスコースを見つけられる、というシーンも何度か見られました。このことにより、インサイドハーフが飛び出した後のスペースが相手にとってそのまま「オイシイ」スペースとなり、相手の右SHやトップ下、場合によっては1トップの選手は楽にポジションを取れます。で、そのスペースに入ってきた選手に対して、多くの場合レジスタがフラフラっと引きずられてしまい、今度はバイタルエリアがスカスカとなります。その次は推して知るべし…じゃないですけど、斜めに走ってくる選手を掴まえられない、ボールと逆サイドの大外の選手に対応できない、バイタルにいる相手に対してCBが厳しい状況で食いつき、そこで生まれるギャップを突かれるなど、とにかく最終ラインの選手は常に後手の対応を強いられてピンチ、失点に…というケースもたびたび見られました。
 では、これらの守備時のリスクをどう減らしていくか?という点に話を移します。いくつか方法論があると思いますが、私は二択だと思っていまして。それが、「ラインを落とす」か「スタートのシステムを変える」か、です。


 まず1つ目の「ラインを落とす」ですが、そもそも、個人的には4−3−1−2がいわゆる前プレに向いているシステムだとは思っていません。3−0と快勝したナビスコ鹿島戦や、プレスの勢いで2点を立て続けにもぎ取ったリーグのG大阪戦などから「そう?ハマっているじゃない」と思われる方もいらっしゃると思いますが、結果として、上で書いた理由も含めナビスコ3連戦ではまったくハマらず、むしろ逆手に取られてズタズタにされました。そのハマらない理由(だと私が思っている点)を解消するためには、後ろ向きかもしれませんが、ラインを落として、ハーフウェーライン手前から自陣に相手を引き込んだところから守備をスタートさせることが必要だと考えます。図にすると、こんな感じ。

 最終ラインの設定は、自陣ペナルティエリアから10m程度離れるにとどめ、トップ下が自陣に入るようなバランスで全体的にラインを落とす。その上で、守備のやり方として、

1:2トップはCBへチェックに行くのではなく、ボランチへのパスコースを消すことを最優先する。
2:相手SBにボールが出た際、インサイドハーフは無条件で飛び出していくのではなく、中の様子を見ながら(できれば中へのパスコースを消しながら)少しずつ出ていく。
3:同時に、トップ下がボールに近い方の、ボールから遠い方のFWが、少し下りてボールから遠い方のボランチをケアする。
4:ボールとは逆サイドのSBに対してはインサイドハーフが監視し、あまり中へ絞らないようにする。
5:レジスタは、とにかくポジションを動かさずにバイタルを埋めることにこだわる。

 という5点を基本線としながら、相手を囲い込めるクローズなシチュエーションを作り、そこで奪いきるという形がいいのかなと。もちろん、奪う位置が相対的に低くなることによって、攻撃の勢いが減退する可能性は高くなります。しかし、これから暑さが本格化していく中で、限りのある運動量(走行距離)をどこでたくさん使うのか?と考えた時、今季ここまでのやり方などを踏まえると、私は「コレクティブな、あるいはどシンプルなロングカウンターの際に駆け上がっていく」ことに使う方が効率的だと思っています。であるならば、守備は自陣に籠る…というと若干語弊があるのですが、高い位置でコンパクトにするのではなく、少し自陣に重心を下げたところでコンパクトさを保って、守備時に一人ひとりが無駄な足を使わず、頭と個人戦術(もしくは2、3人のグループ戦術)で守ることは必要になってくると考えています。


 2つ目の「スタートのシステムを変える」。とは言いながらも、前からのプレスを全く放棄することを是としてしまうのは、少し憚られるところ。であるならば、「スタートから10分、15分は前プレも採り入れてアグレッシブさを見せつつ、90分をマネジメントする中で、引いて守る時間も作る」というプランがパッと思いつきます。ただ、上で書いたとおり、私は4−3−1−2が前プレには向いていないと。ならば、ゲーム開始時のシステムを前プレに向くものにしてスタートすることがスムーズだと思います。ただ、本来はここで4−4−2で…とか書いてしまいたいところですが、甘っちょろい理想として、4−3の形はそのままにどうにかしたいなと思っていまして。そうなると、たどり着くのはウイングを置く4−3−3となります。図にすると、こんな感じ。

 こちらはラインをできる限り高くし、レジスタがちょうどハーフウェーラインに位置するような重心軸でコンパクトさを形成する。その上で、守備のやり方として、

1:1トップはCBへチェックに行くのではなく、ボランチへのパスコースを消すことを最優先する。
2:相手SBにボールが出たら、ウイングが当たりに行く。
3:相手ボランチインサイドハーフが、相手トップ下はレジスタが監視する。

 という3点を基本線とし、イメージとしてはウイング、インサイドハーフレジスタマンマーク気味に張り付くぐらいのイメージでガツンと10分、15分プレスを頑張る!という感じ。その後、少し4−3−3のままでもいいですし、4−3−1−2に変えてでもいいですし、とにかく少しラインを落として自陣に引き込む守り方で運動量も担保するようなやり方ができればベストかなと。今季ここまでの東京は、かつてないほど先制点を奪えるかどうかが勝敗に直結しています(ここまでの公式戦20試合で、先制時:6勝2分け、非先制時:1勝2分け9敗)。その中で、スタート時のゲームプランがハマらないのは、地味に致命傷になりかねません。立ち上がりから行くのか、立ち上がりは抑えるのか、それをどう表現するのかは、もっとチーム全体で意識を高めて共有してほしいなと思う次第です。


2:1を踏まえた(妄想過大な)適材適所を考える
 中断期間が各チームにもたらす確実なプラス材料は、ケガ人の回復(カムバック)。東京も、現在ケガで離脱している選手が数名おりますが、この中断期間にリハビリ&コンディショントレーニングをみっちりやって、中断明けに戻ってきてくれる選手もいるでしょう。そんなケガ明けの選手も含めて全員が起用できるという前提で、1で書いてきたことも踏まえた適材適所を、私なりに考えてみました。まずは4−3−1−2から。

 GKと4バックは不動。レジスタの高橋は、ここまではちょっと動きすぎな(ポジションを無為に空けてしまう)印象が否めませんが、やはりカバーリング能力やエアバトルの強さは必要で、前プレを行わずに自陣でスイープする役割であれば、十分に機能するかなと。インサイドハーフは守備能力とポジショニングの良さ、加えて奪った後の一発目のパスに期待して米本と羽生をチョイス。東、三田は時間帯により、少し攻撃に出たい際のスイッチ役として起用。トップ下は河野がファーストチョイスで、幸野のブレイクスルーにも期待を寄せたいところ。2トップは「キープ、ポストプレーができるタイプ」と「スピード、アジリティで相手を揺さぶれるタイプ」を並べたいと思っていて、ここまでを見る限りベストコンビはエドゥーと武藤。平山、渡邊は前者、石川、平岡は後者のサブとして臨機応変に起用できたらいいなと思います。特に石川は、マッシモ監督が役割をきっちりと整理して伝え、石川がそれを正しく理解できれば、2トップの1角として一気に台頭しそうな気もしています。続けて4−3−3。

 こちらもGK+4バックまでは変わらず。3センターハーフですが、前プレをベースに考えた時、ポポヴィッチ時代にずっとコンビを組み、良くも悪くも活動エリアが広さやアグレッシブさを売りとしてきた米本、高橋の「ダブルボランチ」を復活させ、ケガをする前までレジスタとしてすごくいいプレーを見せていた野澤をサポート役にする形がハマりそうな印象があります。そして、梶山はいつ戻ってこられるかわかりませんが、一通りレジスタインサイドハーフで試してみて、どこにハマるか見定めるのかなと。ベタに考えれば、レジスタにハマる気はしていますが、さてさて。3トップはセンターにエドゥー、左に武藤、右に河野がファーストオプションですが、期待したいのは平岡。まだ生でそのスピードは体感できていませんが、評判通りであれば、左武藤、右平岡の槍コンビは、いざカウンターとなれば相手にとって確実に脅威となるはずで、どこかで一度見てみたいコンビではあります。また、左に東、右に河野というコンビは、上手くいけば速攻一本槍ではなく、うまくタメを作りながら後ろからの上りを促せる形を作れるという意味で面白そうな気もします。


 まとめ。前回のエントリの終わりに、こんなことを書きました。

 しかし、確実な守備は着実にこなせるようになってきたからこそ、よりアイデアのある、勢いのある攻撃をそこに乗せていこうと考えた時、次なる手は何があるだろうか?と思いを巡らせると、私は「攻め残り」と「遅攻」だと思っていまして。
(中略)
 ちょっと前のエントリで、データを用いながら「ボール支配率、パスの本数にこだわるチームではなくなった」と評しました。ただ、カウンター「しかできない」チームになってしまうのは、今のスカッドを見る限り正直もったいない部分もあります。マッシモ監督がこの中断期間をどのように活用するかは分かりませんが、より守備の組織力を高めるのと同時に、多少なりとも遅攻の構築を図ってくれたら嬉しいかなと、今は思っております。

 G大阪戦の快勝に浮かれて、次のステージのことを考えてしまいましたが、やはり現実はそう甘くなく。まだまだ守備でやることがたくさんありますし、攻撃もバリエーションを求めるのではなく、一撃必殺を磨く方が現状は正しい道のかなと考えを改め直したところです。浅はかでした。
 それで、現状の課題は何で、中断期間中のキャンプでどこを重点的に取り組むかはマッシモ監督の腕の見せ所になるので素直に楽しみにしていたいところですが、漏れ伝わってくるキャンプの様子や、中断明けに見せるチームの姿がどれだけ自分の妄想とかぶるか(あるいはズレているか)を確かめたいという自問自答のために、今日はエントリを仕上げてみました。まあ、かぶってようとずれていようと、チームが上向いてくれていれば何も言うことはないんですが、こういう目線で書いてみるのもアリかな?と。