続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ここまでベストイレブン

 J1が開幕して約2ヶ月、7試合が終わりました。スタートダッシュを決めたチーム、決められなかったチーム。期待に応えているチーム、期待以上のチーム、期待ハズレのチーム。上を見られるチーム、下に引きずられるチーム。いろんな視点で、一応の「隊列」が整ったと言える状況にあります。
 ってなところで、そんな序盤を振り返る意味も込めて、ここまでのベストイレブンを勝手に考えてみました。もちろん、全チームの全試合を見ているわけではないので、一ファンの戯言と思って見ていただけたら幸いです。



J1 ここまでベストイレブン

GK 河田晃平(甲府
DF 新井場徹C大阪)、菊池光将(大宮)、キム・クナン(新潟)、下平匠(大宮)
MF 金澤慎(大宮)、米本拓司(東京)、中村俊輔(横浜)、柿谷曜一朗C大阪
FW ズラタン(大宮)、マルキーニョス(横浜)
サブ キム・ジンヒョンC大阪)、土屋征夫甲府)、青木拓矢(大宮)、兵藤慎剛(横浜)、渡邉大剛(大宮)、工藤壮人(柏)、大迫勇也(鹿島)

フォーメーション

―――ズラタン――マルキ――――
−柿谷――――――――――中村−
――――米本―――金澤―――――
下平――キム―――菊池――新井場
―――――――河田―――――――

 複数選んだのは、首位をひた走る横浜(3人)、快進撃を続ける大宮(6人)、実を取ってしぶとく上位に食らいつくC大阪(3人)、昇格組で唯一複数勝利、得失点差プラスを実現している甲府(2人)の4チーム。逆に、3位浦和は誰かが傑出して良いのではなく、チームとして上手く回っている印象なので選出なし、6位名古屋も闘莉王を選んでも良かったのですが、それより選びたかった選手がいて落選、結果0人としました。それでは、個別の選出理由です。


GK 河田晃平(4試合(360分)出場 2失点)
 3/20のナビスコカップ清水戦で出番を得ると、その勢いのまま第4節川崎戦でJ1デビュー。すると、そこまでの3試合で1分2敗、4失点と苦しい戦いを強いられていたチームは、2勝2分、2失点と好転。河田自身もここまでセーブ率84.6%と(出場時間数は少ないながら)J1トップ。第7節鹿島戦も20本以上のシュートを浴びながら無失点でしのぎきる好パフォーマンスを見せました。反射神経の良さ、反応の良さに長け、DFラインとの連携できっちり正しいポジションも取れている印象があり、荻が悪いとは思いませんでしたが、現状は彼がファーストチョイスでしょう。サプライズ枠の意味も込めて。


DF 新井場徹(5試合(450分)出場 0得点)
 正直、SBの選出は悩みました。なにせ、3バックをベースとするチームが5チーム(浦和、広島、湘南、大分、磐田−くっきり上位、下位に分かれているのは興味深い−)あって、4バックのチームもこのポジションで悩んでいるところが多いのか、SBとしてここまで7試合フル出場している選手が片手で数えられるほどしかおらず、出場数を限定しなかったとしても好調を維持している、安定している選手がほとんど見当たらないですから。代表(海外)を見れば長友、内田、酒井宏、酒井高と駒は揃っているように見えますが、彼らを脅かす、突き上げる選手が出てきていない点は、ちょっと憂慮すべき点かもしれません。
 って、全然話それましたね(苦笑) とにかく、そんな中で新井場は移籍1年目ながら地元に帰ってきたこともあってすんなり馴染み、攻撃は左SB(主に丸橋)に任せ、ベテランらしい巧みなポジショニング、ディレイ、中への絞りなどで単独で守れるケースが多く、C大阪の守備力向上に一役も二役も買っている印象。かつ右SHでプレーする選手(山口や南野)の守備負担軽減にも寄与していて、まだまだ老け込む選手ではないことを大いにアピールできていると思います。


DF 菊池光将(7試合(630分)出場 1得点)
 もはや、この勢いがフロックでも一時的でもない、実力によってもたらされているものであることを示しつつある大宮。5失点は浦和と並んでリーグ最小タイですが、それをDF&センターラインで支えているのが菊池。特筆すべき数字として、第3節までと第4節以降の平均オフサイド奪取数が1.66→7.75と飛躍的に伸びていて、高くて強気な現状のライン設定がビッタリはまっている印象を受けます。もちろん、チーム全体が意思統一できているおかげではありますが、それをコントロールしている菊池の存在価値を見誤ってはいけないでしょう。また、CBI数(クリア、ブロック、インターセプト数の合計値)52はリーグ3位と個でも攻撃を跳ね返せており、さらにタイプの異なる高橋、片岡のいずれとコンビを組んでも全く遜色ない順応性の高さも好印象で、攻守両方のセットプレーで頼りになる高さも相変わらず。いわゆるリーダー然とした立ち居振る舞いにも風格が出てきており、菊池(とダブルボランチ)が健在な限りは大崩れがないんじゃないか?と思わせるパフォーマンスを発揮していると思います。


DF キム・クナン(7試合(630分)出場 2得点)
 13位のチームから選ぶことにクエスチョンマークを浮かべる方もいると思いますが、相変わらずの「守高攻低」で下位に沈んでいる新潟にあって、その「守高」を支えているのがキム・クナン。193cm、86kgというJでは規格外の体格そのままのパワフルなプレー、セットプレーでの高さも去ることながら、危機察知能力と瞬間的な寄せの速さも持ち合わせており、あっけなく交わされてシュートに持ち込まれるシーンを見かけることは1試合に2、3回あるかないか。CBI数44は上位に位置する数字で、新潟が鈴木大輔(→柏)、石川直樹(→仙台)という主力CBを同時に失いながらも守備力をキープできていて、鳥栖が守備力を低下させている(15失点は川崎と並んでリーグワーストタイ)ことは、もちろんその他の事情はあるでしょうけど、キム・クナンを得たこと、失ったことによるものが主要因として挙げられることは、疑う余地がないのではないでしょうか。


DF 下平匠(7試合(630分)出場 0得点)
 昨季は守備の不安さも覗かせることが多かった下平ですが、今季はきっちりチームの一員として堅牢な守備組織の構築に貢献できており、CBI数45と菊池に負けずおとらずの数値をマーク(昨年の最終値は調べていませんが、おそらく昨年の同時期と比べて高い)。また、持ち味である攻撃面ではチーム最多となる289本のパス(成功率 76.5%)を記録し、アシストもすでに2つマーク。ビルドアップ、攻めの第一歩として役割を果たしながら、オーバーラップしての一仕事もできており、チームの大事なアクセントとして機能していると言えるでしょう。また、新井場のところで「SBとしてここまで7試合フル出場している選手が片手で数えられるほどしかおらず…」と書きましたが、下平はその少ない中の1人(その他は徳永(東京)、福田(甲府)、キム・ジンス(新潟)のみ)。とりあえず、この「フル出場」だけとっても、今のSBの中ではJトップレベルと言うべきでしょう。ちと寂しいけど。


MF 金澤慎(7試合(630分)出場 2得点)
 昨季後半戦、ベルデニック監督の信頼を得て出場機会を増やし、終盤には残留を決めるゴールを奪うなどその存在感を少しずつ高めてきた金澤ですが、今季は完全にブレイクスルー。ビルドアップやバイタルエリアのカバーは青木にある程度任せ、自身は豊富な運動量と的確なチェッキングでピッチをところ狭しと駆け回ってあらゆる場所でボールを奪い続けたかと思えば、攻撃の際も思い切った飛び出しで前線の選手と上手く絡み、今季はすでに2ゴール。文字通り躍進を続ける大宮のダイナモとして、余りに眩い存在感を放っています。29歳という年齢は別にベテランでも老け込む年でもなんでもないですが、それでもきっちりと役割を整理され、チームの中で何をなすべきかはっきりと自覚し、やれることを実直にやり続けさえすれば、この年齢で更に殻を突き破ることができることを見せていることは、他の選手やサッカー関係者に訴えかけるものが大きいのではないかと思っています。これがフルシーズン継続できたら…文句なしのMVPでしょうね。


MF 米本拓司(7試合(508分)出場 0得点)
 今ひとつ勢いに乗り切れない東京にあって、唯一継続して好パフォーマンスを見せ続けているのが米本。高い危機察知能力をベースとした寄せの的確さ、日本人とは思えない、ボールホルダーの「外側」から巻き込んでボールを奪えてしまえる身体の柔らかさやしなやかさ、1度タックルを外されても2度、3度追うことができる粘り強さなど、センセーショナルなデビューイヤーとなった09年にサッカーファンが感じたであろう能力を、その時より高く、適切に見せることができている印象。米本を知らない人に「彼、10年、11年と立て続けに左膝の靭帯をやっちゃんたんだよ」って言うと、きっと驚かれるはずで、(ここだけ東京ファンの地を出しますが)今再び、彼に注目しておいて損はないですよ。


MF 中村俊輔(7試合(628分)出場 3得点)
 今年35歳になろうとしている中村が、ここまで質も量もハイレベルなプレーを見せてくれるだなんて、少なくとも私は全く想像できませんでした。もちろん、彼が素晴らしい選手であることに疑いの余地はないのですが、今季は多くのプレーに明確な意図と味方、そして見ている人へのメッセージが込められており、いわゆる「魅せるプレー」1つ取っても、相手の虚を突いたこと、しかし、味方にとって一番有効なプレーであること、そして、ファンの感嘆を誘うこと、この3つを同時に発信していることがしっかりと伝わってきます。これができる選手はごくごく一握り。紆余曲折あったサッカー人生の最終盤でしょうけど、「完成形」とも言える今季の中村のプレーは、横浜ファンのみならず、全国のサッカーファンに見てほしいです。


MF 柿谷曜一朗(7試合(625分)出場 4ゴール)
 彼方、キャリアの晩年を迎えて最後の輝きを放っているベテランがいれば、此方、明るい未来に向かって勇猛邁進し続ける若手もいるのがどの世界の常でもあるとするならば、中村と柿谷はまさに、今季のJにおいてその代表を担う選手なのかなと。昨季からその力を発揮していましたが、今季はC大阪のエースナンバーである「8」を背負って、名実ともにC大阪の中心軸として素晴らしいプレーを披露しています。オン・ザ・ボールのプレーは見ていて惚れ惚れするものがありますし、今季はオフ・ザ・ボールの動きもより改善されている印象で、相手をチョロっと外してボールを引き出し、本人もこだわるファーストタッチ(トラップ)で自分の有利な体勢に持っていき、相手に寄せられないままシュートを放つ、なんてシーンが増えたように思います。ここまでナビスコを含めれば11試合6ゴール。最終的にこの数字がどこまで伸びるのか、楽しみでしかありません。


FW ズラタン(6試合(515分)出場 3ゴール)
 昨季は同時期に加入した「スーパーノヴァ」ことノヴァコヴィッチの方が注目を集め、実際にチームへの貢献度も高かったように思いますが、今季大宮の攻撃を牽引しているのは、間違いなくズラタンその人。依然腰痛を抱えながらのプレーではあるようですが、いざピッチに立てばそんなことは微塵も感じさせず、ポストプレー良し、裏への抜け出し良し、クロスに合わせるポジション取り良しと、ほぼ文句のつけようがありません。また、守備においてもボールホルダーの選択肢を奪いながら詰めていく−例えば、CBがボールを持った際にまずボランチへの縦パスのコースを消し、さらにワンサイドに追い込んでいく−クレバーさと、後半になってもそれをやめない継続性で、最小失点に大きく貢献できています。ノヴァコヴィッチ、長谷川、富山いずれと組んでも自身の良さが削がれることはなく、非常に親和性が高い点も評価材料。パリのズラタンも凄いですけど、大宮のズラタンも、侮ったものではないですよ。


FW マルキーニョス(6試合(539分)出場 6得点)
 中村俊輔が35歳というのも驚きですが、マルキはもう38歳。それでいて、容姿含めて若々しさを保っているんですから、もう恐れ入りました!の一言だけです。6得点のうち5得点は昇格組の湘南と、当時ボーナスステージだった清水戦であるためまあまあまあ、という点はありますが、決定率29%は、二桁のシュート数で複数得点している選手の中で4位(トップ3は佐藤 42%(広島)、豊田 32%(鳥栖)、渡邉 31%(東京))。第7節新潟戦ではゴール前数mの場面で打ち上げてしまいましたが、衰えない決定力は横浜の武器の一つとなっています。また、ズラタン同様前線からの守備を怠ることはなく、チームにとっては攻守両面でまだまだ欠かすことのできない存在であることは間違いないでしょう。


サブ キム・ジンヒョン(7試合(630分)出場 6失点)
 ここまでフル出場しているGKの中では、防御率0.85で3位タイ、セーブ率82.1%でトップ。10年に昇格即3位と大躍進したシーズンはキム、茂庭、上本のトライアングルがとにかく踏ん張り続け、煌びやかな攻撃陣を後押ししたわけですが、その年を彷彿させるパフォーマンスの良さを魅せられている印象です(ちなみに、茂庭もCBI数52でリーグ2位)。


サブ 土屋征夫(6試合(540分)出場 2得点)
 もう、敬意を表して。4年もの間J2でプレーすることとなり、久々に戻ってきたJ1でどれだけやれるのか懐疑的な目を持っていた人もいたと思いますが(私もそう)、こんな超人的な技ができるほど身体能力に陰りが見えませんし、セットプレー絡みで2得点を奪うなど、相手エリア内での決定力もさすが。恐るべき38歳(7月で39歳)です。


サブ 青木拓矢(7試合(620分)出場 1得点)
 昨年、当ブログでU−23ベストイレブンってのをやった際に「もともと持っていた守備のスケール感はそのままに、機を見た攻撃参加のセンス、精度を高めて大宮の残留に貢献した」と評しましたが、今季は阿吽の呼吸を見せている金澤とともに更にワンステップ登った感すらある印象。他の選手と組んだ際にどういう特徴を出せるか分かりませんが、このパフォーマンスを続ければ、年齢も加味して代表が見えてくるのでは?と言っても過言ではないでしょう。


サブ 兵藤慎剛(7試合(622分)出場 2得点)
 この枠は中町でも、兵藤でも、富澤でも。そこは個人の好みで選んでいただければと思いますが、私は兵藤で。中盤ならどこでもでき、最悪SBまでこなしてしまうユーティリティさは非常に魅力的ですし、どのポジションにいても、そのポジションに求められる仕事をひたむきに、丁寧にこなす姿は見ていて好印象。味方を活かしつつ、自分も生きることができるポジション取りも素晴らしく、一家に一台欲しいタイプ。


サブ 渡邉大剛(7試合(564分)出場 0得点)
 今まではサイドで一辺倒、というイメージが強かったのですが、今季は中へカットインするところと外へ勝負するところの判断が良くなった印象で、事実第7節のさいたまダービーではプレーの流れの中で右から左へ上手く流れ、左サイドからのクロスでアシストを記録。その戦術眼の良さは記者陣にも好評らしく、潤滑油としてチームに大きく貢献できています。


サブ 工藤壮人(7試合(622分)出場 6得点)
 失点が多く、なかなか成績が安定しない柏ですが、攻撃陣は7試合14得点でリーグ2位と好調を維持。その中で、堂々チームトップスコアラーなのが工藤。なんと、自身がゴールを奪った試合はJリーグに限れば26試合、全ての公式戦で数えると35試合連続負けていないという、とんでもない記録を更新中。真ん中でもサイドでもきっちり役割をこなした上で得点を奪えていて、そのパターンも増えてきた印象で、この記録がどこまで伸びるのか注目です。


サブ 大迫勇也(6試合(385分)出場 3得点)
 最後の1人を誰にするか、豊田(鳥栖)、渡邉(東京)、佐藤(広島)、大久保(川崎)、ウーゴ(甲府)など多数悩みましたが、(東京ファン的に)今季すでに対戦していて、その厄介さを身をもって体験した大迫で。怪我の影響で出場時間こそ少ないですが、大迫がピッチにいるといないとでは、全く前線の流動性や活力が違うことは、もはや明白な事実。ダヴィとの共存も現時点では全く問題なく、今後の得点量産に期待したいところです。