続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

今季のJリーグを振り返る J1編 その2

 その1に続いて、10〜18位まで行きます!


10位 FC東京(14勝6分14敗 47得点44失点)
得点者:ルーカス10、渡邉6、ブチチェヴィッチ6、石川5、長谷川3、田邉3、エジミウソン2、梶山2、森重2、チャン・ヒョンス2、中村1、高橋1、椋原1、河野1、徳永1 (谷澤1)

 涙に暮れたJ2降格を無駄にせず、良い意味で代え難い経験を積んで、1年で戻ってきました。しかも、ACL出場のオマケつきで。というわけで、今オフはポポヴィッチ監督の招聘に始まり、大袈裟ではなく「1ポジション2名」の選手層を誇れるまでの補強に成功。どちらも貪欲に狙っていける体制は整いました。
 まずポイントになるのが今野の穴。加賀、丸山、チャンを加えて量は確保しましたが、今野と同レベルの日本人DFがごまんといるはずもなく。ただ、しっかりとDFラインから繋ぐことはブレずにやるはずで、加賀はそういうタイプではなく、丸山、チャンがU-23代表召集によりキャンプにフル参加できない中、このままいけば開幕は徳永、森重のコンビが濃厚。丸山、チャンは継続して代表招集が見込まれるので、シーズンのベースもそうなるかもしれませんね。となると、ホットスポットは右SB。北斗か、椋原か。中盤もボランチの層がやや不安でしたが、米本が開幕に向けて悪くない調整ができており、長谷川、橋本の新加入選手がポポヴィッチ監督から評価を得ていることを踏まえれば、梶山、高橋を加えた5人で回せることに。SHは6人、FWもセザーの移籍が濃厚ですが5人で競える状態で、「練習で調子の良い、アピールができた選手を使っていく」という言葉には説得力が感じられます。もちろん、リーグとACLを並行する上で思わぬアクシデントはあるでしょうけど、今は期待の方が強くなってきています。

 私は東京ファンでございますので、東京についてはそのうちシーズンを振り返るエントリを別に書きたいと思っております。短くまとめるならば、初体験や紆余曲折を経ながら、来季に希望を抱かせるシーズンラストだったかなと。来季に向けては出入りが多い?という話もちらちら聞こえてきていますが、さぁどうなることやら。


11位 鹿島アントラーズ(12勝10分12敗 50得点43失点)
得点者: 興梠11、大迫9、ドゥトラ8、遠藤6、本山3、ジュニーニョ3、岩政3、小笠原2、レナト2、山村1、西1、柴崎1

 昨シーズンは様々な要因が重なり、スタートで大出遅れ。夏場も調子が上がらず、2桁順位に沈む時期も長かったですが、終わってみれば帳尻合わせて6位フィニッシュ。世代交代も睨みながらのシーズンとしては、それほど悲観するものではなかったのかなと。その1年を経て、クラブはレジェンドであるジョルジーニョを監督に招聘。こういう一手は、例えばストイコビッチ監督や、今シーズンのコンテ監督(ユベントス)など、ハマれば一気に事態が好転するもの。ファンはそうなることを願っているでしょう。しかし、はっきり言って移籍収支はマイナス。そりゃあ、野沢、田代、フェリペと昨年のレギュラー格を3人失って、即戦力の補填がジュニーニョ、岡本、レンタルバックの佐々木ではそう言わざるを得ないでしょう。期待のルーキー(と言われている)山村も、いきなり中田、岩政に割って入るだなんておこがましく、しばらくは昌子とCB3番手を争うことになるはずで、即戦力とは言えないところ。高卒ルーキー4人も、まずはどれだけアピールできるかからのスタートで中長期的なものですし。
 ただ、今年ジョルジーニョ監督がメインシステムを「中盤ダイヤモンド型の4−4−2」にするという記事を見て、これほど理に適ったものはないなと納得。小笠原、青木、増田、本田、柴崎、(CB起用が中心視も)中田、山村と、中盤センターを担える選手は枚挙に暇がなく、しかも守備寄り(青木、本田、中田)、攻守平均(小笠原、柴崎、山村)、攻撃寄り(増田)とタイプの異なる選手を取り揃えているわけで、SHタイプの野沢、フェリペの補填をしなかった中にあっては、言ってみれば至極全うな選択ではありつつも、これほど効果的なものはないのかなと。そこにトップ下・本山ががっちりハマり(かつシーズンフル稼働できれば)、CHとしての遠藤、トップ下としての土居あたりが成長を見せられれば、かなり強力な中盤になると思います。ACLがない分リーグ戦に集中できますし、かつこのクラブのACLへの思いを考えれば、そして、ジョルジーニョ新監督が「ここで長くやりたい。そのために、1年目は大事」とエルゴラのインタビューで答えていた点を鑑みれば、今年の鹿島は新たな「いやらしさ」を見せるチームであり続ける可能性が高いと思います。あー、めんどくさ。

 世代交代の過渡期、と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、停滞感もありながら、しかし未来への希望も生まれたシーズンだったかなと。まず驚いたのが順位変遷で、今季一度も、ただの1節も1桁順位になることのないままシーズンを終えたんですよね。ジョルジーニョ監督を新たに招聘し、ベテランと若手の融合を図ろうとする中、開幕から5試合を1分4敗とずっこけた点が最後まで尾を引いた感も否めませんが、得失点差プラス7ながら勝ち負け一緒と、最後まで星取りには苦しんだ印象があります。しかし、継続して起用していった柴崎、大迫は完全に一本立ちし、遠藤も完全に主力の一人になりました。また、山村、昌子の若手CBは来季以降への期待を十分に抱かせるパフォーマンスを見せ、梅鉢、土井、鈴木も少ない機会ながらそれぞれの大会でスタメンを経験。いわゆる「79年組」がまだまだ萎む歳ではないとは言え、そろそろ次も考えなければいけない中で、ジョルジーニョ監督は痛手を負いながら世代交代の萌芽を見せてくれたと思います。苦しみながらも、ナビスコカップ取りましたしね。
 来季に向けては、大津高の豊川、植田を獲得。さらに若手の成長を促して…と思っていたところで、発表されたジョルジーニョ監督の電撃退団。家族の事情とのことですが、さすがに驚きました。後任には何人か名前が上がっていますが、まず早急にここを決めて、新監督と戦力の見極めを行うことが必要不可欠。その上で、層の薄いSB、SHに補強ができれば。


12位 ジュビロ磐田(13勝7分14敗 57得点53失点)
得点者:前田13、山田9、山本康7、チョ・ビョングク6、松浦3、駒野3、山崎2、菅沼実2、ペク・ソンドン2、小林裕2、菅沼駿1、ロドリゴ・ソウト1、山本脩1、藤田1、宮崎1、阿部1、金園1

 3年目を迎えた柳下監督の下、昨シーズンは4年ぶりの1ケタ順位となる8位で終了。スルガ銀行カップで12年ぶりとなる国際タイトルを獲得し、山田、小林、山本康、山本脩、山崎、金園ら若手の選手が次々と成長を見せ、割と明るいイメージでシーズンを終えたと思ったんですが、クラブはその柳下監督に見切りをつけ、今シーズン新たに森下監督を招聘しました。この決断がいい方向に転がるかどうか、いい方向へ転がせるのか、森下監督はやや難しい立ち位置にいるというのが私の見方です。
 補強は守備陣がIN 宮崎、チョ・ビョングク、千代反田、菅沼駿⇔OUT 那須、加賀、岡田、大井、イ・ガンジンと大幅な入替になりましたが、チョ、千代反田はともにJ1でも実績のあるCBなので那須、加賀の移籍と収支はトントンだと思いますし、駒野が紆余曲折ありながら残留してくれたことで守備面での崩壊はさほど心配ないのかなと。攻撃陣もここに来て代表がらみで金園、山崎が数ヶ月の離脱となった点は痛手ですが、前田も駒野と同様に残留したことや、山田、菅沼実、松浦、押谷と特徴のある2列目の選手を揃えられたことは好印象。ボランチ那須の穴を松岡がしっかりと埋められるようであれば、ロドリゴ・ソウト、小林と3人で十分でしょう。ただ、先週末の清水戦を見る限りだと、少しチーム作りが遅れているような印象。清水のプレッシングに対して、それをかいくぐって前にボールを運ぶアイデアに乏しく、前田の1トップ、山田をトップ下に置いた4−2−3−1は何かしっくりきていないように見えました。特に山田が窮屈そうだったのが印象的で、いい形でボールを持つシーン自体が少なかった感じ。守備陣も藤田、チョのCBコンビは息の合い方がまだまだで、宮崎もちょっと不安。このまま4−2−3−1なのか、それとも昨シーズンある程度整っていた4−4−2でいくのか、その判断を誤ると、序盤で後手を踏む危険性があるでしょうね。

 上でのシーズン予想時短評でも書いたとおり、プレシーズンで上手くいかなかった印象のあった「山田トップ下」の4−2−3−1に見切りをつけ、山田を慣れ親しんだ右SHに置き、前田の下に松浦や山崎、あるいはペク・ソンドンと2トップを組ませる形でシーズンイン。開幕戦こそ札幌に引き分けましたが、そこから鳥栖、G大阪、柏と難しい相手に3連勝。第13節終了時には7勝3分3敗で3位、しかも30得点という驚異的な攻撃力でリーグを席巻するまでに至りました。その後も攻撃的な姿勢を失わずに9月までは優勝も見える位置で戦えていましたが、第27節東京戦で敗れたのを皮切りに、そこから8試合が2分6敗と大失速。この間の得失点が5得点16失点と完全に攻守のバランスを失ってしまい、何とか最後はG大阪相手に勝利してシーズンアウトしましたが、天国と地獄を見たシーズンだったと言っていいのかなと。
 57得点はリーグ4位タイで、得点者17人はリーグトップ。前田の2桁ゴールはもはや計算できるレベルなので驚きませんが、山田の9得点、山本康の7得点、チョ・ビョングクの6得点は予想以上でした。特に山田は2年目のジンクスなどどこ吹く風、より凄みを増した印象。とにかくシュート技術が高く、レンジが広く、判断も抜群で、抑えるポイントを掴ませない上手さが光りました。また、山本康をはじめ山崎、松浦、小林裕ら五輪世代が個性を存分に発揮できるレベルに来た印象もありますし、チョを筆頭にDF登録選手の得点合計が13は、闘莉王が荒稼ぎした名古屋の11を上回るリーグ最多。これは、駒野、山田という高い質をもったプレイスキッカーを抱え、セットプレーでもきっちり点を奪えていた証左かなと。一方の守備は、シーズン通して決してルーズだったとは思いませんが、半数の17試合で複数失点を喫するなど、耐久性に欠けていたことは否めず。これと言った原因は…パッと思い当たらないのです。ごめんなさい(苦笑)
 来季に向けては、すでに田中(関西大)の獲得と牲川(磐田U−18)の昇格が発表済み。ただ、即戦力となれるかは不透明で、現在の選手層をさらに厚くする一手、二手を見せられるかどうか。


13位 大宮アルディージャ(11勝11分12敗 38得点45失点)
得点者:長谷川5、ノヴァコヴィッチ5、チョ・ヨンチョル4、ズラタン4、青木4、カルリーリョス3、渡邉3、菊地2、渡部2、東1、金久保1、清水1、金澤1 (ラファエル2)

 J1に昇格したのが05年。そこからの順位が13→12→15→12→13→12→13とあまりにも安定感のある低空飛行を続け、しかし秋には「残留力」を発揮してしっかりとJ1に居続けるという、稀有なポジションを不動のものとしているクラブ。こういった「後半捲って帳尻合わせ」をさせてら、エバートンか大宮かってなもんです。オフの補強も、毎年「お金だけはあるのねぇ…」と溜め息を誘う流れが続いていて、今年もその流れを汲んではいますが、チョ・ヨンチョル、菊池、長谷川、下平、カルリーリョスと昨シーズンの所属クラブでバリバリスタメンを張っていた選手を一挙に獲得し、OUTもレギュラー格はイ・チョンスぐらいで、むしろ上手くスリム化に成功した印象(現在の保有選手は25名)。トータルで見れば悪くないオフだったと思います。
 今シーズンは練習試合などを見ていると4−2−3−1をメインシステムにしそうな印象を受けますが、だとすれば選手バランスは悪くない感じ。前線の4人は1トップに長谷川orラファエル、2列目に東、チョ、金久保、橋本(ラファエル)の中から選ぶとなれば、なかなか見どころがある印象。サイドをえぐってクロスを上げられるタイプが見当たらず、攻撃が中に狭くなってしまう恐れはありますが、それを良しとしてやりきってしまうのも手かなと。ボランチからも、カルリーリョスが金看板どおりなら攻撃にグイグイ参加してきそうですし、上田も長短のパスで攻撃に貢献できるタイプで、貧打に泣くことはなさそう。守備もボランチでは青木が昨シーズン大きな成長を見せ、中盤で戦える選手になりましたし、最終ラインも菊池、下平の加入で質・量ともにアップ。GKは相変わらず北野、江角と同等レベルの2枚を抱えていて、これといった穴が見当たりません。とは言え、1度全てが上手くいって結果を残すまでは疑ってかかりたいのが大宮というクラブですし、「持たざる中で真価を発揮するタイプ」の監督だと思っている鈴木監督が最適なバランスを見つけることができるのかも正直不安。今年もパッケージに騙されて中身は…となるのか、それともパッケージどおりのインパクトを残せるのか。もしブックメーカーが「今年の大宮は1ケタ順位を取れるか?」というテーマを提示してきたら、あなたはどちらに賭けますか?

 終わってみれば、今季も「序盤大苦戦→監督交代&補強→うまくハマって終盤巻き返し」というお決まりのパターン。正直、もうこれ以上書くこともないんですが(苦笑)、大宮ファンはこの現状をどう思っているのか聞いてみたいなぁと。もちろん満足なんかしていないでしょうけど、これで良いだなんて思ってないでしょうけど、順位以上の(ある程度の)資金力はあって、気持ちが入れば上位に入れる力があることを今季も示して(ラスト11試合を5勝6分と無敗で駆け抜けた)、だけど順位はまたもこのぐらいで…というスパイラルに対して、個人的にはホーム最終節で残留を決めた後に、ちょっとしたブーイングとか、来季に向けて叱咤激励するダンマクがあっても良かったんじゃない?と。もちろん、他所の人間なのでこれ以上は言いませんが。
 来季に向けては、今井(中央大)の獲得と川田(大宮U−18)の昇格が発表済み。また、カルリーリョスの買取や、今夏まで所属していたラファエルの再獲得など威勢のいい声も聞こえますが、まずは今夏チームにレンタルでやってきて戦力値アップに貢献した河本(神戸から)やノヴァコヴィッチ(ケルンから)、あるいはすでにオファーが来ているという主力中の主力である青木や東を引き止められるかでしょう。ベルデニック監督の続投もまだ決定ではないようですし、とにかく「前年終盤の勢いを持ち越せない」ことが一つ大きなフロント陣の怠惰にもなっているので、まずはここでどう動くのか、注目です。


14位 セレッソ大阪(11勝9分14敗 47得点53失点)
得点者:柿谷11、枝村4(清水時代含む)、シンプリシオ3、山口2、扇原2、播戸2、横山2、村田1、丸橋1、杉本1 (ケンペス7、キム・ボギョン7、清武2、ブランキーニョ1)

 4年半指揮を取り、魅力的な攻撃サッカーと数多くの若手を育て上げたレヴィー・クルピ監督に別れを告げ、今シーズンはセルジオ・ソアレス監督を招聘。ただ、いろいろ見る限りはスタイルに大きな変更がなさそうで、リフレッシュ効果がどこまで現れるかという見方になるのかなと思います。ただ、補強は昨シーズンの主力を含めたOUTの方が多く、横山、山下、船津、柿谷、児玉、(非常に前評判の高い)ケンペスといった悪くないINがあったとはいえ、五輪やA代表で複数回のチーム離脱が想定される扇原、山口、清武、キム・ボギョンのバックアッパーが幾分パンチ不足でややマイナスな印象を受けました。
 がしかし、想定されるスタメンが揃っている限りは非常に魅力を感じるのも事実。特に2列目は清武、キム、村田、柿谷と受けることもできるし、自らボールを運べる選手が揃っており、ゾーンだけで対峙するのは非常に危険で厄介。ケンペスアドリアーノ(ガンバ経由で中東に行った彼ね)ばりにプレーできるようならより危険さが増しますし、扇原、山口、黒木ら若手ボランチがさらに成長がして太い軸になれれば攻撃陣は言うことがないかと。守備は一にも二にも山下。何はなくとも山下。昨シーズン札幌で一気に花開き、フリートランスファーで放出したチームが移籍金を出してまで買い戻したところに評価の全てがこもっていますが、J1でも通用するのかは全くの五分だし丁半博打。C大阪が躍進した一昨シーズンは、香川、乾、家長、アドリアーノマルチネスら煌びやかな攻撃陣以上に、茂庭、上本、キム・ジンヒョンのトライアングルが神懸かり的とも言えるハイパフォーマンスを披露して土台を安定させたからこそ達成できたものだと思っていて、もしその再現を期待するのなら、茂庭、山下、キム・ジンヒョンがどれだけできるかにかかっているわけです。山下が10年の上本になれるか否か−ここは、今シーズンの最注目ポイントの1つだと思います。

 補強が勝敗に引きずられたのか、勝敗が補強に引きずられたのかは分かりませんが、星取りも勝ったり負けたり、負けたり勝ったり。特に終盤は、第26〜28節までの劇的過ぎる3戦連続3−2で残留をほぼ決めたかと思ったら、続く第29〜最終節まで6戦勝ちがなく、最終節では状況次第で降格も…というところにまで追い詰められました。最後は、これまた劇的なゴールで自力残留を決めましたが、とにかく選手の出入り含めて、どのチームよりもジェットコースターな1年だったかなと。
 なにせ、シーズン途中にチームを離れた清武、キム・ボギョンブランキーニョケンペスの4人で、47点中17点(約36%)を奪っていて、それだけ得点を取れる選手が抜けてしまえばそりゃキツイよ、と言うお話。(五輪前までは東京Vに貸し出していた)杉本、ヘベルチ、枝村、シンプリシオの移籍組や、柿谷、扇原、山口、村田ら若手の躍動、藤本、酒本、横山ら中堅の踏ん張りは見るものに訴えかけるものはありましたが、シーズンを通して安定した力を発揮するためには、この手法では限界があります。来季に向けても、クルピ監督の続投と南野、秋山、岡田、小暮とU−18から4人の昇格がすでに発表されていますが、柿谷、扇原、山口ら若手に海外からの魔の手が伸びているとかいないとか。契約事なので外から分からない部分もありますが、再びトップ3を目指したいのであれば、彼ら若き主力の引きとめは必須。その気概がチームにあるのか、注目したいところです。


15位 アルビレックス新潟(10勝10分14敗 29得点34失点)
得点者:ブルーノ・ロペス7、ミシェウ4、田中4、アラン・ミネイロ3、矢野2、坪内2、三門1、菊地1、藤田1、石川1、キム・ジンス1

 黒崎監督2年目の昨シーズンも、例年のとおりオフに主力(永田、西、マルシオ)を持っていかれ、シーズン中も怪我人に苦しみましたが何とか残留。そして今オフも千葉、チョ・ヨンチョル、酒井高ときっちり主力を失いました。しかし、「それが新潟の宿命」と黒崎監督は語り、クラブも守備陣に大井、中村、前線には平井、矢野と計算の立つ日本人選手をしっかりと補填することに成功しました。また、先週末のプレシーズンマッチ対神戸戦を見る限りはキム・ジンスが大当たりの予感。いつになく主力放出のマイナスを補って余りある今オフの動きだったかなと思います。
 戦術面でも黒崎体制3年目で継続性が期待できます。カウンター寄りなのかポゼッション寄りなのかはまだはっきり見えてきませんが、個人的にはCB、ボランチ陣がいずれも対人が強くて奪うことに長けていること、SB、SHに縦に強く、タッチライン沿いで勝負ができる選手が多いこと、ロペス、平井、矢野、鈴木武とスピードのあるFWが揃っていることから堅守速攻型に特化すれば、それこそボルシア・メンヘングランドバッハぐらい驚かせることができると思っています。ミシェウ、本間と「緩」を担って、ボールを落ち着かせることが出きる選手もいるので、チーム全体が「急」により過ぎた時にもバランスを取ることができそうですし。実際に先週末の神戸戦は、特に前半自陣にしっかりとブロックを形成し、まず相手の攻撃を受けきってそこからしっかりと反撃するサッカーで3−0と快勝しており、ワンパターンと言われようとも欲張らずに強みを生かすことができれば、今シーズンは軽視できない存在になりそうな気がしています。

 開幕から5戦して勝ちがなく(2分3敗)、その後も第18節まで複数得点がないという貧打に泣く形で降格圏内をウロウロする日々が続きました。しかし、黒崎監督を解任し、6月に就任した柳下監督は守備の意識を再確認するとともに、攻撃の面でもカウンター一辺倒とならないように口酸っぱく指導していった結果、徐々に攻守両面でまとまりが見え始め、しぶとく勝ち点を拾えるように。9月以降はようやくブルーノ・ロペスにも当たりが出始め、ミシェウが圧倒的な存在感を見せ、坪内を獲得した最終ライン+本間、三門ボランチ陣はとにかく我慢してゴールを守り、第27節で名古屋相手に5−0と快勝して明るい未来が見えました。が、その後残留を争う神戸、大宮に勝ちきれず、鳥栖に敗戦。残り4試合を残してかなり厳しい状況に立たされます。が、その4試合を3勝1敗で乗り切り、他会場の援護も受けて奇跡的な残留を果たしました。
 黒崎監督がチームを同じ方向に導けなかったことも去ることながら、シーズン前の補強がまったくハマらなかった点が苦戦した要因の一つで、矢野は2ゴール、平井に至ってはノーゴール。その他大井、中村らも主力を脅かすには至らず、結局限られた15、6名に頼らざるを得ない形となってしまいました。それだけに、今いる戦力、今できることをきっちり整理しながら、しかし現在地にとどまるだけではなく前へ進もうとした柳下監督の指揮は見事だったなと。鈴木大、田中は完全に独り立ちしましたし、石川、(唯一の当たり補強だった)キム・ジンス、藤田、三門ら若手・中堅の目覚しい活躍もインパクトがありました。来季に向けては、その柳下監督の続投、小塚(帝京長岡高)の獲得と川口(新潟U−18)の昇格が発表済み。また、柳下監督は「まず、現有戦力の引き止めからスタートして欲しい」とフロントに訴えたようですが、毎年主力を引き抜かれる流れに楔を打ち、前年の積み上げを残して翌年をスタートさせることは、上位進出には欠かせない条件だけに、それが叶った上でゴールを奪える、ゴールに絡める即戦力を連れてくることができれば来季こそは…。


16位 ヴィッセル神戸(11勝6分17敗 41得点50失点)
得点者: 小川9、田代6、都倉6、野沢5、大久保4、相馬2、茂木1、近藤1、橋本1、イ・グァンソン1、吉田1、田中1、森岡1、奥井1 (大屋1)

 昨シーズンは、クラブ史上初の1ケタ順位となる9位でフィニッシュ。平均観客動員も一昨シーズンから伸び(10→11シーズンと連続してJ1に在籍したチームの中で、唯一神戸だけが伸びていたらしい)、クラブ財政も三木谷オーナーの債権放棄という荒業(もともと貸し出した時から予告していたみたいですけど)で債務超過状態を解消と、いよいよ雌伏の時を経て上を目指す体制が整った印象を受けてはいましたが、今オフの補強には驚きの一言。ポポの移籍は痛手ですが、これまでなら「なお、神戸には断りの電話を…」となってもおかしくない植草、高木、伊野波、野沢、橋本、田代という即戦力の獲得に大成功。しかもそれぞれ、徳重と切磋琢磨させての相乗効果を期待する植草、河本、北本に頼りっきりだったCBに高木、DFラインならどこでもこなせる伊野波、長らく不在だったゲームメイカーかつプレイスキッカーの野沢、中盤ならどこでもこなせる橋本、都倉の怪我などで不足していた前線の高さと強さを併せ持つ田代と狙いも実に的確で、戦力の大幅な底上げに成功しました。
 それを踏まえて、和田監督はハイプレス&ショートカウンターというスタイルから、ある程度自分たちでゲームをコントロールして、緩急を使い分けられるチームを目指したいと言っていた記憶があります。昨シーズンもそこからの脱却を試みた時期がありましたがその時は頓挫、今シーズンは体制を整えての再チャレンジとなります。ただ、高木、伊野波、橋本が加入したとはいえ、まだDFライン+ボランチのところでボールを柔軟に動かせるタイプは不足気味。先週末の新潟戦では伊野波と橋本をボランチに並べ、CBに高木と羽田を置くなど配置の工夫は見て取れましたが、キャンプでは主に守備面から整えているということもあってか、攻撃の連動性は見られませんでした。また、そうは言いながらもいい守備からの早い攻撃は神戸の持ち味であり、そことの折り合いをどうつけるのか、なかなか難しい舵取りになることも予想されます。どっちつかずが一番怖いところ。大型補強で注目度が増す中、万が一その舵取りを間違えると…。

 「どっちつかずが一番怖いところ」とシーズン予想時短評で書いたとおりになってしまった――それが第一印象です。開幕から連勝を飾って「お、今年はやっぱり違うか?」と思わせながら、その後まさかの無得点4連敗。決して悪い試合をしていたわけではありませんが、第8節横浜FM戦での敗戦後に和田監督を解任。そして、招聘したのがまさかの西野朗。間違いなく昨季までの神戸が持っているパブリックイメージとは正反対にいながら、今季神戸(のフロント陣)が目指したいサッカーとは合致するので、これはスマッシュヒットになるかと思われました。実際、第14〜16節まで3連勝するなど持ち直し、8月終了時点では11位とまずまずの位置につけます。しかし、そこで勢いはパッタリと止まり、9、10月は3分4敗と勝ちを奪えずジワジワ順位を下げると、なんとここで西野監督を見限って安達ヘッドコーチに指揮を託す博打に打って出ました。しかし、安達体制での残り4試合で勝てたのは第32節東京戦のみ。最終節ホームで広島に敗れ、新潟が勝利したことで16位に転落し、降格の憂き目に逢うこととなりました。
 結果論だけでものを言えば、リアクション一色から脱却する舵取りを託すのが和田監督でよかったのか?というところからすでにズレが生じていたのかなと。実際、和田監督は有効なポゼッションの手立てを示せず攻撃は停滞。バトンを受けた西野監督も、理想を貫くためにドラスティックにやるべきか、現実を見ながらミックスアップしていくのか常に迷っているように見え、選手たちもポゼッションスタイルに上手く馴染めずに苦しみました。とは言え、残り4節で再び監督交代に踏み切った決断は、仮にそれで残留していたとしても個人的には肯定できないところ。残っていたとしても落ちたとしても、西野朗という稀有な指揮官を手元に置いておければいろんな意味で「変われた」と思っているので。
 この降格を受け、伊野波、野沢、大久保ら主力にJ1のチームから、小川には海外から声がかかり始めており、新監督人事(安達HCが監督として続投する報道あり)を含め、一から出直す形となりそう。現時点での新加入はU−18から和田、松村、前田の3人ですが、その他外からの補強はあるのか。どれだけ主力を引き止められてJ2の舞台に臨めるか。フロント陣は、どういうスタイルで行きたいのかも含めて、再度「ヴィッセルらしさ」が見える手を施してほしいと願うばかりです。


17位 ガンバ大阪(9勝11分14敗 67得点65失点)
得点者:レアンドロ14、佐藤11、パウリーニョ8、倉田7、遠藤5、家長5、二川3、今野2、中澤2、武井2、阿部2、明神1、藤春1 (ラフィーニャ3)

 今オフ、クラブ側がついに西野体制に終止符が打ち、新たにセホーン新監督を招聘。それに合わせて移籍もINが14人、OUTが11人。今年は次なるステージへ向けて、新たな一歩を刻むシーズンになります。補強ですが、主力(橋本、高木、山口、下平、イ・グノ)や貴重なバックアッパー(キム・シンヨン、平井)をまとめて出し過ぎじゃない?と思うところはありますが、CBに今野と丹羽、SBにエドゥアルドと沼田、中盤に武者修行から戻ってきた寺田と倉田、前線に佐藤、パウリーニョイ・スンヨルと、量的には各ポジションしっかりと補填できたのかなと。
 それでも「攻高守低」の傾向やイメージを覆すことができたとはお世辞にも言えず。そもそもセホーン監督がバランスをどこに見出すのかを窺い知ることができていませんが、しかし昨シーズンから言われ続けていたSBに引き続き大きな不安を残し(沼田、エドゥアルドは未知数、加地は怪我なく過ごせるか)、GKをまたしても中途半端なままにしたこと(しかも藤ヶ谷は怪我をしてしまったとか)は看過できない問題だと思いますし、今野や丹羽を補強できたとはいえ「個人で守る」守備スタイルにどれだけメスを入れられて、組織的なものを構築できるかはまだ見えず。FWも大黒柱のイ・グノを失い、昨季後半はやや限界というか、押さえられるシーンが目に付いたラフィーニャ、スタンドプレーが多いパウリーニョ、J1では未知数の佐藤、イ・スンヨル、継続して力を出せるか未知数の川西、大塚という顔ぶれには、期待以上に不安を感じるところ。相変わらず中盤は遠藤、明神、武井、二川、佐々木に倉田、寺田と豪華なメンバーで、このセクションが健在な限りは大崩れこそないでしょうけど、長期政権終了1年目で小さくない変更を施しながらACLと並行してリーグ戦を戦わなければならないのは、不安の方を強く見ざるを得ないかなと。ガンバサポの方、今年はハードルを下げて見てあげるべきだと思いますよ。しかし、FC東京ファンの当てこすりと思われたならそれで全く構いませんが、今野は移籍が1年遅く、また1年早かったと思いますよ。

 「ハードルを下げて見てあげるべき」というシーズン予想時短評は当たりました。ただ、まさか降格まであるとは、さすがに予想できませんでした。私がここで改めて書くまでもなく、リーグ最多得点、得失点差プラスでの降格なんて、世界的に見てもまず聞いたことがなく、これまた各所で言われていますが、9勝全てが3点以上奪っての勝利(合計36得点。1試合平均4得点。)で、逆に2点までしか取れなかった試合では1つも勝ちを奪えなかったという、とんでもないシーズンを送ることとなりました。そんな守備、失点の方も、普通はこれだけ取られていれば、被シュート数も多くなりそうなものですが(実際、失点数ワーストの札幌は被シュート数もワースト)、失点数65はワースト2位ながら、被シュート数355本は少ない方から数えて8位。つまり、被決定率は(失点数65÷被シュート数355で)約18.3%。これは、最多失点だった札幌の約15.4%をはるかに上回る、断トツのワースト。この数字の見方はいろいろあるでしょうけど、目立ったのが「完全に崩されて楽に決められる」シーンや「藤ヶ谷が…」というシーン。プレッシングなのかリトリートなのかハッキリしなかったチームディフェンス、フィルターになれなかった中盤、諸刃の剣となったSBオーバーラップ後のスペースケア、個人でつぶす「だけ」しかできなかった最終ラインなどいくつもの要因が重なってあちこちに穴が開いてしまい、そこを悠々使われてイージーなシュートを決められたり、強いミドルが飛んできたりなどして失点を重ねたという印象が強く残っています。
 来季に向けては、主力選手の多くが残留を(今のところ)明言しており、額面どおり残るのであれば、J2屈指の陣容が揃うのは疑いようのないところ。こうなったら、みんな残って他チームが羨むほどの陣容を揃えて、J2を席巻してほしいなと。


18位 コンサドーレ札幌(4勝2分28敗 25得点88失点)
得点者:古田4、日高3、山本3、上原3、高木2、内村2、榊2、ハモン1、近藤1、前田1、奈良1

 石崎監督が就任して早4年目、なかなか厳しい戦いが続いていましたが、昨シーズン中盤あたりでしっかりとした守備から手数をかけずにフィニッシュまで行くスタイルを確立。最終戦でFC東京相手にがっぷり四つの試合から勝利をもぎ取り、08年以来のJ1復帰を果たしました。
 今オフですが、まず昨シーズンCBの柱となった山下を失ったことは大きな痛手。彼の独り立ちが好転への全てのスタートだったと言ってもよく、彼の放出による守備力のダウンは否めないところ。それでもFC東京からノース、ブラジルから187cmという長身のジュニーニョを獲得し、昨季ルーキーながら及第点以上のプレーを見せた櫛引、終盤はガッチリと出番を掴んだユースからの昇格となる奈良と量的には揃った印象。あ、岡山もいたね。ただ、いずれの選手もJ1レベルでフルシーズンやれるかどうかは未知数で、河合のCB起用も含めて自慢の守備の再積み上げからスタートしなければいけないのは、ちょっと苦しい気がします。一方の中盤、前線については前田、山本、大島、高柳(怪我してしまったようで…)などJ1でのプレー経験豊富な選手をいずれもフリートランスファーで獲得することに成功。中でも注目は天才・前田。石崎監督はキャンプ中から一貫して「1トップ・前田」の形にこだわっているようですが、北九州とのPSMを見る限りはあまりしっくりきていない印象。内村や近藤との距離感については日を重ねるごとに改善されるかもしれませんが、前からの守備のスイッチになりきれていなかった点が気がかりで、プレッシングのスタートがずれて後ろが全部ずれる、となると、それこそ破綻の危険性が増すわけですから。昨シーズン田坂監督にしごかれて多少意識の変化は見て取れましたし、こういった全くベクトルの向きが違う選手がいることで新たな化学反応が生じる可能性だってあるわけですが、どこまで自覚してやれるのかには目を光らせてみたいなと。まあ、ダメなら大島が頑張れということで。あとは、昨シーズンのチーム内得点王・内村や若い古田、宮澤らがどれだけJ1で通用するのか。とどのつまり、「未知の魅力」がどちらに転がるかというシーズンになるのかなと思います。

 残り7試合を残しての9月降格決定、4度目の降格、シーズン27敗、勝ち点14、失点84、得失点差マイナス60、18チーム中唯一の得失点差二桁マイナスと、1ステージ制へ移行した2005年以降のJワースト記録をいくつも更新(リーグ戦完封試合3も、数えていませんがおそらく最小記録)。また、己との向き合い−最下位となって降格した08年の札幌との比較−という目線で見ても、08年が「4勝6分24敗、36得点70失点」だったのに対し、今季は「4勝2分27敗 24得点84失点」と数値がいずれも悪化。ただでさえ十分とは言えなかった選手層の中で怪我人が相次いだことは不運だったと思いますが、個人的に「未知の魅力」だと思っていた点は、いずれも「残酷な現実」でしかありませんでした。
 厳しかった点は枚挙に暇がありません。GKは4人が出場するも15試合以上出場した選手はおらず、終盤にゴールマウスを守った「苦労人」高原がそうだったと言えなくもないですが、シーズンを通して守護神が定まらず。DFは岩沼、日高の両SBが攻撃面では一定の仕事を果たしましたが、守備ではひ弱なところを隠せず、CB陣もノース、奈良、櫛引、途中加入のキム、岡山から最後まで核が見つからず。MFは古田、宮澤、岡本、途中加入のハモンが攻撃において煌いた時こそあったものの、あまりに瞬間的、限定的な煌きでチームの積み上げにはならず。守備面でも河合、山本、芳賀、高木らボランチ陣が前へ出ても取りきれず、後ろで構えてもこらえきれず(もちろん、チーム全体の問題でもありましたが)。FWはシーズン通して11人も起用されましたが、最多得点は上原の3点で、11人トータルでも9点止まりと全く揮わず。シーズン途中にレンタルで放出したキリノが、J2とはいえ湘南を昇格に導く働きを見せたのはなんとも皮肉な話。そして石崎監督も、怪我人の影響があったとはいえ最後まで基本布陣やチームの主たるスタイルを構築できず。こんなよそ者に言われたくないでしょうし、ファンの方が一番現実を分かっていると思いますが、ポジティブだった面を探す方が難しいシーズンとなってしまいました。
すでにU−18から6人の大量昇格が発表され、今季を含めると2年で11人がトップ昇格を果たすこととなりました。4度の降格中3度が昇格した翌年すぐに…という降格である点を踏まえれば、何かをドラスティックに変えなければいけませんが、来季の大量昇格に今季昇格した5人のうち奈良、前、榊、荒野がすでにデビューした点など、フロントが現時点で発しているメッセージは明確と言えば明確。監督人事含めて今後どう舵取りをしていくのか、今回の降格が中長期的に自分たちを見つめ直すいいきっかけになることを願ってやみません。