続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

今季のJリーグを振り返る J1編 その1

 先日J2の振り返りをやりましたが、今日はJ1を振り返ってみようと思います。手法はJ2と同じく、シーズン前に載せた順位予想を踏まえて、自分なりに振り返ってみる(+ちょっとだけ来季の話も織り交ぜる)形。ただ、全文載せようと思ったらお尻が切れてしまう事象が起こったので、分割します。まずは1〜9位まで。


 まずは、改めてシーズン前の順位予想と実際の順位から。左側の順位とチーム名はシーズン前予想、矢印の後ろが最終順位です。

1位 名古屋 →7位
2位 柏 →6位
3位 鹿島 →11位

      • -

4位 C大阪 →14位
5位 FC東京 →10位
6位 G大阪 →17位
7位 横浜FM →4位

      • -

8位 新潟 →15位
9位 仙台 →2位
10位 浦和 →3位
11位 広島 →1位
12位 神戸 →16位

      • -

13位 磐田 →12位
14位 大宮 →13位
15位 清水 →9位
16位 川崎 →8位
17位 鳥栖 →5位
18位 札幌 →18位

 傍線が3ヶ所引いてありますが、これは予想の段階で「1〜3位までが優勝争い」「上位3チーム+5〜17位までがACL圏内争い」「8〜12位は賞金圏内争いへ」「13位以下で残留争い」という区分けをしたものです。当然ですが、予想通り、予想以上、予想以下、それぞれくっきり分かれていますねぇ。それでは最終順位上位のチームから個々に振り返ってみます。なお、チーム名の後ろのカッコは勝敗及び得失点、下の引用部は予想エントリで書かせてもらった雑感を引用したものです。


1位 サンフレッチェ広島(19勝7分8敗 63得点34失点)
得点者:佐藤22、石原7、森崎浩7、森脇4、清水4、高萩4、山岸2、平繁2、森崎和2、水本2、青山2、千葉1、中島1、大崎1、石川1

 他に類を見ないスタイルのサッカーで存在感を放っていたペトロヴィッチ監督との蜜月を今オフにやむなく解消。クラブOBである森保監督を招聘し、今年は新たなスタートを切るシーズンとなります。補強は何しろお金がない中、李やムジリの放出こそは痛手も、前線は石原と平繁で何とかカバーできましたし、守備陣にボールを動かせてリベロとして計算できる千葉を獲得したことは、中島の負担軽減と森崎和を中盤に専念させられるメリットの両方をもたらす素晴らしいもので、フロントは最大限努力したと言えるでしょう。
 ただ、特殊な戦術を用いる監督が去り、一時代が終わった直後のシーズンで苦しむというのは容易に想像できること。いくら流れを継ぐとはいえ、「似て非なるもの」をやっていくことの方が大鉈揮うより難しいわけで、そこを森保監督がどう折り合ってやれるのか。文字情報ではまず守備面の再構築から始めているようですが、私はそれが正解かなと。ペトロヴィッチ前監督は正直守備面でのアイデア、戦術には乏しかった印象で、ただ単にウイングバックを下げてベタッと守る形が散見されました。そこでしっかり人数をかけて奪って、低い位置からでもシュートまで持っていけるポゼッション力は見事の一言でしたが、しかしより高い位置でボールを奪えれば、そのポゼッションがより脅威を増し、攻撃陣もエネルギーを攻撃に専念できるわけです。そこを目指すために守備から手をつけるのは当然のことでしょう。攻撃陣は決定機とゴール数が比例しない永遠の課題に挑み続けることとなりますが、少なくとも千葉、水本、森脇、ファン・ソッコらストッパー陣と森崎和、青山らボランチ陣がしっかりとコミュニケートして開幕までに守備戦術をある程度作りきれれば大崩れは考えにくいわけで、残り2週間でどこまで仕上られるか、それがどのような形でピッチに現れるのか、今年の広島は守備に注目しても面白い気がします。

 シーズン8敗は、2位仙台はともかくとして7位横浜FMより多い負け数。しかし、昨季の柏と同じく連敗が一度もなく、敗けた次の試合でことごとく勝ち点を拾い(5勝3分け)、シーズンでの引き分け数も勝ち点を50以上積み上げた8チームでは最小タイとなる7つ。昨年までには見られなかった「勝ちきる力」が、端的に勝敗から見て取れるシーズンでした。その原動力は、攻撃も去ることながら「守備面の向上」にあったのかなと。上のシーズン予想時短評でも書いたとおり、主に攻撃面についてはペトロヴィッチ前監督がこれでもかというほど独特な世界を構築して出て行きました。そんなチームを引き継いだ森保監督は「より明確に守備の意識を植え付ける」「セットプレーをきっちりやる」「メンタル面をカバーする」といったペトロヴィッチサッカーで不足していた面をシンプルに、強く植えつけにいった印象。その結果、シーズン34失点は横浜FMの33失点に次ぐリーグ2位タイと大きく改善(昨季は49失点)。完封試合は9試合と目立って多いわけではありませんが、複数失点試合も8試合だけ、そのうち3点以上取られたのは第11節・横浜FM戦(1−3)のみにとどめ、セットプレーによる失点も昨季10→今季4と半分以下にするなど、シーズン通してチームディフェンスが「決壊」することはありませんでした。選手個々で見ても、GK西川+水本、千葉、森脇の最終ラインは誰一人長期離脱することなくフルシーズン役割を務め上げ、時折出場停止などで欠けてもファン・ソッコ、途中加入の塩谷がきっちり穴を埋める仕事ができていました。また、ミキッチ、山岸、石川、清水といったウイングバック陣も5バックになる時はきっちりとポジションを下げ、その一方前からプレスをハメる際には思い切って高い位置を取るといったメリハリと高い運動量を見せることができていました。
 そんな守備力、守備意識の向上は攻撃にも波及。チームとして今どこで守るのか、どこを守るのか、どう守るのかがはっきりしたことで、より速攻と遅攻の使い分け、中と外の使い分けが明確になった印象。佐藤が22得点を奪えたのは、本人の予備動作、ゴールマウスの感覚、シュートの精度といった個のスキルは当然のことながら、どんなシチュエーションからでも前へボールを入れられる確信を得たサポーティングキャスト陣の飛躍が挙げられるのかなと。青山は長短のグラウンダーの精度が増し、より効果的に楔のパスや散らしのパスを駆使してチームをコンダクトし、高萩はバイタルエリアでのアイデアが増し、エルゴラッソ算定のアシスト王を戴冠。ミキッチは佐藤としか、佐藤でしか分かりえないと言えるほどの、そして相手からすれば「ない」タイミングからのクロスで序盤戦から中盤戦のアウトサイドを牽引すれば、終盤戦は石川、清水の若い両翼がアグレッシブに振る舞い、ともに大事なところでゴール、アシストをマーク。石原は22節以降ゴールがなかったものの、そこまでの21試合で7ゴールを挙げて李が抜けた穴を補填すれば、大崎や野津田の若手も短い時間ながら出番を得て奮闘。そして、このチームの顔と言っていい森崎ツインズも、和幸は青山との不動のボランチコンビを結成し、累積警告による出場停止を除く33試合でフル出場を果たし、近年病に苦しんできた浩司も、慣らしながら徐々に出場時間数を増やしていくと、終盤戦は「これぞ浩司!」というプレーでチームを引っ張り、ラスト8試合で4ゴールと結果も残しました。酸いも甘いも噛み分けた森崎ツインズが、二人とも笑顔でチャンピオンシャーレを挟んだ映像は、見ていてグッと来るものがありました。
 来季に向けては、ACLとの並行に耐えうる選手層を作れるかどうか。今季の躍進で各ポジションに複数の選手を置ける素地は整いましたが、青山、森崎和に次ぐ3番手のボランチ鳥栖へレンタル中の岡本が復帰、という話あり)、佐藤に不測の事態が生じた時の1トップ、移籍が噂される森脇の代役など、並行するには不安とせざるを得ない点も見え隠れ。基本的には裕福に補強費があるわけではないクラブですが、やっているサッカーの魅力+ACLという売り文句で、どんな選手補強ができるのか。まずはそこに注目ですね。


2位 ベガルタ仙台(15勝12分7敗 59得点43失点)
得点者:赤嶺14、ウィルソン13、菅井5、太田4、鎌田3、関口3、梁3、中原2、柳沢2、富田2、渡辺1、松下1、田村1、上本1、内山1、武藤1

 昨シーズンの大躍進は、ある意味で(感情的なものを含めて)再現性のかなり低いものだと思っています。それが良い悪いではなくてね。なので、手倉森体制5年目である程度継続性を持ったシーズンインであることは事実ながら、果たしてどこまで昨シーズン踏まえていいものか、判断しかねるところではあります。そういう意味では、今シーズン最も注目すべきチームなのかな?とも。今オフの移籍は、チョ・ビョングクの放出には大きな(マイナスの)驚きがありましたが、代役としてスピードタイプの上本を取れたことは、のちほど触れる戦術面を考えれば悪くない補填。また、ウィルソン、サッコーニの両ブラジル人は出たとこ勝負なのでなんとも言えませんが、松下の完全移籍実現やDFならどこでもできるベテランの内山、昨シーズンから特別指定でチームに参加して素質の片鱗を見せ、ルーキーながら背番号7を与えられた奥埜など、収支はトントンかややプラスと言ってもいいのかなと。
 手倉森監督はシーズンインから事あるごとに「自分たちで繋ぐ時間帯を作りたい」「前からの守備で主導権を握ることにトライしていきたい」と口にし、戦術面での上積みを目論んでいることをアピールしています。昨年の山形を例に取るまでもなく、こういった「守備主体のチームが攻撃面の進化にチャレンジしてコケる」というのはサッカー界では往々にしてあることで、攻撃の中心であるリャン・ヨンギがプレシーズンで6週間程度の怪我を負ってプランが多少崩れてしまった点も踏まえれば、正直その匂いを感じないわけではありません。それでも、4バック+2ボランチの6枚だけで約束事があって守れてしまう守備組織は高い完成度を誇っていて、上本がそれにすぐ馴染めるようであれば、それをベースにしながらブラッシュアップできるわけで。その上本も、C大阪時代は少人数で守備を仕切るスタイルをやってきていますし、ライン設定を昨シーズンより高くするとなった場合も、カバーリングのスピードがあることは証明済みなので、問題なく馴染めるのかなと。であるならば大きくバランスを失うことは考えづらいですし、前からの守備に向上が見られれば得意のカウンターがさらに威力を増すわけで、私はこのチャレンジはポジティブなもの、ポジティブな方向に転がると見ています。崩れるとすれば…層の薄いボランチ、特に角田に何かしらのアクシデントがあり、ここから全体にヒビが入るというパターンぐらいかと。

 シーズン前の予想時短評で結構前向きなことを書いているのに、何で順位予想を9位という低い見積もりにしたのか不明ですが(苦笑)、出来過ぎと見られる向きもあった昨季の4位を上回る2位でフィニッシュ。勝ち点こそ昨季より1多く積み上げたにとどまりましたが、得点が39→59とほぼ1.5倍増。失点も25→43と1.7倍増していますが、「よりアグレッシブに」という意識の高さを体現する上で、得点も増えるけど失点も増えるのは避けがたい代償。失点増だけを持ち出してネガティブに捉える必要は全くないでしょう。事実、林、上本、鎌田、角田、菅井とDF陣から5人も優秀選手に選ばれていて(菅井はどちらかというと攻撃面での貢献度でしょうけど)、林、角田は昨季に引き続くハイパフォーマンスで真ん中をギュッと締め、上本は持ち前の速さとカバーリング能力で、鎌田は対人の強さと主力としての意地や矜持でさらに固く締められていました。渡辺も第3CBとしての役割を受け入れ、出番を得たときには上本、鎌田と遜色ないパフォーマンスだったかなと。そして、個人的には富田の成長に驚いていて。昨季も悪くはないものの、八面六臂だった角田の陰に隠れて地味な…という印象でしたが、今季は角田を凌ぐことすらあったほどエネルギッシュで、カバーエリアが広く、前にも後ろにも顔を出してつぶして「また富田かよ!」というシーンも数多く見られました。まあ、一部では(富田だけではなくチーム全体の)「度を越えた潰しがちょっと…」という評価もあり、私もそれを否定はしませんが、強く当たれるのもテクニックなのだとすれば、それはどこよりも高かったかなと。
 また、チームとしても前からの圧力をかけてボールをもぎ取り、そこから攻撃を仕掛けてゴールを奪う、畳み掛けるスタイルが形になった結果、菅井、パクの攻撃的両SBはより真価を発揮して、太田は序盤に大ブレイク。梁も大いに存在感に見せて前へ好配球を続け、松下、関口、武藤らサブの選手もそれぞれに持ち味を出して役割を全う。そんな彼らの思いを受けたFW陣は、赤嶺、ウィルソンの2トップがともに2桁ゴールを奪って期待に応えれば、柳沢、中原も短い時間ながらゴールなどで貢献。全体的に穴の少ないシーズンを遅れたのではないかと思います。
 来季に向けては、広島同様まずはACLとの並行対策。両SBができる田村やベテラン内山が控えてはいるものの、菅井、パクが欠ければ一気の戦力ダウンが否めないSBや、どうしても消耗度が激しくなるセンターライン(CB、ボランチ)を上手く充当できるかが注目ポイント。ラスト12試合で完封勝利がなかったのは、消耗度の蓄積(それによる怪我人)が大きな原因だったと思っているので。また、やや平均年齢が高い主力陣を突き上げる若手(蜂須賀、奥埜、武藤ら)の成長や獲得にも期待したいところです。


3位 浦和レッズ(15勝10分9敗 47得点42失点)
得点者:マルシオ・リシャルデス9、梅崎7、原口6、柏木6、槙野6、阿部4、ポポ3、宇賀神2、鈴木2、デスポトヴィッチ1、平川1

 昨シーズンは混沌の中でもがき苦しみまくった1年。ゼリコ・ペトロビッチ元監督の思いとフロントの思い、志向するシステムと現存する選手の特長が全く噛み合わず、浮上のきっかけを全く掴めず。クラブOBでユースの監督をしていた堀前監督をシーズン途中に据え、堀イズムを知る若手が何とか奮闘して残留を勝ち取りましたが、ついに落ちるところまで落ちてしまった姿を晒し続けたことは、さすがに見ていて痛々しさしかなかったなと。
 その1年を経て、(結果オーライ的にではありますが)広島を離れたミハイロ・ペトロヴィッチを招聘。補強も現有戦力をほぼ維持した上で、槙野、阿部、ポポとピンポイントなものにとどめるなど、なかなかスマートなものだったかなと。それで、今シーズンについては「ペトロビッチ監督の独特な戦術がどれだけ早く馴染んで形になるか」−ただこの1点でしょう。一からどころかゼロからのやり直しとなるシーズンで、ペトロヴィッチ監督自身「私のサッカーを理解するのは難しい」と語り、練習試合の結果やレポートを見る限り、今は「漸進」という一言に集約させられる印象。リーグ戦が始まってもトライ&エラーはしばらく続くはずで、チームにスムーズさが見て取れるのはもう少し先の話になるのかなと。実際、3バックの真ん中を誰にするのか、あるいは1トップ2シャドーの人選などはまだ見えてこず、特に1トップを誰にするのかは相当苦慮している様子ですし。もちろん、中はそれを覚悟して日々の練習に励んでいるはずで、多少の浮き沈みで一喜一憂することはないと思いますが、それでもある程度の結果が求められるのが浦和レッズというチーム。序盤で結果が出ない時に外がまた余計に騒ぎ立てる可能性は否定できませんし、結果が出ないなら出ないなりに内容で納得させる必要が絶対にあるわけで、それにチームがブレずに耐えられないようなら、昨年の二の舞があるのかなと。逆に、思ったより早く馴染めば、いきなり優勝争いに加わっても驚かないポテンシャルは秘めているのも事実。結論として、今シーズン最も予想が難しいチームという印象です。

 開幕戦こそ広島に0−1で敗れたものの、序盤の10試合を5勝2分3敗と勝ち越して終えることができ、内容もミシャイズムを知る槙野、柏木を中心に比較的早く土台を作ることができた印象を受けました。そして、内容の熟成がより図られ、個でもやり方を理解してパフォーマンスを上げてきた選手が増え始めると、第11〜20節までの10試合を負けなしで乗り切ってACL圏内の3位へ浮上。この10試合を含めて中盤戦は引き分けが多くて連勝できず、突き抜けるところまでは至りませんでしたが、その一方で連敗も一度だけと大崩れもせずに上位に食らいつき、終盤戦も勝ち負けを繰り返しながらでしたが何とか踏ん張りきって、最終節でACLのチケットを確保。昨季の今頃と比べれば、あまりにもポジティブな1年だったと振り返っていいのではないかと思います。
 やっていたサッカーはもちろん、ペトロヴィッチ監督が広島で長くやってきたそれと全く変わりませんでしたが、そのシステム、やり方にバチンとハマった選手が予想以上に多かったのは驚き。槙野はともかく、永田は時折軽いプレーで失点を招くこともありましたが、攻撃面では柏、新潟時代から定評のあったフィードだけにとどまらず、「低い位置からドリブルで持ち上がって相手を剥がす」というミシャサッカーの狙いの1つを見事に体現。坪井も持ち味であるスピードや粘り強さを生かした守備にとどまらず、積極的に攻撃へ加担しようとする姿勢で健在ぶりをアピール。阿部はサッカーIQの高さをまざまざと見せ付けて優秀選手に選ばれれば、鈴木も攻守両面でここ数シーズンの停滞を打破し、自身初のシーズン複数ゴールもマーク。宇賀神、平川の両ウイングバックは与えられた役割をきっちりこなし、マルシオ・リシャルデスは昨季の大不振が嘘のように躍動して柏木とともに相手の脅威になっていました。そして、私的MVPは梅崎。元々攻守両面で豊富な運動量と高い献身性を持っていた選手ですが、よりハードワークを求められるミシャサッカーのウイングバックで大ブレイク。そんなに飛ばして大丈夫かよ?という入り方をしながら最後まで走りきる姿には凄みしか感じませんでしたし、終盤はチーム事情によりシャドーに入ると、8試合で4ゴールと期待以上の結果を残しました。という具合に、繰り返しになりますがそれぞれ持っていた個性がミシャのやり方に即座にハマったことが3位の要因であることは疑いようのないところです。
 来季に向けては、まず1トップ。ポポや原口、デスポトヴィッチはそれぞれゴールこそ奪いましたが、その他の部分で十分な仕事を果たしたとは言えず。明治大から阪野を獲得した一方、ポポ、田中の退団が決定した中で、誰を引っ張ってこられるのか。ここに2桁ゴールを計算できる選手がいれば、より2シャドーやワイドの選手が活かされることからも、今オフの最重要課題だと言えるでしょう。最終ラインはすでに槙野の完全移籍が発表されましたが、濱田がこのサッカーに全くハマらなかったことを踏まえれば、噂されている森脇を始め、信頼できる駒をもう1枚獲得することをコンプリートさせたいところ。あとは小島がいますが、阿部、鈴木に次ぐボランチが獲得できればベストかと。広島からまた引っ張ってくるのは…あまりいい気がしませんね(苦笑)


4位 横浜F・マリノス(13勝14分7敗 44得点33失点)
得点者:マルキーニョス10、齋藤6、中村6、兵藤4、富澤4、谷口3、中澤3、大黒2、小野2、中町1、熊谷1、金井1

 クラブのレジェンドである木村前監督を招聘したのが10年。しかし、面白かったのは試合後のインタビューぐらいなもので、サッカーの内容は個人に頼った日替わり定食。試合ごとにあまりにも良し悪しがハッキリしていて、個人がヘタった昨シーズン終盤は勝ち点をボロボロ取りこぼす結果に。それを受けて、クラブはコーチとして実質的な戦術指導をしていた樋口さんを監督へ昇格させる決断を下しました。
 補強について、富沢を加えてCBの層を厚くした点と、渡邉、長谷川の穴を中町、齋藤、マルキーニョスで補填できた点はプラスですが、サイドバックの補強が比嘉だけだった点はマイナスかなと。五輪予選を見る限り、ちょっとプロの水に馴染むまで苦戦しそうですからね…。ただ、予想されるスタメン+数名が大きな離脱なくシーズンを過ごし、樋口監督があまり難しいことを要求せずに「普通」にサッカーをすれば、それを個に頼るのではなく組織立たせることができるようなら、このチームは勝ち点を積み上げていけるだけのポテンシャルを持っていますよ。…短いけど、これぐらいしか書くことない(苦笑)

 まあ、おおよそ書いたとおりのシーズンでした…よね?序盤こそナビスコカップ含めて10試合(リーグ戦7試合、ナビスコ3試合)勝ちがなく、こりゃどうなってしまうんかいな?と思わせましたが、第8節で神戸相手に今季初勝利をマークして以降は、第8〜22節まで15試合負けなしなど「際の強さ」を発揮しながら13勝10分4敗で乗り切り、第7節終了時の17位から4位まで順位を上げてシーズンを終えることとなりました。
 もちろん、原動力はリーグ最小失点を記録した守備。マルキーニョス、小野、齋藤、大黒、中村ら前目の選手がサボらずに連携をとって、確実にパスコースを限定させるプレッシングで相手のビルドアップを阻み、仮にそこを破られても冨澤、兵藤、(終盤戦は兵藤を2列目にして)中町、熊谷のボランチ陣がきっちり防波堤となり、さらにその後ろで中澤、栗原、青山の分厚いCBを中心とした最終ラインがガツーンと弾き返すという「3段構造」がしっかりと機能を果たしていました。結果、完封試合12試合は新潟と並んでトップタイで、昨季の40失点(3位タイ)からさらに失点数が減少。「守備のチーム、ここにあり」をまざまざと見せつけるパフォーマンスでした。一方の攻撃陣は、マルキーニョスが10点と奮闘したものの、齋藤が(チャンスの数やおぼろげな印象からすればやや物足りない)6点、大黒、小野が2点止まりと残るFW陣が不発。中村が5点、冨澤、兵藤が4点と中盤の選手に助けられて得点数が何とか伸びたものの、マルキーニョスを除くFW陣があと2点ずつ積み上げられていれば…と言いたくなる数字ではありました。
 来季に向けては、何はなくともSB。右は小林がほぼフル稼働し、左も驚きの復帰となったドゥトラが年齢を感じさせない奮闘ぶりを見せ、金井が不在時の穴を埋める形で乗り切りましたが、ドゥトラに来季もフル稼働を望むのは酷な話。金井、比嘉の成長を待つのか、補強するのか、注目したいところです。ボランチは…小椋が戻ってくれば大丈夫か。


5位 サガン鳥栖(15勝8分11敗 48得点39失点)
得点者:豊田19、藤田6、水沼5、野田4、トジン3、池田3、キム・ミヌ2、小林2、ヨ・ソンヘ1、キム・クナン1

 昨シーズンは、J2参入13シーズン目にして念願のJ1昇格。「J2オリジナル10」最後のJ1昇格となり、シーズンを追うごとに、J1昇格が夢から目標に、目標から現実のものに近づくにつれて観客動員数とエネルギーを増し続けていったベストアメニティスタジアムはテレビで見ていても相当幸せな空気に満ちていて、見ていて羨ましさすら覚えたほどでした。
 補強はCBに高さがあってJ1を知るキム・クナン、小林を、中盤にJ1での経験を経て戻ってきた高橋、船谷と、これまたJ1を知る水沼、國吉を獲得。また、昨シーズン藤田とのボランチコンビでチームを支えた岡本のレンタル延長と、J2トップスコアラーである豊田の完全移籍も実現と、やれることはやりきったと見ていいでしょう。しかし、昨年の主力級でJ1経験者は木谷、豊田ぐらいで、そこに今オフの補強でやれることをやりきってなお…という戦力値であることを否定することはできません。豊田に次ぐJ1でも計算できるストライカーの獲得がなされなかったことも不安ですし、J2屈指の組織力を誇っていた守備も、そのままJ1でと考えるのはいささか早計で、序盤戦に何か1つでも「J1でやれる!」という手ごたえをつかめないようだと、ズルズルいってしまいかねないのかなと。ただ、鳥栖に限って言えば、例えJ1での挑戦が1年で終わったとしてもそれが失敗だとは思わないですし、もしいろんな困難を跳ね除けて残留を手にすることができたなら、それは09年に山形が残留を果たした時と同じかそれ以上の快挙と言っていいはず。文字通り失うものが何も無い中で、鳥栖がどういうシーズンを送るのか。外野としては結果度外視で追いかけてみたいと思っています。

 09年の広島、10年のC大阪、11年の柏とJ1昇格1年目で大躍進を果たすチームが続いており、シーズン前はそれが東京?という声が大勢だったと思いますが、正解は継続性を見せた鳥栖でした。もう、細かい道のりについてああだこうだ書くつもりはありません(それは他所様にお任せ)。何が良かったとか誰が良かったとかではなく、何もかも良かったし、誰もが良かったと思います。GKは赤星が鋭い反射神経とビッグセーブで幾度もチームを救い、不在時も奥田がきっちりフォロー。DFはキム・クナンが予想以上のパフォーマンスで真ん中を締め、ヨ、小林、木谷も奮闘し、SBも磯崎、丹羽、(CBとの併用で)ヨが守備重視のスタイルを崩さず真ん中と連携してガッチリ締めました。MFは藤田、岡本、水沼、キム・ミヌの4人がシーズン通して大きな離脱なく役割を全うし、高橋、早坂、岡田らが不在時の穴埋めを着実に遂行。FWはシーズンを追うごとに、久々となるJ1での経験を積み重ねるほどに研ぎ澄まされてゴール数を増やしていった(前半戦17試合5ゴール→後半戦16試合14ゴール)豊田の大爆発も去ることながら、野田、池田、トジンの3人で10ゴール奪えたのも大きかったところ。特に野田は豊田に引けを取らない体の強さやテクニックを見せ、今後の大きな可能性を見せたかなと。チーム全体としても、すべてのタスクを100%でこなそうとする強い意志とハードワークぶりは見ていて爽快感すらありましたし、第25〜29節までの5試合で1勝4敗と失速し、「あぁ、ついに力尽きたか。それでも、今季はホント頑張ったよ」なんて思ったところから、ラスト5試合を逆に4勝1敗と盛り返してACLに迫った点は、この1年で積み重ねてきたチーム力の賜物だったかなと。
 来季に向けては、まず現有戦力をどこまでとどめておけるか。岡本、水沼のレンタル勢を引き止められるかは不透明で、その他何人かの主力選手も年俸(それに伴う違約金)の安さから引く手数多なはず。資金力で対抗することはほぼ不可能で、相応のオファーがあれば放出もやむを得ないのかもしれませんが、メンバーほぼ固定で戦ってきただけに、1人の離脱でも大ダメージになりかねないのが不安なところ。新卒4名(平(佐賀東)、清武、岸田(ともに福岡大)、坂井(鹿屋体育大))の入団内定が発表済みで、大久保にオファーを出したなんて話も聞こえる中、フロントがどこまで頑張れるか。


6位 柏レイソル(15勝7分12敗 57得点52失点)
得点者:工藤13、レアンドロ・ドミンゲス10、ジョルジ・ワグネル7、澤6、田中5、増嶋4、近藤2、水野1、クォン・ハンジン1、大谷1、橋本1、ネット・バイアーノ1 (酒井1、北嶋1)

 J2からの昇格1年目でのJ1制覇という、史上初の偉業を成し遂げた昨シーズン。クラブ内の全ての部門が1つ同じ方向を向き、どの部門も精進を怠ることなくやり続けられれば、こういう結果も得られるんだなぁ、と強く思わされたところです。そんな大きな成果を残した次の年こそが勝負、とはよく言われますが、今オフもフロントは素晴らしい仕事、ACLとの並行にも耐えられる的確な補強に成功しました。特にレギュラークラスとベンチ陣に小さくないクオリティの差があった守備陣のテコ入れ−酒井と競わせる藤田、CBとして大いに計算の立つ渡部、那須、唯一穴とも言われた左SBを埋める福井−がパーフェクトとも言える内容で、かつ昨シーズン最激戦区とも言えた前線に、さらにリカルド・ロボを加えて競争を煽ることも忘れませんでした。OUTも若手のレンタル移籍中心で、山中の昇格と合わせてしっかり未来を見据えられているなぁと感心しきり。今年、何か1つタイトルを獲得することができれば−それがリーグ連覇なら最高−チーム関係者が今年しきりに口にしている「常勝軍団」になることも十分可能ですし、それを口にするだけの材料は調えられたと思います。
 やろうとするサッカーに、大きな変化はないでしょう。前からのプレッシングを怠らず、中盤以降がそれに連動してバランスよくゾーンで対応。高い位置でボールを奪えればシンプルにジョルジ・ワグネルレアンドロ・ドミンゲス、あるいは2トップまでボールを飛ばして手数をかけず攻め切れますし、奪う位置が低かった場合は大谷、栗澤が緩急をつけながらボールをコントロールし、SHや2トップに縦パスを入れることがスイッチになったり、SBが躊躇なくオーバーラップしてサイドを崩すこともできます。押し込まれて劣勢になっても、大谷、栗澤が相手の攻めを遅らせたり献身的にコースを消したりでき、その間に4バックはしっかりと迎撃体制を作り、長身選手が居並ぶ4バックと、反応の鋭さに定評がある菅野で押し返すことが可能。序盤は穴と見られていたレアンドロ、ジョルジの守備もシーズンを追うごとに改善され、小さな綻びすら見せずに試合をコンプリートしきったことも1度や2度ではありませんでした。これを1シーズン続けられたらもうお手上げなんですが、なぜかポコッと大敗する試合があったのも事実。昨シーズンはその大敗から1週間で切り替えて、「2試合連続で勝ち点3を挙げられなかった」ことが1度もなく過ごせましたが、今シーズンはACLとの並行で、リバウンドに時間を要せないシチュエーションが絶対出てきます。そこをチームとして乗り切れるようであれば、リーグ連覇、あるいはタイトル獲得がはっきりと見えてくるかと。

 昨年は連敗を一度もすることなく、引き分け数3と勝ちきる強さがありましたが、今季は2連敗が3度もあり、怪我人も要所で出て勢いが減退してしまうなど、なんとなく波に乗り切れないままシーズンが終わってしまった、そんな印象を受けています。その要因は「ACL」と「補強した選手の不発」。ACL直後のリーグ戦に限れば3勝1分2敗と勝ち越すことができましたが、ACLとの並行が終わった5月末(12試合消化)現在で見れば5勝2分5敗、12位と中位に沈み、内容も19得点20失点と出入りが激しく、安定感に欠けたと言わざるを得ません。2週間のブレイクを挟んだ後の第14〜22節(未消化だった第9節含む)までの10試合を5勝4分1敗でまとめ、4位まで浮上したあたりからは「体力万全、気力万全ならさすがだわ」というところも窺わせましたが、今季はこの勢いが長続きせず。それがもうひとつの補強選手の不発。元々どのレベルで期待をかけていたのか(スタメンを奪ってほしいのか、サブとして底上げしてほしいのか)までは分かりませんが、結果として今季補強した選手でインパクトを残したのは那須ぐらい。藤田は(やや甘めに見て)それなりの貢献を見せたものの物足りなさは残り、渡部、福井はそれぞれ5、3試合の出場にとどまり、近藤、増嶋、橋本不在時のマイナスを補いきれず。前線もロボが全くフィットしないまま夏には千葉へと放出され、代わりに獲得したネット・バイアーノも煌きは一瞬で、インパクトを残したのはそのチャントだけ。そして、特段補強のなかった中盤も、栗澤、レアンドロがそれぞれ怪我で欠けるとレベルダウンは否めず。こんな具合に、昨季からいた主力メンバーは引き続き能力の高さを見せるも、それ以外の選手たちがプラスアルファを生み出せず、チーム力が思ったほど積み上がらなかった結果勝ちきれない試合が増えた、という見方が正しいのかな?と思っています。イエローカード77枚、反則ポイント135(ともに清水に次いでワースト2位)という数字も、昨季ほどチームとしての守備がハマらず、個が無理を強いられてしまったと見ることができますし。
 とは言え、繰り返しになりますが主力が揃っている時の柏の強さは折り紙つき。来季はACLがなく、体力的な余裕ができることで現有戦力だけでの巻き返しも十分予想されます。補強ポイントとしてはセンターライン、特にボランチとFWにプラスアルファを加えたいところ。まあ、こことてそれぞれ茨田、田中が弾ければそれでオーケーですが、競争を煽るための補強はあってしかるべきかなと。ドイツ移籍が叫ばれ始めた工藤はぜひとも引き止めておきたいところですが…。


7位 名古屋グランパス(15勝7分12敗 46得点47失点)
得点者:永井10、闘莉王9、ケネディ5、金崎5、玉田5、ダニルソン3、藤本2、田口2、田中隼1、小川1、増川1

 ストイコビッチ体制もついに5年目。昨シーズンは就任当初のゴリ押しサッカー、力技の脅威はそのままに、自分たちでゲームをコントロールする方向へと舵を切ると、それがある程度形になって内容でも周りを納得させられるゲームが増えました。結果は2位に終わりましたが、伸び白を残した2位という印象で、今シーズンはさらに相手にとって脅威の存在になるでしょう。
 補強は、OUTでは千代反田が痛手ですが、それ以外ではここ数年であまり出場機会を得られなかった若手やレンタル先で活躍した選手を一気に放出することでスリム化を図り、INではダニエル、石櫃、巻(今年はDFもやるとか!)といった即戦力と、田鍋、水野らユース年代から4人獲得する先行投資とのバランスが絶妙で、十分なプラス収支と言えるかと。その補強を経て、今シーズンはお馴染みの4−3−3に加えて、ダブルボランチの3−4−3にもチャレンジするとのこと。闘莉王、増川、ダニエルの3枚はいずれも強さがあり、かつボールを配ることができますし、ダニルソンはダブルボランチの方が生き生きしているともっぱらの評判で、パートナーも中村、吉村、磯村と多士済々。両ワイドには田中、阿部、石櫃ら上下動できる選手がいて、3トップは頂点のケネディの横に、玉田、藤本、小川、金崎、永井とスタメンクラスがゴロゴロ。各セクションごとに見ても非常に理に適った起用ができるため、この3−4−3がオプション以上のシステムになる可能性は十分あると見ていますし、それを試合中に使いこなせるまでになれば、相手からすればかなり押さえどころが難しくなって、名古屋がアドバンテージを圧倒的に握れるなんてことにもなるかと。ACLとの並行も3度目で、チームとして経験値の心配をする必要は全くありませんし、ストイコビッチ監督がリーグ優先を明言したことも踏まえれば、今年の名古屋は相当強力な(厄介な)チームになると思います。

 誤算はいくつかありました。例えばケネディの大不振。慢性的な腰痛に悩まされ、今季は18試合5ゴール止まり。2年連続得点王を獲得していた昨季までの驚異的なプレーは影を潜め、前線の基準点も失ったチームはあっさりとバランスを崩してしまいました。例えば怪我人過多。前線ではそのケネディに加えて玉田も怪我がちで離脱する期間が長かったですし、何よりボランチ陣に怪我が相次ぎ、ある時にはダニルソン、中村、吉村、磯村とボランチ(アンカー)を務められる選手がまとめていない、なんてこともありました。代役として奮闘した田口の成長は今季の収穫の1つですが、彼の頑張りだけでどうにかなる問題ではなく、ここでもチームバランスを失ってしまったのかなと。その結果、スイコヴィッチ監督が就任した08年以降「35→42→37→36」と低値安定していた失点数が、今季は47失点と就任後ワーストを記録。チームとして攻めを受けきれない点が散見されれば、ここ2シーズンではほとんど見られなかったGK、DF陣の凡ミスから失点を奪われるというシーンも目立ち、終盤チーム事情で闘莉王を1トップで起用してからはそれがより顕著だったかなと。守備の粘り強さや強引に1点をもぎ取ってそのまま勝ちきる強さで上位をうかがってきたチームが、守備から破綻して、強引にもぎ取る大きな術(個)を失ってしまっては上を狙うのは不可能な話で、得失点差マイナスという点だけをとっても今季の粘りのなさ、勝負弱さが見て取れるかなと。もちろん、選手だけではなく、最後まで適切なバランスを見出せなかったストイコヴィッチ監督にも責めが及ぶと思います。怪我人が増えたのは、あまりフィジカル練習を好まないピクシースタイルが影響していないとは言い切れないですし。
 来季に向けては動きが早く、すでに新人5人(望月(野洲高)、牟田(福岡大)、本多(阪南大)、ハーフナー・ニッキ(名古屋U−18)、チアゴ・ペレイラ渋谷幕張高))の入団内定が発表済み。いずれも見所のある選手ばかりで、いきなりの抜擢があるかも知れませんが、中村、吉村にフル稼働を望むことがやや辛くなり、ダニルソン、磯村にも全幅の信頼は置きづらいボランチ(アンカー)ができる選手は含まれておらず、ここに1枚ドン!と持ってこられれば面白いのかなと。加えて、阿部、田中隼のバックアッパーとなれるSBも手薄(石櫃は期待に応えられたとは言えず、三都主は退団が決定的)なので、ここも手厚くしたいところでしょう。


8位 川崎フロンターレ(14勝8分12敗 51得点50失点)
得点者: レナト10、矢島7、小林6、楠神5、中村5、田中4、大島3、登里2、實藤2、山瀬2、ジェシ1、伊藤1 (田坂3)

 かつて川崎でもプレーし、町田ゼルビアで辣腕を揮っていた相馬監督を招聘した昨シーズン。第18節時点では3位につけ、念願のタイトルへ機運が高まりましたが、その後8連敗を喫するなど終盤はズタボロで、J1昇格後最低となる11位フィニッシュ。今年は捲土重来を期すシーズンとなります。
 補強は(ほぼ)純和風路線を1年で止めて、再びブラジル人トリオにレベルアップの期待を求めるINの顔ぶれ。小松、西部もスタメンを張れるレベルの選手で、大学ナンバーワンの呼び声高いGK高木の獲得も悪くありません。ただ、横山、菊池、薗田とCBでプレーできる選手を一気に放出した意図が全く分からず。確かに井川、伊藤が健在で、ジェシ、森下を獲得して頭数は揃いましたが、仮にジェシがフィットせず、森下がJ1レベルに苦しんだ場合(後者は可能性が高いと思っている)の対応がこのメンバー構成では不安で、昨シーズン同様守備から崩れてしまう画が想像できてしまうところ。ボランチも相手を潰せるタイプが稲本しかいなくなり、その稲本も怪我からの全快がいつになるか(そもそもあるのか)は全く分からないですし、レネ・サントスはブラジル人トリオの中で最も未知数。相馬監督も昨シーズンはあまり守備面での組織構築に効果的な手立てを持っていない?と思わせる面も見て取れ、個人的にはうーんと唸るばかりです。攻撃陣は顔ぶれに大きな変化がなく、新加入の小松と復活を目指す黒津が加わってどれだけ厚みが出るか。中村、柴崎、山瀬、田坂らを中心に中盤で上手くボールをコントロールしながら、小松や矢島がポストワーカーとしてしっかり起点となれってボールを引き出し、その間にSBも含めて前線に枚数をかけられる攻撃となれば、澱みのない面白いサッカーが見られると思いますが、やはり守備が足を引っ張ってしまって…という懸念が個人的には頭から消えない以上、今年も苦しむかなと書いておきます。

 開幕からわずか5節、2勝1分2敗という五分の成績のところで相馬監督を解任する手に打って出た今季の川崎。確かに、東京との多摩川クラシコはショッキングな敗戦でしたが、よもやのタイミングであったことは間違いなし。そして、後任になんと筑波大学で指揮をとっていた風間監督を招聘するこれまたサプライズと言える人事を実行。合わせて、シーズン途中ながら教え子である山越を筑波大在学中のままプロ契約して引っ張ってきたかと思えば、ドイツから息子でもある風間宏希、宏矢も獲得。選手の配置、システム、ボールの動かし方、ポジションの取り方などなど、一部に「信者」を生んでいる風間メソッドも就任直後からすぐに見られ、勝ったり負けたり、好内容と凡内容を繰り返し、ファンの賞賛と不満を交互に浴びながら、終わってみれば勝ち越してシーズンを終えることができました。まあ、私は風間信者ではないのでチームとしてどこまで成長したのか、風間監督の満足度がどれぐらいなのかについては何も分かりませんが、個々で見れば中村がこの年齢にしてさらにプレーの幅、急所をつく視野を広げたり、レナトが急激に馴染んで終盤爆発したり、田中が複数のポジションで遜色なくプレーするなど器用なところを見せたり、ジェシは怪我で長期離脱がありながらも「ホンモノ」であるところを見せたり、大島、楠神、登里、實藤ら若手が潜在能力の一端以上のものを見せたり、各々に成長したところは見られました。
 来季に向けては、中央大から安柄俊を獲得することが発表済みですが、その他の動きはまだ見られず。来季も3バックと4バックの使い分けがあるでしょうから、その両方をこなせるDFをあと1枚獲得できれば大きな戦力アップになるかと。あとは、フィルター役となれるボランチ。失点を減らす、守備の強度を増すため、あるいは中村を攻撃にかけるためには稲本に取って代われるレベルの選手の獲得が必須だと私は思っているので。まあ、まだまだ「軽い」宏希を平然と使うぐらいだから、風間監督がどう考えているかは分かりませんけどね。


9位 清水エスパルス(14勝7分13敗 39得点40失点)
得点者:大前13、高木9、村松3、キム・ヒョンソン3、伊藤1、瀬沼1、高原1 (アレックス6、岩下1)

 昨シーズンのオフは伊東、市川、西部、ヨンセン、藤本、兵頭、本田、岡崎、青山、原とほぼ1チーム分の選手、しかも主力級を放出し、ネガティブな方で最も話題をさらった清水。そこに新しくゴトビ監督を招聘し、サッカーも一から変えたことを考えれば、昨年の10位というのはよくやった方だと思っています。しかし、今オフも山本、児玉、ボスナー、太田と守備陣の主力、準主力級を多数放出し、その補填が吉田、カン・ソンホ、林では、昨シーズン守備で苦しんだ(0−4で3連敗、なんてありましたね)教訓が全く活かされていないと断じるほかないかと。正直、岩下には全幅の信頼を置けない(個人的にはキブと同じ臭いがする)し、相棒が平岡、カン・ソンホではねぇ…。ヨン・アピンもSBではまだ未知数、吉田も守備より攻撃タイプですし、アンカーも村松や枝村ではちょっと重さがない印象で、守備面で光明を見出すのは現状難しいですよ。攻撃陣も、大前、高原、高木の3トップに小野、アレックスが揃い踏みできればかなりの創造性が期待できるところですが、小野は寄る年波に勝てず怪我で離脱することが多くなり、加えてもう1人欠けると途端にトーンダウンの傾向があって、これではさすがに厳しい感じ。小林、樋口、伊藤、鍋田らがどれだけバックアッパーとしてその穴を補えるのかも、昨シーズンを見る限り大きくは期待しづらい印象ですし、こちらも明るい見通しを立てるのはなかなか難しいところです。ただ、キャンプ中の対外試合では4連勝と結果が出ていて、失点もわずか1。ファンの方はこの見立てが杞憂に終わる、全く的外れになる可能性に期待していただければ(苦笑)
 その一方、白崎、柏瀬、犬飼、八反田、河合という新卒5人は好素材が揃った印象。早速先週末の磐田戦では犬飼、河合がスタメンフル出場、白崎も30分強時間をもらって、それぞれ悪くないプレーを見せていました。この中から何人、いきなり1年目でゴトビ監督の信頼を得て出場機会を得られるかは分かりませんが、彼らにとって、即戦力の補強失敗は逆にチャンスなわけで。いきなりのブレイクを楽しみにしたいところはありますし、彼らが起爆剤となって先輩たちに火がついて、チーム力が底上げされることを期待するのは悪くないでしょう。

 成功のシーズン、とまでは言えないのかもしれませんが、個人的に開幕前はネガティブな方にしか考えられなかったので、勝ち越してシーズンを終えられたことはものすごくポジティブに捉えています。その要因は攻撃陣…ではなく守備陣を挙げたいなと。上のシーズン予想時短評でも書いたとおり、はっきり言って守備は厳しいとしか思えませんでしたが、ヨン・ア・ピンが(たくさんカードを頂戴しながらも)CBとして圧倒的な存在感を見せ、数多くのエースを封殺。パートナーも中盤戦までは岩下が、岩下移籍後は平岡がきっちりと務め上げ、SBも右に吉田、左にイ・キジェがほぼ1シーズン固定されたこともあって、最終ラインがユニットとして高い機能性を出すことができたのかなと。その前後もGK林&山本、アンカー村松がどっしりと構え、チーム全体もプレッシングとリトリートを上手く使い分け、反則ポイント最多なにするものぞと言わんばかりのハードチェックもプラスして、終わってみれば完封試合は11試合。大前、高木におんぶに抱っこで、リーグワースト4位の39得点(得点者9人は鳥栖と並んでリーグ最小)に終わった攻撃陣の不発を補って余りある守備の頑張りだったと思います。
 個人で見ると、若い子大好きなゴトビ監督の下で、今季加入した河合、八反田、石毛、白崎、犬飼、柏瀬(天皇杯のみ)が軒並みデビュー…どころか河合はチーム3位の出場時間数と複数のポジションをこなす器用さで大きな貢献を見せ、八反田は終盤トップ下で躍動。石毛はナビスコカップでのパフォーマンスをリーグ戦にも繋げ、白崎、柏瀬もそれぞれナビスコカップ天皇杯でプロ初ゴールをマークすれば、犬飼も3大会すべてでスタメンを経験するなど、それぞれが存在感を見せました。そして来季に向けても、すでに特別指定の身でゴールを奪った瀬沼(筑波大)を始め、藤田(慶應大)、六平(中央大)と注目の大卒選手を一本釣り。大前がドイツへ行く可能性が高いと見られ、高原の退団も決まった中で前線に即戦力は欲しいところですが、育成型ともまた違う「ヤングガンズ」に突き進むのも外から見ている分には面白いので、是非とも頑張って欲しいなぁと。


 残りは次のエントリで〜。