続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

今季のJリーグを振り返る J2編

前書きなく、今季のJ1、J2を、シーズン前に載せた順位予想を踏まえて、自分なりに振り返ってみたいと思います。今日はJ2。まだプレーオフが残っていますが、やっちゃいます。


 まずは、改めてシーズン前の順位予想と実際の順位から。左側の順位とチーム名はシーズン前予想、矢印の後ろが最終順位です。

1位 京都 →3位
2位 徳島 →15位
3位 千葉 →5位
4位 甲府 →1位

      • -

5位 北九州 →9位
6位 東京V →7位
7位 福岡 →18位
8位 草津 →17位
9位 水戸 →13位
10位 山形 →10位
11位 栃木 →11位

      • -

12位 熊本 →14位
13位 横浜FC →4位
14位 大分 →6位
15位 愛媛 →16位
16位 富山 →19位
17位 湘南 →2位
18位 岡山 →8位
19位 松本山雅 →12位
20位 町田 →22位
21位 鳥取 →20位
22位 岐阜 →21位

 傍線が2ヶ所引いてありますが、これは予想の段階で「1〜4位までが自動昇格争い」「上位4チーム+5〜11位までがプレーオフ争い」「12位以下はそれぞれ」という区分けをしたものです。当然ですが、予想通り、予想以上、予想以下、それぞれくっきり分かれていますねぇ。それでは最終順位上位のチームから個々に振り返ってみます。なお、チーム名の後ろのカッコは勝敗及び得失点、その次に全得点者、そして、引用部は予想エントリで書かせてもらった短評です。


1位 ヴァンフォーレ甲府(24勝14分4敗 63得点35失点)
得点者:ダヴィ32、高崎5、柏4、永里4、佐々木2、山本2、井澤2、石原1、畑田1、片桐1、堀米1、フェルナンジーニョ1、保坂1、福田1、津田1、ドウグラス1

城福監督を招聘し、甲府らしい攻撃的なサッカーへと原点回帰する1年。移籍収支はマイナスな印象で、城福監督のスタイルが馴染むのに時間がかかる可能性も否定できませんが、J2では十分威張れる顔ぶれは揃っていて、上位争いは必至でしょう。

 城福監督の哲学と信念を前面に押し出したシーズン序盤は思うように勝ち点を伸ばせなかった印象もありますが、ブレないところはブレず、しかし補強やシステム変更等で手駒の強みをチームの強みへと還元させる手ほどきもありながら、終わってみれば第19節から最終節まで25試合負けなしでフィニッシュと突っ走ってみせました。ただ、この負けなしの間で2点差以上をつけて勝った試合は4試合しかなく、いかにしぶとく、粘り強く勝ち点を積み重ねてきたかは、数字を見るだけで伝わってきますね。
 攻撃、特にゴール数に関してはダヴィ頼み、ダヴィ様々ではありましたが(高崎がちょっとねぇ…)、柏、掘米、井澤といった若手の台頭+レンタルバックの永里や、老獪さが全くさびていなかったフェルナンジーニョやのシーズン途中加入で2列目に怖さが十分あり、そのことが城福監督にシステム変更を決断させたのかな?とも。守備でも山本、伊東、盛田、津田らベテラン勢の奮闘は見ていて恐れ入ります!の一言でしたし、GK荻はシーズンフル出場でゴールにガッチリ鍵をかけ続けていました。最終節、京都の自動昇格を打ち砕いた90分間は今シーズンの集大成そのもので、今季のJ2ベストGK間違いなしでしょう。そんなセンターラインの安定感をバックに佐々木、福田の両SBは勢いを持ってのびのびやれていた印象がありますし、富田、石原、松橋、片桐、畑田、三幸ら少ない出番で攻守両面で大きな仕事を果たした選手も複数いて、「全員で戦っている」という監督の言葉が理想論ではなかったことは明らか。結果的にぶっちぎりの優勝となったのも頷けるシーズンでした。しかし、来季に向けてはダヴィがどうなるか不透明(むしろ、引き留めに悲観的な記事も…)で、彼がいないとなるとかなり苦しいところ。最終節、京都戦でのスコアレスドローは、来季に向けていろんな示唆に富んでいたと思っていて、一にも二にも、オフはダヴィがどうなるの?からスタートですかね。


2位 湘南ベルマーレ(20勝15分7敗 66得点43失点)
得点者:馬場9、遠藤7、菊地7、キリノ7、高山6、岩上6、古橋5、大槻4、島村3、古林3、大野2、中村2、永木2、宮崎1、下村1、吉濱1

湘南は債務超過に陥ったことが公表され、主力級を一斉放出。監督も替わり、今年は再建に向けて耐えるシーズンになりそう。

 予想でも書いたとおり、今季は3年間コーチとして在籍していたチョウ・キジェさんを監督に昇格させ、若手を大量に起用して、来季に向けてリビルディングする1年だと思っていました。しかし、開幕から9試合を8勝1分と負けなしで乗り切ってみせ、その内容も22得点11失点で全試合複数得点、戦い方もアグレッシブの最上級のようなものという今季のスタイルを結果とともに内外に植えつけられたことは、終わってみればかなり大きかったですね。そして、9戦負けなしの後の7戦勝ちなしや、最終盤に来ての6戦勝ちなしといった苦境に立たされても、誰一人今季の自分たちを信じて疑わなかった強さを感じましたし、敗戦数7は甲府に次いで2番目に少なく、敗戦数1桁はこの2チームだけ。そんな2チームが自動昇格を果たしたのは、必然だったのかもしれません。
 また、結果的にJ2最多得点チームとなりましたが、2桁ゴールをあげた選手はゼロ。しかし、シーズン序盤は岩上、遠藤、馬場、中盤は高山、菊地、終盤はキリノ、大槻と、それぞれのターンで複数の選手がゴールを積み重ねていて、複数得点者13人もJ2最多。縦に早く、ボールホルダーを次々と追い越していって脅威を与え続けるスタイルが実を結んだことは、この数字にも表れているでしょう。また、永木、ハン・グギョンのコンビは(悪く言えば)せわしないチームの流れを落ち着かせる役割を果たしましたし、遠藤、鎌田、大野、古林ら若手のDF陣もアグレッシブさを失わずに奮闘を見せられた印象。そして、忘れていはいけないのが彼ら若手を支え続けた坂本、古橋、下村、島村のベテラン勢。若手が勝てなかった時期を振り返って「坂本さんらがいなかったら…」と次々口にしていましたが、数字に表れない部分での仕事ぶりは相当凄かったんでしょうし、若手の多くが昇格を決めて無邪気に飛んで跳ねて喜ぶ一方、人目も憚らず号泣していた下村の姿は、とても印象深いシーンでした。来季は、若手の更なる躍進を促しながら、どれだけ即戦力を手に入れられるか。金銭的には債務超過が明るみに出るなど苦しい状況があり、明るい見通しは立てづらいところですが、果たして。


3位 京都サンガ(23勝5分14敗 61得点45失点)
得点者:中村14、宮吉11、中山6、原6、駒井6、工藤4、安藤3、サヌ2、秋本2、長澤1、久保1、ファン・テソン1、伊藤1、内藤1、チョン・ウヨン1、バヤリッツァ1

若手主体への方針転換がものの見事に成功し、天皇杯準優勝という結果も残しました。加藤、森下、中村太らの移籍は地味に痛手ですが、長沢、倉貫、バヤリッツァ、原で十分に補填。ユースからの昇格組も久保は別格として原川が既に頭角を現すなどさすがなところを見せていて、躍動感のあるサッカーでJ2を引っ張ってくれそう。

 これはあくまで印象論に過ぎませんが、足下でのパス交換やショートパスを多用する、いわるゆ「ポゼッションスタイル」のチームは、勝つときはサクっと勝つ一方、負ける時もサクっと負けてしまうというか、「泥臭く、せめて引き分けに…」という展開にならない「軽い」敗戦が多い気がしていまして。京都も御多分に漏れず、引き分け5はリーグ最小で、23勝と14敗はプレーオフ圏内の4チームの中でともに最多。そして、自動昇格を逃した最終節も、例えば長身の長沢を入れるとか、例えば3バックにしてバヤリッツァを上げるといった抗う姿は見られず、交代枠を残してのドロー。良くも悪くも「自分たち」に拘ったシーズンの終わりとなりました。それをどう評価するかは、なかなか難しいところがありますけどね。
 とはいえ、スタイルに拘り続けた中で宮吉やファン・テソンといった昨季から活躍していた選手もそうですし、中村、駒井、福村、ファン・テソンら若手が成長を見せたのは収穫。特に中村の天才っぷりや、一介のドリブラーという枠を自分で破ってみせた駒井の終盤戦は見ていて惚れ惚れしました。また、中山、工藤、安藤、染谷ら中堅陣、バヤリッツァ、秋本、水谷らベテラン陣のセンターラインも一定以上の安定感は示し、伊藤、原川、三根ら更なる若手の原石達もいくつかの出番を得るという未来への萌芽もありました。唯一残念だったのが久保。センセーショナルな昨季のデビューを受け、今期は更なる躍進が期待されましたが、いろいろあって20試合1ゴール止まり。彼が1つでもゴールを増やせていれば…ね。U−19代表が非常に残念な結果に終わったこともあり、プレーオフでは戻ってくることとなりそうですが、いろんな鬱憤をここで晴らせるか。
チーム自体が「一発勝負」に最も弱そうな雰囲気も感じますが、さぁどうなる。


4位 横浜FC(22勝7分13敗 62得点45失点)
得点者:大久保11、カイオ10、田原8、竹岡7、野崎4、佐藤3、高地3、森本3、小野瀬2、堀之内2、永井2、中里1、阿部1、カズ1、内田1

ここ(13位)に予想しておきながらいい意味で外れる予感もあり。

 結果的にはいい意味で予想が外れましたが、その中身は想像以上。かつて昇格した年のように開幕わずか数節で岸野前監督を見切り、山口現監督を招聘。その後、山口体勢での初勝利を得るまでにさらに数節要し、一時は最下位に沈みましたが、初勝利をあげた第9節以降の34試合に限れば22勝4分8敗というハイペースで勝ち点を積み重ね、粟や自動昇格まであるか、という大きな見せ場を作ってくれました。
 いろんなコメントや評論を見ると「ボールを大事にして攻撃を…」という側面を強調するものが多かったように思いますが、個人的には守備陣の奮闘を称えたいところ。というのも、複数得点試合が前半戦は22試合中12試合だったのに対し、後半戦は22試合中6試合と半減しながら、後半戦22試合の失点数は17、平均1以下と守備陣が我慢して耐えられてことが、勝ち点のペースを落とさなかったことにつながったと思うので。要因としては、大久保やカイオら前線の選手が守備をサボらなかったこと、ベテランの堀之内がペ・スンジンのパートナーとして後半戦多くの時間で固定されたこと、そして、ファンが選ぶシーズンMVPとなったシュナイダー潤之介の大活躍、この3つでしょう。特に「シュナ潤」の活躍は今季最も耳目をひいたと言っても過言ではなく、35歳のベテランがプレーオフでもチームを上へ導けるか、注目です。


5位 ジェフユナイテッド市原・千葉(21勝9分12敗 61得点33失点)
得点者:藤田15、田中8、兵藤7、荒田6、山口智5、深井4、谷澤2、伊藤2、大岩2、竹内2、米倉2、佐藤勇2、大塚1、オーロイ1 (ミリガン2、久保2)

田中、山口、佐藤、荒田、兵働とJ1レベルの選手を補強。木山監督に代わって一から作り直しているため、シーズン序盤は苦戦する試合があるかもしれませんが、年間を通せば自動昇格しなければ失敗とも言える陣容で、今年こそは期待してもいいのかなと。

 シーズン最初の10試合は4勝3分3敗ともたつきながら、その次の10試合を8勝2敗のハイペースで乗り切って第19節には首位浮上。「あ、今年の千葉はやはり違うんだな」と思って見ていましたが、その次の10試合ではわずか7ゴールと攻撃陣が沈黙し(最初の10試合は11ゴール、次の10試合は23ゴール)、3勝3分4敗と負けが先行。気がつけばプレーオフ圏外の7位へ転落して、「あら、今年もこのパターンかい」とズッコケ。それでも、最後の12試合はファンの居座りが起こるなど雰囲気が悪くなる場面もありながら6勝3分3敗で乗り切り、プレーオフ圏内は死守しました。この順位が「成功」とは言いたくないですけどね…って、それは選手たちが一番分かっているか。
 補強選手として名前のあげた選手はそれぞれ自分の役割を十分に果たしました。特に山口、兵働は経験値が違うんだよ!というところを見せ付けるパフォーマンスでした。また、名前をあげなかった選手でも藤田が現在チームトップの12得点と久々にはじけ、レンタルで加入した武田も28試合に出場して攻撃センスを見せるなど、オフの仕事は一定の成果を見ました。ただ、ここは勝ちたい!という試合−例えば前節の勝利で首位の立場を得て臨んだ第20節東京V戦や第25節甲府戦−を落としてしまったり、シーズン後半のアウェーで勝ち点3を取りきれなくなったりするなど(8月以降のアウェーゲームは1勝3分2敗)、個の補強がチームとしてのタフさを積み増すには至らなかった印象は否めず。プレーオフに残っているチームの中で、単純に個の力量を足し算すれば1番上になると思うので勝ち上がってもなんら不思議ありませんが、一方で得失点差+28は優勝した甲府と並んで最多ながら、その甲府と勝ち点14もの差がつき、先制時の勝率も(僅差ではありますが)上位6チームの中では一番低いという勝負弱さが結果として残っていることも事実。果たして、プレーオフではどちらの顔が見られるか。


6位 大分トリニータ(21勝8分13敗 59得点40失点)
得点者:三平14、森島14、村井5、高松5、阪田4、木島4、西3、チェ・ジョンハン3、為田2、石神1、作田1、小手川1、イ・ドンミョン1

悪くないサッカーをしながら勝ちきれないと予想。

 相手に合わせてシステムや戦い方を変えることを厭わず、しかし、ダイナミズムだけは失わないように、という信念はシーズン通して感じられました。3連敗が一度もない(2連敗が3度だけ)一方、最多連勝が4止まりと爆発できた期間が短かったことで最終的に6位とはなりましたが、限られた手駒を手練手管で使いこなした田坂監督の手腕であったり、昇格への障壁となっていた多額の債務超過についても、官民・政財が連携して必死になって解消に取り組み、何とかライセンス交付に至ったこと、その結果を受けて、選手たちがJ1昇格の夢を繋いだりという点は、大いに評価されていいと思います。
 選手でまず目立ったのは三平、森島の2トップ。森島は第25節から第36節まで、三平は第33節から最終節までノーゴールとお互い不発な時期もありましたが、運良く不発の時期が重なることは少なく、どちらかはその時々で結果を残し続けて、終わってみればお互い14ゴール。同チームの最多+2番目のスコアラーのゴール数合計で大分は2位(28ゴール)でしたが、1位の甲府ダヴィ1人が稼いだ(ダヴィ32+高崎5=37ゴール)ものなので実質このコンビが1位と言ってよく、プレーオフでも貴重なゴールを期待したいところ。また、安川、松原、為田ら若手の台頭があれば、阪田、石神、宮沢、村井、高松ら中堅・ベテラン勢の奮闘もあって、バランスもよかった印象。心情的には、ここ数シーズンの苦難を踏まえて、プレーオフで一番肩入れしたい…かな。


7位 東京ヴェルディ(20勝6分16敗 65得点46失点)
得点者:阿部18、西6、高橋6、飯尾4、中島4、梶川3、小池3、深津3、森2、中後2、土屋1、ジミー・フランサ1、アレックス1、ジョジマール1、巻1 (杉本5、小林祐4)

河野、菊岡の攻撃2枚看板が揃って移籍し、FWも平繁、市川、井上、平本、マラニョンとほぼ全放出。FWにはジョジマール、アレックス、ユースから南、SHには西、鈴木、ユースから杉本と戦えるメンバーは獲得しましたが、果たしてこの入れ替えがどちらに転ぶのか。ボランチ、CBの層の薄さも気にはなります。

 京都同様、繋いで繋いでのスタイルを前面に押し出し、勝つか負けるかを第25節まで繰り返しながら(16勝1分8敗)、この時点で首位浮上。このまま一気に突き抜けたいところでしたが、その後の17試合で勝ち点3を奪えた試合はわずかに4つ。しかも、勝てなかった14試合で先制できたのはたったの1試合で、終盤に来て川勝前監督を解任するなどベンチもゴタゴタ。これでは、自動昇格どころかプレーオフ圏内に残れないのも仕方なかったですね。
 選手起用でもいろいろありましたが、一番は阿部のパートナーが最後まで定まらなかった点が大きかったのかなと。(大まかに書くと)ジョジマール→杉本→巻→ジミー・フランサ→中島と5人も名前を連ね、一番ハマっていた感のある杉本は引き止められず、巻やフランサは怪我などもあって継続せず、高橋現監督に交代後、中島が光るところを見せて再度期待が膨らみましたが決定的な一打とはならず。そうしているうちに守備陣も相手のワンチャンス、ツーチャンスに耐え切れず失点を重ね、75〜90分までの失点数17は、19の町田に続いてリーグワースト2番目。かつラスト10試合で完封はわずか2つだけと、一度狂った歯車を元に戻すことはできませんでした。まあ、年齢だけでいう話ではありませんが、それでも20代中盤という一番の働きどころな中心選手が深津、阿部ぐらいしかおらず、土屋、森、西らベテラン勢はまだまだ健在ながら、来季はユースから6人昇格させるなど、歪な年齢構成の解消は期待しづらいところ。フロントがこれを埋める作業をどこまでできるか。まずは、そこを見たいですね。


8位 ファジアーノ岡山(17勝14分11敗 41得点34失点)
得点者:川又18、キム・ミンキュン6、田所4、仙石3、関戸3、石原2、中野1、植田1、後藤1、竹田1、チアゴ1

大分同様見どころのあるサッカーをしながら、結局このぐらいの順位というイメージ。アンデルソンや川又が爆発すれば面白いけど…。

 いやー、大爆発しましたね、川又が(アンデルソンは全くダメでしたが)。3−4−2−1の形をなるべく崩さず、繋ぐところは繋ぎながらも早い攻め、両サイドの活動量の豊富さ、ダイナミックな展開を活かした攻撃−なんとなくナポリをイメージさせる−のフィニッシャーとして、チーム総得点の43.9%を1人であげる獅子奮迅ぶり。このゴール寄与度(個人の得点÷チーム総得点。命名はオリジナルw)は、50.7%のダヴィに次いで2位(ちなみに、3位は武富(熊本)の35.0%)。ゴッツい見た目とは異なり(失礼!)複数のゴールパターンを携えており、単純にパワー、スピードだけのストライカーではないことも証明してみせ、今季「ハネた」選手の1人として名前をあげていいでしょう。
 とはいえ、チームとしては41得点どまり。それでいてこの順位に食い込めたのは、ひとえにチーム全体の守備意識の高さでしょう。34失点はリーグ2位で(1位が千葉の33、3位が甲府の35)、複数失点6試合はリーグ最小(千葉、甲府はともに8試合)。前線から厳しくプレスをかけるところとプレスバックして守るところの判断がよく、後藤、植田を中心とした3バックも高さ、強さを活かしてクロスやセットプレーからの失点を防ぎ、J1経験のあるGK中林が最後方でどっしりと構えるこの「3段ブロック」は、常に相手の攻撃陣の脅威となっていた印象が強いです。この守備意識が薄まることは考えづらいので、来季はさらに攻撃陣が奮起できるかに注目。新潟からのレンタルである川又を留めて置けるのか、第2のストライカーを確保できるのか、キム・ミンキュン、田所、仙石、千明、関戸ら若手の更なる台頭はあるのか、澤口、田所の両ウイングバックは今季のハイパフォーマンスを継続できるのか。それらが期待できればいよいよプレーオフ圏内でしょうし、叶わなければ…。


9位 ギラヴァンツ北九州(19勝7分16敗 53得点47失点)
得点者:端戸14、池元7、渡5、常盤5、キローラン木鈴3、竹内3、レオナルド3、小森田2、林2、登尾1、安田1、木村1、キム・ジョンピル1、多田1、中原1、新井1

こだわりにこだわって若手ばかりを補強。これがいい方向に転がり、三浦監督の繋ぐスタイルがさらに浸透すれば、昨シーズンにも劣らないインパクトを残せそう。

 「われわれは死んでしまった」―その言葉の奥底に何があるのか、それは三浦監督のみぞ知るところですが、プレーオフ圏内に可能性を残す中で、J1ライセンスが交付されなかったことは、相当なダメージだったと思います。世界的に見れば、例えば今季CLに出場しているノアシェランノルウェー)の観客収容数は1万人だったり、日本人が数多く在籍したVVV(オランダ)の観客収容数は7千人だったりと、スタジアムのキャパシティが今のJ1ライセンスに達していないクラブが1部リーグで戦っており、単純に観客動員数だけで区切るのはいかがなものか?と思っている…ってのはまた違う話ですが、とにかく、周りの状況に流されず、三浦流を今季も貫いたことは、賞賛に値することだと思っています。
 昨季も佐藤、森村、木村、安田、池元、レオナルドら若手や中堅を大きく成長させましたが、今季もキローラン木鈴、川鍋、竹内、新井、渡、端戸、常盤らが大きな成長を遂げました。このうち、キローラン、竹内、端戸はレンタル組で、来季も戦力となるかは不透明ですが、三浦監督である限りこの「若手育成」主体のスタイルは変わらないはずで、独特な存在感を持つチームとして邁進してほしいと願うばかりです。が、来季一番いない可能性があるのが三浦監督であること(退団報道も出ましたね…)、そして、スタジアム問題が片付くまで、現行の制度ではJ1を目指せないチームであることは事実として残り、そのことによる求心力低下が大きな懸念材料としてあるわけですが…。


10位 モンテディオ山形(16勝13分13敗 51得点49失点)
得点者:中島9、秋葉8、宮阪6、山崎4、石井4、萬代4、ブランキーニョ3、石川3、林2、船山2、永田2、小林1、太田1、西河1、廣瀬1

長谷川、大久保、佐藤とJ2降格による放出を最小限に食い止められた印象。補強も最小限ながらピンポイントにできたように見え、奥野新監督のサッカーを早々にチームが噛み砕ければ、6位以内は十分に圏内でしょう。

 前半戦は主役の1チームでした。第6節から第15節まで10試合負けなしで首位に立つなど、22試合を12勝5分5敗、4位で乗り切りましたから。しかし、後半戦の22試合は4勝8分9敗。その中でも、第32節までは何とか我慢して勝ち点を積み上げていましたが、ラスト10試合で1勝2分7敗、6得点17失点と大失速。さらに、ラスト3試合は全て完封負けの7失点と、後味悪くシーズンを終える結果となってしまいました。奥野体制1年目であることを鑑みれば御の字な結果かもしれませんが、山形より苦しいと思われていたチームが複数上にいることを踏まえれば、もう少し何とかできたのでは?と思ってしまいます。
 個人で目に付いたのは宮阪。FC東京U−18出身ということで注目はしていましたが、第4節でプロ初ゴールを直接FKでマークすると、第17節にはこれまた直接FKで2得点という珍しい記録もマーク。最終節にレッドカードを頂戴してしまうおまけはつきましたが、終わってみれば40試合6得点と、1年目としては超合格点の結果を残したと言っていいでしょう(最終節、わずか19分で退場したのはご愛嬌)。宮沢克行という1人のアイコンがユニフォームを脱いだ来季、さらにチームを引っ張っていく彼の姿に期待したいです。


11位 栃木SC(17勝9分16敗 50得点49失点)
得点者:廣瀬11、サビア9、菊岡7、高木4、杉本4、小野寺3、當間2、チャ・ヨンファン2、パウリーニョ1、大和田1、棗1、赤井1、菅1、久木野1

ロボ、チェ・クンシク、水沼、大久保、那須川、渡部と痛すぎる主力放出。菊岡、荒堀ら獲得のメンバーは悪くなく、パウリーニョが早めに戻ってきて松田監督らしい組織力が見られれば…とは思いますが、ちょっと苦しいようにも映ります。

 順位、予想ともに当たったと言えるのは、このチームぐらいでしょうか。攻撃陣では廣瀬、サビア、菊岡らの奮闘は垣間見えましたが、全体としてはロボ、水沼らの穴を埋め切れたとは言い難いところ。守備陣も30試合以上スタメンを張った選手が1人もおらず、勝負どころのラスト10試合で複数失点試合が6試合を数えるなど、松田監督らしいソリッドなサッカーを最後まで体現しきれず、こちらも渡部、大久保、那須川ら移籍で離れた選手がいれば…と惜しみたくなる結果となりました。ただ、オフにフロントが頑張って、なるべく今季のメンバーを維持しつつ守備陣に1、2人即戦力を連れてこられれば、私は来季の反撃があっても驚かないなと思っています。
 個人では、上でも書いたとおり廣瀬、サビア、菊岡の3人は好印象。廣瀬は、昨季まではスーパーサブとしての存在でしたが、今季はついに才能が花開き、41試合でスタメン出場。キャリアハイかつ初の2桁ゴールをマークしました。サビアも、出場時間が廣瀬の2/3で9ゴールは及第点以上。高さこそ見劣るものの、スピードやタイミング、瞬間的な動きで相手を外せる2トップで、ハマった時の怖さは間違いなくありました。その2トップを活かすために奮闘したのが菊岡。フィード、クロス、FK、CKといった中長距離のボールを蹴らせれば、J1の選手を含めても五指に入るのでは?という高精度ぶり。逆サイドハーフの高木を含めたこの4人が作る攻撃は、来季も武器として期待したいです。


12位 松本山雅FC(15勝14分13敗 46得点43失点)
得点者:船山12、塩沢11、飯尾3、弦巻3、鐵戸3、多々良3、木島2、玉林2、大橋1、飯田1、チェ・スビン1、アリソン・リカルド1、小松1、藤川1 (久富1)

昇格2チームは、ひとまずJFL降格の可能性が発生する21、22位にならなければ成功でしょう。

 明暗くっきり分かれたJリーグ1年生チーム。その明は松本山雅でした。開幕して7試合こそ1勝1分5敗と苦しいスタートとなりましたが、その時期も含めて3連敗が1度もなく、勝ちなしの最長記録5試合(第15〜19節の2分3敗)は上位と肩を並べるレベル。そんな我慢の前半戦を乗り切ると、後半戦で一気にスパーク。勝敗が6勝7分9敗→9勝7分4敗、得失点が14得点23失点→32得点20失点、無得点試合が11試合→4試合といずれも長足の進歩を見せ、第25〜39節までの15試合を「7戦負けなし→1つ負け→7戦負けなし」と乗り切り、奇跡のプレーオフ進出もあるか?というところまで頑張りました。個人に目を移しても、塩沢、船山と2人が2桁ゴールを決め、飯田、飯尾、多々良+野澤の守備ラインは予想以上の奮闘を見せ、鐵戸、玉林、木島ら中堅陣や弦巻、楠瀬、喜山ら若手もそれぞれに台頭。観客動員数もJ2トップレベルをマークし、外野から見る限りはポジティブな要素しかないシーズンという印象です。
 来季に向けても、反町監督の続投が決まり、大学生注目ストライカーの岩渕を獲得するなど選手補強も順調。さらに、U−18へ岸野前横浜FC監督を招聘するなど長期的なチームビルディングも忘れていません。今季の「成功」により、来季はハードルが結構高くなると思いますが、それをも乗り越えてさらに逞しくなるのでは?という期待を抱かせるチームだなと感じています。


13位 水戸ホーリーホック(15勝11分16敗 47得点49失点)
得点者:岡本8、小澤7、橋本6、ロメロ・フランク5、島田4、鈴木4、西岡2、星原1、吉本1、山村1、キム・ヨンギ1、鈴木1、市川1、加藤1、吉原1、細川1 (塩谷2)

遠藤、保崎、小池、常盤とえっ!?という放出をしましたが、輪湖、市川、三島、橋本とJ1経験者を獲得することに成功。柱谷イズムを叩き込まれた若手が揃う中盤と、酸いも甘いも噛み分けた吉原、鈴木隆がいるFWはある程度計算できるため、輪湖、市川が額面通り活躍し、塩谷、尾本、加藤と組む4バックがガッチリ決まればダークホースになれそう。

 上にも書いてあるとおり、予想以上に昨季の主力を出してしまった印象は否めませんでしたが、開幕して10試合を5勝3分2敗の6位で乗り切る好スタートを見せました。第12節には3位に浮上すると、その後も3連敗が2度あるなど順位こそ2桁でしたが、ギリギリプレーオフ圏内を目指せるラインはキープしながら奮闘を見せていました、が、北九州同様スタジアム施設絡みでJ1ライセンスが交付されず、チームに大きなショックが走ります。しかし、その発表直後の第30節で奇しくも同じくライセンスが交付されなかった北九州を相手にホームで3−1と快勝。結局、これがシーズン最後の勝ち星となってしまいましたが、6千人を超える観客を前で岡本、柱谷監督が熱い決意表明を口にしたシーンは、今でも強く記憶に残っています。
 2桁ゴールをあげた選手はいませんでしたが、(広島に移籍した塩谷を含めて)ゴールをあげた選手が17人というのはJ2最多。MFである小澤、橋本、ロメロ、島田、西岡が複数得点をあげるなど、ここだ!という時の思い切りのいい飛び出しは見ていて気持ちよかったなぁと。FWも鈴木はゴール以外での貢献が高いのでともかくとして、岡本は8ゴールながら得点率*10.83は、複数得点をあげた選手の中ではダヴィ(0.85)、中島翔哉(0.84)に次いで3位という高い数字(ちなみに、0.8超えは4位原(京都)の0.82まで)。来季、開幕戦から怪我なく出場し、このペースとまでは言わないものの、得点ランキングを賑わせる成績を残せれば面白いかなと。あ、引き抜きがどれぐらいあるのかなぁ…。


14位 ロアッソ熊本(15勝10分17敗 40得点48失点)
得点者:武富14、齊藤4、北嶋3、大迫3、片山2、五領2、矢野2、高橋2、根占1、廣井1、吉井1、養父1、藤本1、市村1、チェ・クンシク1、蔵川1

一にも二にも点を取れるか。

 昨季までの熊本というと、「守備は平均以上のものがありながら、得点力不足に泣いて勝ち点が伸びず」という印象があり、それを踏まえて予想コメントを一言でまとめたところ。今季も、単純な得失点を見れば得点力が…という風にも取れますが、中身を見ると面白いことになっていまして。全15勝のうち1−0で勝利した、言わば「熊本っぽい」ものはわずかに2試合だけで、残りの13勝はすべて複数得点と、畳み掛ける力は昨季より増した印象を受けます。その一方、全17敗のうち得点をあげながら敗れた試合も1試合のみで、残り16敗(+10分けのうち6分)は無得点。つまり、昨季以上に点を取れずに負けている印象もあるわけです。分かりやすいと言ってしまえばそれまでですが、ここまでクッキリした結果を残すチームはそうあるわけではなく、今季で退任する高木監督の功績と限界がハッキリ見て取れた、と結論付けてもいいのかもしれません。
 個人で言えば、攻撃では武富、守備では廣井が私的大ブレイク。彼らが今季熊本に果たした貢献度は、(数値化できませんけど)J2でも屈指のものでした。ともに来季はレンタルバックされるはずで、チームとしては痛手が大きいところですが、高橋、五領、齋藤、仲間といった保有している若手が徐々に伸びてきており、次の監督次第ではハネる可能性はまだ秘めていると思います…って、高木体制の戦いは終わっていませんでしたね。天皇杯、対するは名古屋。長い長い準備期間を取ることができ、モチベーションも格段に違うでしょうから、心の底から「ジャイキリ」を期待して止みません。


15位 徳島ヴォルティス(13勝12分17敗 45得点49失点)
得点者:津田9、衛藤6、ドウグラス4、ジオゴ3、アレックス3、キム・ジョンミン3、橋内3、エリゼウ2、西嶋2、宮崎2、徳重1、花井1、鈴木1、青山1、濱田1、那須川1

柿谷、島村、倉貫、佐藤、ペ・スンジンと主力が去りましたが、宮崎、太田、鈴木、上里、花井、那須川、大久保、福元、青山、ジオゴと他チームが羨むほどの補強に成功。美濃部監督の後任に小林監督を招聘できたのも大きな成果で、昨年の悔しさを晴らすことが出きる陣容が整いましたね。

 4年間率いた美濃部前監督から小林監督へバトンタッチし、陣容も大きく変わった中でのシーズンだったので、丁半博打的なところはあったかもしれません。しかし、開幕連勝スタートを飾った後の第3節から第11節までの8試合を2分6敗、2得点16失点(しかも2得点はともにPK)という惨憺たる結果で終えて20位まで沈んで以降、残り31試合で連勝はたったの1度だけ。補強がハマったのも那須川、(やや甘めに見て)上里、花井ぐらいで、昨季大活躍を見せた三木、徳重、津田はいずれも及第点以下だった印象もあり、結局終始2桁順位のままシーズンを終えてしまったことはただただ残念の一言です。それでもシーズン終盤には新システムが上手くいきそうな印象を与えたことは数少ない収穫。もともと能力のある選手が揃っていることは間違いないので、なるべく現有戦力を留め、ケミストリーを高める方向でオフを過ごせれば、来季が捲土重来を期するシーズンになってもおかしくないかと。


16位 愛媛FC(12勝14分16敗 47得点46失点)
得点者:有田14、石井6、赤井5、大山4、東3、前野3、アライール2、内田2、加藤2、浦田1、村上1、トミッチ1、伊東1、藤1

齋藤を引き留めきれず。堅守速攻でどこまで。

 シーズン前には「エヒメッシ」こと齋藤を引き止められず、苦しい戦いが予想されました。結果的に今季も16位に終わりましたが、(おそらく)クラブ史上初の得失点差プラスでシーズンを終えられたことはポジティブな材料と言えますし、第22節から第34節までの13試合勝ちなしという苦境を乗り越え、そこからの残り8試合を4勝4分、11得点5失点と負けなしで終えることができたことも、前向きに捉えていいのかなと。
 その立役者は秋元、前野、有田の3人。秋元は今季新加入ながら、川北を抑えて正GKの座を掴むと、そのまま42試合フル出場。それでいて防御率1.09は立派な数字だと言えるでしょう。前野はユースから大学を経て出戻り入団した2年目の選手で、今季はキャプテンも任されましたが、その期待に応える成長ぶり。チーム事情により中盤でプレーしていますがもともとはDF(登録もDF)とユーティリティさもあり、来季も留めて置けるか心配なくらいです。そして、神戸から武者修行でやってきた有田は、ゴール数では齋藤の穴をキッチリ埋め、プレーでは齋藤とは違う力強さや高さを活かしてチームを牽引。これまた戻ってしまうのかな…という不安はありますが、残しておけるようなら来季も楽しみな選手の1人です。


17位 ザスパ草津(12勝11分19敗 31得点45失点)
得点者:小林4、松下3、キム・ソンヨン3、アレックス・ラファエル3、御厨2、中村2、杉本1、櫻田1、横山1、遠藤1、熊林1 (ヘベルチ5、リンコン4)

昨シーズン終盤を好調で終え、古林、アレックスの移籍は痛手も遠藤、保崎、キム・ソンヨンで補填はできたかなと。ヘベルチがストライカーとして存在感を見せ、熊林、松下のダブルボランチが揃ってフル稼働できれば面白いかと。

 8位という予想は高めに見積もった、と言い訳はしておきますが、それでもここまで貧打にあえぐとは思っても見ませんでした。なにせ、31得点はリーグワースト2位、チーム最多得点者の得点数4は鳥取とともにリーグワーストタイ、複数得点試合6は岐阜、町田と並んでこれまたリーグワーストタイ、ですから。まあ、ブラジル人が途中でいなくなるのはもはや仕様とも言えるレベルなので、ヘベルチが…リンコンが…というのは言わないこととして、日本人FWでたった2ゴール(杉本、遠藤)というのは、いくらなんでもガッカリな数字だと言わざるを得ません。今季を持って副島監督が退任し、熊林も退団することが発表されました。まだ松下はいますが、1つのサイクルが終わったことは事実。次のサイクルへ向けて、今オフにどれだけ思い切れるか、ある意味では注目すべきかなと思います。


18位 アビスパ福岡(9勝14分19敗 53得点68失点)
得点者:城後12、坂田8、成岡6、オズマール5、石津3、木原3、高橋3、鈴木3、西田3、末吉1、古賀1、小原1

移籍収支マイナスで一からの出直しですが、早めにセンターラインが固まって、前田監督の漢気が浸透すれば6位以内の争いには十分食い込めるかと。

 シーズン序盤は坂田、中盤は城後、終盤はオズマールとスコアラーは年間通して及第点以上の働きを見せ、成岡、鈴木、木原、石津ら中盤・前線の選手も悪くないシーズンを送ったかと思います。しかし、守備はリーグワースト2位の68失点と完全崩壊。古賀、小原、畑本、堤、山口らCB陣はスピード負けすることが多く、和田、キム・ミンジェ、尾亦らSBも1対1で勝ちきれず。GK神山も淡白な失点を喫することが目立ち、組織としてもプレッシングなのかリトリートなのか全く意思統一できないまま。完封試合はわずかに9試合、後半戦に限ればたったの2試合しかなく、第28節から第42節までのラスト15試合は全試合失点。実はこの15試合で無得点も2試合しかなく、「取っても取られる」流れは最後まで食い止められませんでした。来季に向けて、まずは監督を誰にするのか。そして、守備をどう構築するのか。課題はハッキリしているので、フロントが腰を据えてやれれば…。


19位 カターレ富山(9勝11分22敗 38得点59失点)
得点者:西川5、ソ・ヨンドク5、黒部5、苔口4、福田4、加藤3、木村3、國吉2、朝日2、大西1、平野1、足助1、明堂1

3年計画の2年目。選手の入れ替えもJ2の中では最も少なく、今年は10位前後までいければ成功のシーズン。ノープレッシャーでどこまで。

 安間体制2年目で、個人的にはもう少し上の順位まで上がってくれるのでは?という期待もありましたが、今季も最下位、残留争いどまり。ただ、シーズン序盤〜中盤までの全く突き抜けきらない時期(第17節〜第31節まで15試合勝ちなしもあった)のサッカーと比べれば、5勝1分4敗と勝ち越して終えられた、しかも千葉や京都といった上位陣も食ったラスト10試合で見せたサッカーは来季への期待を持たせるものだったと思います。
 その尻上がりを演出したのは、間違いなく「ミスター・カターレ」朝日。序盤は怪我の影響で出場できませんでしたが、怪我から復帰してスタメンに戻ってからはチームが一気に落ち着いた感があり、第37節、残留争い直接対決となった鳥取戦での先制ゴールや、スカパー「マッチデーJリーグ」内での最終節ベストゴールにも選ばれた水戸戦での先制点など結果でもチームを牽引。若手・中堅が居並ぶチームにあって、朝日、黒部、池端、大西の存在は欠かせないものだったと思います。その若手・中堅陣でも、キャプテンを任された足助、攻撃の中心となったソ・ヨンドク、出場機会を大きく増やして成長した福田、新加入ながらすんなり馴染んだ加藤、木村など、おっと思わせる個も出てきました。3年契約の3年目、集大成となる来季こそ、大躍進を見せられるか。


20位 ガイナーレ鳥取(11勝5分26敗 33得点78失点)
得点者:住田4、小井出4、美尾4、実信3、鶴見3、戸川2、森2、久保2、福井2、尾崎1、奥山1、ケニー・クニンガム1、柳楽1、吉野1

コスタリカ人2選手がハマるかどうか。補強面で大きな上積みがない分、そこがハマらなければこの順位でしょう。

 結果からいうと、コスタリカ人のケニー・クニンガム、ロイ・スミスは揃って10試合未満の出場に留まりました。クニンガムはともかく、スミスは十分スタメンで使うに値するプレーだったのに(たまたま出た試合を見れた)…ってのはさておき、日本人中心で戦い、走って走って、拾って拾って、前へ早く攻めて、点を取ったらガッツリ引くという戦い方は貫き通して、残留を争った4チームの中では唯一2桁となる11勝をマークしてなんとか残留。失点78は断トツのワーストでしたが、「ピンかパー」みたいなスタイルは見ていてなかなかに楽しめました。
 出場時間順に並べると美尾、小針、戸川、森、小井出と上位5人は中堅・ベテランが名を連ね、その次も尾崎、奥山、加藤、実信とこれまた中堅・ベテラン陣が続きますが、しかしトップスコアラーの住田、21試合のスタメン機会を得た水本、27試合に出場し2得点を挙げた福井など若手も着実に芽を出し始めています。この若さと経験が上手く噛み合うようにチームビルディングを行って、より勝ち点を拾えるようになれば…と期待したいですね。


21位 FC岐阜(7勝14分21敗 27得点55失点)
得点者:佐藤10、樋口6、井上2、地主園2、関田1、服部1、廣田1、ダニロ1、リ・ハンジェ1、染矢1、アブダ1

心機一転どこまでいけるか。

 今季もスタートから最下位・残留争いに身を置き続け、シーズン途中には大きな債務超過も発覚してGMが辞任するなど、なかなか厳しいシーズンとなりました。しかし、昨季が終わった時の「どうしようもないんじゃない?」という印象と比べると、今季の全日程を終えた今、岐阜から感じる印象はだいぶポジティブな方に戻ってきたのかな?と。それは、ラスト10試合に限れば(全部見たわけではありませんが)何もできないまま終わった、という試合が1つ2つあったか?というぐらい、チームとして戦えるレベルが上がっている点や、野垣内、田中、野田明、染矢、佐藤ら生え抜き、尾泉、関田の両ルーキー、廣田、樋口らレンタル選手、服部、リ・ハンジェの両ベテラン、ダニロ、アブダの両助っ人、こういった異なるカテゴリーの選手がうまくミックスされ、ブラッシュアップできた点といったチーム内の状況。そこに、予断を許さないものの、当座の債務超過解消に一定の目処が立ち、ホーム最終戦となった第41節に、クラブ史上初となる1万人を超える観客が集まってくれた、といったピッチ外の状況が加わり、「体をなしてきたな」と感じられたから。この流れを来季に繋げられるか、ひとまずこの1点ですね。


22位 FC町田ゼルビア(7勝11分24敗 34得点67失点)
得点者:鈴木7、平本6、北井5、太田4、ドラガン・ディミッチ4、勝又3、幸野1、下田1、三鬼1、イ・ガンジン1

昇格2チームは、ひとまずJFL降格の可能性が発生する21、22位にならなければ成功でしょう。

 明暗くっきり分かれたJリーグ1年生チーム。その暗は町田でした。開幕して5試合は2勝3敗と悪い数字ではなかったものの、その5戦を含めた前半戦22試合は3勝4分15敗で最下位。第12節から第27節まで、実に16試合勝利から見放され、前を追いかける機運が高まらず。その勝ちなしを止めた第28節以降の15試合では4勝5分6敗と残留するためには十分と言えるペースで勝ち点を重ねられただけに、もったいないと言えばもったいないシーズンだった気がします。
 出場時間数を見ると、特定の14、5人にスタメンが固定されているのが分かります。そもそも戦える選手がこれだけしかいなかったのか、それとも監督・コーチ陣がそう判断したのかはわかりませんが、この中に勝又が入っていないのは、勝又と心中できなかったことは、センチメンタルな意見かもしれませんが、降格の一因になったと思います。もちろん、小さな怪我が続いたと聞きますし、そのこと込みのパフォーマンス不足で彼自身がアルディレス監督を納得させられなかったことは事実でしょう。だけど、準加盟申請が認められ、Jリーグ入りを目指し始めた2009年に入団し、町田の歩みを地で行く彼が、ラストゲームでスタメンを外され、15分しか出番をもらえず、涙に暮れる結果となったことは、なんだか悔しいなぁと。
 歴史上初のJ2→JFL降格を味わった町田ゼルビアというクラブが、今後どのような道を歩むのか。その道のりは、無責任な言い方をすれば、今後のモデルケースともなり得ます。その国のサッカーピラミッドは、一部のビッグクラブ、複数のミドルクラブ、そして、数多あるスモールクラブにより成り立っています。そして、そのピラミッドを下支えするのは、スモールクラブの頑張りです。クラブの価値をホームタウンの住人、ファンと共有して、いかに長く愛され続けるものにしていけるかという気概を、もちろん、またJに戻ってきて、今度こそは爪痕残してやるんだ!という野心も携えて、是非歩み続けてほしいと思います。

*1:ゴール数÷出場時間数×90分で算出され、「仮に90分出場したら、1試合当たり何点取れているか?」という目安となるもの。