続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

先制することの強み

 お久しぶりでございます。気がつけば、1ヶ月放置プレイしていました(仕事に関わる試験勉強のため)。もちろん、この間東京の試合は追っかけておりましたが(天皇杯除く)、リーグ戦ここ3試合(清水△1−1、川崎●1−2、磐田○2−1)は、いずれも前後半で180度違う顔を見せる、面白みのある試合でした。
 突然話は変わりますが、サッカーはよく「先制点が大事」だと言われます。もちろん、他の球技でもこの言葉が用いられることはありますが、特にサッカーは「均等に攻撃機会が与えられるわけではなく、得点が生まれづらい」という相対的な面と、「どんな形のゴールでも、1点は1点」という絶対的な面が相俟って、数ある球技の中でもトップレベルで「先制点が大事」という言葉が当てはまると思います(双璧をなすのは…ホッケーぐらいでしょうか?)。そう考えれば、3試合とも先制点を奪われながらも勝ち点4をゲットしたことは、結果論としては上出来なのでは?と思いますが、では、果たして各チームの「先制時の強さ」はどうなっているのか?「先制した時の有利さ」ってどこまで数字に表れるものなのか?など気になってしまったので、簡単に調べてみました。以下の表は、

1:先制試合数
2:先制時勝ち点
3:先制時1試合あたり勝ち点(先制時勝ち点÷先制試合数。もちろんMAX値は3.00。)
4:総勝ち点(J1は27試合、J2は36試合(台風の影響があった湘南、松本、岐阜、京都、徳島、熊本は35試合)現在のものです。)
5:先制時勝ち点割合(先制時勝ち点÷総勝ち点。総勝ち点に対する先制時勝ち点の割合で、例えばこの数値がそんなに高くないのに上位にいれば、先制されても追いつける、勝ち越せる強さを持っているなど計れる…のか?)
6:2011シーズン先制時1試合当たり勝ち点(昨季全日程終了時の数字。カテゴリーが違うチームもあるので、あくまで参考資料として。松本、町田はJFL時のデータを拾うのがちと手間だったのでありません。悪しからず。)
7:2011シーズン先制時勝ち点割合(6に同じです。)

 を一覧にしたものです。J1、J2合わせて、どどーんと。
J1

チーム名 先制試合数 先制時勝ち点 先制時1試合勝ち点 総勝ち点 先制時勝ち点割合 昨季先制時1試合勝ち点 昨季先制時勝ち点割合
札幌 1.20 10 60% 2.84 75%
仙台 14 30 2.14 48 63% 2.33 75%
鹿島 13 25 1.92 34 74% 2.06 70%
浦和 14 30 2.14 48 63% 2.20 61%
大宮 13 22 1.69 31 71% 2.06 79%
12 27 2.25 39 69% 2.82 67%
東京 10 28 2.80 40 70% 2.56 90%
川崎 13 28 2.15 39 72% 1.94 80%
横浜FM 11 22 2.00 39 56% 2.18 66%
新潟 10 22 2.20 29 76% 1.94 85%
清水 13 29 2.23 41 71% 2.00 80%
磐田 15 32 2.13 42 76% 2.40 77%
名古屋 15 36 2.40 41 88% 2.53 68%
G大阪 18 2.00 29 62% 2.42 83%
C大阪 12 26 2.17 35 74% 2.07 67%
神戸 14 28 2.00 33 85% 2.35 87%
広島 20 50 2.50 53 94% 2.00 80%
鳥栖 12 28 2.33 41 68% 2.75 80%
J1平均 12.5 27。0 2.11 672 71% 2.16 74%
J2
チーム名 先制試合数 先制時勝ち点 先制時1試合勝ち点 総勝ち点 先制時勝ち点割合 昨季先制時1試合勝ち点 昨季先制時勝ち点割合
山形 17 38 2.24 57 67% 2.33 75%
水戸 14 35 2.50 52 67% 2.20 79%
栃木 18 47 2.61 56 84% 2.35 84%
草津 12 34 2.83 43 79% 2.44 68%
千葉 22 52 2.36 59 88% 2.29 83%
東京V 19 51 2.68 59 86% 2.53 81%
町田 10 19 1.90 27 70%
横浜FC 20 47 2.35 58 81% 2.31 73%
湘南 18 48 2.67 63 76% 2.24 83%
甲府 21 58 2.76 74 78% 1.86 79%
松本 14 36 2.57 48 75%
富山 16 22 1.38 29 76% 1.87 65%
岐阜 10 23 2.30 32 72% 1.45 67%
京都 20 53 2.65 61 87% 2.24 81%
鳥取 13 26 2.00 31 84% 2.00 77%
岡山 14 35 2.50 52 67% 2.29 67%
徳島 16 35 2.19 43 81% 2.60 80%
愛媛 14 29 2.07 38 76% 1.67 57%
福岡 16 31 1.94 40 78% 1.50 68%
北九州 17 42 2.47 52 81% 2.65 78%
熊本 14 34 2.43 46 74% 2.31 73%
大分 22 55 2.50 61 90% 1.69 54%
J2平均 16.2 38.6 2.36 1081 79% 2.26 74%
 全体的には、J1、J2ともに先制時1試合あたり勝ち点は2を超え、先制時勝ち点割合も70%を超える数字となり、先制点を取れれば勝ち点増に繋がることが客観的に見て分かるところに収まった印象はあります。
実際、昨季の先制時1試合あたり勝ち点は、J1が「1位柏、2位名古屋、3位G大阪」で、最終順位も全くそのとおりに。J2も「1位札幌、2位鳥栖、3位徳島、4位FC東京」で、最終順位は「1位FC東京、2位鳥栖、3位札幌、4位徳島」と多少の入れ替えはありましたが、顔ぶれは一緒でした。では、今季はどうなっているのか?先制時1試合あたり勝ち点トップ5とそのチームの実際の順位及び実際の順位上位チームの先制時1試合あたり勝ち点順位を以下に挙げてみます。

J1
 1位 FC東京(2.80)→実際の順位 8位
 2位 広島(2.50)→実際の順位 1位
 3位 名古屋(2.40)→実際の順位 7位
 4位 鳥栖(2.33)→実際の順位 5位
 5位 柏(2.25)→実際の順位 9位

      • -

 9位タイ 仙台、浦和(2.14)→実際の順位 2、3位
 11位 磐田(2.13)→実際の順位 4位


J2
 1位 草津(2.83)→実際の順位 16位
 2位 甲府(2.73)→実際の順位 1位
 3位 東京V(2.68)→実際の順位 6位
 4位 湘南(2.67)→実際の順位 2位
 5位 京都(2.65)→実際の順位 4位

      • -

 8位タイ 大分(2.50)→実際の順位 3位
 12位 千葉(2.36)→実際の順位 5位

 うーん、今年は突然変異が起こっているようです(苦笑) ただ、それぞれトップの東京と草津にはカラクリがあって、それは「先制した試合数も少ない」ということ。先制時の勝率はともに90%超え、いまだ負け無しながら、東京は先制した試合が10試合(全試合数の37%)、草津は12試合(全試合数の33%)と、「そもそも先制できていない」ことが分かります。また、「非先制時1試合あたり勝ち点」も実は出してみたのですが、東京は17試合で勝ち点12=1試合あたり0.71でリーグ9位、草津は24試合で勝ち点9=0.38でリーグ18位、ほぼ現在の順位とシンクロしていることも見て取れました。つまり、この2チームは「先制したら無類の強さを発揮するけど、そもそも先制できた試合が少なくて勝ち点が伸びていない」という結論を導き出すことができます。
 同じく先制時1試合あたり勝ち点と実際の順位が上手く噛み合っていない名古屋、柏についても調べてみました。名古屋は単純明快、「非先制時のひ弱さ」につきます。というのも、先制時1試合あたり勝ち点は「昨季2.53→今季2.40」と微減にとどまっているものの、非先制時1試合あたり勝ち点は、昨季が15試合で勝ち点23=1.53なのに対し、今季は12試合で勝ち点5=0.42と、某テレビショッピングも真っ青の72%オフ。もし、昨季と同じ1.53を今年も出せているとすれば、12試合×1.53≒勝ち点18を挙げている、つまり、今より13も勝ち点を積み上げることができている計算となり、これを足すと勝ち点54となり、広島を抜いて首位に躍り出られるんですよね。得点、失点とも昨季の良積には遥かに及ばず、憎たらしいまでの勝ちきれる力やゴリ押しさも消失気味。1つのサイクルの終わりと言わざるを得ないのかなと思います。一方の柏は、先制時1試合あたり勝ち点が「昨季2.80→今季2.25」、非先制時1試合あたり勝ち点が「昨季1.41→今季1.13」といずれも減少。目に見えて悪くなってる!とまでは言えませんが、先制時1試合あたり勝ち点が落ちているとともに、先制した試合の割合も昨季50%(17/34)→今季44%(12/27)と落としていることで勝ち点を伸ばせていない印象。昨季が出来すぎだったと言えばそれまでなのかもしれませんが…。
 良い方にも目を移しましょう。広島は先制時1試合あたり勝ち点を「昨季2.00→今季2.50」と大きく伸ばしている上に、先制した試合の割合が74%(20/27)、先制時勝ち点割合が94%と、「先制できているし、先制したら強い」という数字になっています。逆に、先制された試合はいまだ勝ち無し。この後、広島戦は特に先制点に注目してみると、楽しみが広がると思いますよ。鳥栖は、堅守から先制点をもぎ取って逃げ切りたいチームスタイルという印象があり、昨季J2での先制時1試合あたり勝ち点は上でも書いた通り2位(2.75)。今年はJ1初挑戦ということもあって2.33と数字こそ落としていますが、先行逃げ切りのスタイルはしっかり堅持。それでいて非先制時1試合あたり勝ち点が「昨季0.78→今季0.87」と微増、先制時勝ち点割合が「昨季80%→68%」と減っていることから、印象ほど先制しなければどうしようもないわけではないことも分かります。この順位も頷けるところですかね。
 そして、現在2位の仙台、3位の浦和は揃って9位なんですが、よく見ると先制した試合数、先制時勝ち点、先制時1試合あたり勝ち点、総勝ち点、先制時勝ち点割合が全て同じ。ということは、非先制時の指標(非先制試合13、勝ち点18、1試合あたり1.38(J1トップ))もすべて同じ。いやー、こりゃ驚きました。広島が先制しないとかなり厳しいのに対し、この両チームは先制されても跳ね返せる可能性があるわけで、この後控える10/20仙台−浦和は先制したからと言ってまったく安心できない試合展開になるかもしれませんし、11/17浦和−広島で浦和が先制したら…という見方をすると面白いかも。ちなみに、「均整の取れた守備とスピーディな攻撃で先制点を奪い、その後は狡猾さをもってのらりくらりと相手をいなし、相手がイライラする中で気が付けば追加点を奪って悠々逃げ切り」という印象が強い鹿島ですが、今季は先制時1試合あたり勝ち点が1.92で下から3番目と逃げ切れていないという、印象と全く真逆の数字でびっくり。栄枯盛衰あるとはいえ、やや寂しくも映りますかね。


 J2に目線を移します。草津は先ほど書いた通り。首位甲府は先制時にほとんど勝ち点を落とさず、かつ非先制時1試合あたり勝ち点1.07もJ2首位としぶとさも併せ持っており、J1以上に先制した時の有利さが数字として残っているJ2において独走を築き始めたのも納得かなと。大分も先制時1試合あたり勝ち点こそ8位タイですが、先制した試合(22試合)、先制時勝ち点(55)、先制時勝ち点割合(90%)でJ2トップの数字を残しており、先制すればある程度計算が立ちます。また、東京V、湘南、京都、そして栃木(先制時1試合あたり勝ち点2.61で6位)も先制時にきっちり勝ち点を伸ばせており、大大大混戦の中にあって先制点の重さがより増して来ると考えれば、この4チームがプレーオフ圏内に残る可能性を高く持っているのかなと。一方、現在5位の千葉は先制した試合が22試合で大分と並んでトップタイも、先制時1試合あたり勝ち点が2.36と今ひとつ伸びておらず、実際このところ終盤に逃げきれず追いつかれる試合が続いていることを踏まえると、やや苦しい気がしますし、7位横浜FCは先制時、非先制時ともに特筆すべきところがなく、この後グッと数字を伸ばせるイメージがあまり湧きません。また、8位山形は非先制時1試合あたり勝ち点が1.00で2位と劣勢時の粘りこそ評価できますが、先制時1試合あたり勝ち点が2.24で16位では、他のチームを押しのけてまで推すには躊躇してしまいますね。


 とまあ、ダラダラ書いてみました。まとめ的なことを書くと、今季のJ1は「先制時1試合あたり勝ち点:非先制時1試合あたり勝ち点」の比が「2.13:0.74≒2.9:1」、つまり、先制した試合は先制された試合の2.9倍勝ち点を奪える。同じくJ2の比は「2.36:0.55=4.3:1」、つまり、先制した試合は先制された試合の4.3倍勝ち点を奪えることになります。まあ、これが高いとみるか低いとみるかはそれぞれの考え方次第ですが、ある一定の「価値」は見て取れたのではないでしょうか?みなさんの応援するチームがどんな数字か?残り試合、その通りに進むのか?あるいはこの数字とは異なる姿が見られるのか?それを頭の片隅に置いておくと、ハーフタイムにイライラしなくて済むかもしれません(笑)